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    かずみすまとめ3たたいま、ただいま。雨、ところによりあわせてあわあわおゆうねタオルケット混濁サイダーたたいま、ただいま。
    行ってきますの声がいくつも聞こえて、扉は慌ただしくバタンバタンと音を立てていた。音の回数が増えれば増えるほど談話室は広くなっていく。いつもより静かな…いつもとは違ういつもの場所。けど、一人じゃないからあったかくて楽しい。……でも、ちょっとだけ……。

    「三角、風邪ひくぞ」

    うん、とだけ返事をした。バタバタと階段を上がってさんかく柄のブランケットを羽織る。室内だけど玄関はさすがに寒い。なのに、そんなことを感じないぐらい今日が待ち遠しくて堪らなかった。

    「そういう意味じゃない! 部屋に入ってろ!」
    「寒くないもん!」
    「寒くないわけないだろ!」
    「ホントだよ~、寒くないよ~」

    てんまの方が年下なのに。子どもみたいに駄々をこねて困らせていた。そんなやり取りを何度もしているから、びっくり顔のさくやと、楽しそうなにこにこ顔のしとろんが来た。うるさいって怒った顔のますみは部屋へ行ってしまった。……さきょーがいたら、みんな大変だったね~。

    「三角、これ…」

    ふふっ、て静かに笑いながら来たあずま。手に持っていたマグカップをそっと渡してくれた。冷たかった手先がじんわりあったかくなって、お礼を言ってから一口飲むと、心もじんわりぽかぽかしてきた。

    「…手が冷たいと、カズがびっくりしちゃうよ?」

    オレにだけ聞こえるような小さな声。頷いてもう一度ありがとうを言うと、あずまは心配してくれた三人を談話室へ連れて行ってくれた。みんなの気持ちが嬉しくて、まぜまぜして飲んだもう一口。

    「はやく、会いたいなぁ…」

    ココアが冷めてしまう前に。
    ぎゅってしたい指先があったかいうちに。

    「カズナリミヨシ~! ただいま帰っ」
    「おかえりなさいっ、かずっ…」

    ガチャリと扉を開く音に目を向ける。一番見たかった顔と一番聴きたかった声、触れたかった姿に思わず抱きついてしまった。かずはびっくりしてお土産で塞がった両手がふわふわしてた。

    「…おかえりなさい、かず」
    「ただいま、すみー…」

    まだ靴も脱いでいないのに。

    「もしかして、待っててくれた…?」
    「うん! 一番におかえりなさいって、言いたかったから~」
    「…ありがと! じゃあ、寒いから早く中入ろうよん!」

    お土産を置いて靴を脱ごうとするかず。オレはどうしても、荷物を持ってあげることも動くこともできなかった。……うん、って言えなかった。

    「すみーの手、めっちゃ冷たいじゃん」

    心と一緒にすくってくれる、優しくてあったかくて大好きなかずの手。早くみんなにも会いたいのに。早くあったかい場所へ行きたいのに。ごめんね。

    「わがままで、ごめんね…」

    たった数日、会えなかっただけなのに。

    「じゃあ…オレもワガママ言っていーい?」
    「うん、なに…?」

    大きく一つ、白い息がつくる。降りだしそうな曇り空。

    「いつになるか分からないけど…いつか、ね…」
    「うん…」
    「いつか、二人で行ってきますを言って……二人でただいまって、笑顔でここに帰って来たいなって……そう、思ってる」

    ……ほら、やっぱり。ぽろぽろぽたぽた、大粒の雨が降る。

    「こんなに冷たくさせることも、無いと思うよん!」

    もう冷たさを忘れてしまった指先は、きらきらと雪をとかす柔らかいお日様のように、これからを温かく指し示す。

    「かず、大好きだよ…」
    「…オレも、すみーが大好き」

    「ありがとう…かず」

    この関係に未来をくれて。

    雨、ところにより
    「……今日も雨だね~」

    今朝、部屋を出たところでばったり会ったすみー。耳を傾けなくても聞こえてくる騒がしい雨音。欲張りな分厚い雨雲は、すみーが吐いた溜め息を自分のものにして、大きな雨粒に変えてしまう。

