夜空を駆ける ガタン、ガタン、と音がして体がゆらゆら揺れる。いつの間にか眠ってしまったのかしら。ここは、どこだろうか。目を開けるが寝起きの頭はうまく働かない。ぼんやりとして、頭も視界も霞みがかっている。
ぱちぱちと瞬きをする。ようやく慣れてきた龍ノ介の視界にうつったのは相棒の姿だった。頬杖をついて、風もないのに赤いハチマキがはためいている。相変わらず不思議である。
「やっと起きたか」
「亜双義?」
「どうしたんだ、相棒。不思議そうな顔をして」
龍ノ介は目をこする。
「あれ、ぼくら船に乗っていたんじゃなかったかしら」
きょろきょろとあたりを見渡すが座っているのは革張りの黒い座席である。さっきまで乗っていた船室でもなければ狭苦しい旅行鞄の中でも暗い洋箪笥の中でもない。
「亜双義、これはどう見ても汽車なんだが」
「あぁ、そうだ。汽車だ。もしかして、キサマは忘れたのか?」
やれやれと、芝居がかったような仕草で肩をすくめ、亜双義がため息をつく。
「倫敦にふたりで行こうと言っていたではないか」
「倫敦? 汽車で行けるのかい?」
「外を見ろ」
「うわぁ」
龍ノ介が窓の外を見ると真っ黒な空間に小さな白い粒のきらきらが瞬いていた。
「見ろ、亜双義! この汽車は水の上を走っているぞ! 対岸がまっくらなのにあちこち光っている。これは河か? いったいどうなっているんだ?」
「ここは空の上だ。あれは河ではなくて、ひとつひとつが小さな星なんだ。対岸がまっくらなのは夜だからだ」
「夜?」
「倫敦まで空をひとっとびだ。きっと船より速いぞ」
得意げににっかりと男は白い歯を見せて笑うものなのでそれにつられて龍ノ介も笑った。
汽車の窓から見える白い粒粒。それらは全てが星だと亜双義は言ったが未だに龍ノ介は信じることができなくてただただそれをじっと眺めていた。
「そんなに珍しいか?」
「珍しいとも。だってあれが星だなんて! 遠い遠いとばかり思っていたのにこんなに近くにあるんだもの!」
「遠いのは遠いさ。地上にいたときよりも幾分か近くはあるがな」
「そういうものかしらん」
この汽車は空を駆けているのだと亜双義は言った。ぼくにはその仕組みはさっぱり理解が及ばなかったけれど、この相棒が言うのだからそうに違いないのだろう。
子どものようにはしゃいで窓の外へ顔を出す龍ノ介を亜双義が何遍も「落ちるぞ」とその襟ぐりを引っ張って汽車の中に戻した。
それが三回ほど繰り返されていい加減にしろと亜双義が怒ったとき、ガラ、と通路の奥の扉が開く。
現れたのは背が低く、黒い帽子を被った車掌であった。よくよく見ると自分達以外にも乗客がいたようで、客に近づいてなにやら話している。
「亜双義、あれはなにをしているのだろうか」
「切符の確認だろう」
そら、と亜双義がポケットから裏側が紅色の長方形の紙を取り出す。
「なにも書いていないじゃないか」
「しかし、こういうものだから仕方がない」
「どうしよう。ぼく、そんなもの持ってないよ」
「ポケットを探ってみろ」
言われたとおりにズボンのポケット、内ポケット。ありとあらゆるポケットを探ってみる。ガサリ、となにかが指先に当たる。掴んで見てみるがそれは切符でもなんでもなくてなにかの用紙だった。白い紙をひっくり返せば赤い文字でなにか書かれているようだったがなにが書いてあるかはよく分からなかった。
「それを出せばいいだろう」
「えぇっ、こんなにくしゃくしゃなのに?」
こうして、こうして、こうすればいいだろう、と亜双義が紙を半分に、また半分に、そのまた半分に折って、龍ノ介が止める間もなくあれよあれよと小さな長方形にしてしまった。
