【ヘルメス×パーシー】看病は母の素【腐向け】【まえがき】
今回の作品はヘルメス×パーシーという特に需要のない上にBLという非常にアレなものです。
キャラ崩壊はもちろんの事、捏造なんてどんと来いみたいな状況です。
時期は最後の神の後くらい?しらぬ。(∵)
私の書くものは駄文しかないから面白さは皆無だよ!!
それらが嫌な人は戻るボタンで戻ってね!
大丈夫な人もつまらないことを覚悟して読んでね。(∵)
神々は病に伏すことは無い。
それはずっと昔から変わらないことで、僕たちオリンポス十二神の神々も例外じゃない。
けど、時にはその“例外”になってしまうことだってある。
現に僕は、現在進行形で熱に苦しめられているんだから──。
「……何だ、これは」
身を起こし早々に呟いた言葉はこれだった。
頭がぼうっとする、体がだるい、歩けばふらふらする、喉が痛い。
様々な状態が一気に発症していて、こんなことは初めてだった。
「くそ……何でよりによって今日なんだ」
携帯電話を取り出しスケジュールをにらんだ。
“オリンポス十二神会議”
その名の通りオリンポス十二神の神々が集まって未来のことや自分たちの子供のことなどについて話し合う会議だ。
「こんな状態で出て行ったらアポロンになんて言われるか……」
呟いた言葉にふと着替えていた手が止まる。
アポロンは気づくだろうか?
アルテミスは? ゼウスは? ヘスティアは?
自分と親しいと思しき神をあげていってみるが、どれも答えは同じ。
「気づかない、な」
そうだ。あくまで他の神々は僕をメッセンジャーとして見たうえで親しくしているだけで、僕自身や僕の言葉にはほとんど興味がないだろう。
「……じゃあ、別に今の状態で出ても、誰も気にしないさ」
自分の言葉に寂しさが混じっていることには気づかないふりをした。
他の神々も揃う頃に僕も自分の玉座に座った。
アポロンはアイポッドでお気に入りの曲を聴きながら指でリズムを取っている。
僕に気付いても手をあげて挨拶をするだけで、僕の異常に気付く気配はない。
ほら。
父はポセイドンと軽い言い合いのようになっていて、ヘラに咎められている。
アルテミスはヘスティアやアテナと話していてこちらには気づいていない。
ほらね。
他の兄弟やおば達も誰も気づかない。
唯一、ディオニュソスだけ、ほんの少しこちらを見て怪訝そうな表情をしていた気がするがおそらく気のせいだろう。
ほら、やっぱり誰も気づかない。
皆にとっては僕なんてただのメッセンジャーに過ぎないんだ。
僕の暗い考えなどお構いなしに、会議は父の言葉で始まりを告げた。
ゼウスの話す声は僕の耳にはほとんど入ってこなくて、ぼんやりとしたまま適当に相槌を打っていた。
そんな中、不意に耳に覚えのある声が飛び込んできた。
「失礼します」
開かれた扉の先に声の主はいた。
パーシーだ。
何故彼がここに?
僕が疑問に思っていると、ゼウスが声をかけた。
「ペルセウスか。どうだった」
「ゼウスの言っていた通りですよ、ケイロンから預かってきました。はい」
そういうとパーシーは手に持っていた茶色の封筒をゼウスに渡した。
パーシーが気づいてくれたらなぁ。
有り得ないだろうことを考えてしまい、苦笑した。
「それじゃ、失礼します」
「ご苦労だった」
頭を下げ振り返る前に少しだけポセイドンと視線を交わすとパーシーは扉へ向かって歩き出した。
気づいて、くれないかなぁ。
パーシーが扉まであと少しという所まで来て、急に足を止めた。
どうしたのかと彼の足元から顔の方へ視線をあげると、僕を見ていた。
もしかして──
「ヘルメス、具合でも悪いんですか?」
「え……、あ」
気づいて、くれた。
「いつもより顔色が良くなさそうですけど」
「え、っと……」
パーシーは少し顔をしかめて僕の方へ近づいてきた。
まさか本当に気づいてくれるなんて思わなかったからうまく口が回らない。
隣に座っていたアポロンはぎょっとした顔で僕の顔を覗き込んだ。
「えっ?ヘルメス、君具合が悪かったのか!」
「いや、」
別に、と嘘をつこうとするよりも先に、アポロンは手を僕の額に当て熱を測っていた。
「うわ、熱っ! 君なんでそんな状態で来てるんだ! 帰って早く休んで!」
「別にこれくらい大丈夫……」
「大丈夫じゃないからアポロンがそういってるんですよ」
「そうだぞ! 医者の言うことはちゃんと聞かないと!」
「でも……」
僕が躊躇っていると、パーシーが傍まで来て指をグイ、と引いて来た。
「会議の内容なら後で他の方々から聞けば良いでしょう。自分の体を大切にしないと後でアポロンの俳句をさんざん聞かされる羽目になりますよ」
それは嫌だ……!
