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    のびのびTRPG 第6話 訓練は幻の中で使った(引いた)カード
    キャラクター:少女
    イントロダクション:不思議の街の迷路
    シーン1:かたくなな学会
    カード1:闇:賞金首
    シーン2:帝国の追撃
    カード2:闇:秘薬
    シーン3:激しい議論
    カード3:光:筆まめ
    シーン4:ラッダイトの嵐
    カード4:闇:吸血鬼
    シーン5:火星をめぐる冒険
    カード5:闇:狙撃銃
    クライマックス:古代文明の復活


     こんにちは、少女です。
     私には自分の名前が『少女』であること以外の記憶がありません。
     私は色々なことの『鍵』になる存在なのだそうです。
     少し前にも『鍵』だからと言う理由で、『帝国の残党のマッドサイエンティスト』さんに捕まりました。
     ですが、『世界の危機』になりそうだったところを救い出してもらいました。
     私を助けてくれたのは、先輩さんと機械屋さん。
     お二人のおかげで『世界の危機』は避けられました。加えて私は自由になれました。
     それに軍の「謎の男」さん。私を軍で保護してもらえるよう用意をしてくれました。
     機械屋さんは『軍が私を利用するつもりか?』と疑っていました。
     でも、保護してもらうようになってから、そんなことはぜんぜんありません。
     軍の建物から自由に出入りはできませんが、誰にも狙われたりすることがないので安心してすごせます。
     私の部屋はそれなりに広くて、窓からは街の様子が見られます。
     もちろんテレビもありますし、毎朝、新聞も届きます。だから、初めのうちは退屈ではありませんでした。
     でも、一ヶ月、二ヶ月となると、さすがに退屈になってきました。
     『退屈になってきた』、「謎の男」さんに率直に言いました。
     「謎の男」さんはちょっと考えた後、
     「すぐに、と言う訳にはいかないが……、
      そうだな、明後日くらいで構わないか?」
     と言ってくれました。

     その日からの明後日、お昼をすぎた頃に「謎の男」さんが私の部屋に来ました。
     「謎の男」さんの後ろにラフな服装の男の人が二人いました。
     「この二人は少女くんの護衛だ。
      せっかくの外出だ、存分に楽しむといい」
     護衛の方さんについてもらって、私は街に出ました。
     賑やかな大通り。最新のファッションがならぶ繁華街。
     私は流行りとかはよくわかりませんが、きっと楽しいことなんだろうな、って思います。
     街をいっぱい歩いて私は心をすっきりさせました。
     夕暮れまではまだいくらかある時間に、軍の建物に戻りました。
     護衛の方さんにお礼を言ってから、私は部屋に向かいました。
     部屋への途中、ちょっとした休憩スペースに「謎の男」さんがいました。
    「楽しめたか?」
     「謎の男」さんが尋ねました。
    「はい! とっても!」
    「そうか、それは良かった」
     私の言葉は「謎の男」さんにとっても、良いことだったようです。
    「しかし、少女くんが退屈をしないように、とは言え、
     毎日、街へ出る訳にもいかない。
     明日は私たちの訓練を見学してみないか?」
     正直言って「謎の男」さんは見た目は怖そうです。でも、本当はすごく優しいです。
    「ぜひお願いします!」
     私はぺこりと頭をさげました。
     明日がとても楽しみになりました。
     その日の夜、やはりと言うか、まったく眠れませんでした。

     翌朝。
     眠れなかったなりに眠れたようで、いつもより早く目が覚めました。
     早起きをしたせっかくの朝です。入念に身だしなみを整えます。
     朝食。食堂でいつもより少し早めの朝食です。
     部屋に戻ろうと食堂を出たところで「謎の男」さんに会いました。
    「おはよう、少女くん」
    「おはようございます」
     ぺこりと頭をさげました。
    「ちょうどよかった。
     9時に部屋に使いを行かせるので、彼と一緒に来てくれたまえ。
     行き先は秘密だ」
     やはり「謎の男」さんは楽しい方です。

     部屋に戻って9時になるのを待ちます。
     まだ十分すぎるほどに時間がるので、身だしなみを確認します。
     部屋にある大きな鏡で服装をチェック。
     「謎の男」さんが『私たちの訓練』と言っていたので、ラフな感じの服はやめた方が良いと思います。
     かと言って、フォーマルすぎるのもどうかな、と思ったので、ちょっとラフよりのフォーマルな服を選んでみました。
     鏡でチェック。
     服に乱れはなく良い感じだと思います。
     髪も……、特に乱れはなく、こちらも良い感じです。

