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    ラブ・ミー・サンダー 季節の変わり目は変な吸血鬼が湧いてくる。新横じゃ季節なんて関係ないじゃないかと思われがちだが、春には股間にゼラニウム、夏にはマイクロビキニ、秋冬になるとやはりマイクロビキニと、四季折々のトンチキな格好をした退治人の姿を拝めるのがこの町である。季節感は重要だ。夏と冬とでビキニの素材が違うのも季節感を重視してのことだという。この先千年生きたとしても、きっと活用し得ない知識ばかりが増えていく。
     さて、私は別にマイクロビキニに洗脳されているわけでもないから、本来こうして執拗にビキニについて語る必要はないのだ。にもかかわらず脳内でくっちゃべってるのは、あれだ。ぼちぼちゴリ造も夏毛から冬毛へ衣替えの季節かなと思ってクローゼットを整理していたら、種々のマイクロビキニが出てきたという現実からの逃避思考だ。
    「やっぱり本人がいない時にプライベートスペースをひっくり返すのはやめられないね、ジョン」
    「ヌンヌン」
     退治人衣装を意識してのものか、真っ赤なマイクロビキニを手にしてはしゃぐジョンに話しかける。こんなものどこで買ってくるんだ、本当に。
     しかし去年までは、私もこうして勝手に衣替えなんかしなかった。クローゼットには見られると困るものでもあるのか、あまり触らせてくれなかったし。例年は、十月の半ばになっても半袖で飛び出しては「今日半袖なの俺だけだった……」とへこみながら帰宅し、いつ衣替えをしていいのか悩むゴリラを見ているのが鬱陶しくなった際、ジョンを通じてロナルド君をクローゼットの整理へと追い立てるのが常だった。
     ところが今年は違う。私には彼の衣類を勝手に整理し、身なりを整える権利がある。仕事着どころか下着や靴下の穴を見つけては繕ったり新しいものを購入してタンスに入れておいたりする権利がある。なんてったって、我々は出来立てホヤホヤの恋人同士であるからして。
    「……んふふ」
    「ヌン?」
    「ああ、違うんだジョン。なんかこう、本人の不在時に衣類の整理とは……家事と違って、余計に恋人っぽいというか、同棲って感じがするというか……し、新婚みたいじゃない……」
    「ヌヤン♡」
    「ぐぶ、照れて死ぬくらいなら口にするな……」
     キンデメさんが至極真っ当なことを言うが、あと半年はこのムーヴを勘弁してほしい。この世のキュートたるドラドラちゃんの生まれて初めての恋人が、あんな面白ハンサムゴリラなのがいけないのだ。うふふ、と我知らず緩む口元をジョンにも指摘され、再び恥ずか死するが、笑み自体を引っ込めることはできない。
     だってロナルド君の告白ったら、なんとも素敵だったんだ。ほんのりとした好意は以前からずっと感じていたし、風呂上りや寝起きにこちらを盗み見てくる視線の熱にも気が付いていた。こりゃ若造が私に落ちるのも時間の問題だなと鷹揚に構えて、ロナルド君が告白してくるシチュエーション予想なんかをしていた。一番人気は夜景の見えるレストランで花束片手に。二番人気がギルドでフラッシュモブでダンスをしながら。大穴は、オータムでベルトコンベアに乗せられる前に「無事に脱稿出来たら、お前に言いたいことがあるんだ……」とフラグを立てて油に沈んでいくとかだったかな。
     いずれにせよ、見てくれは抜群のくせに恋愛事はからきしの童貞らしく、めちゃくちゃ肩に力の入ったガチガチの告白か、ふええと泣きながらみっともなく私への愛を叫ぶかのどちらかだと思っていた。それなのに実際は、夜景の見える素敵なデートスポットなんかじゃなく狭い居住スペースで、慌てず騒がず「お前が好きだ」と右ストレート。あれには参ってしまったね。
    「お前が好きだ。これからもずっと、お前とジョンが楽しく笑ってるところを見ていたい。ほかの奴が知らないようなお前の姿を見てみたい。……俺の、恋人になってください」
     そんな真摯な台詞を、あの美しいアイスブルーの瞳でまっすぐに見つめられながら言われたら、もう駄目だった。多少赤面していたものの、暴れるでもなく格好つけるでもなく、変に意地を張るでもなく、ありのままのロナルド君から言われたものだから、むしろ私の方が真っ赤になってしまった。
     同居ゴリラから恋人ゴリラへと昇格したロナルド君は、意外なほど率直な愛を示してくれた。五歳児のことだから、その辺で拾ってきたダンゴムシとかセミの抜け殻とか綺麗な石で気を引くことくらいしかできんだろうと思っていたのに、目覚めれば「おはよう」とはにかみ、食事を出せば「美味いよ、ありがとな」と嬉しそうに微笑み、仕掛けたセロリに本気で怒って殴ってきたかと思えばそのまま抱きしめて「……責任取って慰めろや」と甘えてくる。驚くべき順応力だ。これがかわいがらずにいられいでか。