その様子が容易に想像できて僕は思わず背筋がぞっとした。
「俺の俳句、そんなにひどい?」
アポロンのその問いかけに、玉座の間は静まり返った。
ヘスティアの炉の火がぱちぱちと爆ぜる音だけがなり続けている。
ただでさえ頭痛とめまいで具合が悪いのにそこへ寒気も加わってはたまったものではない、と席から立ち上がる。
けれど次の瞬間、ぐらりと世界が回った。
「ヘルメス!」
パーシーの叫びにも近い声と、誰かに抱きとめられた感覚を最後に僕の意識はそこで途切れた。
「う……」
意識が戻ると、僕は目を開けようとした。
だけど身体は重くて、瞼をあげる事さえ億劫だと思えた。
状況を確認しなければと何とか目を開くと、そこは僕の家だった。
ここは、寝室……?
身体を起こそうと、腕に力を入れるが肩や脚の付け根がぎしりと軋むように痛んだ。
「だめですよ、ヘルメス。まだ寝ていないと」
隣から心配そうな声が聞こえ、目線だけそちらへやると視界の端にパーシーが映った。
僕が起きたからか、パーシーは僕の傍まで歩いてくるとベッドの隣に椅子を置いてそこに座った。
「パ……、シー……。僕、は」
「倒れたんです、椅子から立ち上がった瞬間に。アポロンが抱き留めてくれなきゃ俺、あなたにぺちゃんこにされる所だったんですからね?」
そう責める彼の声には非難の色は無くて、笑みを含んだものだった。
パーシーは僕の額に乗っていたものを取り上げると、傍の洗面器の水に浸してまた絞った。
濡れタオル、かな……
合っていたようで、ひんやりとしたタオルが再度僕の額に乗せられた。
「ぁ、……りが、と……」
掠れた声でなんとかお礼を言うと、パーシーは小さく笑って僕の頭をそっと撫でた。
「お礼なんていいですから、早く良くなってくださいね。皆心配してますよ」
嘘だ。皆、僕の心配なんてしていない。
そう言いたかったけれどパーシーには嘘をついている様子はないし、本気でそう言っているようだった。
皆が僕の心配をしてるっていうなら、なんで誰も君が言うまで気づかなかったんだ。
拗ねた子供の様な事を考えているのが表情に出ていたのか、パーシーは再度笑みをこぼした。
「そんなにむくれない。今日は大切な会議だったんでしょう? 皆きっと自分のことだけで手一杯だったんですよ」
だから、ね? と窘められ、しぶしぶ僕はうなずいた。
分かってたんだ、本当は。
むしろ何も言わずに気付いてほしいと思っていた僕の方が悪かったんだって事くらい。
何も言わない僕に、パーシーはどう思ったのかわからないけれど尋ねた。
「ヘルメス、喉、渇いてません?」
少し待っていると、手元に少し深めの器の乗ったトレーを持ってパーシーが戻ってきた。
「遅くなってすみません」
てっきり水を持ってくるんだと思っていた僕は、パーシーの持ってきたものを見て眉を寄せた。
「……それ、は?」
口の中がぱさぱさして声を発するのもつらいが、聞くとパーシーが答えた。
「すりりんごです。風邪を引いたときに食べるとすっごくおいしいんですよ、これ」
そういってパーシーはスプーンですくうと、僕の口元へ運んだ。
すりりんご自体食べたことはあるが、今の状態で食べても喉にしみたないのか、咽たりしないかと不安に思いながら恐る恐る口にしてみた。
けれども予想に反してソレは思ったほど酸味もなく、林檎そのものの甘さと瑞々しさで僕の喉を潤した。
「どうです、風邪を引いたときに食べると普段より倍くらいおいしいでしょう?」
首を傾げ聞いてくるパーシーの言葉にうなずくと、彼は嬉しそうに笑った。
「よかった。俺も風邪を引いたときに母さんに作ってもらったことがあるんです、これ」
たったほんの一手間かけるだけでこんなにおいしくなるなんてすごいですよね、と言いながら二口目を僕の口元へ運ぶ。
僕も今度は躊躇わずスプーンへ食いついた。
それからすりりんごがなくなるまでパーシーの静かな話し声に耳を傾けながら食べ続けた。
パーシーが食器を流しへ持って行くと、僕はふぅ、と息を吐き出した。
誰かに世話をされるなんて何時振りだろう。
しかも相手が自分よりもうんと年下の若い子だということでなんだか複雑な気持ちになったが、今はそれ以上になんだか満たされたような気持ちだった。
──落ち着く。
ルークが生まれて以来、さらに忙しなくなった僕の生活は彼女と過ごした日々の様な落ち着く時間というものが無くなっていた。
けれど一度だけ。
パーシーと海辺で初めて会った時に過ごした時はほんの少しだけだが、落ち着くことができた。
身体のだるさはそのままだったが、少なくとものどの痛みは引いたようだ。
「ヘルメス、ご飯は食べられそうですか? 食後に薬を飲むようアポロンから渡されているんですが……まだ無理そうなら少ししてから作りましょうか?」