     コンコン
     ドアがノックされました。
     時計を見るといつの間にか9時になってました。
    「はい」
     ドアを開けると若い兵隊さんがいました。
     「謎の男」さんの命令で、私を案内するように、とのことだそうです。
     兵隊さんと一緒に地下の駐車場に行きます。
     駐車場に行くとすぐに兵隊さんと私の前に、黒塗りの蒸気自動車が来ました。
     私はリアシートに乗りました。隣には部屋に来てくれた兵隊さん。
     ドライバーも兵隊さんです。
     蒸気自動車が走り始めました。ゆっくりと駐車場から地上へ。その後は軽快に走ります。
     15分くらい走ると、軍の基地に着きました。
     正面には詰め所とゲート、そこから左右にはフェンスがずっと先まで続いています。
     ゲートの前で自動車が止まりました。ゲートの横に立っていた兵隊さんがこちらに来ます。
     ドライバーさんと二言三言、言葉を交わすとゲートが上がりました。
     ゲートを通って少し走ったところに大きな建物がありました。
     その建物の正面玄関らしきところに自動車が止まりました。
     建物の玄関扉の上には『王国軍訓練場』と大きく書かれています。
     私を連れてきてくれた兵隊さんが、また私を案内してくれました。
     建物に入ってすぐの窓口で兵隊さんが何かを頼んだようです。
     少し待った後「謎の男」さんが現れました。
     「謎の男」さんが兵隊さんに一言、お礼を言いました。
     私もあわてて『ありがとうございます』と言いました。
     次に「謎の男」さん。
    「少女くん、今日は訓練の見学と言ったが、
     せっかくだ、体験してもらおうと思うのだが、
     どうかな?」
     私はびっくりしました。
    「あのっ、私には無理だと思います。
     体力もないですし、鉄砲を撃ったこともないですし」
     「謎の男」さんは「フフッ」と笑みを浮かべて言いました。
    「いや、そういう訓練ではなく、
     そうだな、……心の訓練、と言えば良いか、
     我々には必須なんでね」
    「あ、はい、
     それで何をすれば……」
     私の頭の中には「?」がたくさん。
    「そうだな……、
     歩きながらで構わないか?」
     そう言って「謎の男」さんは歩きだしました。
     私は急いで「謎の男」さんについて行きます。
    「ちょっとした体験、とでも言えば良いか」
     私の頭の中は相変わらず「?」がたくさん。
    「ここだ」
     「謎の男」さんは大きな扉の前に止まりました。
     私も止まります。
     扉の横、壁にある端末に「謎の男」さんのインフォメーション端末を同期させたようです。
     プシッ! と小さな音とともに扉が開きました。
     中は広い部屋。
     部屋の真ん中には人が入れそうなくらいのカプセル? のようなものがあります。
     それ以外には据え置きのインフォメーション端末っぽい機械や、他にも何なのかわからないものがいっぱいです。
     他には10人くらい、人がいました。
    「みな、ご苦労」
     「謎の男」さんが声をかけると、部屋にいた方々が口々に
    「お疲れ様です」
     と「謎の男」さんに答えました。
     「謎の男」さんはカプセル? に近づきました。
     私も近づきます。
     カプセル? の横にいた方に「謎の男」さんは話しかけました。
    「状態はどうだ?」
    「全く問題ありません」
     「謎の男」さんに答えます。
    「では始めよう」
     「謎の男」さんの声を合図にして、部屋の空気がピンと張り詰めました。
     カプセル? の横にいた方が何かをすると、カプセル? の前半分が左右にわかれてゆっくりと開きました。
    「少女くん、こちらへ」
     「謎の男」さんの手が示したのはカプセル? の中です。
     中には座り心地が良さそうなふかふかのソファがありました。
     と言うか、やっぱりカプセルだったようです。
     そのソファに私が座る、と言うことらしいです。
     カプセルの中に入ります。
     ふかふかのソファに座ると、やっぱり座り心地がとても良いです。
    「少女くん、
     これから君に『幻覚による訓練』を体験してもらう。
     色々なことが君に起こる。
     それにどのように対処するか、そう言う訓練だ」
     「謎の男」さんが説明してくれます。
     加えて、
    「これ以上は無理だと思ったら、手を2回たたく、を3セットしてくれれば良い。
     すぐに『幻覚』は終わる」
     と言って、パンパン! パンパン! パンパン! と手をたたきました。
    「はい、わかりました」
     私はそう言って「謎の男」さんと同じように手をたたきました。
    「カプセルを閉じると真っ暗になるが、怖がらなくて大丈夫だ。
     深呼吸をして体を楽にすると良い」
    「はい」
     私の言葉を合図にして、でしょうか、カプセルの扉が閉じ始めました。

