萌え系マンガ専用ペイントソフトの悪夢の新機能　いわゆる「神絵師」の多くが使っているアプリのメジャーバージョンが、何故か、一気に２つも上がる、と云う話がＳＮＳ上で話題になっていた。
　かなり、特殊な新機能が有るらしく、βテストが１年近く。その間は無料で使えるらしい。
　いいソフトやいい液タブを使えば神絵師になれる……そんな事を考えるほど初心うぶな訳ではないが、試しにダウンロードしてみると……。

　お……おい、これいいのか？
　とんでもない新機能だった。
　３Ｄモデリングでポーズを取らせ……髪型や髪や目の色や表情の種類や塗り方を選び……ボカしているが判る奴には判るメニューから「誰誰風の絵」と云うのを選ぶと……１時間程度で望んだ絵が出来上がる。
　いわゆる３ＤＣＧ風じゃない、絵師やアニメーターが自分で描いたような絵……。
　どうやら、「誰誰風の絵」は後から配布するデータで追加可能らしい。
　すごい……絵の才能も無い奴でも、何の努力もせずとも、「神絵師」になれる時代が来たのか……。
　よし……そう思って……。

『その姿勢は通常の人体では不可能です。続行しますか？』
　エロ絵を描こうと……いや、描くと言っていいのか判らないが、ともかく作成しようとしたら、そんな警告メッセージが出た。
　いや、待て、その手のエロ絵で良く見るポーズだぞ？
　何で、こんな警告が出るんだ？
　とりあえず「ＯＫ」を押し……。
『本当によろしいですか？』
　何で２度も警告するんだ？
『最終確認です。本当に本当によろしいですか？』
　おい、くどいぞ。後で開発元にバグ報告を出すか？
　はい、ＯＫ……。
　……。
　…………。
　……………………。
　ん？ 俺、もう腰痛になるような齢だったっけ？
　痛い……痛い……痛い……。
　あ……あれ……腰だけじゃない、股関節も……。
　えっ？
　何で、俺、宙に浮いて……。
　手が動かない。足もだ。
　腕と足に何かが巻き付いてる感触……これ……何だ……縄と云うには、あまりに太い……丁度……あああああッ‼ まさか、まさか、まさかッ‼
　痛い。痛い。痛い。痛い。
　頭が真っ白になるほど痛い。それも体のあちこちが……。
　お……おい、この格好まさか……。
　あ？
　口が動かせない。開いたまま……。悲鳴も出せない。
　何だ、喉のこの感触は？
　しかも……あああ……見えない触手で首絞めプレイまで……。そこまで、俺の絵を再現しやが……呼吸が出来ないが……頚動脈が絞められていい気持ち……いや、いい気持ちじゃねえ、気が遠くなってるだけだ。
　ああ、もう考えもまとまらない。でも……気になる事が……何か有ったような……。
　助け……。
　ん？
　そうだ、やっと思い出した。
　やめろやめろやめろやめろやめろ。
　たのむ、助けて……。
　おい……やめろ……まさか……と云うか、どう考えても……あの極太触手まで再現する気……。
　やめてやめてやめて、もうエロ絵なんて描こうとは思いません。
　オタクからも足洗います。
　だから……助け……。
　うぎゃああああッ‼