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    しおり
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    しおり
    幼児ヘルメスとパーシーの一年間ヘルメス、オリンポスから追放されるヘルメス、親友の手を借り宿泊先を見つけるヘルメス、奇妙な風習で歓迎されるヘルメス、いとこに服を見立ててもらうヘルメス、新しい家で新しい家族と食卓を囲むヘルメス、いとこに背中を流してもらうヘルメス、連絡先を交換するあとがき注意


    この作品は捏造、趣味、幼児化、その他諸々で出来ています。

    安定の神々とパーシー中心なお話ですが大丈夫な方のみ次のページからどうぞ。

    なお続くような書き方をしていますが続くかどうかは私の気分とやる気次第なので一話読み切りとして読むことをお勧めします。

    気が向けば続きます。気が向けば。

    安心安定の自給自足&突発的なお話です( ^ω^ )

    あとアメリカのほうの温度や長さに合わせるとわかりづらいので日本式のままです。

    面倒は省きてぇ!^q^

    もはや私はどこへ向かってるのかわからなくなってきたが書きたいものを書くだけさ!
    YEAHHHH!!!!


    ヘルメス、オリンポスから追放される

    神々が集い、物事を議論するオリンポス会議。
    冬至のオリンポス会議には夏至には参加できないハデスを含めて総勢十四もの強力な神々がオリンポス神殿に集まっていた。
    次々に議題が変わっていく中、ふいにある一神にとって不穏な流れが出来てしまった。

     「そういえばヘルメス、この間ゼウスが気に入ってる女優に手出してなかったっけ?」

    ピクッ

     「あぁ、そうそう。ゼウスの隠していた秘蔵酒をくすねてきたので一緒に呑もうとも言っていたな」

    ビクッ

     「そーいや、ゼウスのスーツの尻ん所に変なアップリケ付けてるのみかけたぜ」

    ビクゥッ

    アポロンをはじめ、ディオニュソス、アレスが続いて彼の悪事を父に告げていく。
    怒りを募らせるゼウスに比例するように汗を滝のように顔から滴らせるヘルメス。
    ばれた時の事を考えればやめておけばいいのに、と皆思うが、彼にとっては面白いことが最優先だと知っているので今更そんな事を言う者はいないのだ。
    「先程アポロンたちが言っていたことは本当の事か?」
    震える拳を握りしめ──否、怒りで震えていたのだから震えが強くなっただけなのだが──ゼウスがヘルメスに質問を投げかけた。
    もはや言葉すら出ないヘルメスは、ぎこちなく頷くことしかできなかった。
    「……よろしい。素直に認めたことだけは褒めてやろう。しかしお前にはもう少し親に対して敬意を持って接するという事を学ぶ必要がありそうだな」
    「ぜ、ゼウス?父さん?あの、僕がこういう風に育ったのはあなたがそう望んだからでは……」
    「確かにお前にそういった才能を持って生まれて欲しいと望んだのはわしだ。しかしな、これとそれは別だと思わんか?」
    「ソ、ソウデスネ」
    肯定するほかなく、ヘルメスはそう呟いた。
    「よし、では罰として……そうだな、お前には幼児になって人間界で一年間過ごしてこい」
    「え!?」
    まさかの事態にヘルメスは驚愕の声をあげた。
    告げ口をしたアポロンも少し動揺していたが、ほかの二人はあまり気にしていないようだった。
    他の神々も気の毒そうに見ていたが、下手に口を挟めば自身も巻き添えになる可能性があるため庇うまでに至る者はいなかった。

    「ゼウス!それは困ります!僕がいなくなったら伝令の仕事やその他の仕事が……!」
    ヘルメスが必死に説得しようとするも、ゼウスは既に聞く耳を持っていないのか、話を遮った。
    「確かに不便ではあるがイリスがいる。何よりたったの一年だ。五十年などではないのだから問題あるまい」
    「そんな……!」
    「では一年間、人間界でしっかりと親孝行する方法を学んでくるんだな」
    ゼウスがいい終わり指を鳴らすと、ヘルメスの姿はたちまち光に包まれた。
    閃光が消えると、そこには癖のある黒髪に透き通るような青い目、本来の年齢からは似つかわしくない柔らかな肌を持った幼子がいた。
    小さくなった手足を見て慌てて抗議するヘルメス。
    「待ってください父さん! 僕はこの姿でどうやって生きて行けばいいんですか? これでは働くことも、ましてや家を借りることすらできないじゃないですか!」
    「それはお前のその狡賢い頭で考えてどうにかするんだな。健闘を祈る。……会議は以上だ。解散」
    ゼウスの言葉に神々は各々姿を消していった。
    アポロンだけは申し訳なさそうにヘルメスを見ていたが彼には気づける余裕すらなくなっていた。
    「父さん──……!」
    ヘルメスはだいぶ高くなった声で再度父に呼びかけようとしたが、既にオリンポスから人間界へ放り出された彼の言葉は届くことはなかった。
    ヘルメス、親友の手を借り宿泊先を見つける

    暖かい風が吹いたかと思えばすぐに肌をさすような冷たい風が吹いた。
    目を開くと少し雪が積もった公園が目に入った。
    公園には小さな子供達──今の僕と同じくらいだから六、七歳くらい?──とその保護者たちがいた。
    普段なら気にも留めない風景だが、こうなってしまっては気にせざるをえない。
    辺りを見回し、現在地を知るために看板を探すが見当たらない。
    空でも飛べたら、と思いはしたがこんなに人目につく場所で全員を騙せるだけのミストを今の自分が操れるのか自信がなかった。
    ゼウスは僕の神としての力をとるようなことは言っていなかったが、もし能力が使えなくなっていたらと思うと怖かった。

    そんなことを考えているとまた風が吹いた。
    僕の格好は雪の降るような季節にするような厚着ではなく、灰色のTシャツに迷彩柄が所々に使われたカーキ色の少し厚手のシャツに裾を2回ほど折り曲げたデニム、それに緑色のスニーカーといったものだった。
    オリンポスは基本的にはいつも春のように暖かいからこの格好でも問題ないだろうけど、人間界にはどう見ても適していない。
    寒さに震えながらシャツのボタンをつめ、歩くことにした。
    どこかに交番のような場所があれば、親戚の家に行こうとしたけど迷ってしまったとか言えば送ってもらえるかもしれない。

    ただ問題はその行き先だ。
    僕は他に何かないかと服のポケットを探っていると、デニムの左ポケットに重たげなものが入っていることに気づいた。
    取り出してみると僕がいつも使っている携帯電話だった。
    アンテナの先には見慣れた二匹の蛇が絡み付いている。
    「ジョージ! マーサ!」
    少なくとも一人きりになったわけではないことに安堵していると、ジョージがいつもの調子でいってきた。
    <どーも、ジョージでーす。所で君、ヘルメスの生き写しみたいだね? 息子?>
    <ジョージ! ふざけるのも大概にしないと後でどうなるか知らないわよ>
    <ちょっとしたジョークだろ? 改めてヘルメス、どう? その体。前よりイカしてるんじゃない?>
    「全然、最悪だ。手足が短いし視界も低くて見づらい。全てが大きく感じる」
    <普段のおれたちと同じ感想だ>
    <もう、ジョージ!>
    「いいんだマーサ。本当のことだろうし」

