小さな姫と小さな太陽。むかしむかし あるところに とても美しい国がありました。その国に住んでいるお姫様は、たいそう美しく、谷間に咲く一輪の百合の花のようで、名前をエリス姫といいました。
その国のはずれにある、たかい高い塔に、1人の闇の魔法使いが住んでいました。
魔法使いの名前はメフィレスといいました。
その魔法使いは、エリス姫が16歳になったある日、突然お城に現れて、自分の花嫁にしようと、エリス姫をさらっていってしまいました。
魔法使いのメフィレスは、塔に帰ると、エリス姫に言いました。
「きみとぼくは 遠い昔に 一緒に暮らしていたんだよ だから今日から 君は ずっと僕と暮らすんだ」
でもエリス姫は、お城に帰りたくて毎日毎日泣いていました。
ある日のことです。
お姫様を助けるために、その国で一番強い力を持った青い鎧の騎士が、魔法使いの塔にやって来ました。
青い鎧の騎士は、強い闇の魔法使いの魔法にも負けず、激しい戦いの末に、とうとうエリス姫を救いだしたのです。
エリス姫は青い鎧の騎士に連れられ、お城へ帰り、いつまでもいつまでも 幸せに暮らしたということです。
「おしまい」
小さなエリスは、広げた絵本をパタンと閉じる。
「お母さま、もう一回読んで」
「エリスはこの絵本が好きなのね」
「だって エリスと同じ名前のお姫様なんですもの」
「美しいエリス姫からあなたの名前をもらったのよ。かわいいエリス、悪い魔法使いに攫われませんように」
エリスにそっくりな壮年の女性は、小さなエリスを抱き抱えると、そっとキスをする。
「大丈夫よ お母さま、青い騎士様が助けに来てくれるでしょう?」
「そうね。それから…」
近くにある祭壇には、小さな小さな炎が燃えている。
弱々しくも、神々しいその炎に、エリスとその母親は、そっと頭を垂れる。
「ソレアナの太陽、ソラリスが、きっとエリスを守ってくれるわ」
可愛いかわいい愛しいエリス。何事もなく幸せに、大きく育ってくれますように。
小さなエリスを抱えた女性は、せがまれてまた絵本を読む。
朗々とした優しげな声を、ソラリスと呼ばれた炎も、共にずっと聞いていた。