二〇×一年三月、日本「今月一杯、この番組は『あの震災から×十年』をテーマにいたします」
「今月一杯、本紙の一面記事は『あの震災から×十年』をテーマにしたものになります」
「今月一杯、本誌は『あの震災から×十年』を特集します」
「今月一杯、当サイトは『あの震災から×十年』をメインに配信します」
　ＴＶやラジオのニュース番組・新聞・週刊誌・ネットのニュース配信サイト……どこもそんな感じだった。
　ＳＮＳのトレンドも「あの震災から×十年」。
　そう言えば、ＴＶも新聞もネットのニュースも……ここ何年か、どうでも良いような事件しか報じていなかった。
　最近、日本は、かなり平和になったらしい……。代りにニュースのネタがなくなり、マスコミ関係者は困っていると云う訳か……。

　そして４月になった……。
「３月の通常国会で『人権強制剥奪法』が与党の賛成多数により、衆参両院を通過しました。『我が国は、最早、三千万人の国民しか必要とせず、人口を適切な数まで減少させなければ、国家財政の破綻を招く』と云う予測に基くもので、５月の施行の時点をもって、国民の内、政府が総合的・俯瞰的な観点から不要と判断した約７割を『人間』と見做さず『処分』する事が決まりました」
　ＴＶ・ラジオ・新聞・ネットニュース・ＳＮＳの政府公式アカウント……全てがそう報じていた……。
　いやはや……現政権のお蔭で平穏・平和・安心・安全な世の中になり、ニュースネタがなくなったとは言え……大掛かりなエイプリル・フールも有ったものだ……。