ほのぼのな日常 第12話 Shower×Shower先に記しとく設定、
今出川一司(いまでがわ かずし):男性
田辺京志(たなべ けいし):女性
一司の家はワンルームマンション
と言うことで。
俺は今出川一司。
大学生をしてる。
俺には大事な人がいる。
田辺京志、俺の彼女。
京志はクールな美人、
に見える。
でも、それは見え方のひとつ。
京志の見え方はいっぱいある。
あまえるのが上手なかわいい京志、
めいっぱい抱きとめてくれる優しい京志、
いたずらっぽくからかってくるちょっといじわるな京志、
ほかにもいろいろ。
だから京志の魅力は数えきれない。
ずっと一緒に居たい。
嘘偽りのない俺の気持ち。
夏、とにかく暑い夏。
今日も京志はお泊り。
もちろん嬉しい。
二人で俺の家を目指して歩く。
キャンパスを出たのは、もうすぐ夕方、な時刻。
空はしっかりと晴れてた。
家まで半分くらいのところで雲が広がってきた。
あと4分の1、どんよりした灰色の雲が空を支配した。
夕立の気配。
「雨、降りそう……」
俺は灰色の空を見上げて呟いた。
「うん、
……家までもつかな?」
京志も空を見た。
不安げな言葉。
歩くスピードがちょっと上がる。
マンションまであと少し。
ぽつっ、と鼻の頭で水滴が弾けた。
「降ってきた!」
京志を見る。
「あ、ホントっ!」
京志も雨を感じたらしい。
ぽつぽつと降り出した雨が少しずつ勢いを増す。
「うわっ! 家までダッシュっ!」
「うんっ!」
俺の声を合図に二人で雨の中を走る。
その間にも雨はどんどん強くなって、ざざーっ、と大雨に。
全力で走って、マンションのエントランスに駆け込んだ。
「うわー、びしょびしょ……」
ひと息つきながら京志が言う。
俺も京志もぐしょぐしょに濡れてる。
服が重たい。
エレベーターで階を上がって、廊下を少し歩いて。
俺の家、ドアの前に立った。
鍵を開けてドアを開けて中に入る。
京志を振り返った。
「京志、そのままシャワー浴びて」
「うん、そうする」
聞きつつかばんを受け取った。
部屋に入ってかばんふたつを床に置いた。
中を確認する。
助かった、かばんはびしょびしょだけど中は大丈夫だった。
「ふうっ、中身はセーフか……」
とりあえずかばんの中身を全部取り出す。
かばんは……。
広げられるだけ広げて、部屋の端に置いた。
後でベランダで干そう。
かばんに気が向いてたので忘れてたこと。
ひと段落ついたら気がついた。
服がぼとぼと。
Tシャツが肌に貼りついてる。
べちゃっ、として気持ち悪い。
たっぷりと水を吸い込んだシャツを脱いだ。
洗濯機、風呂の向かいにある、に入れようと振り返った。
……京志が服を脱いでる真っ最中。
くつしたを脱ぎ捨てて、ジーンズに手をかけてる。
雨の中を一緒に走ってきた。
だから、京志ももちろんびしょ濡れ。
シャツがぴったりと体に貼りついて、肌と下着がうっすらと透けて見える。
体のラインもしっかりと浮き上がってる。
しっとりと濡れた髪がおでこにくっついてた。
加えて、全力で走ったせいで上気して頬がほんのりと桜色。
そこに水か汗かの滴が光を反射してきらきら輝いてる。
見てしまったら目を逸らせなくなった。
京志、すっごく綺麗、って言うか、魅惑的な美しさ。
我慢できない。
立ち上がって歩み寄る。
「……京志、
抱きしめて……、良い?」
俺を見た京志、
「ん?
うん、良いよ」
いつものこと、と答えてこちらを向いてくれた。
最後の一歩を近づいて、京志をぎゅっと抱きしめた。
ちょっと思いっきり。
「んぁっ、
一司、抱きしめすぎっ!」
「ごめんっ!
すっごい色っぽい、て言うか艶っぽい……、
我慢とか、無理っ!」
また答えてくれた。
「そっか……、
……嬉しい」
京志の腕が俺を捕らえて、抱きしめてくれた。
ちょっとの間、抱き合って。
ぐっしょりのシャツ越しに京志のどきどきを感じる。
と言うことは、俺のどきどきは京志に伝わってる。
そんなことを考えると、
「我慢とか、無理っ!」
は本当すぎるわけで……。
「……一緒にシャワー、しよっか?」
抱きしめたままで、できるだけ落ち着いて提案。
京志の反応。
抱きしめを解いて、ちょっと距離をとって。
「シャワーだけで終われる?」
ちょっといじわるっぽい質問が返ってきた。
「……あー、
そうなるように……、できるだけ努力します……」
できる限りの答え。
努力はするつもりだけど……。
「別に努力しなくても良いね、うん」
俺の様子に笑顔になって、京志が言った。
「え?!
あの、それはつまり……」
戸惑うしかない。
「はいはいっ、
女の子にこれ以上言わせないっ」
えっと、と言うことは……。
言葉の意味を確認したかった。
でも、できなかった。
京志の人差し指が俺のくちびるにちょんっ、と触れた。
最高の笑顔で俺を見てる。
京志にとって嬉しいこと。
俺にとってももちろん嬉しいこと。
つまり、そう言うこと。
ながーいシャワータイムが始まった。
了