     つまり、私はすっかりあの若造に骨抜きだった。好きにならずにいる方が難しいだろう。もうロナルド君のためならなんでもしてやりたくなって、からかいのネタ探しついでに、こうして頼まれもしていない衣替えまで引き受けているのだ。
    「まさかこの私が、誰かに何かをしてやりたいだなんて思う日が来るとはねえ!」
    「ヌヌン!」
    「いやあ、長く生きてみるもんだとも。楽しいねえジョン」
     ジョンもそう思います! と元気に返事をする使い魔からマイクロビキニを脱がせ、よっこいしょと立ち上がった。衣類の整理は大体終わった。そろそろゴムが伸びてきていたり、生地が薄くなっていたりしている下着がいくつかあったが、これは本人に買わせた方がいい。ロナ坊やは思春期だからね、いつまでもママに下着を買ってこられるの恥ずかしいもんね。いや、本当は引き出しの奥に勝負下着っぽいのを見つけてしまったからなんだけど。いつもの柄オブ柄のド派手なものではなく、それなりに縫製のしっかりした落ち着きのある下着。いつかあれを目にする時が来るんだろうなあと思えば、その時までのお楽しみとして取っておきたくなった。勿論おちょくってやってもいいのだがね。しかしいくらなんでもジェントル違反のような気がしてね。……別に、しかるべき時にあの下着を身に着けたロナルド君が見たいというわけではない。その時を想像して恥ずかしさにいたたまれなくなったとか、そういうわけでは断じてない。
    「やれやれ……さ、次は若造の検索履歴でも見てみようかな」
    「ぐぶ……貴様にプライバシーを守るつもりはないのか……」
    「ロナルド君にそんなものがあるわけないだろう。半田君がここへ自由に出入りしてる時点で、あの子の全ては記録されているものと思っていい」
    「反論の余地がないのが恐ろしい」
    「うむ、私も言ってて背筋が寒くなってきたな」
     この魔都新横において、一体ロナルド君が普通の暮らしを手に入れることはあるのだろうか。一生無理だという気もする。
     さて、検索バーの前にロナ戦の進捗だ。次の締め切りは来週末のはずだったが、作家先生の進捗やいかに。……ウーム漂白剤でも使ったのかってくらい真っ白。格好良い章タイトルだけ決まってるのがまた趣深い。
    「さーてお待ちかねの検索履歴だよジョン! あの若造、今どんなえっち動画で抜いてるんだろうね」
    「ヌア!?」
    「いやなに、豊満なおっぱいは私にないけれども、シチュエーションなら参考にできるところがあるかなあと思って」
    「ヌ、ヌヌヌヌ……」
     百歳越えのアルマジロはやや気まずそうに頷いたが、すぐに私と一緒に画面を覗き込んだ。ジョンだって立派に大人の雄アルマジロだもの、ロナルド君の気持ちも分かるのかもしれない。恋人にえっちに迫られて嫌な男はいないだろう。
     少し前であれば、クローゼットの上段の奥、「参考資料」とマジックで書いた菓子の空き箱の中に、ロナルド君の秘蔵コレクションがあった。しかし先ほど物色した中では見つからず、どうやら隠し場所を変えてしまったらしい。あるいは、私と付き合うことになって律儀に処分したか。私はそういうの一向にかまわないんだがね、うなじコレクションもまだ持ってるし。ロナルド君はそうでなかったようだ。
     であれば、律儀な恋人のためにそちらの世話も焼いてやるのが筋というものだろう。いやどうだろう、筋なんだろうか。さすがにはしたない気はする。でもまあ、恋人の趣味嗜好を知っておきたいという気持ちは普通じゃないか。それを盗み見して、場合によってはからかい倒そうと思っているだけだ。
    「えーと、コスプレ……は出ないか。まだそういうんじゃないと」
    「ヌヌヌヌヌヌ、ヌイヌヌヌニッヌ」
    「え、ニッチかなあ? ロナルド君のことだからシチュエーションと言えばコスプレだと思ったんだけど。普通に履歴でも見るかあ」
    「ヌンヌイ!」
     情報リテラシーがばがばルド君の脳みそに検索履歴の削除という言葉はない。出るわ出るわ、直近に参考しようとしたインターネットのページから、途中で完全にネットサーフィンに出てカワイイ生き物動画にたどり着く軌跡が。アルマジロだけではなく犬猫も検索ワードに残っていたので、ジョンの眉間にしわが寄った。ジェラヌーだね。
    「……ん? 告白、方法……ふふ、見てごらんジョン、ロナルド君たらやっぱりインターネットの叡智にすがってたみたい」
    「ヌヌー」