流しから戻ってきたパーシーに聞かれ、僕が食べられると答えると彼は再度キッチンの方へ行ってしまった。
パーシーがチキンヌードルスープを手に戻ってくると、先ほどのように食べさせてもらい無事完食。
薬も飲み終わるとパーシーに「しばらくの間あったかくして寝ててください」と暖房をつけられ布団もしっかりと口元辺りまでかけられた。
ちょっと暑かったけれど、心地の良い暑さで僕はすぐに眠りに落ちた。
僕はとん、とん、と一定の間隔で軽く胸の上を叩く感覚で目を覚ました。
「……?」
「あ、起きました?」
右側を見ると僕の横に寝そべったパーシーが微笑んでいた。
「すみません、勝手にベッドの上に寝転んじゃって。でもこっちの方がよりあったかくていいかなって思いまして」
話ながらもその手は変わらず布団の上から優しく叩いている。
「……これは?」
「俺の母さんが風邪を引いた時にしてくれてたんです。こうしてもらうとすごく落ち着いて眠れてたんで、どうかなって」
でも逆に目覚めちゃいましたね、と言ってパーシーが手を止めた。
あ……。
起き上がりベッドから降りようとするパーシーの手を咄嗟に握ってしまった。
「ヘルメス?」
「えっと……、暖かかったから、もう少しだけ……」
僕がそういうと、パーシーは一瞬きょとんとした後、笑ってまた僕の隣へ寝転んだ。
「ふふ、しょうがないですねぇ」
そう言う彼の声は心なしか嬉しそうだったのは気のせいだろうか。
再度ぽん、ぽん、とゆっくり僕の胸を叩き始めたパーシーに、思わず頬が緩んでしまっていたが、彼は見ないふりをしてくれていた。
「……メ……、ヘ…メス、おい、ヘルメス」
「う、んん……う゛?」
聞きなれた声に目を覚ますと、目の前にはゼウスが居た。
「あれ、パーシーは……?」
身体を起こし、あたりを見回すとそこにはゼウスの他にアポロン、ヘパイストス、ディオニュソス、アレスが居た。
ヘパイストスは少し心配そうにこっちを見ていて、ディオニュソスとアレスは退屈そうに部屋の物を物色していた。
「パーシーならさっき家に帰したよ。もう夜中だからね」
アポロンの言葉に壁に掛けてある時計に目をやると、時針は十一時を指していた。
「……一人で?」
「いや、さすがに今回は俺たちのせいでこんな時間まで引き留めちゃったからね。ポセイドンが家まで送って行ってる」
なら安心か、と息を吐き出すと僕はゼウスの方を見た。
「それで、会議はどうなったんです?」
「多少口論になりはしたがひとまず終わった。英雄たちについては今後も間接的に様子を見続けていく。まぁ……月に一度なら子供たちに会いに行ってもいいという事になったが」
「! ……そうですか」
ゼウスはあまりいい気はしていないのか、渋い顔をしていた。
「それよりも、どうだったんだい?」
アポロンが目を輝かせて身を乗り出してきた。
「は? どうって……」
「パーシーの看病! どんなだった? 今の体の調子はどう?」
「体調は……そうだな、のどの痛みも頭痛も引いてるし、四肢の痛みも前よりかはましになった。看病は……えっと、ご飯を食べさせてもらって、話も少しして、添い寝……」
「添い寝!?」
ぐわっと近づかれ思わずのけ反る。
「添い寝って、あの添い寝? パーシーが添い寝してくれたの?」
「あっ……、あぁ」
「ええええなんでっ?」
「なんでって……なんか、パーシーが母親にされて落ち着けたからーって……」
アポロンはふらふらと座っていた椅子へ戻ると再度腰を下ろした。
「なんか……そういうのしてくれるの、恋人みたいで……いいね……」
おい、アポロン。
顔を手で覆って隠してはいるが、指の隙間から上がった口角が見えているぞ。
「……にやにやしないでくれる?」
「あいたたたた、ごめんってヘルメス!」
アポロンの頬を思いきりつまむとアポロンは笑いながら謝った。
「まぁ……でも、どっちかっていうと……」
「うん?」
僕が言葉をそこで切ると、退屈そうにしてたディオニュソスやアレスも横目でこちらを見た。
「どっちかっていうと? なに?」
「どっちかっていうと、お母さん?」
「はっくしゅっ! ぐすっ、んん…?」
「寒いか? パーシー」
「あ……ううん、大丈夫。ごめんね、父さん、わざわざ送ってくれて……」
「いやなに、パーシーと話をする時間ができたんだから役得だと思っているよ」
「へへ、ありがと」
「どういたしまして」
ヘルメスの一言で帰る途中のパーシーがくしゃみをしたのは別の話。
【あとがき】
とりあえずすみませんは書いとく。^q^
自分が体験するとそのネタが描きやすくていいよねっ!!
何でパーシーじゃなくてヘルメスに風邪ひかせたんだっていうあれだけどパーシーが風邪ひくとついついポセイドンにしたくなるから、ね!
次は何書こうかなぁ。