これでいいのかしらん、と不安げな龍ノ介にこれでいいに決まっている、と自信満々に相棒が答えるので龍ノ介は信じるよりほかなかった。
「無理なら、俺の荷物のなかにでも詰め込んでやろう」
そうすれば切符は要らなかろうとあっけらかんと言い放つのでそれはさすがにごめんこうむりたい、とうまくいくようにそう願った。
そうこうしているうちに車掌がやってきた。近くで見ると思ったよりも随分と小柄な車掌だった。帽子を取って軽く会釈をすると「切符を拝見します」と手を差し出した。真っ黒な格好の車掌だったが、手袋をしておりそこだけは白かった。
亜双義は紅色の紙を渡す。受け取ってそのままひっくり返して、ぱちんと穴を開ける。そうして「貴方は?」というように龍ノ介のほうを見て手を差し出す。不安しかなかったがええい、なんとでもなれと観念してさきほど亜双義が小さく長方形に折りたたんだ紙を差し出した。
これで駄目だと言われて汽車から追い出されてしまってはどうしよう。亜双義はこの汽車は空を駆けているのだと言った。汽車から追い出された場合、空から龍ノ介は落っことされてしまうのか。地上まで真っ逆さまか。そうなったら恨むぞ、亜双義。
どきどきと脈打つ胸を押さえながら結果を待つ。焦る龍ノ介に反して亜双義はいやに落ち着いていた。車掌は龍ノ介が渡した紙を二度、三度紙をひっくり返してしげしげと眺めていた。亜双義の切符の確認より、長くはないだろうかと更に龍ノ介の胸に不安は広がった。
「はい、ありがとうございます」
ぱちんとその紙に穴が開けられ紙を返される。
「良い旅を」
車掌は会釈をするとそのまま席から離れていった。龍ノ介は長い息を吐く。
「あぁ、よかった」
「まさか、うまくいくとはな」
「亜双義お前、あんなに自信満々だったくせに」
龍ノ介は再びさきほどの紙を見た。不思議なことにあんなにくしゃくしゃだったはずの紙は、綺麗になっていた。まるでホンモノの切符のようだ、と思わずつぶやいた。
「切符だから当たり前だろう」
亜双義が龍ノ介の肩を叩く。そのあと「旅行鞄に詰められずによかったな」と。すでにぼくのことを詰めたお前が言うことではないだろうと思ったが龍ノ介は黙っておくことにした。
汽車は空を走り続け、光が通り過ぎていく。代り映えのしない景色に少し飽きてきて龍ノ介は小さくあくびをする。開けたままの窓からは風と一緒になにかが入ってきているようだ。うまい具合につかんだそれを掌におさめる。
「亜双義、なにかあった」
「どれ、見せてみろ」
掌を広げれば小石と砂の中間みたいな黒いキラキラしたものが掌にいくつかのっていた。亜双義はこれを煙だといった。
「地上の汽車も窓を開けたままだと煙が入ってくることがあるだろう? だからみんなあんまり窓を開けない。ここでも似たようなものさ」
「でもここの煙はつぶつぶで固いんだね。それに綺麗だ」
汽車の天井の明かりに透かせば反射して黒い煙だという塊は、キラキラと瞬く。闇を閉じ込めたような真っ暗なのにどうしてだか光るのだ。それはなにかに似ているように思えた。
「そら、もうすぐ着くぞ」
「倫敦に?」
「速い、と言っても倫敦へはまだまだかかる。駅に止まるのだ」
「空にもちゃんと駅があるんだね」
「汽車だから当たり前だろう」
なにを言っているのだと亜双義が呆れた。アナウンスが流れる。なんという名前の駅かは分からなかったが、どうやらしばらく止まるらしい。