     恋愛に関してはへたれなあの男が告白の勇気をもらったのかと思っていたが、ギルドや友人の他にインターネットも大いに参考にしていたようだ。頭を抱えながらキーボードを操作する若造が目に浮かぶぞ。大方「年上 告白」とか「告白 いい感じ 夜景」とかで検索しまくったんだろう。色恋沙汰といえば夜景しか思い浮かばない男だもの。……それにしては、そういったワードが出てこない。はて、確かに私に告白してきた時も、夜景のやの字もなかったが。
    「……ん?」
     ふと思いついて、ブックマークされているページがないか見てみた。案の定「失敗しない恋愛テク」とか「絶対成功させたいプロポーズ」といった言葉が並んでいる。そのうちの一つをクリックして内容を読んでいくにつれ、今度は私の眉間にどんどんしわが寄る。
    「友人関係から恋人になるために……ふうん……同棲相手と円満に過ごすために! これだけ守れば安心十か条……へえ……」
     きちんと顔を見て挨拶をしよう。家事を引き受けてくれている相手には感謝をしよう。ご飯を作ってくれた時には、好みの味かどうかではなく「美味しいよ」と伝えよう。日常で小まめに点数を稼いでおけば、大きな喧嘩をしても相手の方から折れてくれるでしょう。同棲解消となっても、自分は関係を構築するべく努力したということが認められ、過失がなくなります。へえ。
    「ふうん。ふーん、そうなんだ」
    「ヌ、ヌヌヌヌヌヌ……」
     なんだそれ。恋人になってからのロナルド君の振る舞いあれこれは、点数稼ぎだったってこと? 本当に私の作るご飯が美味しいから笑顔になってたんじゃなくて、私のご機嫌取りだって? おはようやおやすみの挨拶も、時々甘えるように指を絡めてくるのも、年上の恋人の機嫌を取るためにはそうしておけば十分だって?
     あったまきたぞ。それじゃあその一々に喜んでいた私が馬鹿みたいじゃないか。こんなちっぽけな箱の画面を覗き込んで、「正しい恋人同士の付き合い方」なんて正解を探していたのか? 間抜けだとは思っていたが、ここまでとは恐れ入る。この私が、私との関係が、料理の手順のように整理されるものだと考えていたのか。
    「むかっ腹が立つじゃないか」
    「ヌ、ヌン……」
    「ジョン、君は地球をめぐって私を探し出し、その愛を示してくれたね。そうすべきだと誰かに教えられた?」
    「……ヌー」
    「そうとも、君は私を想って、考えて考えて決意して、再びこの腕の中に飛び込んできてくれたんだ。このドラちゃんの愛を賜るには、それ相応の試練が必要だと思わないかい?」
    「ヌン!」
    「ふん、小手先のテクニックで私とどうこうなろうなど、千年早いわ」
     ロナルド君にはもっと本気で私を想ってもらわないと困る。でないと私の愛と、吸血鬼の執着と釣り合わないじゃないか。
     直近の検索ワードに「初エッチ」というのがあるのを見つけて、ジョンと目配せをした。こうと信じたらクソ真面目ルド君のことだ、「初エッチは付き合ってから○ヶ月目の記念日に」とか書いてあったらその通りにするに違いない。
    「ウヒャヒャ、世の中そんなに甘くないと思い知るがいい、若造め!」
    「ヌー!」
     ノートパソコンを格好良くべしーんと閉めようとして反作用で死んだ。待っているがいいロナルド君。愛を得る道は地獄を通らねばならんのだ。

     はてさて、種と仕掛けを知ってしまった後では、若造のアピールもとい点数稼ぎも、私には全く通用しな……通用……通用なんか……。
    「え~~~んめちゃくちゃ刺さる~!!」
    「ヌヌヌヌヌヌ……」
     憐れみを込めたジョンの視線もついでにぶっ刺さる。だって仕方ないじゃないか、ロナルド君ってばべらぼうに顔がいい。いやマジ、彼の顔の良さをなめていた。「イケメン彼氏が浮気ばかりするけれども何度怒っても反省してくれない、でも最後にはこっちが折れて許しちゃう……つらい……でも好き」といった世の女性たち(概念)の悩みを幾度となく聞いてきたシンヨコのママことドラドラちゃんだが、これでは彼女らを笑えない。我ながらあまりにチョロい。
     先日だって、車の通りが多いわけでもない道路でさりげなく車道側を歩かれてしまった。以前であれば「ほほう紳士な振る舞いが板についてきたではないか流石は私の男」と悦にひたっていたものが、「正しい恋人同士」の模倣でしかないと知った後ではどうも気にくわない。だから「壁際に追い詰めるなゴリラめ、歩きづらい」とぶっきらぼうに押しのけたというのに、すんなり下がったロナルド君に「んだよ、ちょっとくらい格好つけさせろよ……」と拗ねた表情で言われた日には駄目だった。かわいい。んま~かわいい、格好つけさせろって言ってしまうところがめちゃくちゃにかわいい。そして彼氏仕草をさせてもらえなかったのが悲しかったのかしょんぼりと項垂れて心持ち歩幅が狭くなるところが、これまたかわいい。私の彼氏が私とタイマン張るくらいにかわいくてちょっと困る。いじけた顔も永遠に見ていられるほどのものではあったが、途中で気の毒になったから私の方から手を繋いでやった。途端に上機嫌になって、事務所に帰ってからもしばらく、というか寝るまで頬が緩みっぱなしのでれでれゴリラになってしまい、大変私の気分もよかった。ジョンに「それでいいヌ……?」と言われるまで、自分がロナルド君の術中にドはまりしているのに気が付けないほどに。
