自分の特徴あげてもらってそれ全部封印したSS書くタグのやつ封じきれなかった話
疲れて寝たのにあんまり長く寝ていられなくなってきて、ああ俺も歳食ったもんだよなぁなんてしみじみ感じ入る午前七時より少し前。くぁ、とでっかい欠伸をして首の後ろと頭をかけば、昔よりもパサついてきた髪が指に絡んだ。うっわ、抜け毛ちょっと多いんじゃない?
バキバキと強張る背中を庇うように起き上がって伸びをする。あいたたた。ヤだなぁ、もう。あの頃を思えば断っ然に環境改善してるってのに、あの頃よりちょっとしんどいとか悲しすぎんでしょ。なまじ薄ぼんやりと覚えてる夢が必死に復興の為に走り回ってた頃なもんだから、そのギャップが朝っぱらから切ないのなんの。
あー、やめやめ、顔洗ってすっきりしよう。そう切り替えて部屋から出たら、
「うっわ、小汚ぇ」
居間のソファで、家主たる世界の英雄がぶっ倒れてた。
おそらく深夜に帰ってきてスイッチ切れてここで沈没したのだろう。なに酔いつぶれた学生みたいな真似してんのよ、いい歳して。
(そう、君も俺も、もうそんな年齢なんだよねえ、千空ちゃん)
目ヤニつけて半開きの口から涎垂らして、やだねぇみっともない。前までだったら、しょうがないなぁなんて微笑ましくも思えてたけど、今じゃ『お互いオッサンくさくなっちまったなぁ』と再確認するばかりだ。
そういや、前に似たことポロッと語ったら倦怠期? と笑われたっけ。何それって笑ったけど、似たようなもんかもね。恋のような盲目さを俺はもう持てやしないし、ただただ君のすべてが愛おしいなんて思えもしない。
君の存在を知った頃は、その実在が希望だった。君と出会ってからの頃は救いだった。君と駆け抜けた頃は、君と成し遂げるすべてが楽しくて仕方なかった。君の期待に応えて、自分だからこそ出来るのだと思って働くのはやりがいもあった。
でもさぁ。実のところ、俺はもう知ってんのよ。俺にしか出来ないことって多分ない。限られた人間の中、その中では出来るのが俺だったってだけのことで、今じゃ俺の代わりは多分探せば居る。まったく同じようなのが居なくても、案外別のことで穴埋めできる。代替品はどこにでもある。
ただ君はひとつのものに愛着をもつ性質だから、代替品がどこかにあってもわざわざ探さずに俺をいまだに隣に置いてるだけなんだろうと思う。本当は、君はきっと俺じゃなくたってよかったし、俺もきっと君じゃなくってもよかったのだ。たまたま居たから、今がある。
早めに離れていたら別の生活があったかもしれない。それでも世界をかけずり回って定住できない俺に君が部屋を用意したから、俺の帰る場所を君が用意してくれたから、情けなくも君のその愛着に縋って今も傍らの席を死守しているのだ。その癖、盲目に君を思い続けているわけじゃないのだから、いやはや救いようのない男である。
(でも案外みんな、そんなもんなのかねえ?)
周りに多いから基準がブレがちだけど、本来一途に思い続けていられる人は稀有なもんだし。感情なんて変わるもんだし?