掌に残ったままだった黒い煙の塊だというものをぱらぱらと外に向かって払う。闇の中で瞬いて飛ばされていったそれらは亜双義の目によく似ていた。
汽車の外は存外と寒かった。空だけど底の見えない海の中のように真っ暗で、光がないといま自分がどこに立っているのか分からなく思えた。
「外套を着てこればよかった」
寒そうな龍ノ介に対して亜双義は平気そうな顔をしていた。やはり熱い風を吹かせる男は体も熱いのだろうか。
改札口を通りぬけて続く道をまっすぐに行けば川が見えた。川岸には紫色や赤色の花が咲き乱れ、静かに揺れていた。暗闇の中なのに川も花も草も見えるのだ。ぼんやりとぽつぽつと白く光るそれらは昔話に出てきた狐火のようだった。
「気持ちいいぞ」
ちゃぷちゃぷと亜双義が川に手を浸す。お前もやってみろと亜双義に促され龍ノ介もおそるおそる水に触れる。水は冷たくて、感触もあるのに不思議と軽いように思えた。 水から手を離しても濡れてはいない。掬い上げてみようとしたがそれはできなかった。でも確かに存在するのだ。流れる水は龍ノ介の腕にぶつかって銀色の筋を幾重にも作った。流れているのに実体が分からない。不思議だ。
その隣で亜双義が川底の石をつまみ上げて掌に広げ興奮したように言う。
「この砂はみんな水晶のようだ。見ろ、中で小さな火が燃えている。」
「本当だ」
川底の石はみんな透き通っていて、水晶や黄玉や青白い光を出す鋼玉のようだった。川が光って見えたのはこの石たちが燃えていたせいだったのだろう。
「ここではみんなが光っているんだね」
「そうだ。ただ、あの草や花が光るのは燃えているのではない。月の光や星の光を集めて光っているのだ。あの光は植物そのものの光ではないのだ」
「そうなのか」
誰かのおかげで光っているとしてもぼくには植物も川も同じように綺麗に見えた。亜双義はなぜ、そんなことを知っているのだろうか。
「そろそろ戻ろう。時間だ」
「あぁ、そうだ」
汽笛が鳴り響く。急がないと間に合わないだろう。龍ノ介達は大急ぎで汽車へと向かった。龍ノ介は走り出す前に赤くぴかぴか光る小石をポケットに入れておいた。花や草は摘んでしまうのはかわいそうだと思ったのでやめておいた。
「ここいいですか?」
席に戻ってしばらくすると、この駅から乗ってきたらしい赤いぼろぼろの外套の髭面の男がそう尋ねてきた。どうぞ、と亜双義が答えれば男は礼を言うとよっこいせと背負っていた大きな白い袋を下ろして席に着いた。
「随分と大きな荷物ですね」
白い袋からはなにかがあちこちに飛び出していた。龍ノ介が尋ねると男は「大量だったんですよ」と言う。
「そうだ、見せてあげましょう」
男が飛び出していたものをつかんで袋から取りだす。それは陶磁器のようにすべすべで真白く綺麗だった。その形を見て、龍ノ介は尋ねる。
「鳥、みたいですね」
「みたい、じゃなくて鳥ですよ」
髭面の男が肩を揺らして笑う。男は狩人らしい。鳥の群れを追いかけて色々なところを探し回っているそうだ。
「何の鳥ですか?」
「鶴や雁です。さぎも白鳥もいますよ」
「鶴もいますか?」
「居ますとも。ほら、さっきから鳴いています。聞かなかったのですか?」
龍ノ介は首を振る。いま男が持っている白鳥はさっきの止まったところにあった川で獲ったという。
「そら、耳をすまして聞いてごらんなさい」
龍ノ介は耳を澄ましてみたが汽車の音と風の音が聞こえてくるばかりだった。龍ノ介はもう一度鳥を見てみたが、白くて固そうでつるりとした、作り物にしか見えなかった。
「これはホンモノですか?」
