真白な世界とキミとボク 世界が真っ白に染まってしまってから、数日が過ぎていた。ところどころ色も取り戻され、元の世界の形が戻ってきているものの、まだ大半が真っ白な世界は、どこまでいっても何もないような感覚にとらわれる。どこまでもどこまでも走っていけるとしたら、いったいどこまでいけるのだろうかと、果ての見えない白い地面を踏みしめて見ている。
一度、大きな姿のソニックが、「果てまで行ってみる」と走っていったことがあったが、ぐるりと一周回ってきて戻ってきてしまったので、果てという概念などないのだろう。ただ、無駄だと解っていても、やってみたいと思う子供のような冒険心が、自分の中にあることは確かだった。
緑に囲まれた山々の隣に浮かぶ工場のシルエット。またその隣にはビルが立ち並び、遺跡や華やかなオレンジ屋根も並んでいる。時間も場所もごちゃまぜで、まるでパズルのピースをひっくりかえしてしまったかのような世界。次はどこまで走ってみようかと、水色の針を持つ少年のハリネズミは、ゆっくりとランニングするかのように世界をまわっていた。
「こんなところで何してるんだ?ソニック」
ふと話しかけられ、振り返れば、しなやかな二本の真っ白な棘を持つ少年と出会った。あまり面識もなく、関わったことはなかったが、「ソニック」と気軽に話しかけてくるところを見ると、大きなソニックとの関係性が見え隠れした。大きな金色の瞳をさらに大きくしながら、すまなそうに少年は頭をかく。
「ああ…わるい…こっちのソニックもソニックだけど、いつもの方じゃなかった…。ソニックはチビって呼んでたな。オレはシルバー。次はどこへ行くつもりなんだ?」
チビ、と言われるほど小さくはないが、むきになって否定するのも面倒だ。確かに身長を比べてしまえば、真っ青なハリネズミに比べると自分は小さく見える。両腕を組み、少年を見上げながら、ふと、気になったことを試してみた。
水色の針の少年は、シルバーの周りをくるくると走り回ってみている。数周してから、つまらないような顔をして立ち止まり、フウとため息をついていた。
意図がわかり、シルバーはクスリと笑みを浮かべた。
「いくらオレが白いからって、周りをまわっても色はつかないと思うぜ。もともとこういう色なんだ。色が無くなったわけじゃない」
シルバーは水色の針の少年の頭をポンポンと叩くと、まるで小さな弟をほめるかのように、頭を撫でる。
「ありがとな。オマエなりにちょっと心配でもしてくれたってことだろ?やっぱりソニックはソニックなんだな。今も昔も」
低年齢扱いされたことに、不満そうな表情をして、少年はシルバーの手を払いのける。それでも悪い気はしないのは、この白い針鼠が元来持っている善性を感じられるからだ。
大きなソニックと、力比べをするかのように、巨大な車をちぎっては投げ、ちぎっては投げするような者には到底思えない。道中、少しでも役に立つかもしれないからと、小さな水色のハリネズミの少年は、シルバーの手を引き、走り出す。
この世界の究極点にいる存在の力が大きくなりきる前に、世界を元に戻さなければならない。
タイムリミットはもうすぐそこまで迫っていた。