    周りに怪しまれないように、小声で二匹と話しながら目的の建物を探す。
    怪しまれないようにって言っても、子供が独り言を話していた所で大人は大して不審には思わないだろうが。
    <まだ混乱してるようだから言ったほうが良いですか?>
    「何を?」
    立ち止まりジョージを見つめると、くねくね身をよじらせながら答えた。
    <なんでおれたちが携帯電話の姿をしているのに使わないのかってことです>
    その言葉を聞いて立ち止まった。
    「あ」
    <ね? 携帯電話は色々な機能があることを思い出してくれました?>
    <しかも他の携帯電話よりも高性能ですよ>
    ジョージとマーサは笑いながらくるくると回っている。
    彼らの言う通り、僕は思っていたよりも混乱していたようだ。
    指摘され、ようやく携帯電話で現在地と探していた交番の位置を調べると、歩を進めた。
    今僕がいるのは幸か不幸かニューヨークのマンハッタン付近。
    うまくいけば彼の元へ転がり込めるかもしれない。
    五分五分の可能性に賭け、僕は交番へと乗り込んだ。

    巡査部長は人当たりが良く情に厚い人物だったのか、先ほど考えていた嘘であっさりと僕は目的の場所に到着することができた。
    階段を登り最上階に着くと一番端の303号室の扉の前に立ち、戸を叩いた。
    ……。
    何も音がしない。
    もしかして聞こえなかったのか?
    そう思い、インターホンへ手を伸ばしたが少し届かない。
    渋々僕は携帯電話を取り出すと、その手を掲げた。
    「ジョージとマーサ、どちらでも良いからインターホンを押してくれないか。一回で良い」
    <じゃあ──>
    <あたしがする。ジョージだとふざけて何回も押しそうだもの>
    そう言うとマーサがインターホンのボタンに鼻先を押し付けた。
    中からチャイムの音が鳴り、一拍置いて女性の声が尋ねた。
    「どちら様ですか?」
    声が聞こえやすいように少し背伸びをして言う。
    「ヘルメスだ。神々の使者、旅人、盗み、体育、発明、伝令の神のヘルメス」
    「……どういったご用件でしょうか」
    先ほどよりも間をおいて声はさらに尋ねる。
    あとで別人の家でした、なんてことにならないように念のために聞いておかなければ。
    「ここはパーシーの家であっているかい?」
    「……」
    僕がそう問いかけると、沈黙が訪れた。
    それから少しして、扉を開く音と、誰かが歩いてくる音が聞こえてきた。
    音はだんだんと僕のいる扉の方へ近づいてきて、ついに音が鳴り止んだ。
    なぜか僕は変に緊張してしまい、ドアから少しだけ離れてじっと開かれるのを待った。
    ドアはガチャリと音を立てると可能な限り開かれた。
    開けたのはパーシー本人だった。
    「何ですか?」
    彼の声を聞いてふっと緊張の糸が切れたのか思わず大きく息を吐いてしまった。
    彼はというと、普段とは全く異なる姿の僕に困惑しているようだ。
    「ああ、パーシー、間違えてなくてよかったよ。実は折り入って頼みたいことがあるんだが、まずは上がってもいいかな?」
    パーシーは何か言いたそうな顔をしていたが、うなずいて僕を招き入れた。

    「何が起きているんですか?」
    ソファに座ると、パーシーはずっと聞きたかっただろうことについて尋ねてきた。
    僕は順を追って起きたことを話した。
    彼はそれを聞いてどう思ったのかは知らないが(相手の思考が読み取れなくなっていた)、すごく遠い目をして「自業自得ですね……」と呟いた。
    ぐうの音も出ない。
    「話を聞いた限りでは、ヘルメスはおれに何か手伝って欲しくてここに来たんですよね?」
    「察しが良くて助かる。一年間、一緒に暮らさせてくれないか」
    僕がそう言うと、パーシーは複雑な表情でしばし考え込んでいたが、ため息を吐くと「わかりました」と言った。
    「ただし、うちで暮らすからには手伝いとか普通にしてもらいますからね?」
    「ありがとう、パーシー!」
    飛び上がりハグすると、パーシーは小さく笑って僕の頭を撫でて席を立った。
    「パーシー? どこに行くんだ?」
    僕の質問にパーシーは振り返って言った。
    「一緒に暮らすなら、同居人は紹介しとかなきゃだろ?」
    ヘルメス、奇妙な風習で歓迎される
    ソファに座ったまま待っていると、パーシーともう一人、三十代くらいの女性が部屋に入ってきた。
    おそらく彼女はさっきインターホンに出た人物だろう。
    「ヘルメス、こちらはおれの母さんのサリー・ジャクソン。母さん、こちらはヘルメス」
    「ミスジャクソン、初めまして」
    「初めまして、ヘルメス様。サリーで良いですわ」
    「じゃあ、サリー。僕のこともヘルメスで良いよ。よろしく」
    握手をすると彼女は僕とパーシーの前のソファに腰掛けた。
    「母さん、実はヘルメスがさ、オリンポスで……まあ、色々しちゃったせいで一年間人間界でこの姿で過ごさなきゃいけないみたいなんだけど、あてがないみたいでおれの所に来たんだって。だからさ、その一年間同居人が増えても良いかな……?」
    色々。
    確かにその通りだ、だいぶマイルドな表現だけど。
    パーシーが僕の事情を説明し終えると、サリーはパーシーが困惑していた時と同じような表情で僕を見たあと頷いた。
    「神を追い返すなんて失礼な真似はできないわ。この家でよければゆっくりしていってください」
    少し戸惑いをぬぐいきれない様子だったが彼女は笑って歓迎してくれた。
    サリー・ジャクソンは賢い女性のようだ。
    「少し待っててくださいね。今クッキーと紅茶を用意していますから」
    そう言うと、彼女は僕に一礼して扉の奥へ消えた。
    「……君のお母さんは賢明だね。過去に神を追い返したものたちがどうなったか知っているんだ」
    「どうなったんです?」
    パーシーはその話を知らなかったのか聞き返してくる。
    「ある一組の夫婦を除いて、皆洪水に飲まれたよ」
    「……ノアの箱舟?」
    「いや、あっちは正確には僕たちの話が元になった創作だよ。ちなみに残った一組の夫婦は、神々に祈り、自分たちだけでは寂しいから同胞を増やしたいといってね。神に母なる石を背中越しに投げろといわれて、彼らは悩み抜いた末に石を投げた。そうするとたちまち石は人間になったんだ」
    「母なる骨が石ってどういうことですか?」
    「ガイアさ。彼女は母なる大地と言われるように大地の神格化だ。大地の骨といったら石だからだよ」
    「うげー」
    ガイアの名を聞くと、パーシーは心底嫌そうな顔をした。
    仕方ない。
    彼にとってその存在は自身を幾度も危険に陥れようとしたのだから。

    「ところでヘルメス」
    「うん?」
    「その格好で外にいるの、寒くなかったですか?」
    全く違う話題だったが、彼の言い方からしてちょっと気になっていたようだ。
    「正直、寒くて震えてたよ。ゼウスは僕が凍え死ぬのを笑って見てたに違いない」
    「そんな……多分、季節感を気にしてなかっただけでしょう。うーん……ちょっと待っててください」
    パーシーは一旦部屋を出たかと思うと、すぐに戻ってきた。
    手には一着のダッフルコート。
    サイズは見た感じ今の僕に合いそうだ。
    「ヘルメス、これ着て見てくれませんか?」
    言われた通り袖に手を通してみた。
    ひもをトッグルに引っ掛けて前を止める。
    「ちょうど良いサイズだ」
    「よかった。それ、おれが小さい頃にきてたやつなんですけど、母さんが大切にとっておいたんです。使い道ないだろうって思ってたけど……。もしヘルメスさえ大丈夫なら、新しくコートかジャンパーのサイズが合う服を買うまでそれで寒さをしのぐために使いませんか?」
    パーシーのお下がりのダッフルコートを見てみた。
    よく見たら所々にイルカや錨、ヨットなどのアップリケがつけられている。
    コートは冬に着るというのになんとも海神の息子らしいものばかりだ。
    「本当にこれ僕が使って良いのかい?」
    「はい、ただ捨てるのは勿体無いですから」
    にこりと笑いパーシーがそう言った。
    ふかふかのコートは僕を包み込んで暖めてくれている。
    お下がりをもらったことは今まで本当に数える程度しかなかったから、新鮮な気持ちだ。
    パーシーの気遣いに心が温まっていくのがわかる。
    ありがとう、と礼を言い彼の好意を素直に受け取った。

