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    悪魔城伝説・つぶやきその2だから何なんだよお前は、まったくよぉ。


    いつもいつも気取りやがって、
    なんでもかんでも一人でやりやがって、
    無茶しやがってよお。

    お前さあ……
    もう少しさあ、素直になれよ。
    仲間の前でカッコつけてどうするんだよ。


    そう、仲間だよ、仲間。
    俺達は仲間だろう?


    兄貴があんたを仲間と認めたんだから、
    俺にとってもあんたは仲間なんだよ。


    仲間ってもんは、助け合うものだろ?
    悲しい事があったら支え合って、
    嬉しい事があったら分かち合ってさ。


    だからもう一人で抱え込むなよ。
    もっと俺達を頼れっつーんだよ、
    このカッコつけ野郎!


    …さあ、わかったらこっちに来いよ。
    晩飯の肉も焼ける頃じゃねーかな。






    さあ行こうぜ、アルカード。
    ほら、早くこっちに来いよ。


    さあ。



    アルカードの髪は闇のような黒。
    いつもきちんと後ろに撫で付けている。


    目の色は、蒼玉のような深く濃い蒼。
    吸血鬼と化してからは、
    琥珀のような黄金色の瞳。






    ラルフの髪は紅茶のような赤っぽい茶色。
    肩甲骨の辺りまで伸びている髪を
    黄金のサークレットで纏めている。
    人々に忌み嫌われる色彩をその身に纏う者。


    目の色は、深い湖のような蒼。
    静かで深い水面の色。

    彼は孤独であった。 
    彼に生命を与え、惜しみない愛を与えてくれた母親は既に亡い。そして彼は父親の顔を知らない。


    支え合う兄弟も無く、縋れるような親族とも縁遠い彼は、母親亡き後ずっと独りで生きてきた。
    孤独な彼を支えていたのは母から与えられた愛と、人ならざる者であったと言う父から受け継いだ異能であった。多少の怪我は瞬く間に治癒する頑健な身体と、野の獣のような瞬発力。
    そして母から受け継いだもう一つの力は、永久の闇すら祓うことができる聖なる光だった。


    ……しかし、あまりにも常人の範囲を超えたこれらの力は、彼を更なる孤独に追いやった。
    人々は彼を魔物と呼んで忌み嫌い、疎み、己達の内に受け入れる事を拒絶した。



    母なる一族である人からも、父なる一族である闇の眷属からも拒絶され、彼は孤独であった。
    だが彼はそれでも、誰のことも恨むことはなかった。
    母が与えた愛と父が与えた力に支えられ、彼は独り森の奥で、まるで隠者のように身を隠して暮らしていた。



    そしてある時、魔王が現れた。
    世界は瞬く間に闇で覆い尽くされ、母なる大地は人々の血で汚され、犯された。
    聖なる太陽は魔王が作り出した消えることのない黒雲の前に姿を消し、その居城は命あるもの全てを圧倒した。
    魔王に歯向かう者達は一人残らず引き裂かれ串刺しにされ、その身や魂を闇に汚されていく。絶大な魔王の力の前に、人々はあまりにも無力であった。


    だが、人々は思い出した。圧倒的な力で闇を祓う若者がいた事を。
    かつてはその力を畏れ疎み、自分たちの輪に加わることを拒絶した一人の若者がいた事を。




    彼は孤独だった。
    生きては戻れぬであろう戦いを受け、人々の最後の希望となった今も尚、彼は孤独だった。


    だが、彼は征く。深い湖のような蒼い眼に強き光を宿し、代々伝わる破邪の鞭を握りしめ。
    いつかは自分を受け入れてくれる者が現れると信じて。



    ……その若者の名は、ラルフ・C・ベルモンドと言った。


    そこに住む民たちは、自らの祖国を愛していた。
    日々の暮らしは決して楽とは言えないが、昇る朝日に輝く広大な緑の森を、蒼く清い水をたたえる湖を愛していた。湖畔に佇む、この地を収める領主が住まう堅牢な城を、美しい鐘の音を響かせる重厚な時計塔を愛していた。

    蒼い湖畔の高台に建つ城は、彼らが生涯訪れる可能性の無い場所ではあった。だが、村を見守るように建つ美しいその城は村人たちの素朴な自尊心を満たし、彼らは折りに触れて陽の光に輝く城を見上げ、その美しさや堅牢さをまるで我が事のように誇りに思い、微笑み合うのだった。