     まわりが真っ暗になりました。
     少しするとゆっくりとまわりが明るくなってきました。
     はっきりとまわりが見えると、私は「不思議な街」にいました。
     街には人影がまったくありません。
     ただ、街のあちこちで蒸気機械が動いています。
     この街から王都に帰る、と言うことでしょうか? 私は歩き始めました。
     少し歩くと立派な講堂の前に出ました。
     何となく気になったので中に入ります。
     講堂の中にはたくさんの人、演壇にいるのは……、先輩さんでした。
     先輩さんを見たとたんに、くらりと意識が揺れました。
     次の瞬間、私は先輩さんになっていました。
     先輩さんになる、と言うのはつまり、
     さっき見た先輩さんのいた場所に私がいて、
     先輩さんの声が私の声になって、
     先輩さんが聞いたことが私に聞こえる、
     と言うことです。
     先輩さんはエントロピージェネレーターのことを発表していたようです。
     でも、誰も真面目に聞いていないようでした。
    「何を馬鹿な」
     年配の方が先輩さんの発表を酷評しました。
     私はイライラしてきました。
    「理論上はまったく問題ないっ!」
     大きな声で言います。
    「『理論上は』とは言え君、これは永久機関だよ、
     そんなものがあると言うのかね?」
    「君ぃ、今は文明の時代だよ。ファンタジーは小説の中だけにしたまえ」
    「そんなことができると言うのならやってみたまえ。
     金はいくらでも出そう」
     そう言って「フフンッ」と鼻で笑われました。
     とにかく悔しい。
     絶対にできる。
     私は手を握り締めて耐えました。
     涙が出ないように目を閉じました。

     まわりの様子がかわったように感じます。
     目を開くと、元の「不思議な街」に戻っていました。
     先ほどと違うのは……、街のあちこちにポスターが貼られています。
     私のすぐ近くにも貼られています。
     そのポスターには私の写真が印刷されていました。
     写真の下に『賞金:1,000万ダリル』とありました。
     つまり、私を狙っている賞金稼ぎさんがたくさんいる、と言うことでしょう。
     カチリ、私の後ろで機械音がしました。
     たぶん銃を動かす音です。
    「悪いな、一緒にきてもらう。
     俺は賞金が要る人間なんでな」
     ひどく低い男の声。
     私はその賞金稼ぎさんに、どこへ向かうのか、歩かされました。
     10分くらい歩いたところでしょうか。どこかの軍の戦闘飛空挺が地上に泊まっていました。
     私と賞金稼ぎさんはその船に乗りました。
     乗ってそのまま艦橋へ、艦橋には少々小太りの中年の男性がいました。
     賞金稼ぎさんは私をその男性さんに引き渡しました。
    「賞金をもらおうか」
    「わかっている」
     賞金稼ぎさんと男性さんはインフォメーション端末を同期させたようです。
    「十分だ」
     そう言って賞金稼ぎさんは船を降りました。

     私は空いていた席に座らされました。横には銃をもった方が立ちました。
     飛空挺が空に浮かび上がり、飛び始めました。
     男性さんはよほど嬉しいのか、そわそわとしています。
    「『秘薬』と『鍵』、ふたつとも手に入るとは。
     これは大きすぎるチャンスだ」
     男さんの声のトーンも少し上がっています。
     どおぉぉんっ!
     突然の大きな音。同時に飛空挺が大きく揺れました。
    「5時方向、帝国の巨大戦艦だ!」
     見張りさんが叫んでいます。
    「何をしている、撃ち返せ!」
     男性さんが叫びます。
    「駄目です! こちらの砲は向こうに届きません!」
     轟音が増えて、そのたびに船が大きく揺れます。
    「ジェネレーター破損、墜落します!」
     その声のわずかに後、体がふわりと軽くなる感覚。飛空挺が一気に高度を落としました。
     ごごごごご、
    と、飛空挺は大きな音とともに墜落しました。