    「お待たせ。お口に合うかはわからないけれど……」
    サリーはその手にティーカップとクッキー(青いクッキーだ)の乗った皿をトレイに乗せて戻ってきた。
    「青いクッキー?」
    すかさずパーシーが机に置かれたクッキーに手を伸ばし答えた。
    「うちでは祝い事や気合を入れなきゃいけないときには青い食べ物や青い服を用いるんですよ」
    「なるほど、ジャクソン家のルールみたいなものか」
    「あなたにはしばらくうちで暮らしてもらうのでそれに倣ってもらいます」
    「……わかった」
    奇妙な風習だが、郷に入っては郷に従えというし、世話になる以上は文句を言えない。
    僕はパーシーに倣い、青いクッキーを一つ手に取り口に放り込んだ。
    ただのクッキーじゃない、チョコチップクッキーだった。
    今まで食べたクッキーの中でもかなり美味しい類に入るその青いチョコチップクッキーは、できたてで中のチョコが程よく溶けている。
    濃厚なチョコの甘さとサクッとした生地が噛むたびに口の中で混ざり合ってまろやかな風味を作り出している。
    市販されていたなら間違いなく僕は即座にあるだけ買い占めてたに違いない。
    夢中になってクッキーを貪っていると、サリーがティーカップに紅茶を注いで渡してくれた。
    紅茶も陶器の白に映える澄んだ空のような青色だ。
    彼らなりの歓迎方法は面白く、僕はすでにこんな事になってしまった事への不満など、忘れそうになっていた。

    美味しいクッキーと紅茶を食した後、僕はパーシーに連れられ、ジャクソン家を案内されていた。
    「ここがおれの部屋で、こっちが母さんとポールの部屋。こっちが客間。ヘルメスには客間で生活してもらいますから」
    「ポール?」
    初めて聞く名前に思わず聞き返す。
    「ポール・ブロフィス。おれの義父で、母さんの再婚相手。高校の教師で古典を教えてるんだ」
    パーシーは少し嬉しそうに話しながら僕の部屋になる客間を整え始めた。
    「パーシーはその……、義父がいるのって、やっぱり嬉しいものなのかい?」
    「うーん、義理の父親がいるのは必ずしも良い事ばかりじゃないし、正直、ポールの前の義父なんかはおれのことすごく嫌ってたし最低な奴だったから、居る方が良いのかいない方が良いのかはわからない。でも、ポールは少なくとも母さんを楽しくさせてくれるし、幸せにしてくれる。素敵な人だよ」
    「パーシーにとっては?」
    「うーん、いい父親兼先生って感じ? 勉強がわからないところがあれば聞けばヒントくれたり教えてくれるし。おれは好きだな」
    ポセイドンが聞いたら動揺しするような言葉に、僕自身「いい父親」と言うものには程遠いせいか、子供達のことを思うと胸が痛んだ。

    パーシーはベッドメイキングを終えると(正直彼がベッドメイキングできる事に驚いたけど、短期のアルバイトでちょっと覚える機会があったらしい)、クローゼットの中や机の引き出しの中に何も入ってないことを確認していた。
    「ヘルメスの荷物はないんですか?」
    「急ぎで追い出されたんでね。この携帯電話だけだよ」
    蛇がアンテナに絡みついた携帯電話を見て、パーシーがあっ、と声を上げた。
    「ジョージ、マーサ、久しぶりだな」
    <やぁパーシー、久しぶり。この部屋ってネズミでる?>
    「いや、うちの中にはでないな。近くの下水にならいるかもしれないけど」
    <よし、ヘルメス、今から行きましょう!>
    <馬鹿なこと言わないの! 久しぶりね、パーシー。少しの間お世話になるわね>
    「よろしく」
    挨拶が終わると、パーシーが言った。
    「そういえばその携帯電話、元々はカドゥケウス? ですよね? その杖を使って戻れないんですか?」
    パーシーの言いたい事はわかる。
    神々の力の象徴があるのなら元の姿に戻ったり、オリンポスにも帰れるのではないかと言いたいのだろう。
    「僕もそう思って試してみたんだ。だけど携帯電話から元の杖に戻らなくって……」
    「そうですか……」
    僕の言葉にパーシーが同情した。
    「でもたったの一年ですしね。一年なんてすぐですよ、すぐ! それまでの辛抱です。頑張りましょう!」
    彼の励ましに、自分でもたったの一年だと言い聞かせ、とりあえずゼウスに連絡が取れないか試みた。
    メールを送るとこう返ってきた。

     HERMES:ゼウス、僕の財布はどこにあるんですか?
     ZEUS:携帯電話で支払え。
     HERMES:冗談でしょう?最低でもカードくらい渡してくれませんか。
          今の状態にあった服を買わなきゃいけないんで。
     ZEUS:今送った。

    ゼウスの最後の返信に顔を上げると、机の上に僕のクレジットカードが置いてあった。
    財布ごと置いといてくれたらよかったのに。
    何はともあれ、これで資金には困らなさそうだ。
    「よかった。これでなんとか必要なものは揃えられそうだよ」
    「連絡はちゃんと取れるんですね。よかったですね」
    「これで連絡も取れないとかだったら本格的にオリンポスに戻った時に謀反起こしてやろうかと考えてたよ」
    「謀反て……」
    苦笑した後、パーシーは部屋を出たのでついて行くことにした。
    「これからどうするんだい?」
    「そうですね。ヘルメスの言った通り、必要なものを揃えましょうか。まずは服……かな。母さーん」
    パーシーは母親に買い物に行くことを告げると、僕に手招きをした。
    さっきのコートと薄緑色の先に白いポンポンがついたマフラーだ。
    「寒いと思うからちゃんと着ていかないと」
    さっと僕にコートを着せるとマフラーを首に巻いてくれた。
    暖かい。
    「それじゃ、行きましょうか」
    頷いて彼に続いた。

    ヘルメス、いとこに服を見立ててもらう
    パーシーについて行くと、着いた先は大型のショッピングモールだった。
    ここなら子供服も探しやすいようだ。
    自分の服として子供服を買う日がこようとは思ってもみなかった。
    気分は複雑。
    地図を見て子供服で有名な店へ向かうことにした。

    店内には親子で来ているものや夫婦でこれから生まれてくる子のためにベビー用品を揃えに来ているものなど様々だ。
    「さて、ヘルメスに似合う服を探しましょうか」
    パーシーはにっこり笑って言った。
    心なしか意地の悪そうな笑みをうかべていたような気がするが今は無視だ。
    羞恥に耐えながらも子供のふりをして、何着か良さげなものを選んで試着した。
    「……なんか、さっきから思ってたけどちょっと可愛げなものばかり選んでないかい、君」
    「えー? だって、普段の姿だったらそりゃハンサムですからかっこいい系の服選んでたでしょうけど、今のヘルメス可愛いですもん。どうせなら可愛さ重視で行かないかなーと」
    楽しげにパーシーは言うが着る側の僕としては男の尊厳とかいうものがあるんだけどそれは無視なのかい? 君。
    でも所詮は子供の姿だもんな、と早々に諦めをつけ、彼が選んだ服を購入した。