    小さな村に住む民たちに毎日の時を告げるのは、城の前に建つ巨大な時計塔だ。
    先代の城主により考案され、長い時間をかけて生み出された巨大な時計塔は、陽の光のみが時を知る術であった彼らの生活を大きく変えた。
    今日も時計塔の澄んだ鐘の音が村に響く。
    鐘が一つ鳴ったら太陽が地平から顔を覗かせた証だ。女たちは一斉に窓を開けて部屋の空気を入れ替える。寝ぼけ眼の男たちを仕事に送り出して山のような洗濯物を抱え、まだ幼い子供の手を引きながら湖からそそぐ川へと向かう。
    鐘が二つ鳴ったらもうすぐ太陽が地平に沈む証だ。男たちは野良仕事の手を止め、汗と土に汚れた顔を拭いながら互いに声をかけあい笑い合い、妻や子が待つ我が家に向かう。帰路の道すがら、泥だらけになって遊んでいた子供達が自分の父親を見つけ、歓声をあげて駆け寄ってくる……



    一日が終わり、民たちは祈る。素朴な料理が並べられた食卓を囲みながら、家族全員で。
    どうかいつまでもこの平和が続きますように。朝日に輝く森と湖と美しく蒼い城がいつまでも変わらずにありますように。
    自分たちの住むこの村がいつまでも穏やかに、愛する家族たちが幸せに笑って暮らせますように……。



    やがて時計塔の鐘が三度鳴ると、家の灯りが次々と消えてゆく。
    深い森と蒼い湖、湖畔の城と時計塔に守られて、小さな村は優しい暗闇に閉ざされるのだった。





    …………平和だった頃の、ワラキアの光景。



    [ナミダ]

    グラントの涙は優しい涙。
    誰かが悲しい目にあったから、誰かに素晴らしい事があったから泣ける人。

    ごくたまに自分の事で泣く事もあって、普段は人前でぼろぼろ涙を流すくせに、そう言う場合は涙は人に見せない。
    姿が見えなくなったグラントを仲間が探しに来て、人気の無いところで俯いて、背中を向けている彼の肩が震えているのに気がつくような。

    グラントの涙は優しい涙。



    サイファの涙は喜びの涙。
    サイファは滅多に泣くことはない。
    でも、すべてが終わった後は泣いてほしい。
    ラルフの胸の中で。

    過酷な運命を生き、本当の自分を隠してきたサイファは泣いている暇などなかった。
    一度泣いてしまったら、もうそこからもう立てなくなってしまうから。

    もう一人で強がる必要はないと、もう本当の自分を隠して無理をする必要はないと、肩に回された大きな手が、寄り添った頬に感じる逞しい胸が語っている。
    見上げれば蒼い眼が自分を見つめて微笑んでいて、ふいにその優しい顔が滲んで歪み、暖かい雫が頬を伝う。

    サイファの涙は喜びの涙。




    アルカードの涙は怒りの涙。

    自分の全てを奪った父への怒り。
    闇に堕ちた父の弱さへの怒り。
    全ての元凶である『闇』への怒り。

    己の誇りも矜持も、そして家族すらも思うままに蹂躙されて滅茶苦茶にされ、『闇』はそれでも飽き足らず、ぼろぼろになった自分を見て嘲笑っている。
    そしてそれほどまでに侮辱されても自分一人の力では抗うことが出来ないと言う事実に、アルカードは暗闇の中で、血の涙を流す。

    アルカードの涙は怒りの涙。



    ラルフは泣くことを忘れている。
    常に強くあることを求められ、人に疎まれることも孤独である事も当たり前だったから。
    例え泣いたとしても何も変わらないし、誰も助けてはくれなかったから。
    誰かに助けられるのではなく、誰かを助けなければいけなかったから。


    そんな彼に、仲間たちが言う。

    「なんで頼ってくれねえんだよ」
    「私達の事を忘れてはいませんか」
    「一人で抱えられるとうぬぼれるな」

    その時初めて、流すつもりなど無かった涙が頬を伝う。
    何故泣いてるのか自分でもわからずに困惑する彼を見て、もらい泣きする者、優しく微笑み肩に触れる者、僅かに口元を緩ます者……。