「ホンモノですとも。そうだ。ひとつ、坊ちゃんに差し上げましょう」
坊ちゃんと言う年でもないのだけれども。隣の亜双義を見れば笑いをこらえようとして、こらえきれずに肩を揺らしていた。
「せっかくだからもらっておけ、坊ちゃん」
「……そうさせてもらうよ」
男はポキン、と鳥の足を一本折るとそれを龍ノ介に手渡した。もう一本は亜双義へ。
「食べてみてください」
そう言われて、まずは一口。
「ん?」
口いっぱいに甘い味が広がる。まるで砂糖菓子だ。この鳥は砂糖の塊なのだろうか。もう一口食べるとそれはチョコレイトのようにも思えた。
「あぁ、ちょうどいました!」
男が窓の外を指さすのでそちらを見れば白い鳥の大群が汽車の横をびゅうびゅうと飛んでいた。
「ちょっと行ってきますね」
気が付くと男はどこかへ消えており、それきり戻ってくることはなかった。
狩りに行ったのだろうと亜双義は言った。あの鳥の捕り方を聞いておけばよかったと龍ノ介は少しだけ後悔した。
鳥の足を一本食べ終わる頃に窓の外を見れば赤く爛爛と輝く星が見えた。その星は燃えているように思えた。真っ赤に燃えあがる炎はなんだか熱く感じた。
「あれは蠍の火なんですって」
いつの間に来たのだろうか。正面の席に黒くて長いつやつやした髪の少女が座っていた。少女の傍らには小さな男の子が眠っており、彼女はその肩をさすってやっていた。
「蠍の火って?」
「お父様によく聞いたの。蠍の火の話を」
少女は昔話を紡いでいく。ころころと鈴が鳴るような可愛らしく心地の良い声だと龍ノ介は思った。
昔々、ある野原に一匹の蠍がおりました。蠍は小さな虫を殺して食べて生きていました。そんなある日、蠍はイタチに見つかってしまい、食べられそうになりました。普段は小さな虫を追いかけて食べている蠍でしたが、その時ばかりは必死に逃げました。イタチの手がもうすぐそこまで迫ってきています。
蠍は逃げて逃げて、そのうちに井戸の中に落ちてしまいました。溺れた蠍はもう助からないと思って神様にお祈りしたといいます。
『ああ、わたしはいままでいくつのものの命をとったかわからない、そしてその私がこんどいたちにとられようとしたときはあんなに一生懸命に逃げた。それでもとうとうこんなになってしまった。あぁなんにもあてにならない。どうして私はこの体を黙っていたちにくれてやらなかったのだろうか。そうすればいたちも一日生きのびたろうに。どうか神さま。私の心をごらん下さい。こんなにむなしく命を捨てずどうかこの次にはまことのみんなの幸いのために私のからだをおつかい下さい』
蠍は小さな体で懸命に祈りました。それを聞いた神様が蠍を空へとあげたのでした。真っ赤な美しい炎になって燃えて夜の闇を照らすように。そうしていまでも燃えているのです。
「お父様に教えてもらったの」
「姉上! ほら、見て!」
いつの間にか目を覚ました少女の傍らに眠っていた男の子が窓の外を指さす。
「あのほし、さそりのかたちをしているよ!」
男の子は大きな声で叫ぶ。彼が指さした先に見える三角に並ぶ星は蠍をかたどっているように龍ノ介にも見えた。
蠍は毒虫で悪い虫だとばかり思っていたよ、と言えば少女は「毒虫だけど良い虫よ」と言った。
「だって、まことのみんなの幸いのためにああやって燃えているのだもの」
少女とその弟はしばらく話したあと、立ち上がってどこかへ行ってしまった。弟の方は何度もぐずり、行くのを嫌がったが最後にはまたね、と龍ノ介と亜双義に手を振ってくれた。ふたりも少女とその弟に手を振った。彼女はさよならと笑って別れを告げた。