    「次は靴ですね。行きましょう!」
    気分が乗ってきたのか、パーシーは生き生きとしている。
    一方僕はというと疲れていた。
    何度か親が子にいろいろ試着させている場面は見たことがあったが、実際に自分が体験するとなかなかしんどい。
    よく子供は我慢できるものだと思わず尊敬の念を抱いてしまうくらいには疲れていた。
    せめて靴選びはもう少し楽だといいなと思いながら彼に手をひかれていた。

    やってきた靴屋にはスニーカーから子供用の革靴まで置いてあった。
    今僕がはいてるくつは正直どこのメーカーなのかわからないような靴だった。
    デザインもあまりよくないし履き心地もたいして良くない。
    ゼウスめ、と内心毒づく。
    「ヘルメスはどういう靴がいいんですか?」
    「ん? できればいつもみたいに革靴がいいけど」
    「でもその足じゃ革靴だけだと結構疲れそうじゃないですか?」
    「そうだね。革靴とあと二足ほど運動靴でも買っておこうかなぁ」
    「一年もその格好ならすぐすり減っちゃいますしね」
    そんなわけで革靴を一足、スニーカーを二足買うことにした。
    店員に足のサイズを測ってもらい、ちょうどいいサイズのコンバースのスニーカーとナイキのスニーカー、それにハーフブーツタイプの革靴を一足買った。
    (ついでにほかの店を探すのも面倒なのでまとめて靴下も何足か一緒に)
    パーシーの手が荷物で埋まりつつあるが彼は気にしていないようだ。

    「あとは何か買わなきゃいけないのってあるかい?」
    「えー……、ヘルメス用のコップとか食器とかですか?」
    「僕そこまで子供扱いされるとさすがにショックを受けるんだけど」
    「あははっ、冗談ですよ。でもヘルメス用のコップはあってもいいかもしれませんね。後は歯ブラシとかパジャマですかね? あ、あとバスタオルも」
    僕のことなのにパーシーは楽しそうに必要なものを考えていく。
    「パーシー、大変じゃないかい? 大丈夫?」
    「何がですか?」
    「いや……君が気にしてないのならいいけど」
    本人は気にしていないようだし、彼の好意に甘えて任せることにした。

    結局彼について回ること約三時間。
    ようやく必要なものがすべて揃った。
    「大丈夫ですか、ヘルメス。疲れてるならおれがおぶって……」
    「いや、大丈夫だよ。何より君、僕の荷物で手いっぱいじゃないか」
    本心は四千云百歳すぎてるのに二十代の子におぶられるのが恥ずかしいってだけなんだけど、実際にパーシーは手に買い物袋をたくさん持っている。
    対する僕は彼の気遣いから三足の靴しか持っていなかった。
    「あ、帰る前にちょっとだけ寄りたい所があるんですけど、いいですか?」
    まだ回るのか、と口から洩れそうになるが何とか抑え、彼の行きたい所へと向かった。

    着いた場所はキャンディーショップ……というか菓子屋だった。
    店内は甘い香りと色とりどりの菓子で彩られている。
    「ここは母さんが働いてるお店なんですけど、ここのキャンディーがおいしいんですよ」
    そう言ってパーシーは白と水色で巻かれたロリポップキャンディーを一つ手に取った。
    「ヘルメスも食べてみませんか? ……っていうか、甘いもの大丈夫ですか?」
    「甘いものは大好物だ。それじゃあ、僕も一つ食べてみようかな」
    さまざまな色の中から緑と白のキャンディーを一つ手に取った。
    すかさずパーシーが僕の手に持ったそれを取り上げ、レジへ持って行ってしまった。
    キャンディー一つはそんなたいした値段ではなかったのでおとなしくパーシーにおごってもらうことにする。

    こうもいろいろあると少しくすねてしまいたい衝動に駆られるが、パーシーの母親が働いている店だ。
    これ以上迷惑をかけるわけにはいかない。
    会計が終わったパーシーに「帰りましょうか」と声をかけられ、ようやく帰路に着いた頃にはもう日が暮れ始めていた。
    ヘルメス、新しい家で新しい家族と食卓を囲む
    パーシーの家へ向かうと、家の奥からいいにおいがしてきた。
    香ばしいスパイスの効いた匂いとふわりと漂うパンの焼けるような匂い──これは……
    「……カレー?」
    「そ。カレーなら人数が増えてもたくさん作るから問題ないでしょう?」
    パーシーはどうやら知っていたようだ。
    僕が家の中に入るとドアの鍵を閉めて荷物を置きに僕の部屋になった客間へ向かった。
    僕も靴を置くためについていくことにした。

    買ってきたものをクローゼットや棚にしまっていく。
    コップは食卓や通常時に使うものと歯を磨くときに使うもの用に二つ買ったのでそれぞれの場所に置くことにした。
    どちらもプラスチック製(僕は大丈夫だと言ったのにパーシーが落として割ると危ないから、とプラスチック製を買うことになった。腑に落ちない)で、片方は緑色でキャラクター調に蛇が描かれた薄黄色のコップ。
    もう一つは薄水色で色とりどりの魚が描かれたコップ。
    魚のコップは歯ブラシとおそろいの柄だ。
    同じ柄を買っていながらそろってないのも微妙なのでこちらを歯ブラシと一緒に使うことにした。
    あとは机の上にふちが緑色の鏡と、髪を整えるためのブラシ、ハンカチタオルなどをパーシーが置いていく。
    自分が使いやすいような場所に置いていいようだ。

    「そうだ。ヘルメスって、ノートとペンや鉛筆必要だったりします? 必要ならおれ持ってるのであげますけど」
    「え? いや、別に特には……あ、やっぱりもらえるかな」
    「わかりました。ちょっと取ってきますね」
    本当は仕事でもしない限りノートやペンなんて必要なかったけれど、ふと思いついたことがあるのでもらうことにした。
    パーシーはすぐに手に水色のノートと2Bの鉛筆、それに軸が白と黄緑色のボールペンを持って戻ってきた。
    もらったノートや筆記具を机の引出しにしまい、コップを持ってパーシーと一緒にリビングへ向かった。

    リビングのドアを開けると、一層カレーのいいにおいが漂ってきた。
    香りに耐えかねたおなかが空腹を伝えてくる。
    「おかえりなさい、二人とも。もうできてるわよ」
    サリーの声にテーブルのほうへ目を向ければ一人見知らぬ男が椅子に座っていた。
    「お、君が今日から一年間うちに居候する子かい?」
    僕のことを知っているということはサリーからすでに僕のことを話してあるようだ。
    「はじめまして。僕はポール・ブロフィス。サリーの夫でパーシーの義父だ。これから一年間、仲良くしよう」
    「こちらこそはじめまして。パーシーのいとこのヘルメスだ。よろしく」
    差し出された手をとり握手する。
    「パーシーのいとこ……それにその名前は……、君はギリシャの神のヘルメス?」
    「そうだよ」
    「通りで子供にしては態度が威圧的なわけだ。いや、失礼。子供に接するようなしゃべり方をしてしまい申し訳ありませんでした、ヘルメス様」