     またある時には、くたびれた様子のロナルド君に珍しく素直に甘えられた。脱稿明けで知能指数が下がっている状態でもないのに、ソファでジョンといちゃいちゃしていた私の膝に無言で頭をねじ込んで「……が、頑張ったから撫でて……」と顔を真っ赤にしながら言うのだ。なんでそう、大胆に振舞っておきながら照れが抜けきらんのか! しかも甘える口実が「頑張ったから」ときた、正真正銘の五歳児か? そういうギャップがたまらないと喜んで頭を抱きかかえてキスの雨を降らしたいところだったが、いや待て、これも若造の言うところの「点数稼ぎ」に過ぎない。なればと驚きとときめきでつま先から砂になりそうになるのをどうにか耐え、私は表情筋をフル稼働させて「今忙しいんだけど」とつっけんどんに返した。これにはさすがのロナルド君も堪えたのか、「ガーン!」という擬音を背負っていそうな表情をして、ふらふらと私の膝上から撤退していった。
     ううむ、脱稿したというのにひどかっただろうか。やり過ぎちゃったかしら。内心でそんなことを思っていると、再び背後に気配を感じた。すわ撲殺かと身構えた私の頭に、ふわりと大きな手のひらが置かれた。何事かと振り返った私の目に飛び込んできたのは、べしょべしょに落ち込んだ五歳児の泣き顔ではなく、優しくはにかみながら私を見下ろしているロナルド君だった。
    「……自分が甘やかしてほしい時は、相手だって甘やかしてやんねえと駄目だよな」
     よしよし、と慣れない手つきで私の頭を撫でてくるのに耐えかねて、ついにソファの上で爆散した。「なんで!?」と悲鳴を上げられたが、いやなんでもクソもねえわ。破壊力がすごい。なに? 甘やかしてほしい時は相手も甘やかしてやらなきゃって。君の思う「甘やかし」って頭を撫でることなの? 何回ときめきで殴ってくるつもりだ。
     その後も膝の上に抱きかかえられ「こういうのもたまには良いな」と上機嫌そうに言われるなど、ロナルド君によるドラちゃん虐待は続いた。顔にはでかでかと「恋人を甘やかす彼氏の俺!」と書いてあった。私の男かーわいい。

     そういうわけで、ロナルド君が日夜せっせとインターネットで収集してきただけの知識に見事踊らされ続けていた私は、やはり決意を新たにせねばならぬと緊急集会を開いた。すなわち私、ジョン、有識金魚のキンデメ、スーパーアドバイザー死のゲームによる「若造の付け焼刃恋愛テクなんかには負けないの会」である。ロナルド君過激派のメビヤツは事務所でお留守番していただいている。ちなみにキンデメさんは、この会の存在を伝えた時、腹を水面に向けて浮かんでいた。死にかけることないじゃない。
    「グブ、貴様やはり馬鹿では」
    「私が馬鹿なわけないだろ、若造が顔面でごり押してくるからいけないんだ!」
    「師匠ったら面食いですねえ、ほんと」
    「ヌッヌヌ……」
    「えーんジョンまで呆れないで! 私にとっては本当に死活問題なんだ、ほら!! これを見たまえ!」
     そう言って私が懐から取り出したのは、ロナルド君の事務机の上に置いてある卓上カレンダーだ。何だ何だと顔を寄せてきた三匹に示すように、私はびっとある日付を指さした。
    「ご覧、エックスデーがもう一週間後に迫っている!」
    「ヌッヌヌヌー?」
    「なんですかこの花丸印?」
    「……待て、知りたくない、吾輩は嫌な予感がする。頼むから水槽に戻して」
    「エックスデーとはつまり……ロナルド君が、わ、私を、セ……ベッドに誘ってくるに違いない日なのだ……!」
    「知りたくなかった……」
     大きなため息とともに気泡を吐き出すキンデメさんには申し訳ないが、これは由々しき問題だ。このままでは、私はあの調子こきゴリラに頭からぺろりと美味しくいただかれてしまうだろう。すぐ死ぬ私の体質はこの際置いておいて、問題なのは童貞力五万の若造による口説き文句でころっと貞操をささげてしまうかもしれない私の方だ。こんなの高等吸血鬼としてあるまじきことだろう。
     そもそも、ケツホバに昔教えられたことには「人間に上手く取り入って裏から操る存在になれ」とのことだった。現状を見てみると、人間に上手いこと手のひらで転がされるかわいい存在になってしまっているではないか。これ以上ロナルド君ごときに夢中にさせられてはたまったものではない。ベッド上の主導権は、何としてでも私が握らなければ。
