イラストを魅せる。護る。究極のイラストSNS。

GALLERIA[ギャレリア]は創作活動を支援する豊富な機能を揃えた創作SNSです。

  • 1 / 1
    しおり
    1 / 1
    しおり
    悪魔城伝説・つぶやき……アルカード。

    なんだ、ラルフ。


    いや……

    (答えてくれるものがいてくれる)


    グラント。


    どうした兄貴!俺の出番かい?


    サイファ。


    どうかしましたか、ラルフ。

    (名前を呼び返してくれるものがいてくれる)




    何の用だ、ラルフ。


    兄貴、どうしたんだい?


    私達を見て笑ったりして、おかしな人ですね。


    いや……




    悪くないなと思ってな。


    何が?


    一人ではないと言うことが。




    …………。





    ……何を言うかと思ったら、そんな事か。


    本当におかしな人ですね、あなたは。


    でも確かに、……悪かねぇよな。





    (答えてくれるものがいてくれる)
    (名前を呼び返してくれるものがいてくれる)




    (俺はもう、独りではないんだ)




    闇が、闇が俺を、
    赤い、紅い闇が、ああ、




    やめてくれ、助けてくれ、
    俺は、俺は人間だ、
    俺は人間なんだ――



    赤い闇に、昏い夜に呑まれていく。
    夢中で伸ばした手を掴んでくれたのは、
    深い湖のような蒼い光




    大丈夫だアルカード、
    俺を信じろ。




    そう言ったのは、
    手を差し伸べてくれたのは……



    さ、サイファ、あの、その…


    何ですか、ラルフ?


    あのその……ええと……


    何ですか?はっきり言ったらどうです。


    うう……だからつまり、
    ……一緒に、暮らさないか。


    え。


    あ、愛してる、サイファ。一緒に暮らそう。


    …………。






    さ、サイファ?


    ……聞こえませんでした。


    え。


    聞こえませんでした。
    もう一度言って頂けますか?


    あ、愛してる。


    …………。


    愛してる、サイファ。
    俺と一緒に暮らそう。


    ………………。


    ……こら。
    本当は聞こえているだろう?


    …………ふふ、いいえ、聞こえませんでした。
    ねえラルフ、もう一度……






    兄貴、愛してるぜ。



    仲間に突然そう宣言され、俺は面食らった。
    そのまま呆然としていると、彼は、そんな俺を見て陽気に笑いだす。


    なんだよ、マヌケな顔してるぜ。

    い……いきなりそう言われても……
    まずは友達から…………


    しどろもどろに答える俺に、彼は再び笑い声をあげる。


    本当に兄貴はクソ真面目だよな。大丈夫、とって喰ったりしねえよ。
    ただ、なんだか寂しそうな顔してたからさ。

    俺が?

    そう。だからここは一つ、あんたは一人じゃないぜって言ってやりたくなっちまったのさ。



    だからと言って俺に対して『愛してる』はないと思うのだが…………。


    兄貴、覚えておきな。言葉って奴は、ちゃんと口にしないと伝わらないんだぜ。

    笑いながら、しかし確信を持った口調で彼は言った。
    いつか言おうと思ったままでいて、そのまま永遠に言えなくなることもある。
    そんな後悔は、俺は、もうしたくないからな…………



    だからと言って俺に『愛してる』と言うのはやっぱり無いんじゃないかと思うのだが、
    彼の言い分ももっともだと俺は思った。

    そこで俺も、彼に伝えることにした。




    グラント、愛してるぞ。

    やめろよ、気持ち悪ぃな。


    <ラルフに I LOVE YOU >



    愛してるぜ、兄貴。


    陽気に笑いながら彼は言う。
    だからそんな、寂しそうな顔すんなよな。俺達は仲間だろ?