     気がつくと私は砂地に倒れていました。
     まわりを見るとたくさんの人が倒れています。
     私は運が良かったようです。
     立ち上がろうとすると、右の足首がひどく痛みました。
     我慢して立ち上がろうとしたのですが、痛すぎて無理でした。
     どうしたものでしょうか。手をたたけば終われます。
     でも、それでは何か悔しいです。
     もう一度まわりを見直します。
     キラリ、倒れている男性さんの下で何かが光りました。
     歩けないので地面を這って男性さんのところに行って、それを手にしました。
     『秘薬』そう書かれたラベルが貼られていました。
     反対側を見ると、こちらにもラベルがありました。
     『人間には過ぎた効果を持つ秘薬、
      それは万病を癒すかもしれないし、
      人間離れした力を与えるかもしれない』
    だそうです。
     怪我に効くとは書いていませんが何かすごそうなので、足首に塗ってみました。
     痛みがすっと消えました。
     これは他にも役に立つかもしれません。私は『秘薬』を持っていくことにしました。
     さて、街に戻りましょう。
     私は街があると思う方向へ向かって歩き始めました。
     どこまでも荒野が広がっています。
     飛空挺でそれなりに飛んだ距離なので、街まではかなり歩かないといけないはずです。
     ですが、20分くらい歩くと「不思議な街」に戻りました。

     相変わらず人影のない街に蒸気機械の動く音だけが響いています。
     街の中を歩きます。
     どこへと言うことなく歩いていると、人の声が聞こえてきました。
     私は声のする方へ向かいました。二人が言い争っているようです。
     声は路地の奥から聞こえてきます。そちらへ行きます。
    「あんた、言ったよね、金は出すって」
     先輩さんの声です。
     私はさらに声に近づきます。
     路地の少し先、道に向かった窓のひとつから声が聞こえます。
     窓から部屋の中をのぞきました。
     先輩さんがいました。もうひとりは……。
     そこでまた意識が揺れました。
     揺れがおさまると、私はまた先輩さんになっていました。
     私の前には立派な机。机をはさんだ向かい側には、いかにも「偉そうな人」がいます。
     ……思い出しました。先輩さんが発表したときに酷評した方のひとりです。
    「私にはそんなことを言った覚えはない」
     「偉そうな人」は上から目線で私に言います。
     言った、言わない、ではどうにもなりません。
     またイラっとしましたが、感情的にならない方が良いと思います。
     深呼吸をしてクールダウン。
     心が落ち着くと、ズボンの腰のポケットに何かが入っていることに気付きました。
     私はポケットに手を入れ、それを取り出しました。
     ボイスレコーダーでした。
     再生します。
    『そんなことができると言うのならやってみたまえ。
     金はいくらでも出そう』
     目の前にいる「偉そうな人」の声が再生されました。
    「どうする?」
     私は「偉そうな人」に言いました。
    「それは……、確かに私の言葉だ。
     しかし、勢いで言ったことだ、意味はない」
     むちゃくちゃです。
    「無責任だね」
     私は続けます。
    「あんたはさっき『言ってない』って言った。
     あれは嘘なんだね」
     「偉そうな人」の答えは、
    「……嘘と言われても仕方がない」
     私はさらに言います。
    「じゃあ、金はいくらでも出してくれるんだね」
    「いや……、さすがにそれは……」
     「偉そうな人」をどんどん押していきます。
     先輩さんが用意していた妥協案、それを私は言いました。
    「頭金に100万ダリル、その後は毎月10万ダリル」
     言い切りました。
     「偉そうな人」は悔しそうに声を出しました。
    「わかった、そのようにしよう」
     心がすっとしました。同時に意識が揺れました。

     元の私に戻っていました。
     また人影のない街を歩きます。
     ふと思いました。
     私が体験したことを記録しておいた方が良いかもしれません。
     今更ですが、ポケットに入っていたメモ帳に書き始めました。
     どうしてポケットにメモ帳が入っていたのか不思議でした。
     もしかすると、私が考えたことがそのときの状況に反映されるのかもしれません。
     何があったか思い出します。