    半信半疑なようだがパーシーのいとこでギリシャの神についても一応知っているのか受け入れてくれたようだ。
    小声でパーシーに尋ねる。
    「パーシー、彼は僕らの世界についてどれほど知っているんだい?」
    「一応、おれがポセイドンの息子だってことや実際に神々や怪物がいるってことは話してあるし怪物も見ることはできないけど存在を知ってるって感じかな。でもポールは神に会うのはこれが二回目だからまだ信じきれてない節があるっていうか、あまりいい感じはしてないみたい」
    「そうか」
    実際に人間たちからしてみれば僕ら神々は基本的にかかわったとしても自分から正体をばらさない限り人間と思われても仕方ない(子を作っても相手が神だとは知らないままの者も大半だろう)から、パーシーの義父であるからには彼には徐々に慣れてもらおう。
    「あー、ミスターブロフィス?」
    「ポールで結構ですよ」
    「じゃあ、ポール。僕のことは普通にヘルメスと呼んでくれ。それと、生きてきた時間なら君たちの何千倍だけど、今の僕は君の家に世話になる身だ。君の話しやすいようにしてくれていい。ただ、つい威圧的な言葉遣いや態度をしてしまうかもしれないが許してくれ」

    一瞬キョトンとしていたが彼はすぐに笑顔になった。
    「わかった。改めて、我が家へようこそ。これからよろしく、ヘルメス」
    ポールには悪い印象は与えずに済んだようだ。
    少し心配そうに僕たちを見ていたサリーとパーシーも胸をなでおろしていた。
    ようやく家人全員とあいさつを終えたところでみんな席に着いた。
    サリーとパーシーが二人分ずつ食器を運んでくる。
    ポテトサラダにカレーとナン、それにマンゴーラッシーが目の前に並べられていく。
    「今日の夕飯はインド料理かい?」
    「ええ、テレビでインド料理の特集があったのだけど、おいしそうねってパーシーと話してて。それで今日作りましょうってことになったの」
    「カレーは青色じゃないんだね」
    「ポール、そんなこと言ってたら本当に次カレーが出てくるときはカレーもナンもラッシーも青くなるよ」
    笑いながらいうパーシーの言葉に目の前の料理がすべて青色になったのを想像してみた。
    ……だめだ、ただの食欲減少ダイエット食にしか思えない。
    けれど彼らはそうなってもさして気にしないようで、サリーに至っては「次は頑張ってみようかしら」と笑っている。
    ジャクソン家のルールとはいえ、今までそんな青色にこだわった料理を食べたことのない僕にとっては慣れるのかが不安だった。


    食事の挨拶をし、あたたかいカレーにちぎったナンをつけ口へ運ぶ。
    カレー自体は普通のどこにでもあるようなカレーだが、ナンのおいしさに思わず目を見開いた。
    ほんのりと自然な甘みを感じる。
    噛めば噛むほど出る甘さはスパイスの効いたカレーと相性抜群だった。
    ポテトサラダはマヨネーズ独特のまろやかな酸味と中に入っている果物がマッシュポテトと混ざって重すぎずさっぱりとした風味を感じさせる。
    既にサリー・ジャクソンの手料理に胃袋を掴まれているのがわかる。
    こんな料理なら毎日食べたい。
    「どうかしら? 神々のお口に合うような高級なものではないけれど……」
    「最高だよ! この料理をいつも食べられるパーシーたちが羨ましいくらいだ」
    「喜んでもらえてよかったわ。まだたくさんあるから食べてくださいね」

    その言葉に甘えて、僕は小さい体であったにもかかわらず二杯も食べてしまった。
    「ごちそうさま。とてもおいしかったよ」
    「ふふ、ありがとうございます。お風呂はパーシーとヘルメスが先に入ってちょうだい」
    「はーい」
    二人して返事をすると食器をキッチンの流しへ持っていく。
    食器を洗い終わったパーシーが僕の分まで洗ってくれた。
    僕たちはそれぞれお風呂の準備をするために部屋に戻った。
    ヘルメス、いとこに背中を流してもらう
    僕がバスタオルを準備していると、パーシーがノックをして部屋に入ってきた。
    「ヘルメス、どうしますか? あなたから先に入ります?」
    「どちらでもいいよ」
    「じゃあ、いっそのこと一緒に入りませんか?」
    「一緒に?」
    「そう」
    彼の提案に驚きを隠せなかった。
    パーシーのことだから、てっきりお風呂に入るときは一人で入りたいだろうと思っていた。
    思春期の男の子はもちろん、パーシーならなおさら恥ずかしがりそうなものだと思っていたけど……。

    疑問に思っていることに気付いたのか、パーシーが答える。
    「おれ風呂入る時って、だいたい体を洗い終わった後お湯につかるんですけど、二人で入ればお湯が少なくてもしっかり浸かれるでしょう?」
    そういうことか。
    確かに人数が増えれば湯の量は少なくて済む。
    「パーシーってシャイだからてっきり一人で入ると思ってたよ」
    「友人と入るのならそこまで恥ずかしくないですよ」
    くすくす笑いながらパーシーは僕のベッドに腰掛けた。
    よかった、僕は彼に友人と思われているようだ。
    そのことが純粋にうれしかった。
    「どうしますか」
    「ん、君がいいなら僕も一緒に入ろうかな。背中流してもらいたいし」
    「……力が強すぎたらごめんなさい?」
    「おいおい、ちゃんと力加減はしてくれよ。こっちは今幼児の柔肌なんだから」
    談笑しながら自分用に今日買ったバスタオルと下着とパジャマを手に取った。
    「さあ、お風呂に入ろう!」
    「本当に狭いお風呂ですけどね」

    部屋を出て向かいの部屋に入る。
    パーシーはユニットバスに入ると、さっさと脱いだ服を洗面所の前においてあったバスケットに放り込んでいる。
    彼にならい僕も服をバスケットに入れると浴槽に入りこんだ。
    「お湯の設定はここでできるのでもし自分だけで入るとき、ぬるかったりしたら好きな温度に変えていいですからね。おれは四十三度で使ってますけど、熱くないですか?」
    彼は暖まったお湯の温度を確かめている。
    手をシャワーのお湯にあててみたけど大丈夫そうだ。
    「うん、僕もこれくらいでいいよ」
    「そうですか。じゃあ早く洗い終わってゆっくり湯につかりましょう」

    カーテンを閉め、それぞれ濡らしたボディタオルにボディソープをつけ泡立てる。
    泡立ちやすい素材だからか、数度くしゃくしゃとすればすぐに使える状態になった。
    腕、首、胴体、足と洗い終えるとパーシーが言った。
    「背中洗いますからタオル貸して下さい」
    「本当に?」
    冗談で言ったつもりだったが彼は実際に背中を洗ってくれるようだ。
    自分ではしっかり手が届かないからありがたくはあるが。
    「じゃあ、頼むよ」
    「はい、頼まれてあげます」
    そんな掛け合いをしているうちに洗い終わり、パーシーも自分の背中を洗い終わってシャワーで汚れを流していく。
    体を洗い終えると次はシャンプーに手をかけるパーシー。
    「どうせだから髪の毛も洗ってあげましょうか?」
    「君楽しんでるだろ」
    彼は僕が言わずとも皆わかりそうな顔で楽しそうに笑う。
    「いや、なんていうか、弟ができたみたいに思えてきて、なんか可愛くってつい」
    「弟って…僕これでも君より四千云歳年上なんだけどな。それに君にはキュクロプスの弟がいただろう?」
    「タイソンはもうかなり大きく育ってますから。あー、ごめんって、すねないで下さいよヘルメス」
    すねてはいないけど僕の機嫌を伺うように頭をなでながら謝るパーシーの反応が面白くて思わず吹き出す。
    「ふふ、君は存外子供っぽいところがあるな」