しばらく沈黙が続いた。窓の外を見る。遠く青く光るのは星なのだろうか。それとも草花なのだろうか。もしかしたら川底の石かもしれない。ぼくらが地上から見る星のいくつかは、本当は星じゃないのかもしれないや。
なにを見ても面白くて楽しくて仕方がなかった。
「亜双義、またぼくたち二人きりになったね。どこまでもどこまでも一緒に行こう。ぼくはもうあの蠍のようにほんとうにみんなの幸いのためならばぼくの体なんて何度焼いたってかまわないさ」
「あぁ。しかし本当の幸いとはなんなのだろうか」
頬杖をついて外を見ていた亜双義がこちらを見る。ぼくは首を振る。
「分からない。でもぼくお前のためならなんだってできると思うよ」
「成歩堂。それはオレも同じだ。オレもなんだってするだろう。なんだってできるだろう。自分の決めたことのためなら」
すると、しゃがれ声の車内放送が聞こえる。またどこかに止まるようだ。
『次は〇〇、○○』
駅の名前を告げているはずなのにぼくにはなんて言っているのかちっとも分からない。
亜双義が立ち上がって歩き出す。
「また降りるのかい?」
今度はなにがあるのだろう。さっき窓から見えた赤くて燃えるあの蠍の火にも手が届きそうだ。きっとそれは楽しい、愉快なことだろう。お前と、亜双義と一緒ならば。
ずんすんと先を行く亜双義を追いかけていく。車内には人の姿が見えなかった。みんなもう降りたのだろうか。
汽車の出口のところで彼がくるりと振り返る。
「キサマはここまでだ」
「どうして?」
「オレはもう汽車へは戻らん。ここでおしまいだ」
まだ、倫敦ではない。倫敦に着いたならばそう放送が流れるはずだ。
「まだだよ。まだ倫敦には着いていないよ」
「成歩堂。オレは残念ながらここまでだ」
オレが持っている切符ではここまでなのだと亜双義が言う。
「そんなの……。ほら、ぼくみたいに旅行鞄に詰まれば済むことだろう」
「オレはキサマほどこじんまりとはしていない」
白い歯を見せて、相棒はいつものように快活に笑う。
「待ってくれ!」
お前とどこまでも一緒だってぼくはさっき言ったじゃないか! どこまでもどこまでも一緒に行こうって。
「そろそろ時間だ」
亜双義は赤い鉢巻を取るとそれを小さく折りたたみ、龍ノ介に渡す。
「あぁ、あとこれもだ」
腰に帯びていた狩魔もかちゃかちゃと外す。ずっしりとした重みが龍ノ介の両の手にかかる。
大事にしてくれ、キサマになら預けられると亜双義は言うがそんなに大事なものならお前が持っているべきだろう。
「待ってくれ。まだ……」
「時間だ」
汽車は走り出す。今すぐ飛び降りたかったけれどもそれはかなわなかった。
「なに、少しの間だ。いつかは逢える。それまでしばしの別れだ、友よ」
「亜双義!」
黒いマントがひらりとぼくの目の前を通る。隠れてそれきり、亜双義の姿は見えなくなってしまった。
ぼくは叫んだ。力の限り叫んだ。ぼくの声は夜空の闇に飲まれて消えていってしまった。
*
ガタン、ガタンと音がして体がゆらゆら揺れる。
「成歩堂様?」
寿沙都さんの声で目を開ける。
ポケットを探って出てきたのは光る石でも切符でもなんでもなくてぼくの懐中時計であった。蓋を広げて時間を見ればそれほど時は経っていなかった。
「そろそろ着きますね」
窓から街並みが見える。倫敦へはもうすぐだ。ひとっとび、なんてことはなくて思ったよりも遠いものだった。
あの切符はどこへ行ったのだろうか。
くしゃくしゃで後ろに「アケルナ」と書いてあったあの紙は旅行鞄の底にあるかもしれない。
おしまい