     先輩さんが発表していたこと。
     私に賞金がかけられていたこと。
     乗せられた飛空挺が墜落したこと。
     『秘薬』のこと。
     先輩さんがお金の話をしていたこと。

     今までのことはこれで全部のはずです。
     これからもメモしていきましょう。

     人影のない街に人の気配を感じました。たくさんの人の気配です。
     そちらへ向かいました。
    「機械があるからこんなことになるんだ!」
    「こんなものがあるからー!」
     そんな声が聞こえてきました。
     声のもとに向かいます。大通りに出ました。
     大勢の人が道沿いにある蒸気機械を叩き潰し、蹴り倒しながらこちらへ歩いてきます。
     これは関わらない方が良さそうです。
     私は路地に戻りました。
     えっと、今のこともメモ帳に書きました。

     向かうあてがないので色々な方向へ歩いてみます。
     どれくらい歩いたのか、どれくらい時間がたったのか、まったくわかりません。
     人影のない路地、蒸気機械が動いているだけの街を歩きました。
     突然、私のすぐ後ろに人の気配を感じました。振り向くと女の人がいました。
    「キミ、面白いね」
     その人は、くすっと笑いました。
    「知ってる? 吸血鬼のこと」
     私にはさっぱりわかりません。
    「知ったら驚くよ」
     その人はまた、くすっと笑いました。それを合図にして姿がすうっと消えました。
     何だったのでしょう?
     とりあえずメモ帳に書き込みました。

     また歩き始めます。
     ぐるりと意識が大きく揺れました。
     意識の揺れがおさまると、私は赤茶けた大地にいました。
     私の前には巨大な「何か」がいました。
    「私は宇宙大帝王。キサマに私が倒せるかな?」
     私のすぐ後ろは断崖絶壁でした。
     私は光線銃を持っていました。光線銃と言ってもすごく頼りないです。
     ……どう考えても勝てそうにありません。逃げるのも無理そうです。
     あ、そうです、『秘薬』を思い出しました。
     『人間離れした力を与えるかもしれない』
     たしか、そんなことが書いてありました。
     『秘薬』のビンを取り出して、……やっぱり飲むのでしょうか?
     ほんのちょびっと、スプーン一杯分くらいだけ飲んでみました。
     ……別に何かがかわったようには感じません。
     宇宙大帝王さんが腕を振り上げました。私を叩き潰そうとしているのでしょう。
     飛び抜ければ良い。そんな考えが浮かびました。……絶対に無理です。
     でも、ダメで元々と横へ飛んでみます。
     すごい勢いで私の体が動いて、宇宙大帝王さんの腕を避けました。
     ジャンプは?
     思いっきりジャンプすると簡単に宇宙大帝王さんを飛び越えました。
     これで立場が逆転しました。
     今度は宇宙大帝王さんが崖っぷち、何歩か下がれば崖に落ちてしまいます。
     私はジャンプを繰り返して宇宙大帝王さんの攻撃を避けます。
     避ける合間に光線銃を撃ちましたがダメージはぜんぜんありません。
     宇宙大帝王さんの攻撃は全部避けられます。そうなると冷静になれました。
     弱点を考えます。……やはり「目」でしょうか。
     宇宙大帝王さんの右目に光線銃を向けます。
     キューン!
     撃ち出された光線が宇宙大帝王さんの目に命中しました。
     宇宙大帝王さんが大暴れを始めました。
     目を撃たれたのです。とっても痛いですよね。
     ひどい痛みのはずの宇宙大帝王さんは、どすん、どすん、と暴れ続けます。
     少しずつ崖に向かっています。
     ついにそのときが来ました。
     宇宙大帝王さんは足を踏み外しました。そのまま崖に落ちていきます。
     私は崖に近寄って崖の下を見ました。崖の底は見えませんでした。
     さすがの宇宙大帝王さんでも、これではさすがに助からないでしょう。
     少し悪いことをしたかな? と思いました。
     このこともメモ帳に書きました。