    「主導権を握るって、どうするつもりですか? すぐ死ぬのに」
    「それはあれだ、ほら、こう……例えばえっちなお姉さんみたいな感じで迫れば……いけるだろ! 童貞だし!」
    「お主、その楽観的思考で今日まで散々負け続けてきたのは分かっているか?」
    「やかましいっ! とにかく来るエックスデー、私は絶対初手では誘いに乗ってやらん! ロナルド君が泣いて縋って土下座してセロリ咥えて『ドラ公えっちすぎるぜ、頼むから俺の童貞もらってくれよ~!』て言ってくるまで、絶対に首を縦に振ってやらんからな!」
    「既にオチが見えてきましたね」
    「ヌン」
    「うるさいぞ外野!」
     これは私の沽券に関わる重要な問題なのだ。「かわい……って流されて気付いた時には裸に剥かれてそう」とか言うな。

     卓上カレンダーにそれ以上印が増えないことを確認し、また花丸印の当日と翌日はきっちり依頼を断っているのを知り、私はより厳かな気持ちでエックスデーを迎えた。厳かになり過ぎて前日の夕食は精進料理みたいになってしまい、ロナルド君には「え、これは何……機嫌が、悪……いや良いのか……?」と困惑され、目の前で死んだ。
     そうして迎えた当日、私はあくまで普段通りに起きて振る舞い、「今日は早く帰るから」と言って退治に出かけて行った若造も努めていつも通りに送り出してやった。さて、あとは私の精神を整えて、あの顔面に絆されない強い心を持てばいいだけだ。
    ……しかしロナルド君、早く帰るとはいえ運命の日にまで仕事を入れて、どんな気持ちで現場に向かったんだろう。下等吸血鬼の退治だと聞いたから着いてはいかなかったが、私と過ごす夜を想像しては赤面し、依頼人に不審がられているんじゃないか。あるいは今夜どう誘ったものか、インターネットで何度も調べたであろう「初夜 誘い方」とかで無限に検索して、この期に及んで誘いの言葉一つ定まっていないかもしれない。
     事務所のノートパソコンの履歴には「初エッチ 痛くない」「セックス 誘い方 スマート」「セックス 誘う モテ」などの検索ワードがずらりと並んでいた。ブックマークされているページが増えていたのでそれもチェックすれば、「初めてのセックスで相手を喜ばせる簡単な方法」なんてたわけた見出しが飛び込んできて、死にそうになった。「相手の意思をしっかりと尊重しましょう」だって、それができればあの綺麗な若造が今の今まで童貞であったはずがないだろ。自己肯定感の低い童貞ゆえ、相手に許されたと思えばがっついてしまい、やんわりと宥められたのを拒絶された! と受け取って勃起不全になるのがオチだ。
     その点私は完璧だからな、畏怖かつ色っぽい私の魅力でまずは若造を虜にし、許しを請う作法を教える。爪先への口づけ程度もできないのであれば私に触れる権利などないと突き放し、哀れっぽく縋ってきたら慈愛をもってあの滑らかな頬を撫でてやるのだ。ロナルド君は多分、首まで真っ赤にして股間をぱんぱんに膨らませるに違いない。あと絶対子どもみたいにボロボロ泣く。私がそれを鼻で笑って指で涙を拭ってやると、ロナルド君の大きな手がそれを掬って自分の頬に当て……
    「ウワーッ!!」
    「ヌアー!?」
     ナススと再生して死んだ拍子に落っことしてしまったジョンを抱き上げる。危ない、私でなければ致命傷だった。自分の想像の中での若造にキュン死させられるなんて、おのれロナルド君め、侮れない奴。途中からシミュレーションじゃなくて妄想になっていたことは棚に上げておく。ドラドラちゃんは自分の妄想に飲み込まれて自爆するわけがないのだ。
     しかしどうにも落ち着かない。部屋の中はいつも以上にぴかぴかだし、今夜の決戦場となるソファベッドは念入りに埃を取って消臭剤を吹き付けたし、風呂場のカビ取りもシンク磨きも完了している。けれども何か手を動かしていないと、先ほどのように破廉恥ルドが私の脳に出張ってきてあれこれと手を出そうとしてくるから、どんな些細なことでも構わないから作業をしていないと。ジョンに「あとやっておくことあると思う?」と聞いたら「新しい下着を出しておいた方がいいと思うヌ」と言われ、ジョン~~~!! アダルトマジロ~~~!! ジョンにまで今晩の敗北を予想され、気の利いた返しができなかった私はしばらく床上で砂のまま震えていた。
     今夜私を求めてくるということが分かっている男を、どんな顔をして出迎えればいいというんだ。テンションも心構えもできていないままに事務所へとつながる扉の向こうからメビヤツの元気な声が聞こえてきた。うっそマジかよ、夕食の仕込みは終わってるけれども私の仕込みは終わってないぞ、いや私の仕込みって言い方大概ポンチだな!
