年を越したくない人もうすぐ今年が終わりを迎え新しい年に変わる。
時を経るごとに一年間はあっという間に過ぎていき、今年は何をしたか覚えていることが少ない。
「まあ、私みたいな友達の少ない基本ぼっちの人間には、記憶に残るイベントなんて本当に片方の手で数えられるくらいしかないんですけどね」
一人寂しくぼやき、流しっぱなしの動画を聞き流しコーヒーを一口飲んだ。
クリスマスも過ぎて会社でも年末は分家の人たちが来るから準備で忙しいだの、初詣はどこに行くだの、皆が楽しげに――もしくはうんざりしながら話していた。
会話に混ざることもなく、隅のほうで適当に相槌を打ちながら自分の年末年始の予定を確認していた。
もちろん、予定なんて一つもない。
年を越す瞬間にお酒でも飲みながらいつも通りぼんやりしてるんだろう。
今年の仕事を無事に収め、私はスーパーで缶チューハイを二、三本適当に買って帰った。
家でカップラーメンを食べながら缶チューハイを飲み、適当な動画を流す。
ふと、いつも胸の奥底にしまっていた願望が騒ぎ出した。
『あ、消えたいな』
一度ネガティブな思考をすると堰を切ったように早く死にたいな、人の迷惑になるから、人間なんて嫌い、なんかもう全部面倒くさい等の言葉が頭の中に溢れだす。
人前では愚痴を吐けなくなった私は溜め込んで溜め込んで溜め込んで、家に帰って聞く相手のいない空間になって初めてようやく吐き出せるようになった。
私の言葉を誰かに聞いてもらいたいわけじゃないから声が大きく出せない。
言葉を届けたくなくて殻に閉じこもるなんて、馬鹿げた話だけれどこれが一番簡単で気楽。
仕事にも人間にも疲れきった人間にはもう考える余力なんて残っていないのだ。
その割りに自分の興味関心のあるものに対しては変に行動力あったり、考え事を長い間している時がある。
今がその時のようだ。
確か今夜は雪が降り積もるんだったか。
寒くないようにマフラーやコートをしっかり着込み、車の鍵を掴んで家を出た。
ちらほらと小粒の雪が降り始め、暗い夜道でも心なしか少し明るく感じる。
「とりあえず年末だし、人込みやばそうだけど自由にいこ。四日まで会社休みだし」
冷え切った車内が暖まる頃には、きっと除夜の鐘がなり始めるだろうな。
地元の人間でもあまり通らないような細い道をくねくね曲がりながら私は海岸への道を目指した。
今日が満月だったらよかったのに。
『では、次のニュースをお伝えします。初詣へ向かう途中の男性が崖から転落し、横倒しになっている車を発見したという事で通報がありました。運転手の女性は頭部を強打し、発見された頃には既に亡くなっていたとの事です。現場はどういう状況になっているのでしょう、○○さん?』
『はい、○○です。こちら現場となった×××山の崖の近くに来ております。ただ今警察は――』
『■■ちゃん、あけましておめでとう!昨年は色々あって楽しかったね!
今年もよろしくね!まだ皆で旅行も行けてないから今年こそ行きたいね^ー^
20XX.1.1』
『■■ちゃんしんだなんてうそだよね?』