     さて、次に進みましょう、と思ったところでまた意識がぐるん、と揺れました。
     意識の揺れがおさまると、また「不思議な街」に戻っていました。
     街はまた、人影がありませんでした。
     どこへ向かえば良いのかわからないので、街の中を歩きまわります。
     そのうちに「街の外」が見えてきました。
     飛空挺からは街を目指しましたが、今度は試しに街の外へ向かいます。
     街の外はやはり荒野です。
     これもメモ帳に書きました。
     ごとん、と足が何かにあたりました。
     足元を見ます。細長い大きな木箱がありました。
     これにも何か意味があるのでしょう。木箱のふたを開けます。
     中には狙撃銃でしょうか? 大きな鉄砲が入っていました。
     箱の中には弾もありました。でも、ひとつだけです。
     ここにある、と言うことはやっぱり私に必要なのかな? と思います。
     私は狙撃銃をかついで街の外に踏み出しました。
     この銃はどう考えても相当重いはずです。私に持てるはずはないと思います。でも持てました。
     荒野に出ます。時々振り向いて「不思議な街」を確認しました。
     10分くらい歩いたくらいでしょうか、地面が突然、大きく揺れ始めました。
     大地にたくさんの光のすじが走りました。
     地面が大きく盛り上がり、次に崩れていきます。
     巨大な浮遊要塞? みたいなものが浮き上がってきました。
     今度はあれをどうにかしろ、と言うことでしょうか? 
     そのために狙撃銃があった。そう言うことなのでしょう。
     私は地面に伏せて狙撃銃を構えました。銃の使い方とか、私は全然知りませんがなぜかできました。
     浮遊要塞? の中心っぽいところに緑色に明るく光っている何かがありました。
     たぶんあれを壊せ、だと思います。
     私は照準を合わせます。引き金を引きました。
     バンッ、と言う音とともに弾が撃ち出されたはずです。
     わずかに間をおいて、緑色の光が強くなりました。
     次に光が消えました。瞬間の後に光が大爆発しました。
     爆発はどんどん広がります。
     緑色の光が私にも近づいてきます。
     私が撃ったのは浮遊要塞? のエネルギー源だったようです。
     私も爆発に巻き込まれました。体がぐるぐると不規則に回る感覚に包まれます。
     私を包んでいた緑色の光が今度は一気に暗くなって、私のまわりは真っ暗になりました。
     何かとても安心できた気がします。

     目の前に白い光の線が縦に伸びました。
     光の線は少しずつ横へ広がりました。
     あれ?
     そうでした。思い出しました。
     『幻覚による訓練』の体験です。
     カプセルが開ききると「謎の男」さんがいました。
    「少女くん、君の心はなかなか強いね」
     「謎の男」さんが声をかけてくれました。
    「は、はい。
     でも、すごく怖かったです」
    「なに、最後まで終わらせた。大したものだ」
     「謎の男」さんがこの訓練について説明してくれました。
     この訓練は「冷静」の訓練なのだそうです。
     「冷静にことを進める」「冷静に判断する」そう言うことを鍛えるのが、目的だそうです。
     「謎の男」さんは私の結果についても話してくれました。
    「初めての訓練としては悪くない。
     だが、これから訓練を続けるのであれば、まだまだ始まったばかりだ」
     だそうです。
     ひとつ疑問がありました。
     どうして先輩さんが出てきたのか? です。
     それについても「謎の男」さんが説明してくれました。
     少女くんは水晶の宮殿で先輩くんと機械屋くんの精神をつないだ。そのときに先輩くんの記憶の少しが少女くんに残ったのだろう。
     とのことでした。

    「さて、そろそろ昼休みだ。
     少女くん、一緒に昼食はいかがかな?」
    「はい! 『謎の男』さん、
     もっと色んなことを教えてください!」
     フッ、「謎の男」さんは軽く笑みを浮かべました。
    「少女くんには勉強が似合うかもしれないな」
    「?」
     私には意味がわかりませんでした。
     でも、きっと「特別なこと」なんだろうなと思いました。


    混沌野郎 Link Message Mute
    2023/04/12 18:39:08

    のびのびTRPG 第6話 訓練は幻の中で

    軍に保護してもらった少女ちゃん。「マッドサイエンティスト」とかに追いかけられたり狙われたり、そんなことはなくなりました。
     でも、最近ちょっと退屈です。
    「謎の男」に打ち明けたら『訓練を見学しないか?』と提案されたんだけど……。そんなお話。

     今野隼史(辺境紳士社交場)様・アークライト様の『のびのびTRPGスチームパンク』のソロプレイのルール「カードをもとに物語を書く」に従って記しました。
     プレイにて引いた(ストーリーに使った)カードの一覧の後に本編を記します。

    #創作 #異世界 #冒険

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