    おっと、俺のことを愛してるだなんて言わないでくれよ。
    気持ち悪いからな。



    そう言って、彼は明るく笑うのだった。





    愛しています、ラルフ。



    青い瞳をきらめかせ、彼女は言う。
    本当の私を見つけてくれてありがとう。
    安らぎを与えてくれてありがとう。



    私を救ってくれてありがとう。
    愛してくれてありがとう……



    そう言って、彼女は優しく笑うのだった。





    お前には感謝している、ラルフ。



    崩れ行く魔城を見つめながら、彼は言う。
    お前のおかげで奴を止め、この国に平穏をもたらすことができた。


    ……最後まで私を信じてくれた事にも、感謝している。




    そう言って、彼は微かに笑うのだった。



    親愛なる我が友へ。


    あれからどれほどの時が流れたのだろう。
    お前は今、どんな夢を見ているんだろう。


    怖い夢は見ていないか。
    安らかな時を過ごしているか。
    お前が受けた多くの傷を、少しは癒す事ができただろうか。



    俺も皆も変わりなく暮らしている。
    あいつは、喧嘩相手がいないと寂しいと言っていた。
    彼女はもうすぐ母親になる。


    俺は相変わらずだ。
    変わらず元気にやっているから、どうか安心して欲しい。


    あれからどれほどの時が流れたのだろう。
    お前は今、どんな夢を見ているんだろう。


    願わくばその夢が幸せなものであるように。
    そして、お前が愛した多くの者の魂が、今は安らかであるように。


    もしも再び目が覚めたなら、ぜひとも俺達の家を訪ねてほしい。
    俺も、妻も、友も、
    皆、お前に会いたがっている。

    酒でも飲みながら、一晩中くだらない話をしよう。
    知っている限りの歌を一緒に歌おう。
    きっとお前はまた、俺の歌を聞いて眉をしかめるんだろうな。



    もう一度お前に会えたらいいと思う。
    あのときは話せなかった色々な事を、平和な時の中で話せたならいいと思う。



    再会の時を心から願っている。
    親愛なる我が友、アルカードへ。




    ラルフ・C・ベルモンド





    ――――届くことのない手紙。



    「んじゃ、おやすみ兄貴ー…」
    「おやすみなさい」
    「……ぐう。」
    「ああ、おやすみ…」


    「…腹減った」
    「…黙って寝なさい」
    「ぐう。」


    「…あれ、兄貴?寝れないのか?」
    「何か気にかかる事でも?」
    「ああいや、そうじゃなくて…」
    「ぐう。」




    (騒がしい夜も、悪くないな…)





    『どんな魔物が出てきやがろうと』


    『最後まであなたと共に居ます。だって、私達、仲間でしょう?』 


    『見せてもらおうではないか。お前が話していた、絆の力とやらを』



    屈託のない笑顔。
    確信に満ちた白い顔。
    不敵に細められた黄金の瞳。




    …俺はもう、独りではなかった。





    遠い遠い昔に教えてもらった
    貴方の大切な歌を聞かせて
    遠い遠い昔に聞かせてもらった
    幸せなおとぎ話を聞かせて



    遠い遠い昔を思い出す
    貴方の暖かい声を聞かせて
    遠い遠い昔にあった辛い事も
    きっと忘れられる
    貴方と一緒なら……



    貴方の話を聞かせて
    貴方の声を聞かせて


    低くてあたたかくて
    私を優しく包んでくれる


    貴方の声を聞かせて……


    「早く帰って来いよな」


    そう言ってラルフを見たグラントの眼には涙が光っていた。
    彼はそれを乱暴に手で拭うと、無理矢理に笑ってみせる。

    「じゃないと、いい女はみんな俺がもらっちまうぜ」

    それを聞いたラルフは笑い、グラントも笑った。
    笑い終えたあとに二人は固く手を握り合い、その後ラルフが振り向くことは無かった。

    ラルフの姿は朝靄の中に消えてゆく。
    グラントは彼の背中を見つめたまま、いつまでもその場に立ちつくしていた。


    「愛してる」と言うとき


    ラルフは少しだけ顔を赤くしながら真剣な顔で、


    グラントは照れ笑いしながらぽそっとつぶやいて、


    サイファは優しい微笑みを浮かべながら、


    アルカードは心の底から絞り出すように。


    歌を歌い始めるのはいつもグラントだ。
    痩せぎすな外見からは思いもよらない美しい歌声が皆の間に流れると、野営の支度をしていた三人の手が止まる。
    目を閉じて静かに聞き入るサイファ、敵がおびき寄せられたらどうすると眉をひそめるアルカード。
    そんな二人を見やり、微笑みを浮かべるラルフ。


    やがてラルフもグラントの歌に合わせて歌い出すのだが、彼が歌いだした瞬間に皆目を丸くする。
    歌を中断して大笑いを始めるグラント、芸術の荒廃を目の当たりにして深いため息をつくアルカード、笑いをこらえながら魔除けの結界を貼るサイファ。
    何故笑われているのか理解できていない様子のラルフ。


    口には出さずに四人は思う。
    いつの日か永遠の夜が明けた時、どこまでも続く蒼い空の下で同じ歌を歌おうと。
    変わらぬ四人で肩を組み、夜明けの歌を歌おうと。


    血塗られた武器ではなく、可憐な花を手に持って。
    MARIO6400 Link Message Mute
    2022/06/11 10:11:33

    悪魔城伝説・つぶやき

    ファミコン版悪魔城伝説の、小説とも呼べない程の短いお話です。
    Twitterで呟いていたものの再録です。

    #悪魔城伝説 #悪魔城ドラキュラ #Castlevania #ラルフ・C・ベルモンド #グラント・ダナスティ #サイファ・ヴェルナンデス #アルカード

    more...
    Love ステキと思ったらハートを送ろう!ログイン不要です。ログインするとハートをカスタマイズできます。
    200 reply
    転載
    NG
    クレジット非表示
    NG
    商用利用
    NG
    改変
    NG
    ライセンス改変
    NG
    保存閲覧
    NG
    URLの共有
    OK
    模写・トレース
    NG
  • CONNECT この作品とコネクトしている作品