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    家政夫、頼んでませんけど!?一日目こちらはハデス×パーシーのカップリングの話です。
    現時点ではその要素が微塵もないんですがね!
    もし続いたらそこら辺入れていきたいなという気持ちで書いてるので一応ハデパシです。

    好みでない方は回れ右~!
    大丈夫な方は次のページからどうぞ!

    よく晴れた風の気持ち良い六月、今日は平和な一日になりそうだと思いながら洗濯物をたたむ。ハーフの日常では平和な日を送れないことこそ日常といってもいいかもしれない。たまの平和は本当に貴重だ。この日も例に漏れず、おれの平和はインターホンのチャイムによって早くも崩れ去った。
    鳴らされたインターホンの液晶画面を映し、相手を確認する。
    「…………あの、何の用ですか?」
    「ペルセウス・ジャクソンか。居るのならさっさとここを開けろ」
    「ええ……嫌だっていっても?」
    「こちらとて好んでお前に会いに来ているわけではない! ゼウスの馬鹿のせいでこんなところまで歩いてくる羽目になったんだ! さっさと開けろ!」
    何で神々って人の平穏を壊すのが得意なんだ? ハデスは苛立った様子でインターホンのカメラをにらんでくる。しかたなく玄関の鍵を開けた。チェーンをつけた状態のままハデス以外に誰も居ないことを確認してハデスを招き入れる。
    「どうぞ」
    「遅い」
    一瞬脛でも蹴ってやろうかと思ったけど、後で仕返しがとんでもないことになるのは目に見えているので我慢する。人の家のソファに遠慮なく座り込んだハデスに対し、少し腹を立てながら飲み物を用意しにキッチンへ向かう。
    「コーヒーと紅茶、どちらがいいですか?」
    「……紅茶は何がある?」
    「えっと、ダージリンとかアールグレイとか、あとはアップルティーとかグレープティー、ピーチティーがありますね。ティーバッグですけど」
    「ピーチティー」
    おっと予想外だ。ダージリンを入れようとしていた手を止め、ピーチティーの袋からティーバッグをひとつ取り出す。
    「はちみつかシロップいります?」
    「いや、いらん」
    「わかりました」
    ケトルのお湯をカップに注ぎ、ティーバッグを揺らす。しっかり茶葉の風味が出たと思われるあたりで取り出し、ハデスの前に出した。おれの分はカフェオレだ。スティックタイプって楽だからいいよな。

    「それで……ハデスおじさんは何でここに?」
    「ゼウスだゼウス! あいつときたら自分のやらかしたことがヘラにばれそうだからとわしに責任を丸投げしようとしてきた! 断ったらこれだ。神としての力を奪われ、お前の元で一ヶ月ほど手伝いをしてこいだと。その間の冥府の仕事はどうしてくれるんだ? まったくあの馬鹿にはいつも腹が立つ!」
    足は貧乏ゆすりが止まらず、舌打ちをするとハデスはピーチティーを一口飲んだ。
    「やはりティーバッグでは旨味がない。次作るときは本物の桃を入れておけ」
    「はぁ? 次っていつです? ていうか無茶言いますね……毎回わざわざ買いに行かなきゃいけないじゃないですか」
    「ダージリンでもなんでもいい。ストレートの紅茶に果物をつけておけばフルーツティーが簡単に出来上がるし甘味料も必要ないし自然の甘さで楽しめるし果物がうまい」
    「おれの話聞いてます?」
    フルーツティーの作り方を聞いたところでおれあんまり紅茶飲まないんだけどな。……母さんたちに作るときの参考にでもするか。
    「……で、もう一人のおじさんの濡れ衣でハデスおじさんは今ここに居る、と……。おれの手伝いをするために?」
    「そうだ」
    「手伝いねぇ……手伝いなんていわれても何も頼むことなんてないんですけど……」
    「帰っていいか」
    「いいんじゃないですか? その方がおれも助かりますし」
     ハデスが立ち上がり外へ出ていこうと扉を開いた瞬間、目の前の道路(道路であって欲しい)に雷が落ちた。
    「……」
    「……」
    二人して思わず無言で外を眺め、リビングに戻ってソファに座りなおす。