好きだったことがどうでもよくなったり、嫌いだったことがそうでもなくなったり、そんな風に変わりながら、日々を過ごして、そんで君の愛着も薄れたり。そうなったらなったで、惰性でそのまんまの関係を続けさせるよう宥めすかしてみたり泣き落としてみちゃったり。それが続いていつの日かハゲたり皺くちゃだったりシミだらけだったりするクソジジイになって、老けちまったとお互い指さしてゲラゲラ笑い合うようなことがさ、あるかもしれない。ないかもしれない。あればいいな。
「年取ると感傷的になるのかな~……」
ダメだ。今日も仕事あるのに余計なこと考えるのはやめよう。とりあえず目の前の事をひとつずつこなすのが良いよね、というわけで。
「んなとこで寝てると腰いわすよ~、千空ちゃん! 起きて部屋で寝て! じゃま!」
揺り起こす、なんて優しい真似をもうする気が無い俺は、遠慮せずにソファの上から蹴落とした。
↓封じたつもりだったものたち解説↓
・ツラがいいと思ってる→小汚い
・かっこいいゲ→オッサン気味で情けなく
・丁寧な背景描写→ほぼモノローグ舞台背景説明なし
・周縁のひと→居ない
・いなくなるゲ→ずっと居る
・プライド高いゲ→いつものより自負低め
フォロワーさんの判定→老化したゲがかっこいいからアウト/まだ背景描写が消し切れてないからアウト
封じなかった場合の話
遮光カーテンで遮りきれなかった朝日が部屋をぼんやり照らす。疲れて寝たのにあんまり長く寝ていられなくなってきて、ああ俺も歳食ったもんだよなぁなんてしみじみ感じ入る午前七時より少し前。くぁ、とでっかい欠伸をして首の後ろと頭をかけば、昔よりもパサついてきた髪が指に絡んだ。うっわ、抜け毛ちょっと多いんじゃない?
バキバキと強張る背中を庇うように起き上がって伸びをする。あいたたた。ヤだなぁ、もう。あの頃を思えば断っ然に環境改善してるってのに、あの頃よりちょっとしんどいとか悲しすぎんでしょ。ベッドの上、上体を起こしたままため息を吐く。なまじ薄ぼんやりと覚えてる夢が必死に復興の為に走り回ってた頃なもんだから、そのギャップが朝っぱらから切ないのなんの。
あー、やめやめ、顔洗ってすっきりしよう。そう切り替えて部屋から出たら、
「うっわ、小汚ぇ」
居間のソファで、家主たる世界の英雄がぶっ倒れてた。
おそらく深夜に帰ってきてスイッチ切れてここで沈没したのだろう。なに酔いつぶれた学生みたいな真似してんのよ、いい歳して。
(そう、君も俺も、もうそんな年齢なんだよねえ、千空ちゃん)
目ヤニつけて半開きの口から涎垂らして、やだねぇみっともない。ちょっと渋い感じと中身の若々しさがかっこいい~! とか言われてるらしいけど、そんなお嬢さん方に見られたら幻滅モンよ? 引き抜いたネクタイ握りしめて、脱いだらしい靴下は丸まってその辺転がってて、ソファには何とか落ちない程度に寝転がって。……床で倒れてなかっただけマシかな? 脱いだ上着が背もたれに載せてある辺りはエラいなって思う。
居間のドレープカーテンを開けて外を見たら薄曇りの空だった。それでもその明るさは、寝転ける千空ちゃんを照らすには十分だ。皺、増えてきたな。よく笑うからか口周りの皺けっこうあんのよね。復興前を全盛期としたならば容色も衰えたと言えるだろうが、ちゃんと整えたら整うんだから羨ましい顔だよ。
窓に寄りかかり、眠る姿を眺めやる。前までだったら、しょうがないなぁなんて微笑ましくも思えてたけど、今じゃ『お互いオッサンくさくなっちまったなぁ』と再確認するばかりだ。
そういや、前に似たことをポロッと語ったら倦怠期? と笑われたっけ。何それって笑ったけど、似たようなもんかもね。恋のような盲目さを俺はもう持てやしないし、ただただ君のすべてが愛おしいなんて思えもしない。
君の存在を知った頃は、その実在が希望だった。君と出会ってからの頃は救いだった。君と駆け抜けた頃は、君と成し遂げるすべてが楽しくて仕方なかった。君の期待に応えて、自分だからこそ出来るのだと思って働くのはやりがいもあった。
でもさぁ。実のところ、俺はもう知ってんのよ。俺にしか出来ないことって多分ない。限られた人間の中、その中では出来るのが俺だったってだけのことで、今じゃ俺の代わりは多分探せば居る。まったく同じようなのが居なくても、案外別のことで穴埋めできる。代替品はどこにでもある。
ただ君はひとつのものに愛着をもつ性質だから、代替品がどこかにあってもわざわざ探さずに俺をいまだに隣に置いてるだけなんだろうと思う。俺は当たり前のように洗面所に歯ブラシを置いていて、君は当たり前のように買い置きを俺の分まで用意していて、一緒に居るのが当然みたいに過ごしているけれど。本当は、君はきっと俺じゃなくたってよかったし、俺もきっと君じゃなくってもよかったのだ。たまたま居たから、今がある。
早めに離れていたら別の生活があったかもしれない。それでも世界をかけずり回って定住できない俺に君が部屋を用意したから、俺の帰る場所を君が用意してくれたから、情けなくも君のその愛着に縋って今も傍らの席を死守しているのだ。その癖、盲目に君を思い続けているわけじゃないのだから、いやはや救いようのない男である。
(でも案外みんな、そんなもんなのかねえ?)