    「サンカク探し、あんまり行けてないもんねー」
    「うん……ちょっと、寂しい~……」

    このところ雨が続いていて、残念そうな姿をよく見かけるようになった。最初は、雨の日でもサンカク柄の傘をさして外に出ていたんだけど……。

    「お外に出たら、汚れちゃうかな~?」

    それは、先週のこと。雨降りのサンカク探しを楽しんで帰ってきたすみーは、泥だらけになったズボンの裾に気が付かず、そのまま寮の中を歩き回ってしまったらしい。その後、知らずに歩いたゆっきーが履いていたルームシューズが汚れちゃって……ちょっと、怒られちゃったんだって。

    「……ゆき、まだ怒ってるかなぁ……?」
    「そんなことないよん! もう、全然怒ってないって!」

    あの日のゆっきーは、天気予報の晴れを信じてお気に入りの服でお出かけしたんだけど、途中で急な雨に降られてちょっと不機嫌だっただけなんだよね。後で聞いたら、すみーに怒ったのも忘れちゃってるぐらい、ゆっきーにとっては些細なことだったんだけどなぁ……。オレがそんなこと言うから、ゆっきー自身も悪いことしちゃったって少し気にしてるみたいで……なんとかならないかなー?

    「明日は、晴れるといいなぁ~……」

    何かできたらいいなって考えながら過ごす一日はあっという間。おやすみ前のすみーが、ぽつりと降らせた小さな言葉は、タイミング悪く聞こえた天気予報のせいで、地面に落ちて消えてしまう。

    「……絶対、晴れるよ」

    寂しそうに笑うすみーは、おやすみなさいの言葉と共に、203号室の扉に吸い込まれた。


    翌朝、窓から見える景色は昨日と変わらず、どんよりと空にのし掛かる。それでもオレの表情が明るいのは、雲間から差す光を見つけることができたから。

    「すみー! おはよー!」
    「んー……かずぅ? おはよ~……」
    「早く起きて~! サンカク、探しに行こっ!」

    とろとろの目がぱっちり開いて、晴れたの~!? っていう元気いっぱいの声で部屋を出る。扉を開けた先に広がる空は、昨日と同じく重苦しさを纏う。

    「……雨だよ~?」
    「でもでも~、サンカク探しは寮の中でもできるんじゃない?」

    口をぽかんとさせたまま、説明待ちのすみーに続けた。

    「じゃーん! これ、オレが作ったサンカクねー?」
    「ショートケーキの絵だ~!」

    取り出したのは、ショートケーキのイラストを描いた画用紙を切ったもの。本当は本物を用意してあげたかったけど、昨日の夜からじゃこれしか思いつかなくて。

    「いろんなサンカクを描いた紙が、寮の中に隠してありま~す!」
    「えぇ~っ!?」
    「これも入れて全部で13個あるんだけど……サンカク探し、する?」
    「する~っ!」
    「すみーならそう言ってくれると思ってた! ちなみに、全部見つけられたら……特別なサンカクが貰えちゃうよん!」
    「っ……!? よーし! 頑張るぞ~っ!」

    その前に朝ごはんを食べてしまおうと提案すると、落ち着かない様子で顔を洗いに向かった。食事中も少しそわそわしながらずーっと動いていて、ランニングから帰ってきたくもぴに、トイレを我慢してると勘違いされる程だった。

    「ごちそうさまでした~!」

    食べ終わった食器を片付ける為にキッチンに立った時、すみーの瞳が揺らめいてきらきらと潤んだ。

    「あ~っ! さんかく見つけた~!」

    おみみに頼んで置かせてもらった、おにぎりが描かれたカード。食べたくなっちゃうね~、なんて話すうちに朝ごはんを食べたばかりなことに気がついた。二人で顔を見合わせて微笑む。……とてもじゃないけど、昨日と同じ天気とは思えない。