    笑われたことが恥ずかしかったのか、それとも子供っぽいと子供の姿をした僕に言われたことがいやだったのか、今度は彼がすねてしまった。
    「パーシー、すまなかった」
    「……」
    「パーシー」
    呼びかけてもそっぽを向いたままこちらを見てはくれない。
    本当に怒らせてしまったか……?
    「パーシー、怒ったのかい? もし怒らせてしまったのならすまない、君の反応が面白くて意地悪をしてしまったんだ。だから……その、もし君にまだ僕の髪の毛を洗ってくれる気があるのなら頼みたいんだけど」
    「……本当に?」
    僕のほうを向いたパーシーは機嫌よさそうに笑っている。
    本気で怒っていたわけではないようでほっとした。
    「本当だよ。君がどうしても髪を洗いたいっていうんならね」
    「あははっ! それじゃまるで俺がどうしてもヘルメスの髪の毛洗ってあげたいって言ってるみたいじゃないですか」
    「実際そうだろ?」
    「えー、別にそこまでしたいわけじゃないです」
    彼の笑い声につられて思わず二人して風呂場で笑ってしまった。
    「けど、ヘルメスがどうしてもっていうならしてあげてもいいですよ」
    「しょうがないなぁ。今回は君のためにお兄さんである僕が折れてあげようじゃないか」
    僕の口ぶりにパーシーはまた抑えた笑いをもらす。
    「はいはい、ありがとうございます。ヘルメス『お兄さん』?」
    「何で疑問形なのさ?」
    「なんとなくですよ、なんとなく」
    そんな会話をしながら髪も洗い終わり、お風呂に湯を満たし浸かる。
    適度な湯加減で疲れが吹き飛んでいくような気さえした。
    この体は子供の姿をしているから言うほど疲れてもいなかったけれど。

    温まり、風呂を出るとリビングのほうからチョコレートのようなにおいがしてきた。
    パーシーがリビングに行くのでついていくと、サリーとポールはコップを四つ並べていた(ひとつは僕のプラスチックのコップ)。
    「ちょうどよかった、ココアができたの。二人とも飲む?」
    「うん」
    「僕もいいのかい?」
    「もちろんよ」
    サリーの言葉に甘え、パーシーの隣に座りココアを一口飲む。
    牛乳で少し冷えたのか、やけどもせずにすっと飲めた。
    このココアは市販のものなんだろうか。
    「おれもヘルメスも風呂あがったから、次いいよ」
    「どうする? サリー、一緒に入るかい?」
    「もう! ポールったら」
    「そういうことは子供のいないところで言ってよ」
    ポールの言葉に頬を赤くし困惑するサリーと、少しあきれたように、けれど楽しそうにそういうパーシー。
    彼の言う子供が僕のことを指してるのか彼のことを指しているのかは分からなかったけれど、楽しげな会話に自然とぼくも笑顔になっていた。
    ポールとサリーは部屋へ戻っていった。
    二人ともお風呂に入る準備をしに行ったんだろう。
    僕とパーシーは僕の部屋へ行くことにした。

    しかしこうしてパーシーの家族と話していると思わず考えてしまう事がある。
    オリンポスの神々の間ではこんな談笑をしたのはもうどれほど前だろうか。
    口論なんて日常茶飯事、毎回みんなが頭を痛くしている。
    オリンポス十二神に数えられる神々はどれも力が強ければ我も強い。
    誰かが仲裁に入らなければ、最悪戦争にだってなりかねない。
    今こうして思い返しているだけでも具合が悪くなってきた。

    「ヘルメス、大丈夫ですか?」
    パーシーが僕を覗き込んで呼びかけていたことに全く気付かなかった。
    「ああ、うん。大丈夫だよ。ただ、こんな平和な時間を過ごしたのはすごく久しぶりだと思ってね」
    「それ、初めて会った時も言ってましたよ」
    「そうだったかな?」
    くすくすと笑い「そうですよ」と懐かしむように言う彼に、心が温かい気持ちになってくる。
    彼が「僕」として見てくれて、話をしてくれることがひどく嬉しい。
    サリー・ジャクソンも、ポール・ブロフィスも、僕が神だと知っても家族の一員として僕に接してくれている。
    パーシーが──ペルセウス・ジャクソンという存在が──どうしてここまで誠実で情に熱い人物に育ったのか、ほんの少しだけだがわかったような気がする。
    彼は母親であるサリー・ジャクソンに大切に、ありったけの優しさと愛情をこめて育てられたんだろう。
    だから彼は自身が家族のように大切に思っている者へ、母から受けた愛情のような優しさを与えられるんだろう。
    そして、義父のポールからも何か影響を受けているはずだ。
    初日だけれど、彼とこうして接する機会を得たことで、知らなかった彼の一面を今日だけでたくさん知ることができた。
    これから一年間、一緒に過ごす中でどれほど彼らのことことについて知ることができるのかを考えると、それだけで明日が楽しみでしかたなかった。
    ヘルメス、連絡先を交換する
    「そういえばヘルメスって携帯電話、持ってましたよね?」
    「持ってるけど、どうしたんだい」
    「なにかあった時すぐに連絡取れるようにしておいたほうがいいかなって思って」
    パーシーがポケットからメタリックブルーのスマートフォンを取り出した。
    「おれは電話で話すと怪物をおびき寄せちゃうんで、電話の代わりにメールやスカイプのチャットで会話してるんです」
    「なるほど。じゃあパーシーの電話番号やメールアドレスやスカイプIDを登録すればいいかい?」
    僕も携帯になったままのカドゥケウスを取り出し、連絡先の登録画面を開く。
    パーシーから聞いた情報を入力していき(ついでにジャクソンファミリーのグループも作ってサリーとポールも登録した)スカイプのアプリを立ち上げた。
    「ヘルメスのスカイプID、教えてもらってもいいですか? こちらからグループに招待するので」
    「わかった。はい」
    携帯の画面をパーシーに見せ、パーシーが検索欄に入力していく。
    すぐにリストに追加しますか、の表示が出たのでOKすると、グループに招待しましたの文字。
    メンバーはサリーとポールとパーシーの三人だ。
    「普段はスカイプでチャットすることのほうが多いんですよ。全員に情報を送れるので」
    「楽だよね~。僕らもメールよりこっちを使うことのほうが多いかな」
    「……神々がスカイプでチャットしてるって、なんか変な感じしますね」
    「ひどい言い草だな。僕らだって現代を生きてるんだ。最新技術だって取り入れるさ」
    「見てみるかい?」とオリンポスの神々のグループチャットの画面を見せる。
    内容が内容なのでパーシーは微妙な表情だ。
    「大体実際に会ってる時と印象変わりませんね。でもなんか父さんが携帯を持ってるって不思議な感じ」
    「はははっ、確かに! ポセイドンは携帯とかノートPCとかじゃなくてその一昔あたり使ってても違和感無いって言うか、どちらかというと最新技術使ってないイメージがあるよね。でもポセイドンが携帯やデスクトップPC持ってる理由は君にあるんだけどね」
    「おれ?」
    「そ。まあおいおいわかると思うよ」
    「何ですかそれ。変に気になるじゃないですか」
    気になって仕方ないパーシーを横に、僕はスカイプを少しいじる。
    無事にできたようで、パーシー・ジャクソンがグループに招待されました、の文字が出る。
    「え?」
    「こういうこと。たぶん少ししたらポセイドンから連絡先聞かれると思うから教えてあげたらいいよ」
    「はあ!?」
    あせりだすパーシーがおかしくって、そして今頃この分を読んだ神々がどんな反応をしているのか想像できてまたおかしくなった。
    少しするとスカイプの未読がどんどんたまっていき、たった三分で三十五件もチャットが更新されている。
    開くと案の定なリアクションばかりだ。