    「だめみたいですね」
    「戻ったら絶対嫌がらせしに行ってやる……」
    「あなたたち本当は結構仲良くないですか?」
    「そう思えるのはあれの性格の悪さを知らないからだろう……頭が痛くなる」
    おれの言葉にハデスはそっぽを向いてまた薄いピーチティーを一口飲んだ。いろいろ言いたいことはあるがそれ以上突っ込む気にもなれず、とりあえず途中だった洗濯物たたみを再開した。黙々とたたんでいるとハデスの無言の視線が度々背中に突き刺さる。することがなくて暇なのか、あたりを見回してはおれをじっとにらんでくるのはやめてもらいたい。色々怖いし何か言いたいことがあるなら言ってもらったほうがましだ。
    「あの、ハデスおじさん? なにか?」
    「それはわしでは手伝えないのか?」
    「それ?」
    「お前が今たたんでいるだろう」
    おれの手に持っている服を指差しそれ、とハデスが言う。冥府の神に洗濯物をたたませる? 相手がハデスなだけに笑い飛ばしたくても笑い飛ばせない。
    「……あなたにさせる手伝いってもっとなんか、こう、色々怪物退治したり他の神々に言われたことをしにいくときに手伝えという意味ではなく……?」
    「家の外に出るなということなら家事ということになるんじゃないか」
    「ええ……家事、できるんですか?」
    「……聞けばできる」
    教えろ、と言外に上から目線で言ってくるハデスにあきれながらも、おれも早く自由になりたいということもあり、しぶしぶ洋服のたたみ方を教えた。おれの洗濯物は雑にたためばいいが、母さんやポールの服はなるべく綺麗にたたむようにしているのでそのことも伝えると、ハデスは頷いておれの教えた方法で真似してたたみ始めた。

    神に家事の手伝いなんてさせていいのだろうか、と思うがゼウスが言ったのだからおれにはどうしようもない。ハデスの寝る場所はどうするかと考えながら食器を洗っていると「終わった」とハデスに声をかけられた。
    「えっと、それじゃあ――おおぅ……」
    先ほどまでハデスが座って作業をしていたテーブルの上には綺麗にたたまれた洗濯物の山があった。うちには女性ものは母さんの分しかないからしっかりと分けてある。ハデスの几帳面さからか、すべて同じ大きさにたたまれている。……しまった、女性の下着や服を家族以外の男にたたませるってどうなんだおれ……。気の利かなさに頭を抱えそうになりながらもハデスに礼を言う。
    「ありがとうございます、助かりました。それじゃあポール……おれの義父なんですけど、彼の分の洗濯物を持ってついてきてもらってもいいですか?」
    ハデスは何も返事をしなかったが後ろからついてくる足音は聞こえたのでそのまま部屋まで歩き、衣類をしまっているチェストの中に入れてもらうよう指示する。おれは母さんの衣服をしまうと、自分の服を部屋のチェストにしまいキッチンへ戻った。
    「他には」
    「他にって……さっきも言いましたけど特にすることなんてないんですよ」
    「お前が先ほどしていた食器洗いはわしがしてはいけないのか」
    「は?」
    「食器洗いだ。拭くだけでもいい。弟が手伝ったと認めない限り帰るのが遅くなる可能性もある」
    「それなら、お願いしてもいいですか。その……部屋の掃除のほうを」
    少し抵抗はあったが、本当はすごくありがたかった。母さんの負担を少なくできるようにと家事を手伝うようになったけれど不器用だから時間はかかるし雑だし掃除の仕方も正直いい加減にしていた。

    とりあえずほこりを落として掃除機で吸ってる程度の認識だ。特に片付けなんかは苦手で毎日することが苦痛だった。けれどハデスなら綺麗にしてくれそう……な気がする。
    少なくともおれよりはましだろう。
    「ほこりを取るためのモップとごみを吸うための掃除機、床を拭くための雑巾はそこに掛けてあります。床を拭くのは週一回くらいでいいです。掃除用のゴム手袋はこっちにしまってあるので自由に使ってください」
    「わかった」
    まじか。わかってしまわれた。冥府の神がアパートの掃除をしているという事実に思考が停止しそうになるが何も考えず手だけを動かす。
    さっさと食器を片して手伝いに行かなければ。