    「……12、13!」
    「すっげー! もう全部見つけたの!?」
    「えへへ~……さんかく探しなら、三角におまかせ~!」

    楽しそうに寮の中を探し回る姿を追っていたら、知らないうちにサンカク探しは終わっていた。カードを手に満足そうな表情は、どんより暗い空を背負っているとは思えない。

    「そしたら、それをゆっきーのところに持ってっちゃって!」
    「ゆきー?」
    「うん。きっと、すっげー特別なサンカクだから」

    ぎゅっと握り締めたサンカクたちは、天気に左右されずに一度しかない今日を過ごした証。控えめに鳴らした扉を叩く音が、いつもの調子のゆっきーになって返ってきた。

    「ああ、入りなよ」
    「……おじゃましまーす!」

    今日はテンテンがお仕事の日。窓に打ち付ける強い雨音が音を遮断しているみたいに静かだった。

    「ホントに全部集めたんだ……さすが、サンカク星人」

    少しだけ口角を引き上げたゆっきー。それを見たすみーをふわりとした柔らかい安心感が纏う。確認したカードをすみーに返して、はい、これ……と言って可愛くラッピングされた包みを手渡すと、ぷいっと顔を背けられてしまった。

    「ゆき、開けてもいーい?」
    「どーぞ」

    そーっと広げると、中にいたのは……?

    「わあ~っ! さんかくクンとさんかくチャンだ~!」
    「すげー!」
    「おてて、繋いでる~!」
    「……うるさ」

    「ゆき、ありがとう~」
    「まあ……喜んでもらえたならよかった」

    実は、ゆっきーがすみーの為にさんかくクンたちを作っているのを知っていた。……でも、いきなり渡すのは、照れくさくて難しかったりするもんね。前よりもずっと仲良くなって、少しだけ大人になった今だからこそ、言い過ぎちゃったり逆に言えなかったり。それすらも嬉しい変化なんだけど。

    だから、今日のことを話したら協力してくれて……二人の嬉しそうな顔が見られてオレも嬉しい。あの日はごめんね、なんて直接的なことは言わなかったし、ケンカしてたわけじゃないけど……なんとなく、うっすら二人にかかってた雲が晴れた気がした。

    「よかったね、すみー!」
    「うん! かずのおかげだよ~」
    「へっ? オレはべつに……」

    「……かず、ありがとう。かずのさんかくも、ゆきのさんかくも、大切な宝物にするね」

    ただの画用紙に描かれたイラスト。丁寧に心を込めて作られたさんかくクンとさんかくチャン。どちらも同じように宝物にしてくれるすみーの優しさ。やっぱり、価値っていうのは目には見えなくて、人それぞれで複雑で難しくて……すごく、あったかい。

    「かずは、すごいね……」
    「すごいのは、すみーだよ」

    「……今日のお天気、本当にかずが晴れにしちゃったね~」

    昨日と変わらずに降り続く雨が騒がしい。
    ……オレにはまだ、重なる手に磁石が入っていないことしか分からなかった。

    あわせてあわあわ
    なんでもない日の夜のこと。着替えを持ってお風呂場に行くと、賑やかな声がばったり重なった。

    「あれ? みんな今からお風呂な感じ?」

    かずの言葉に元気のいい声が返ってきて、着替えを手にした格好がみんな同じで、なんだか可笑しくって。オレだけじゃなくて、かずもむくもさくやも、小さくクスクス笑っていた。

    「むっくんのシャンプー、新しく買ったやつじゃん!」
    「うんっ! 咲也くんと一緒に、使ってみようよって話になって……」
    「オレはみんなで使うやつ使うから、いいよって言ったんですけど……」
    「むく、優しいもんね~」
    「はい! だから、すっごく楽しみです!」