    「ただい……なんだそれ」
    「お……おかえり」
     苦肉の策として、咄嗟にお祖父様が置いていったソードのアイマスクをつけた。やはり視界は最悪、ロナルド君のことも赤としか認識できない。そんな状態でキッチンに立つ私を訝しんだロナルド君が「どうしたんだよ」と言いながら近づいてくる気配がしたので、咄嗟にお玉を突き付けて「手洗いうがい鼻うがい!」と命じた。私の意図を察したジョンが若造を先導して洗面所に向かってくれたおかげで、シンヨコマジロニデレデレゴリラは無事に私の視界から消えた。
    「あ、危ないところだった……」
    「お主……意識しすぎて最早不審だぞ」
    「クソ……こんなはずでは……!」
     歯ぎしりをして悔しがるも、手洗いうがい程度では若造を長く足止めすることもできない。食事を出さないのも不自然だ。仕方なくいつも通りを意識してテーブルに食器を並べ、使い終わった食器を念入りに洗う。そうこうしているうちに一人と一匹がリビングに姿を見せ、テーブルに並べられた煮物に首を傾げた。
    「なんか、昨日今日と和風じゃねえ? 珍しいな」
    「……いつもいつも五歳児のお子ちゃま舌に合わせたものを出すわけないだろう。今日は出汁の気分だったんだよ」
    「ふうん。まあ美味いから何でもいいけど」
     あああ~馬鹿馬鹿バカ造、この後べろべろにキスしたりされたりすることをしようというのに、濃い味付けのものを食わせてたまるか! 若造と違って私の下はおノーブルで繊細なんだぞ、唐揚げ風味のキスとか死んでも嫌じゃ。……いやそういう意図で今日の献立を組んだわけではないが! 純粋に煮物の気分だっただけだが!
     ああくそ、と舌打ちしたい気持ちになりながら手早く食器を拭いて水切りかごに並べる。普段であればそのまま私もテーブルに着くところだが、ロナルド君の正面になんて座れるはずがない。エプロンをソファの背面に引っかけ、死のゲームを起動させてとうの昔にやり終えたゲームをロードした。
    「あれ、お前今日こっち座んねえの?」
    「あー……ちょうどいいところでゲーム中断してたから、この面だけクリアしてしまおうかと」
    「……ゲームしててもいいからこっち来て座れよ。さ、寂しいだろ」
    「ンッッ」
     そう拗ねた口調で言われると、私も強く意地を張ることができない。「仕方ないな……」と言いながら席に着いてやると、ロナルド君はこれまた嬉しそうに眉尻を下げるので私も満更では……いや、いやいや! 今日こそはそれに屈しまい。私は負けない。
    「食卓でゲームとは品がないだろ」
    「いやお前いっつもここでスマホゲーしてんじゃねえか」
    「じゃあ今度からスマホゲーしたい時もここでするよ。行儀が悪くてすまなかったね」
    「あ……!?」
     途端に背後で椅子を蹴倒す音がして、どすどす足音を響かせたゴリラが、たった数歩の距離を縮めて私の正面にしゃがみこんだ。私の顔を覗き込もうとするので視線を逸らす。やがて諦めたのか、怒りとも呆れともつかないため息を吐いてロナルド君は立ち上がった。嫌だな、胸がずきずきする。別にロナルド君を怒らせたいわけじゃないのに。
    「……ほら」
    「え?」
     俯いたままそんなことを考えていたら、目の前に牛乳の入ったマグカップが差し出された。中からはほのかに湯気が立っている。
    「調子悪いんなら言えよ。俺はジョンみたいにお前と何かの感覚を共有できるわけじゃねえし、見ただけで気分が分かるわけじゃねえし。……対応はこれで合ってるか? なあ、ちゃんと教えてくれよ」
    「…………」
    「死―ッ!?」
     バサァとそこそこ勢いよく死んだ私を見たロナルド君が派手に動揺する。いきなりの彼氏としての満点を叩き出しおって、顔も声も性格もよくていざって時には気遣いもできるパーフェクト彼氏面をやめろ!!
    「じょ、ジョンさんこれは一体何死……?」
    「ヌン死」
    「ジョーン!!」
     キュン死とか言わないで! ジョン! ほら若造が調子に乗って情けないデレ顔晒しちゃってるから!
