プロビデンス自称「魔法使い」でアメコミの歴史に残る名作「ウォッチメン」の作者(脚本)であるアラン・ムーアによる「ネオノミコン」の前日譚。
「覚悟のススメ」「シグルイ」「衛府の七忍」「劇光仮面」などの作者の山口貴由が「2022年に読んだベストコミック」の1つにあげている。
前作(と言うか後日譚)である「ネオノミコン」の粗筋は、クトゥルフ神話の正体は「未来に起きる事の予言」であり、クトゥルフは、まだ、存在しておらず、現代においてキリストの誕生のグロテスクなパロディとして誕生する、というモノ。
本作の主人公であるニューヨーク・ヘラルドの記者のロバート・ブラック(もちろん、ラブクラフトの「闇をさまようもの」の主人公のロバート・ブレイクのパロで、そのロバート・ブレイクはラブクラフトの友人であるロバート・ブロックのパロという2重のパロ)は、あるモノを求めて取材を続けるが……行く先々で、ラブクラフトの小説を思わせる出来事に遭遇し……その合間に、我々が知るアメリカ(要は現代アメリカでも都市部)では大した秘密ではないが、舞台になっている時代では隠し通さなければならない主人公の秘密についての記述が差し挟まれる。
そして、主人公は行く先々で勤め先である「ニューヨーク・ヘラルド」の意味で「ヘラルドのロバート・ブラック」と名乗る。
しかし、主人公が出会う怪しい人々は、「ヘラルド」を文字通りの意味「伝令/先触れ」の意味に解釈してしまう。
だが、これは、いわゆる天丼ギャグではなく、主人公は、どうやら知らない内に何者かによって「予言者」の役割を背負わされているらしいのだが……?
アラン・ムーア/ ジェイセン・バロウズ
柳下毅一郎 (翻訳)
国書刊行会 (2022/11/25)