    食器は全て棚に戻し、リビングに顔を出すと掃除機掛けも残り半分で終わる所だった。
    「おぉ……やっぱりおれがするより隅々まで綺麗になってる」
    「当然だ」
    「几帳面なんですね」
    「まあな。本当はさっさと仕事を終わらせて余裕があるなら調度品を新調したり模様替えしたりしたかったんだが、あの亡者たちの数と山のように積まれた書類は一向に減る気配がなくてな。最近部屋の片付けすらろくに出来ずにイライラしていた所だ」
    「ああ……」
    先程まで少し上機嫌だったハデスは自分の宮殿の様子を思い出して、すぐにいつもの仏頂面になってしまった。
    本当にゼウスおじさんはなんだっておれの手伝いなんかをさせることにしたんだ?気まずくって仕方ない。

    「あー……まあ、もうすぐお昼ですし、昼食を作るので手伝ってもらってもいいですか?」
    気晴らしになるかどうかは本人次第だけど何もしないよりは気が散らせるだろう。
    冷蔵庫の中を確認し、すぐに作れそうなもののリストを脳内でいくつか思い浮かべているとハデスも冷蔵庫の中を覗きこんできた。
    「何を作るんだ」
    「んー……、材料的にミートローフとかグラタンとかスクランブルエッグとかは作れそうですかね〜。あとはパスタもあるのでボロネーゼやカルボナーラとかも美味しそう」
    「……ブロックの肉はステーキじゃだめなのか?」
    「ステーキにするならもう少しいいお肉買いますよ。ステーキが食べたいんですか?」
    「少し前までデメテルが散々食事にシリアルを出してきたから出来るなら肉の方が食いたい」
    いつかの冒険の時にデメテルが言っていたことを思い出し苦笑がもれる。
    ヴィーガンでない限り、シリアルは好んで食べる人はすくなさそうだ。以前日本製のシリアルを食べる機会があったけどあれはほとんどお菓子みたいな感覚で食べられて好きだったな。
    「よし。ハデスおじさん」
    「なんだ」
    「買いに行きますか、ステーキ用のお肉」
    「……いいのか?」
    「正直神様に食べてもらうにはお粗末なものになる気はしますけど、予算内のものなら大丈夫ですよ」
    普段よりも毒気の抜けた顔で目を瞬いているハデス。おれもそこまで意地悪じゃないからな。
    なんて思っていると唐突に財布を取り出し中を確認するや否やハデスは口を開いた。
    「世話になる間分のお前達の分まで食費はわしが払うから買い物に行くぞ。足りない分や買い足したいものがあるかどうか今のうちにしっかり確認しておけ」
    「マジで?」
    神のような言葉に思わず聞き返してしまった。いや、神ではあるんだけど。
    てっきり食費はこっち持ちだと身構えていたから意外だ。
    「富を司る神がそのくらい持たないとでも思っているのか?」
    「えっ、そういう訳じゃないですけど……いやでも、一ヶ月だけでも結構かかってしまうというか……」
    もごもごと口篭りながら言うが怪訝そうな顔でこちらを見てくるハデスには分からないのだろうか。
    「めちゃくちゃ食べちゃうんですよ……おれが……」
    そう言うとようやく伝わったようで、ほんの数秒考える仕草をしたものの、特に困った様子もなくハデスは「いいんじゃないか?」とだけ言って玄関の方へ向かってしまった。
    本人が困らないなら、と何となく腑に落ちないながらもお言葉に甘えることにする。
    久しぶりに分厚いステーキが食べられるかもしれないと考えると今からわくわくだ。

    買い出しを終え、家に着くなりこっそりため息をつく。
    炭酸飲料を買おうとするとやれ糖分が多いだの骨に良くないだの言われ、アイスを買おうとすればこんなに冷たいものを食べて腹を壊したらどうするつもりだと叱られ、その他にも買おうとするものほとんどに細やかに注意され買い物をしただけとは思えないほど疲れた。
    ハデスを横目で見やるも、当人は買い物が終わり食材を冷蔵庫の適切な場所に納めるためにさっさと行ってしまった。
    買い物の度にこう、あれこれ口を挟まれては一ヶ月が終わる頃には疲弊しているだろう。
    まるで過保護な親のようだ……。