    ラルフは泣くことを忘れている。
    それを思い出させてくれたのは仲間たち。

    悲しむことを、悲しんでもいいと言うことを、思い出させてくれた涙……


    穏やかに歳を経たラルフの最期の言葉はきっと「ありがとう」。
    自分と心を通わせてくれた、自分を孤独から救ってくれた、そんな妻や友に対する感謝の言葉。

    死期を悟ったラルフから形見分けの為にベルモンド家に呼ばれたグラントは、最初は無理して陽気にふるまうがふいに言葉をつまらせ、ぼろぼろと大粒の涙をこぼす。

    「嫌だよ兄貴、死なねえでくれよ……」

    泣きじゃくるグラントの姿に、既に覚悟を決めたはずの彼の妻も嗚咽を漏らしてしまう。



    月の無い夜。付き添う妻に優しく微笑みながら身体を休めるように告げ、部屋で一人横たわっていた彼の前に、もう二度と会うことができないと思っていた友が姿を表す。
    黒き衣を纏い、闇の世界に生きる友は言う。

    「私には一つできることがある。お前の時を止めることだ」

    黄金色の眼を光らせ、アルカードは問う。

    「……さあ、どうする」

    だが、ラルフは微笑って首を振る。
    それを見た黄金の眼をした友は少しの間だけ瞑目して頷くと、身にまとっていた黒い外套を翻して姿を消した。



    一人部屋に残されたラルフは、だが、とても幸福であった。
    自分を想って流される涙が暖かかった。
    妻や友の想いが嬉しかった。



    彼はもう、独りでは無かった。



    「兄貴ーー!待ってくれよお!」

    「一人でどこに行くつもりですか?」

    「私の目をごまかせると思ったか」




    「まさか俺達を置いていく気だったのかい?」

    「ここまで来ておいてそれはないでしょう」

    「私達は『仲間』とやらではなかったのかね」




    「さあ、わかったなら行こうぜ兄貴!
    魔王の野郎をぶん殴ってやる」

    「何があっても最後まで貴方と共に。
    確か、最初にそう言ったはずですが……」

    「これが最後だ。後には退けぬ。
    戦いの決着をつけに行くとしよう」


    ……ありがとう。


    皆の言葉に胸が熱くなる。
    身体の底から力が湧いてくる。
    俺は仲間たちと頷きあうと、魔王が待ち構える塔楼へと続く大階段を登り始めた。

    遠く、地平の彼方が紅く染まる。
    あれは我らの勝利を祝う太陽の光か、
    魔王を称える血色の焔か。



    俺にはまだ、わからなかった。


    銀色の十字架に触れた皮膚は焼け爛れ、美しい讃美歌の調べは耳を焼いた。


    幼い頃より慣れ親しみ、心の平穏をもたらし続けてきた祈りの言葉すらも
    精神を引き裂く呪いに変わった。


    自分は既に神の加護を受ける資格も無い存在なのだ。
    そう突き付けられた彼は闇の中で血の涙を流し、獣のように吠えた。

    ……すまねえ、俺は、やっぱりアイツを信用できねえ。


    俯き、絞り出すような口調で彼は言う。


    私も同感です。何故、彼を信じるのですか?


    青い眼に強い光を宿し、鋭い口調で彼女は問う。


    どうしてかって?そうだな……


    問われた彼は微笑みながら答える。
    事もなさげに。




    仲間だから、かな……。



    闇の中、森の奥の墓標の前に、独り佇む男がいた。
    黒い外套を纏った長身の男はまるで影のように微動だにせず、ただただそこに立ち尽くし、その黄金色の瞳で墓を見つめていた。


    石造りの墓標は、そこで永遠に眠る者への敬愛を示すかのように手入れが行き届き、色とりどりの花が添えられている。
    墓石に刻まれているその名前は長年の風雨にさらされて読むことが出来なくなっていたが、黄金の眼を持つ男が彼の名前を忘れることは、決してなかった。



    やがて、夜が明けた。
    暖かな金色の光が闇を照らし出し、世界を、森を、墓の前で彫像のように佇む男を照らし出す。
    男は静かに眼を閉じると跪くように身をかがめ、白く美しい手で墓石に触れた。まるで恋人に触れるかのように、優しく、愛おし気に。

    夜明けの聖なる光は男の身体を焼き焦がし、皮膚を爛れさせ、その美しい姿を侵食していった。
    だが、灰となって崩れて行きながら、男は幸せだった。
    己の身体を焼く黄金の光はまるで彼の魂のように眩しく、暖かかった。
    己の網膜を焼く明るい空は、まるで彼の瞳のように、どこまでも蒼く澄んでいた。


    焼け爛れていきながら、男は幸せだった。自分は、もう一度彼に会うことができたのだ。
    光の中で微笑む彼の姿を見たような気がして、男はゆっくりと手を伸ばした――。