    誰かと一緒にお風呂に入るのはもう慣れっこ。こうやって偶然が重なるのも珍しいことじゃない。楽しそうにはしゃぐ声を二人の後ろで聞きながら、オレとかずも二人で湯けむりの中へ歩を進める。

    「……あれ~?」

    頭を洗おうと髪を十分濡らしてから気がついた。シャンプーがない。寮のお風呂には誰でも使っていいシャンプーとコンディショナーが置いてある。特にこだわりがない団員はそれを使っていて、さんかくシャンプー捜索中のオレも使わせてもらっていた。

    「うーん……どうしよ~?」

    濡れた髪で下を向いたまま、何度ポンプを押しても中身は出てこない。空っぽを知らせる間抜けな音が響くだけだった。

    「すみー、オレの使っていいよん!」

    空っぽの手を引かれて、とろりとした液体を乗せてもらった。お礼を言うと、ここに置いておくからね、ってボトルごと側に並べてくれた。

    「あっ……」

    手のひらから髪の上に乗せて、ワシャワシャと泡を生み出す。ふわふわした頭の上、落ち着く香りが鼻を通って脳を擽る。頭の中までふわりふわり。落ち着くはずの心は泡と一緒に弾けそう……。

    「すみー?」

    背後から聞こえる優しい声は……耳まで夢中にさせてくれる。

    「髪、ずっと泡だらけのままじゃん!」
    「うん……」
    「んー? どうしたの?」
    「……これ、かずのにおいがするね」
    「ずっと同じの使ってるからね~」
    「流したくなくなっちゃった~……」

    泡まみれのぐちゃぐちゃの頭。さくやとむくが先にあがっちゃった音がして、二人だけになったお風呂は、まだお湯につかっていないのに……ほかほかあったかくて熱が下がらない。

    「すみー、目瞑ってて……いくよー!」

    オレが目を閉じたのと同時ぐらいに、頭の上からお湯が降ってきた。繋ぎとめておきたい優しい香りは、液体になって体を伝って足元の排水溝へ消えていく。

    「乾かしたら、ちゃんとにおいするから」
    「そうかなぁ……?」

    不安になるほどの儚さを目のあたりにすると、どうしても自分に置き換えて考えてしまう。じんわり滲んでいく視界はお湯が目に入ったせい? かずは、早くおいでと言い残して先に湯船の中にとけちゃったから、誰もこたえてくれない。

    「……へんなの」

    シャワーの音で消そうと思った言葉は、オレにだけ聞こえてしまった。

    「すみー、おいで?」

    頭も体も洗って綺麗にした。それなのに、とけちゃったらどうしようって、洗い残しが顔を出す。
    恐る恐る踏み入れた足が底についた瞬間、ぐいっと引かれた腕が湯気の中を泳ぐ。バランスを崩した体が大きな飛沫をつくって、肌と肌がぴったり重なり合った。