     POSEIDON ん!?
     ZEUS おい、ヘルメス?
     ATHENA どういうことです、ヘルメス
     POSEIDON パーシー? どういうことだヘルメス
     APHRODITE まあ、パーシーもこのグループに参加するのね!
     POSEIDON 本当にパーシーなのか? おいヘルメス、説明しろ!
     ARTEMIS ペルセウスもですか。よいのではないですか?
     HADES 先ほどから音がうるさいと思って見てみれば…知らぬ間に増えているではないか。
     DEMETER 私はどうでもいいわ。それよりもペルセポネはどうしているの?
     POSEIDON パーシー、画面は見てるのか? もしかしてまだ見てないか…?
     ATHENA うるさいですよ、ポセイドン。ヘルメス、早く説明なさい。
     DIONYSUS 人が昼寝をしているところにポンポン音を出さないでもらいたいもんですな。
            ペリー・ジョンソンがグループに入ったところで海藻フジツボ親父がうるさくなるだけでは?
     POSEIDON ヘルメス、早く説明しなければお前の宮殿に海水とシャチを送り込むぞ。
     POSEIDON うるさくて悪かったな>アテナ、ディオニュソス
     HADES ペルセポネのことは本人に聞いてくれ。今庭いじりをしている。
     DEMETER ペルセポネ、手伝いに行きましょうか?
     PERSEPHONE 大丈夫ですわ、お母様。それよりパーシーもこれからお話しできるのね。
              何かあった時は助かるわ。よろしくね。
     HESTIA あら、楽しそうなことになっていますね。歓迎しますよ、パーシー。
     ARES あ? なんだよ、あのガキもこのグループにはいんのか。パシリでも頼むかな。
     POSEIDON アレス?
     ARES チッ、ただでさえうざい海藻親父が余計に面倒くさくなってんじゃねぇか…
     APOLLO わぉ! パーシーも今度からここで会話できるんだ!
          ぜひおれの俳句でも聞いてもらおうかな。これからよろしく!
     POSEIDON やめろ、わしの息子に変な俳句を聞かせて頭痛でも起こしたらどうするんだ。
     ARTEMIS やめなさいアポロン>俳句
     HEPHAESTUS 害にならないのであればどうでもいい。一応よろしく。
     APHRODITE あなたそういう対応するからつまらないのよ。
     HEPHAESTUS 放っとけ。
     HERA 珍しくにぎやかだと思ったら、ペルセウス・ジャクソンがこのグループに参加したのですね。
         まあ、彼は気に入っていますから私は歓迎しますよ。
     ZEUS ヘラ、本気か?それに気に入っているというのは初耳なんだが。
     HERA 本気ですわ。彼は数ある英雄たちの中で大切なものへの忠誠心が高くとても信頼できます。
     POSEIDON ヘラに気に入られているのが少し恐ろしいが、パーシーは信頼してくれて大丈夫だぞ。
     HERA あら、私に気に入られているのが恐ろしいとはどういう事かしら? ポセイドン。
     POSEIDON いや、何でもないよ、姉さん…。
     ZEUS そういうところだと思うぞ…>ヘラ
     POSEIDON それよりヘルメスはまだなのか? パーシーでもいいんだが。
            むしろパーシーがいいんだが。

    ……なんて神々の会話にあわあわと携帯の画面と僕を交互に見てはあわてるパーシーの様子は面白い。
    いい加減ポセイドンがしびれを切らしてきたから出ることにした。

     HERMES おまたせ、おじさん。それでは僕のほうから説明するよ。
           今回、僕が居候させてもらうのは話題に上がっていたペルセウス・ジャクソンとその家族の家。
           パーシーとの連絡先を交換したついでだし、スカイプをしてるとのことで招待したんだ。
           ちなみにパーシーはというと…
     HERMES (困惑するパーシーの画像)
     HERMES こんな感じで困ってるよ(笑)勝手に招待されたからね(笑)
     POSEIDON 合意の上でじゃなかったのか。しかし困惑しているパーシーは愛らしいな
     HERMES ポセイドン、パーシーこの会話見てますからね?
     POSEIDON それがどうした。親が我が子を愛らしいと思って何が悪い。
     HERMES (携帯を見つめ下がり眉で照れながらもうれしそうなパーシーの画像)
     HERMES よかったですね、おじさん。パーシーもまんざらでもなさそうですよ。
     PERCY ヘルメス、人を勝手に撮って画像をアップするのやめてくれませんか。
     POSEIDON パーシー!
     PERCY こんばんは、父さん。えっと、それから皆さん、お邪魔します…?
     HESTIA いらっしゃい、パーシー。これからよろしくね。
     APOLLO よろしくパーシー!! いろいろ話したいな!
     ZEUS …まあ、つかえないでもないからな。今回は歓迎しよう。
     HERA 可愛い弟の息子ですから、歓迎してあげますよ。
     ARTEMIS 他の者なら微妙ですがあなたなら歓迎します。よろしく、パーシー。
     APHRODITE うふふ、よろしくねパーシー♪ 恋の相談とかバンバンしてくれていいわよ!!
     HEPHAESTUS よろしく。
     PERSEPHONE 歓迎するわ、ペルセウス。
     DEMETER まあ、歓迎しましょう。ところでペルセウス、あなたはシリアルを食べたほうが良いですよ。
     HADES デメテル、なんでもかんでもシリアルを押し付けるのはいい加減にやめろ。
          …まあ、否定はせん。よろしく。
     DIONYSUS まさか訓練所やオリンポス以外で会話する羽目になるとは思わなかったが…。
            こうなってしまった以上は仕方あるまい。お前さんとの付き合いにも慣れたからな。
     ARES 実際に会うんだったら憂さ晴らしに殴ることもできるんだがな。
         まああんま話すこともないだろうからグループに参加することくらいは許してやるよ。
     POSEIDON 話したくなければ話さなければいいだけだろう?
            それよりようこそ、パーシー。
            お前とこうして話す機会が得られるとは思わなかったからうれしい誤算だ。
            ヘルメスにはあとで何か礼をしよう。
     HERMES やった! ありがとうおじさん!
     PERCY でも俺読み書き苦手なので急いで書いても時間かかりますからね。
          あと良かったですね、ヘルメス。
     POSEIDON わかっている。ゆっくりでかまわないさ。
     HERMES うん! 得した!

    彼の参加報告と現状報告をし終えたところで今日はもう寝ると告げ、アプリを閉じた。
    パーシーも最初困惑していたが、ポセイドンと話せたことがうれしかったのか笑顔のままだ。
    「どうなるかと思ったけど、君が喜んでくれたみたいで何よりだ」
    「父さんと話せるのがうれしくって…ありがとうございます、ヘルメス」
    「こんなことで君とポセイドンに礼を言われるとは思わなかったよ」
    けれど、彼らの言いたいことはわかる。
    神々とハーフはあまり会話することがない。
    親子であればなおさら、ルールによって縛られている神々は話したくても他の神の目を盗んで話すしかない。
    だからこうしてほかの神々に内容は筒抜けになってしまうが、親である神と話す機会を得られるという事はとても大きなことだ。
    住まわせてもらうためのお礼にしてはいささか安すぎる気がするから、終わったら彼らに何か改めて礼をしたいくらいだ。
    守銭奴だの何だの言われる僕にしては珍しくそんなことを考えながら、ココアの残りを飲み干し、パーシーがコップを受け取った。
    自身が使った食器は使い終わったらすぐに洗う事で汚れがこびりつかないようにしているようだ。
    そのほうがキッチンもきれいなままだしいいと思う。
    僕の分はパーシーが一緒に洗ってくれた。
    せめてもう少し身長があれば自分で洗えるのに、と思うと少し情けなかった。
    「さ、洗いものも終わりましたし、歯磨いて寝ましょうか」
    「うん」
    促され、今日買ったばかりの歯ブラシに歯磨き粉をつけて丁寧に磨いていく。
    「ヘルメス、どうでした? 今日一日」
    「嫌な気分にならなかったのなんて、本当に久しぶりだよ。君たち一家は事あるごとに言い争ったりしないし、お互いにたいして踏み込みすぎない距離感がいいね」
    パーシーが僕の言葉にうなずく。
    「神々は個が強いのですぐ喧嘩になるんですね?」
    「そう。しかも時には人の領域にまで踏み込んできて文句を言ってくる。たまったもんじゃないよ本当」
    「お疲れ様です」
    同情されるのはあまり好きではないが、そっと頭をなでるパーシーの手が心地よくて歯磨きをしている途中なのにうとうとしてしまった。
    「今日は新しい環境になっていろいろ大変だったでしょう? もう寝ましょう」
    パーシーは口を濯いで歯ブラシを元の場所に戻すとそういった。
    彼の言葉に従い、僕も歯磨きを終えると新しい部屋へと向かった。

