悪夢‼ 区内の御老人がネトウヨになりま……あれっ⁇「おい、例の実験だけど、スマホを貸与した年寄の子供からクレームが来てるぞ」
　このプロジェクトのリーダーが、私の席まで来てそう言った。
　ここ東京都○○区では、昨年から「区内の65歳以上のスマホを持っていない老人にスマホを貸与する」と云う実験を行なっていた。
　何の実験かと言えば……実は……区長が、いわゆる「ネトウヨ」で「老人にもネットを使わせれば、真実に目覚めてくれるに違いない」と考えたからだった。
「まさか……その……」
「そう、よくあるアレだ。『久し振りに実家に帰ったら、親がネトウヨになってた』ってアレ」
「で、クレームは、どの方のお子さんからですか？」

　区長が区内の老人達を自分の同類に脳改造しようと云うロクでもない計画である以上、被験者まるたには、実験開始時および、その後１ヶ月毎にインタビュー調査を行なっていた。
　支持政党。支持する政治家。嫌いな政党/政治家。好きな外国。嫌いな外国。メディアの影響を受け易いかの指標となる項目。
　だが……。
「変ですね……その人、インタビュー結果は……実験開始から、ほぼ同じですよ」
「へっ？」
「スマホの貸与の結果、ネトウヨになったんじゃなくて……ずっとネトウヨで、たまたま、お子さんが最近気付いただけじゃないんですか？」
「ちょっと待て、ネットやスマホを使う前からネトウヨだった、ってどう云う事だよ？」
「メディアの影響は……かなり受け易い方……で、好きなTV番組は……昼のワイドショーですか」
　私は民放のキー局がやっている過去1週間のTV番組を無料配信するサイトを開き……。
　
「な……なんだ、こりゃ……」
「ねぇ……よく、ネトウヨって『何で、このニュースをマスゴミは報じない』とか言ってるじゃないですか……」
「ああ……けど……」
「ええ……気付いてないのはネトウヨさんだけで……既に……その……」
　問題のネトウヨ老人が良く見ていた昼のワイドショーでは……ネトウヨのタワ言そのものの話を司会者や「識者」達が喚き散らしていた。