周りに多いから基準がブレがちだけど、本来一途に思い続けていられる人は稀有なもんだし。感情なんて変わるもんだし?
好きだったことがどうでもよくなったり、嫌いだったことがそうでもなくなったり、そんな風に変わりながら、日々を過ごして、そんで君の愛着も薄れたり。そうなったらなったで、惰性でそのまんまの関係を続けさせるよう宥めすかしてみたり泣き落としてみちゃったり。それが続いていつの日かハゲたり皺くちゃだったりシミだらけだったりするクソジジイになって、老けちまったとお互い指さしてゲラゲラ笑い合うようなことがさ、あるかもしれない。ないかもしれない。あればいいな。
「年取ると感傷的になるのかな~……」
ダメだ。今日も仕事あるのに余計なこと考えるのはやめよう。寄りかかっていた窓から離れ、眠る相方の傍らへ。とりあえず目の前の事をひとつずつこなすのが良いよね、というわけで。
「んなとこで寝てると腰いわすよ~、千空ちゃん! 起きて部屋で寝て! じゃま!」
揺り起こす、なんて優しい真似をもうする気が無い俺は、遠慮せずにソファの上から蹴落とした。
もういちど封じようとした話
「千空ちゃ~ん……!」
「あ゛?」
ルビで『ドラえも~ん!』とでも振ってありそうな声が聞こえて振り返ったら、べそべそしているメンタリストが立っていた。
「……は?」
女装で。
「聞いてよ~! 宝島の女装の話が出て、見たいって言うから張りきって着替えたのね。なんやかや盛り上がってたらセクハラまがいのことされちゃって」
「あ゛!?」
「女の子相手になってない! って見本みせてあげようかと陽ちゃん相手にキャバクラっぽく茶番してたら、聞きつけた羽京ちゃんにしこたま𠮟られた……」
「馬鹿か?」
「だって他の女の子に何かしたら困ると思ってえ~!」
ぴえん、じゃねえんだわ。大方、子どもにみられたら教育に悪いだの風紀が乱れるだのと𠮟られたのだろう。
「男の女装だからこそ余計に軽んじられて悪ふざけがエスカレートしやすいし、フィジカル面で最下層なんだから何かあったら勝てないのに自分から率先して悪ノリ煽ってどうするの、こんな事で問題起きたら誰も得しないでしょって……」
思ったよりガチの𠮟られだった。流石の羽京先生だわ。がっくりと肩を落として、ゲンが言う。
「次やる時はおさわり厳禁で舞台上だけにする……」
「懲りろよ」
「だって予想外に反応よかったんだもん、主に女子から」
「まさかの」
「次回はメイクと衣装は任せて! って言われた」
「杠ぁ……!」
「ちなみにメイクって言いだしたのは南ちゃんね」
「何なんだよ、女子共のノリは」
呆れ果てたもんだ。そういや宝島でのアマリリスも張りきっていやがったな。何がいいんだ、野郎が女装して。デカいため息を吐いた俺を、ゲンがじっと見つめる。コッチ見んな。思わず顔を顰めたら、小首を傾げて彼が訊く。
「……俺の格好、それなりに見られる出来ではあると思うのよ? そんなにコレ、駄目?」
その科の作り方も妙にサマになっているのが地味にイラつく。
実際、出来の良い女装なんだろう。女にしてはデカいし筋張っちゃいるが、元の面影を残しつつもちゃんと顔は女らしくなっている。そうなのだ、いっそのこと誰か分からない女装なら良かったのだ、けれども確実に元が分かる見目で、なのに女の顔になっていて……
「……気持ち悪ィ」
ゲンだと分かるのに、ゲンじゃねえ他人みたいで。