    「おやすみなさい、ヘルメス」
    「おやすみ、パーシー」
    部屋の前で就寝の挨拶を告げ、それぞれ部屋に入る。
    ベッドに身を横たえるが、冬のためにベッドは冷え切っており正直上着を着て寝たいくらいだった。
    静まり返った部屋で目を閉じ眠りに備える。
    ……けど、全然眠くならない。
    さっきまで眠かったのがウソみたいに目が冴えている。
    今までいろいろな場所で寝てきたし、寝付きもいいほうだから自分の家じゃないからと眠れなくなることなんてなかったのに。
    しかし少し考えて気がついた。
    僕は興奮しているんだ、この新しい環境に。
    例えるなら子供たちが遠足や修学旅行の前日にわくわくして眠れないような、そんな感じ。

    今までほとんど休むことなく働き続け、時に恋人を作り、子を作るだけの代り映えのしない日常が一気に変わってしまったことで罰を受けているはずなのにわくわくしてしまっている。
    しかも同居人はタイタン族の王クロノスやガイアひきいる巨人族との戦いを中心で生き抜いた英雄のあパーシー・ジャクソン。
    彼の私生活はどうなっているのか、間近で知ることができる機会。
    こんなに楽しいことはないんじゃないか?
    僕はゼウスからの罰を罰とはとらえず、休日として受け止めることにした。
    今まで働き詰めだったのだ、褒美をもらってもいいだろう。
    高揚した気分がまだ落ち着かなくて、部屋を抜け出しリビングへ向かう。
    キッチンに着くと台の代わりに椅子を使ってコップを取り、冷蔵庫の中のミネラルウォーターをコップに注いだ。
    一気に半分まで飲み干し、溜息を吐く。
    冷えた水で体が少し落ち着いたような気もするがそれでも目は冴えたままだ。
    「パーシー、まだ起きてるかな」
    時計を見ると午後十一時四十分を指していた。
    若者からしてみれば起きていても不思議ではない時間だが、彼の部屋からは音がしなかった。
    やはり眠ってしまっているのだろうか。

    コップの水を飲み終え、洗って元の場所へ直すと、なるべく音をたてずパーシーの部屋へ向かった。
    小さくノックしてみる。
    もし眠っていたらおとなしく部屋へ戻るか──
    そう考えていると中から「はい?」と返事が聞こえた。
    「パーシー? まだ起きてるかい?」
    僕の声に、パタパタとスリッパでドアのほうに歩いてくる音が聞こえる。
    扉を開け、パーシーがかがんで族と目線を合わせた。
    「どうかしましたか?」
    「その、ちょっと寝付けなくってさ、どうしようかと思って……パーシーは起きてるかと思って見に来ただけ」
    正直寝てる時にそんな理由だけで起こされたら僕なら腹を立てるけど、パーシーは微笑んで僕を部屋へ招き入れただけだった。
    「何か知らない場所で眠るのって結構大変ですよね。わくわくしちゃって寝付けないっていうか」
    「! そう、それ! 今の僕まさにそんな感じ」
    「あははっ、ヘルメスでもそんなことあるんですね」
    「僕自身、ちょっと驚いてるよ。こんなこともあるのか、ってね」
    パーシーに連れられ、彼のベッドに入ってそんなことを話していた。
    不思議と、パーシーと話しているとだんだん眠くなってきた。
    普段とは違い静かに響く彼の声は、水のように耳から浸透しては思考を鈍らせていく。
    暖まった毛布とそばにある体温が心地よかったからかもしれない。
    寒い夜にはひと肌恋しくなるし、きっとそうだろう。
    「……ヘルメス? 今日はここで寝ますか?」
    「うーん……そうだね……また出るのも寒いし……」
    もはや意識ももうろうとし始めていたため、恥じらいも何もない返事をしてしまった。
    きっと明日の朝、起きたら恥ずかしい思いをするだろうけど、それすらももう気にならなかった。
    「おやすみなさい、良い眠りを」
    「ん……おやすみ……」
    眠りにつく直前に僕の頭をなでた手は、久しく会っていない母を思い出させる温かなものだった。
    あとがき
    やっと書き終わったああああああああああ!!!!
    パソコンがつながらなくなって早数か月、その間に気分が乗ってノートに書きなぐってたこのお話。
    ようやくパソコンが修理から戻ってきたのでiPadなるくそ入力がめんどくさい端末で打ち込みしてたのを
    キーボードで打てる、この!!!快感!!!
    キータイピングする時のこのカタカタいう音!!!最高だね!!!
    あとiPadと違ってわざわざキーボード見る必要がないのマジ最高!!時間短縮できるできる!
    最高!!!!!控え目に言って最高!!!
    私はこれからもデスクトップパソコンを買い続けるぞ!!!!!

    ということでずっと書きたかった幼児になった神がパーシーと一緒に暮らすお話、安定のヘルメスで書いてしまいましたがとても楽しかったしショタヘルメスかわいすぎかよ~~~~~と新しい扉を自分で開きました最高。
    なにより作業用BGM流せるのマジ最高じゃない?^q^*
    年賀状書くのを放棄してラストスパートかけて打ち込みしてた甲斐があったよね。
    表紙絵はこの話書き始めてテンションあがってた頃に書いてたものだからちょっとヘルメスもうちょっと可愛く書いてあげればよかったなって後悔してる。
    いいもん!パシたん可愛くかけたから!!
    さて、これであとはサイト更新と年賀状だけだ。
    すみませんウソつきましたクリスマスが残ってましたすみません。

    今年もまだまだ忙しいですね。
    私も仕事がパシちゃんの誕生日祝い以降いろいろあって忙しくなったために休日も減ったし一日の労働時間も増えたのでファーwwwwwwwwwwwwってなってるけどお給料上がったので頑張ります。
    どんなに忙しくても創作活動は続けたいな。
    おそらく小説では2016年最後の作品になりますが来年もよろしくお願いいたしますです。-ω-
    まあまだまだ絵とかUPすると思うけどね!!!!

    ……っていうのが当時(2016.12.19)の後書きっぽい。テンションな高いな~~~~~^q^
    めっこり Link Message Mute
    2018/07/11 19:19:43

    幼児ヘルメスとパーシーの一年間

    数々の悪戯のせいでゼウスの怒りに触れてしまったヘルメス。
    幼児の姿にされてしまい、人間界で一年を過ごさなければならないという。
    果たしてヘルメスは一年間、無事に人間界で過ごせるのか?
    そして再びオリンポスに戻ることはできるのか?

    ……っていう話を以前ピクシブにもあげてたけどこっちにもうp。
    続き描いたらここにうpすると思われ。
    多分完結したら本にすると思う。
    #ヘルパシ  #POlympians  #二次創作  #PJO  ##小説

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