    金色の光が世界にくまなく満ちた時、墓の前にはもう、誰も立ってはいなかった。

    墓標に添えられた一輪の薔薇が、風に吹かれて揺れた。


    強い子になりますように。
    その身体も、その心も。
    闇を恐れずに歩けるように。
    今は小さな手足だけれど。



    正しい子になりますように。
    生まれや育ちにとらわれず、
    心の光を見れるように。
    蒼い瞳は私に似たのね。



    優しい心を無くさぬように。
    例え敵対していても
    きっといつかは分かり合える。
    ねえそうでしょう。愛しい貴方。




    狼のような強さと誇り。
    闇夜を照らす光の力。
    貴方と私のこの魂が
    この子の力になりますように。




    心からの、祈りを込めて……



    わかっていたさ
    なんてことない
    にあいのふたり
    しあわせそうに


    てとてをつなぎ
    かたくだきあう
    にあいのふたり
    くやしいほどに


    おれにとっての
    だいじななかま
    にあいのふたり
    いついつまでも


    どうかかみさま
    ふたりにあいを
    しあわせすぎて
    なみだがでるぜ…


    君よ聞くや我が歌を
    闇を払いし勇者の歌を
    終わらぬ夜を打ち払い
    黄金(こがね)の朝を呼ぶ歌を


    君よ聞くや我が歌を
    蒼い瞳の勇者の歌を
    その手に持ちし聖鞭で
    闇を切り裂く狩人よ


    君よ聞くや我が歌を
    紅く蔓延る呪いすら
    貫き給う黄金(こがね)の光
    永久に讃えん君が名を


    よし兄貴!今だ行ってこい!

    ま、待てまだ心の準備が

    つべこべ言うな。行け。





    どうしました。

    あ、あの、これ…

    ハーブの花ですね、血止めになります。
    ありがとう。

    あ、ああ、それはよかった……
    はは……





    ……あーあ、
    あんなんじゃ先が思いやられるぜ……

    ラルフらしくはあるが、な。

    でも、せめて根っこは落とすべきだったな。

    ……そうだな。



    もしも過去に戻れたなら 
    お前と出会う事もなかった
    こうして肩を並べて
    話すことも無かった


    父を亡くし命を奪われ
    運命を呪った時もあった
    しかし
    お前に会えてよかった。


    夜明けの黄金の光の中で、
    蒼い瞳の友が笑う


    お前に会えてよかった。



    互いの背中を預け
    死力を尽くして戦った場所に


    眠れぬ夜に肩を並べ
    朝まで空を見ていた場所に


    あなただけがいないこの場所に
    今はただ、風だけが吹く



    暖かな笑顔と
    深い湖のような蒼い瞳
    面影はこんなにも鮮やかなのに



    名を呼ばれた気がして振り返る



    そこにはただ、風だけが吹いて……。



    「兄貴、見ろよ、陽が昇るぜ!」



    「ああ」



    「なあ、俺が言った通りだろ?明けない夜なんかねえんだ。朝は必ず来るんだ」



    「そうだな」



    「どんな時でも。誰の上にも」



    「そうだな……」



    「ああ、見ろよ……夜が明けるぜ、兄貴……」



    「……そうだな……」



    「カッコつけで」

    「気取り屋で」

    「いちいち面倒くさくて」

    「本当に面倒くさかったです」

    「素直じゃなくて」

    「世話が焼けて」



    「でも、熱い魂を持った強い男だったんだ」

    「物理的に、ではありませんけどね」

    「き、厳しいな、サイファは…」 

    「本当の事でしょう?」







    「……へっくしょっ!」



    「いや、俺はてっきり腹でも痛くて呻いているのかと…」


    「魔除けの呪文詠唱ではなかったのですか?」


    「芸術に対する冒涜だ。まったく嘆かわしい……」




    「「「……でもまあ、まったく彼らしい」」」



    ……蒼い眼の若者が歌い終わった後の、仲間たちによる証言である。


    MARIO6400 Link Message Mute
    2022/06/11 10:16:14

    悪魔城伝説・つぶやきその2

    ファミコン版悪魔城伝説の、小説とも言えない短い呟きです。
    前の呟き集が長くなってきたので「その2」を作りました。 #Castlevania #悪魔城ドラキュラ #アルカード #ラルフ・C・ベルモンド #サイファ・ヴェルナンデス #グラント・ダナスティ #ラルフ・ベルモンド #悪魔城伝説

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