飛行 レグルはキラを背に乗せて、ゆったりと砂漠の上空を飛んでいた。巨大な翼が風を切る音が聞こえる。カラリと乾燥した空気がキラの体を押していた。キラは改めて、ドラゴンて本当に居たんだわ、と驚いた。下に目をやると、点在する岩山が小さな石ころの様に見える。
「何を考えている?」
ずっと黙って飛んでいたレグルが口を開いた。
「ええ。ドラゴンって実在したんだな、って」
「フフフ。そうとも。大昔にはお前の住んでいたオアシスにも立ち寄ったことがあるぞ。水を飲みにな」
「そうなの? 誰もそんな事教えてくれなかったわ」
「無理もない。随分と昔の事だからな」
「それで、レグルは砂漠で何をしていた訳?」
「言っただろう? 昼寝だ」
「ふーん。ウフフ」
キラは吹き出した。
「ドラゴンて恐ろしいものだと思っていたけど、何だか可愛いのね」
「馬鹿にしてるな」
「してないわよ。それより、王都って何かしら?」
「そうだな、お前は知らんだろうが、この辺りはサハル王家の支配下にある王国だ。お前の村も、ウルの街も、皆サハル王国の一部だ。王都ハーナブにはアラゴア王と王妃ペルタ以下、王族が住んでいる。この国の首都だ。美しい街だぞ」
「ハーナブ……。初めて知ったわ。王族って何かしら? 村長みたいなもの?」
「ある意味合っているが、違うな。村長よりもっと大きな力を持ち、それに比例して責任も重い。何しろ一国の運命を変える程の権力を持っているのだからな」
「権力……」
キラは身震いした。その権力者とやらがキラを砂漠へ追放したのではなかったか?
「権力者にも色々いる。アラゴア王は勇敢な王だし、ペルタ王妃は慈悲深い方だよ」
キラは王都ハーナブを想像してみた。首都であるからには、きっとウルの街より大きいのに違いない。