「そっ、……かぁ……」
洩れ出た本音の所為でやっちまった、と気付いたのは、相手から出た相槌があまりにも弱弱しかったからだ。
「ゲ」
「いや! 大丈夫! あの、俺もね? 千空ちゃんがノってくるとは思ってなかったし女の格好の俺にグラッとされたらキツいしむしろ否定されるの期待してたとこはあるの! ただ、その、あの……」
うろうろと辺りを見回して、ちらと俺を上目づかいに見て、それから視線を逸らし、
「……そこまでのガチトーンで言われるのは予想外だったから……」
力なく呟いた。やめろ、悄気るな、その姿でアンニュイな雰囲気を作るな。
「おい、悪かったって」
「いや……千空ちゃんこういうノリ好きじゃないのに悪ノリしすぎた俺がいけない……」
「凹みすぎだろ、メンタリストの名が廃るぞ」
「いくら俺でも千空ちゃんからのガチトーン蔑みをケロッとして受け流すとかリームー! それで名が廃るんなら返上する!」
クッソ面倒くせぇな、コイツ!? ガキの癇癪かよ!? ため息を吐いたら、怯えるように少し肩を跳ねさせる。落ち着け、これはゲンだ、俺より年上の男だ、見知らぬ女を苛めてる訳じゃないのだからこれはいらぬ罪悪感だ!
「あ゛ー……あのな、ゲン」
「……なに」
「気持ち悪いって思うのは、確かだ」
「まだ傷口抉るの!?」
「落ち着け、聞け。俺が気持ち悪いって思ってんのは、テメーだって分かってんのにテメーじゃないようにしか見えなくてバグってるみてえだからつい言っちまっただけで、女装してるテメー本人を気持ち悪いって言ったわけじゃない」
「……そうなの?」
「おう。つーか女装自体がキメェって思ってたら宝島で何言われようと拒否ってたわ」
「……、そっか」
「誤解させたのは、悪かった。演出やらで今後もテメーが着たとして、それを気持ち悪いとは言わねえよ」
「千空ちゃん……」
ホッとしたような顔で、ゲンじゃないようなゲンが俺を見つめる。
「今の、ゴイスー面倒くさい彼女のご機嫌とろうとしてる彼氏っぽい……!」
「そう思ってんならとっとと持ち直してくんねえかなあ、メンタリスト様よぉ!」
「よし! わかった! 脱ぐ!」
「はぁ!?」
「コレあれだ、さっきまでのロールプレイも相まって格好に思考引きずられてる! から! 脱ぐ!!」
「待て待て待て!」
アホか、着替えはどこに持ってんだよ! ねえだろ!
「その顔で半裸になって出てく気かよ!? 完っ全に俺が何かしたって誤解受けんだろうが!」
「布か毛皮でも羽織ればいいじゃん!」
「余計に何かあったように見えるじゃねえか、せめて顔落としてから脱げ!」
「それこそ化粧落としいるもん!」
「もんじゃねえよ、だから脱ごうとするな! あ゛ー、面倒くせええええ! 羽京ー! 羽京ー! 聞こえてんだろ頼む来てくれ! このアホ止めて回収してくれ!」
その後、俺の叫びを聞きつけて文字通りすっ飛んで来た羽京がゲンのことを回収していった。なおゲンへの説教ついでに俺まで『痴話げんかに巻き込まないで』と苦言を呈されたのは余談である。解せない。
↓封じたつもりだったものたち解説↓
・ゲが干空ちゃんはつくづくツラがいいなあと心から思ってる→話題に触れない
・かっこいいゲ→かっこよくはない
・丁寧な背景描写→描写ほぼなし
・周縁のひと→周辺のうきょーさん
・いなくなるゲ→いる
・プライド高いゲ→凹みまくり