Twisted Justice「被告人は、何故、被害者を危険な集団と判断したのですか?」
今行なわれている刑事裁判の被告人は、この町の警官だった。
この町の外から来たある集団を不審者と見做して誰何した……までは良いが、言い争いになった挙句、その旅行者達を射殺した為に、裁判所の被告人席に座る羽目になったのだ。
「はい、この町では少数派の人種のみで構成された集団であり……しかも……この町では、あまり見掛けない格好をしていたので……」
「しかし、その程度の事で、不審者と見做すのはどうなのですか?」
「服装を見た時にピンと来たんです。そして、誰何の結果、彼らが銃器犯罪が多発している地域から来た者である事が判明しました」
「ですが……その……」
「確かに結果的に誤りでしたが……」
「あの……ですから、その……」
「無論、私の考えが人種差別的であると云う御批判は甘んじて受けます。ですが、残念ながら、彼等の人種は、他の人種に比べて犯罪を行なっても寛大に取り扱われる、と云う慣行が我が国で罷り通っているのは事実です。その慣行のせいで、彼等は少々の犯罪で逮捕・起訴され有罪となる事は有るまいとタカをくくっている傾向が有ります。彼等の責任ではなく、彼等が置かれている環境こそが、彼等を潜在的犯罪者に変えつつ有る……」
「いや……ですから……。貴方も彼等と同じ人種でしょう?」
「それが何か? 同じ人種なればこそ、私はずっと真面目にやってきたのに、犯罪に走る同胞が居る事を、より許し難いと思っても仕方有りません」
「え……ええっと……」
被害者は、テキサスから来た観光客の白人達だった。
なお、ここワシントンD.C.の地元住民の半数以上はアフリカ系である。