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    喧嘩したあとで「アウグスト」

     アウグストは呼びかけられる声に気が付かず、待機室でぼうっと呆(ほう)けていた。

    「おい、アウグスト」

     顔の横を光のナイフが通り過ぎ、かすかにアウグストの髪を切ったので、アウグストは驚いた。こんなことをする人間は、アウグストが知る限り一人しかいない。

    「なぜ、俺が呼んでいることに気が付かなかった? 休憩とはいえ、仕事中だぞ」
    「……すみません、ユリウス団長」

     ユリウスはひどく不機嫌そうにアウグストの向かいの椅子を引き、腰掛けると頬杖をついた。

    「……何か」

     重い雰囲気に耐えかねてアウグストは口を開いた。

    「お前がここ最近、仕事中に意識が散漫していると聞いたのだが、どうも本当らしいな」
    「はあ」

     つまり、仕事中ぼうっとしていたと。
     そうだったか、とアウグストは自身を省みる。そんなことない気がするのだが。

    「さっきも俺が呼んだのに、お前はこたえなかったな」
    「それは」
    「休憩中だろうが、非常時はあるだろう。お前は危機感が足りていない」

     第一騎士団(アリエス)にはそれほど緊張感が要求される。それはわかっているが、ユリウスの言い方には刺があるような気がする。アウグストは眉をひそめたが、わかりました気をつけますと返事をした。

    「恋人をつくろうが構わない、だがなそれを現場に持ち込まれては困る。けじめはつけろ」

     そう言い残すとユリウスは立ち去っていった。ユリウスは仕事に戻るのだろうか。
     アウグストはああ、そうかと自嘲気味に嘲笑って、拳を固く握りしめた。

     仲直りしよう、そう思った。
    ゆずもち Link Message Mute
    2020/10/13 12:12:23

    喧嘩したあとで

    ##小説 ##SS ##星座の導きに ##ユリウス
    よその子をお借りしています。

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