    「……びっくりした~!」
    「ごめん、ごめん!」
    「あぶないよ~」
    「うん……ごめんね?」

    浮力が味方する水中で、心も体も浮かれ気味。

    「……ちゃんとにおいしなくてもさ、こうすればいいじゃん!」

    濡れた肌と肌が吸い付くように触れ合えば、体温の境目が分からなくなる。

    「はっきり見えない未来より、目の前のオレだけ見ててよ」

    合わせた額から始まった今は、逆上せて蕩けた瞳を経由して、雫の道を辿る。

    「すみーのこと、ずっと夢中にさせるから……ね?」

    お湯を引き上げたかずの手は柔らかく頬を撫でた後、首のうしろを擽って引き寄せる。そのまま重なる唇は、始まりでも終わりでもない。……大好きなかずと、オレの今。

    「ふふっ……」
    「えへへ……」

    響く笑い声は、爽やかで甘くて夏にぴったり。

    「すみーはこのシャンプーが好きなの?」
    「ううん! かずのことが、大好きです!」

    もう一度、お湯も通さないほどくっついた時。近くなった耳元を擽る声が、また夢中にさせてくれた。

    「……サンカクのシャンプーが見つかったら、一緒に使おうね?」

    おゆうねタオルケット
    本格的な夏の暑さが続く今日この頃。日差しと一緒に降ってきた疲労は蓄積されて、なんとなくの怠さとエアコンの気持ちよさを感じさせた。

    「むく、いつ帰ってくるのー?」
    「夜になっちゃうかもって」

    そっかぁ、という微睡んだ言葉をタオルケットが閉じ込める。服と肌が触れ合う音は、頑張ってくれているエアコンの音に紛れて、二人の耳にしか届かない。

    「すみー、あったかいね」
    「……かずも、あったかいよ〜」

    どの季節よりも露出した肌は体温を分かち合うのに丁度いい。抱き合って触れた腕と腕、絡み合う足と足。じんわりと溶けていくように伝わって、どちらのものか分からなくなる。一つになったかのような錯覚を楽しみながら過ごす静かな午後。

    「かず」

    話す言葉は重なった体を響かせながら、優しく柔らかく耳元を擽る。名前を呼ぶ声の心地よさをお互いに全身で感じた後、流れるように甘く触れ合う唇。

    「すみー」

    お昼寝と呼ぶには、大人と夜に近づき過ぎてしまった夕暮れ。このまま寝てしまうには遅すぎて、するりと服の裾を捲り上げるには早すぎる。混ざり合った不埒な熱を中途半端に持て余して、そっと目を閉じてフリをした。

    混濁サイダー
    口に含んで喉を通った液体は、すぐに汗となって肌をつたい落ちる。そう思えてしまうほど容赦のない日差しに灼かれながら、涼しさに思いを馳せて歩を進める。二本の指に引っ掛けたペットボトルの中は、寮に向かって歩けば歩くほど揺さぶられ、透き通る爽やかさが弾ける。期待せずに回したフタは、最後の力を振り絞って小さな破裂音を鳴らした。

    「炭酸抜けちゃってる……」

    3分の1ほど残った、ただ甘ったるいだけの透明な液体。どこか似ているような気のせいは、おかしいぐらい暑い真昼のせいにした。

    「あっ、かずだ〜!」

    玄関の扉に触れる直前、背中から聞こえた眩しい声。振り向いた瞬間、指の間をするりと抜けるペットボトル。誰が吊るしたのか分からない風鈴が涼を奏でるのに気を取られ、近づく足音に気がつかなかった。

    「えへへ〜! 取っちゃった〜」
    「取られちゃったー!」
    「……サイダー? ひとくち飲んでもいーい?」
    「いいけど……ぬるくなっちゃったし炭酸も抜けちゃってて、おいしくないよ?」

    困ったように笑いながら差し出した手。けれど、すみーは返してくれなかった。フタを開けても、もう小さな音すらしない。飲み口に唇が触れて、傾けたペットボトルから口内へ注がれる執拗な爽やかさを……ただ、見ていることしかできなくて。

    「……あまい〜」
    「だから言ったじゃん!」
    「でも〜、仲良しみたいで嬉しい!」

    手を掬ってオレに持たせるように返されたペットボトル。受け取った見せかけの純度を背に隠して、友達同士がそうするように……笑ってみせた。

    「大切なトモダチだもんねー!」

    嬉しそうに頷いた後、玄関の扉を開けて中に入る背中を追うことができなかった。振り向くこともなく、手を洗いに洗面所へと吸い込まれていく。

    「……おいしくない」

    炭酸が抜けた透明なサイダーは、純真無垢な水と似ていて……飲んでみないと分からない。しつこい甘ったるさは夏に不向きだと思う。

    それでも、僅かに残った微弱な炭酸は清々しさと香料をのせて、残りの夏を喉の奥へと流し込んだ。

    「ごめんね」

    飲み干せずに残ったそれを、透明だなんて言えなかった。


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    2022/10/02 7:19:29

    かずみすまとめ3

    #かずみす

    過去に書いたものなので今の公式設定と違うところが多々あります。

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