     体調には問題ないヌ、と味噌汁をすするジョンにようやく安心したのか、ゴリラはのそのそと自席へ戻っていった。いたたまれない気分の私は、半分死にながら「先お風呂入ってくるね……」とその場を後にした。
     風呂から上がると、水槽からキンデメさんが姿を消していた。死のゲームもどうやら移動させられている。うわうわうわ、こんなのあれじゃないか、どう見てもこれからナニをしますよって感じじゃないか。
     不自然に立ち止まってしまった私に気付いて、食器を洗っていたロナルド君が「おう、洗っておいたぜ」と顔を上げる。それが平然としているからまた憎らしい、キンデメさんや死のゲームになんて説明をしたんだ。
    「ま、まあ、五歳児のお手伝いとしては及第点だな」
    「うっせ。……なあ、俺ジョンと風呂入っちまうから。その、すぐ出るからさ」
    「……なに?」
    「あーっと……そのう、起きて待っててほしい」
     そう言うなり、ロナルド君は真っ赤なトランクスを片手に握りしめて脱衣所の方へ消えていった。平然として見えた顔の中に、落ち着かなさや動揺を見て取ってしまい、それが自分にも伝播する。
     どうしよう、いよいよ迫られちゃうの、私? こういう時どんな顔して待ってれば……いやいや、待つって何だ。私は今日、童貞ゴリラ必死のお誘いを鼻で笑うのだ。つられてドキドキしてどうする! もっと余裕を全面に……そうだな、こんな風に脚なんか組んじゃって、ブラッドワインでも開けようか。あっでも今日のネグリジェ手持ちの中で一番新しくて手触りが良いやつじゃないか。なんでこんなの選んじゃったんだ私、万一ワインをこぼしたら数日は立ち直れないぞ。私の染み抜き技術にかかればどうってことないが……待って、なんか下半身すーすーすると思ったら下着穿き忘れてた。なに!? なんで!? 下着を穿き忘れるほど自分が動揺していることに動揺しているが!?
    「……待てよ、じゃあ今頃私の下着は脱衣所に……? えっ見られたかなロナルド君に、今から取りに行けば間に合」
    「おいパンツ忘れてたぞ」
    「ウワー――ッ!」
     普通に間に合わなかった。ロナルド君はソファの上で死んだ私に引きながら「お前が衣類忘れると弱ってクソ雑魚が増すな……」などと失礼なことを言う。自分で忘れたんだからノーダメじゃ、靴下と一緒にするな。今死んだのは普通に……普通にびっくりしたしショックだった……。
    「ロナルド君に穿き忘れたパンツ見られた……」
    「えっなに、そんなショック受けるか? お前だっていつも俺が脱衣所に持っていきそびれたパンツ持ってきてくれるじゃん!」
    「それとこれとは違うんだよ……はあ……」
     塵の上に落とされた下着を巻き込んで再生を果たす。それを待っていたかのように若造が隣に腰かけてきた。見れば、ジョンは「ごゆっくりヌ」と言いながらスナック菓子の袋を持って事務所へと続く扉をくぐるところだった。風呂の中で買収しやがったな。
    「ドラ公……」
    「……」
     さあ来るぞ、童貞による初エッチ懇願が! 来ると分かっていても回避できないのはクソゲーのバグだが、これは訳が違う。最初からお断りの気持ちを強く持って、毅然とした態度で臨めば、無理やり系が地雷の若造は大人しく引き下がるしかない。さあ来い、土下座か、泣き落としか? それとも夜景か?
    「ん」
    「ん!?」
     おっとこれは予想外も甚だしい。初手接吻とは、え、童貞の割には嫌にスマートだな? しかもいきなり舌を突っ込んでくるんじゃなくて、私が以前教えてあげたように、ゆっくりと体温を分け合うような……あー、風呂上がりのロナルド君温かい。耳の後ろとかうなじを撫でられると、心地よくて目を開けていられなくなる。唇を舐めてくる舌も温かくて、くすぐった笑ったら甘噛みされた。全身ポカポカして、また湯船に浸かってるような浮遊感と多幸感。なんならこのまま寝てしまいたいな……。
    「ドラ公……いい?」
    「…………ん?」
     いいって何が? と放心状態からようやく自我を取り戻す。いつの間に押し倒されたのか、私の体はソファの座面にそっと横たえられて、天井とロナルド君の顔面とが視界いっぱいに広がっている。……この状況での「いい?」って絶対あれだな!? なんだこのお伺い、テクニシャンにもほどがない? 泣き虫五歳児暴力童貞ゴリラはどこへ行った? どんなまとめサイトを見てイメトレを積めばこんなスマートなお誘いになる!? 温かい手のひらが私の膝がしらに添えられる。両膝をすっぽり包んでしまえそうな大きさはなんだかすごく安心する、このまま身を委ねてもいいと思えるくらいに……委ねるな私!
    「だ……駄目だ!」
    「えっ」
     私の唇に近づきかけていたロナルド君の顔が驚きと困惑に染まる。そりゃそうだ、こんなスマートに押し倒しておいて、まさか恋人に「待て」をされるとは思わなかったんだろう。
    「あ、そっか……ドラ公も怖いよな」
    「こ……怖くなんかない、私は畏怖すべき由緒正しい高等吸血鬼だぞ。この程度のことで怖がるわけがないだろうが」
    「じゃあどうしたんだよ」
    「ど……いや……」
     君が予想外に手慣れた感じに迫ってきたのに不覚にもきゅんとしてときめきが止まないなんて死んでも言えるか。怖いとか怖くないとか、そういうことを感じる余裕もないぞ。でも駄目だ、これ以上は駄目、私は負けるわけにいかんのだ! ここで押し切られてしまったら、私はこの先ロナルド君に敗北し続けることになるだろう。恋愛における勝ち負けとは何なのかなんて愚問は見ないふりをする。
    「えー……あのー……」
    「……ドラ公、教えて」
     ロナルド君が思いがけず真剣な瞳で見下ろしてくるので、私も言葉に詰まってしまった。懇願は懇願でも、こんなのは望んでいなかったぞ。本当ならば今頃若造の居場所は固い床の上で、顔じゅうの穴という穴から体液を噴き出して私に向けて土下座していたはずなのに。
     膝にあったロナルド君の手が、私の肩や頭をゆっくりと撫でてくる。知らず知らずのうちに体が強張っていたらしくて、手の動きに合わせて緩んでいくのが自分でも分かった。なんでだ、緊張していたのか、この私が?
    「ろ、ロナルド君、あの……」
    「ドラ公、ドラルク、お前の怖がること、不安に思うこと、俺も共有したい。お前が全部を俺に預けられるって思うまで、絶対何もしねえから。……お前が好きだから、大事にしたいから、ちゃんと教えてほしいんだ」
    「バチクソに抱いてくれ」
    「えっ」
    「ごめん間違えた今のなし」
     やっべ心の声がそのまま出ちゃった。だってこんな、いや、こんなハンサム存在していいのか? 「大事にしたい」ってそりゃ私は大事にされてしかるべき世界の宝だけれども、普段バカスカ殺しておきながらベッドの上で何を言う? 若造がこんなに真剣になるの、仕事中か銃のメンテナンス時くらいしか見たことない。それくらい私とのことは真剣だってこと? やだ好きめちゃくちゃにして……。
    「……じゃない! あー……ロナルド君!」
    「お、おう」
    「き……君に黙っていたのは悪いが、我が一族は非常に古くて、その分色々なしきたりというか伝統というか、掟? 的なものも多くて」
    「掟?」
    「うむ。あれだ、実はその、パートナーができて、初夜に臨むという時にも儀式を乗り越える必要があってだね」
    「そ、そうなの!?」
     よしっいける! ロナルド君が動揺している! 履歴に残っていた「初エッチ いつ」という検索ワードで導き出されたページには「初めてのエッチは遅くても付き合ってから半年以内にしないと脈ナシ!」と書かれてあった。とんちきな儀式をでっちあげてその時を引き延ばし続ければ、このままじゃ脈ナシだと焦ったゴリ造が泣いて縋ってくるに違いない! さすドラちゃん土壇場に強い!
    「その儀式って、どんなの? 人間でもできるやつか?」
    「え? ああ、いやあ私もその存在しか知らなくて……詳細は代々当主に口述される的なあれだから、少なくとも今の私では知る術がないのだよ」
    「そうなのか……」
    「まいったなあ、残念だ! けれどもさすがの私でも、お父様やお祖父様を呼び出して儀式のことを尋ねるわけにもいかないし! 無念だなあ、私だって君とこういうことをするのはやぶさかでないのに」
    「……そっか、お前も同じ気持ちでいてくれてるんだな」
    「え、う、うん?」
    「お前の望みでもあるんなら、俺も頑張る。任せてくれ、ドラルク」
    「が、頑張るって何を?」
    「お前の親父さんに儀式のことを聞くぜ!」
     そう言うが早いか、ロナルド君はローテーブルに投げ出してあったスマートフォンを操作して素早くアドレス帳を開き、私の目の前でお父様に電話をかけ始めた。マジかよ、待て、この状況で!? 君上半身裸で私を押し倒してるが!?
    「もしもし親父さん? ちょっとドラ公とのことで聞きてえんだけどウチ来れるか? ……え、近くに来てんの?」
    「ドラルクー! なんか丁度会いに行こうと思ってたところにポールから電話もらったから、そのまま窓からお邪魔するよー! って……えっ」
    「親父さん……! ナイスタイミングだぜ、息子さんを俺にください!」
    「えっ」
    「勿論えっちなこともしたいので、そこんとこもお願いします!」
    「えっ……え?」
     ロナルド君はお父様に向かって華麗な土下座を披露している。若造のクソバカ発言と土下座を受けたお父様は無限にうろたえて、「えっこれ……これどう、え、どうしたらいい? パパと世界のどっちが狂ってる?」と私に助けを求めてくる始末。残酷すぎないか? こんな状況でどんな面下げてりゃいいんだとばかりに私は死んだ。
    「おい、ドラ公も死んでないで一緒に頼んでくれ」
    「うるさい狂人ゴリラ! 頼むからこのまま死なせてくれ!」
    「お前もう死んでんじゃん」
    「死んでも死に足りんのじゃ~!!」
    うめみや Link Message Mute
    2022/11/08 16:51:37

    ラブ・ミー・サンダー

    #ロナドラ
    他人を掌で転がすのは大好き!でも自分が転がされるのはイヤ!なドラちゃんがロナルド君に振り回されてる

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