    ハデスは不健康そうな顔色をしているけど体躯は筋肉ががっしりついていてスラリとしている。
    無駄のない肉体という感じだ。健康管理がしっかりしているんだろう。
    それとも神様は好きなように容姿を変えられるからそういう姿を好んでしているだけかな?
    あと掃除してもらってわかったけど、めちゃくちゃ几帳面っぽいから料理とかもこだわりあったらどうしよう。
    おれの作った料理で満足してもらわないと全部のご飯まで作ってもらうことになるんじゃないか?
    さすがにゼウスのせいで家事をさせられてるとはいえ、料理も全部頼むのはダメだろ。
    気合を入れて作るしかない……!
    ……でも毎食気合いを入れなければいけないことになるのを考えてしまった結果、普通に作ることにした。
    毎食手の込んだのなんて無理無理。
    好みでない場合は外で食べてもらおう。

    おれもキッチンへ向かい、昼食の支度を始める。
    自分の服は油がはねて汚れても洗えばいいか、くらいの気持ちだがハデスの服は素人目から見ても高価なものだとわかるパリッとノリのきいたシャツだ。
    そんなものに油が付着して万が一穴が空いたりしたらと想像するだけでゾッとする。普段は使わないエプロンを取り出しハデスに渡した。
    「これ、つけてから作業しましょう」
    「……」
    ハデスは受け取ったエプロンを広げて眺めるだけだった。
    「つけ方が分からなかったんですね」
    「最初からつけ方を言うべきだろう」
    うーん、まさかつけ方を知らないとは思わないだろ。
    紙ナプキンとかのつけ方も分からないわけじゃないだろうし……これ、おれが悪いのか?
    ほんの少し不機嫌さが増したハデスにエプロンをつけてやり、手を洗うように促す。

    「まずはにんじんの皮をむいて乱切りにしてもらっていいですか? 乱切りはまあ、なんか、ある程度の大きさでランダムに切る感じです。わかんなかったらシチューとかに入ってるサイズで切ってください」
    「わかった」
    ハデスは包丁でするするとにんじんの皮をむいていく。
    ピーラーを渡そうと思ったけど必要なさそうだ。
    「それはなんだ」
    「え? ああ、ピーラーっていう野菜の皮をむくのに重宝する器具ですよ。使ってみます?」
    「どう使うんだ」
    冥府の王がまじまじとピーラーを眺めている姿は変におもしろい。
    使い方を教えるとピーラーの使い勝手の良さに感動しているようだった。

    「こんなに均一に薄く皮を剥くことが出来るとは……拷問に使えるんじゃないか?」
    「一般家庭用調理器具でそんな物騒なこと考えるのやめませんか?」
    「流石に弾力のある人間の皮膚ではうまくいかないか。それに肉用に作られているものでないと刃の部分がすぐ脂のせいでダメになりそうだな……」
    そういう問題じゃないけどなぜか納得した様子だったのでそういうことにした。
    帰ってから拷問用のピーラーを作り出してたりしないといいけど。
    ハデスは手際よくにんじんの皮を剥いて切っていく。
    「そこの小さめの片手鍋ににんじんを入れて、にんじんが浸るくらいにお水を入れたら砂糖を大さじ二杯、はちみつ大さじ一杯入れて火が通るまで煮てもらえますか? 火が通ったらそこに用意してあるコンソメキューブを二つとバターを少し入れてもらって、水気が無くなるまで煮てもらったら完成するのでお願いします」
    「分かった」

    さて、ハデスににんじんのグラッセを作ってもらっている間におれはステーキの方を準備しよう。
    買ってきた食材の中から今日のメインディッシュであるステーキ肉を取り出す。
    こんなに贅沢な食材を使うのは久しぶりだな。
    「煮ている間、他にすることはないか?」
    「うーん、ステーキなら添え物にあとコーンとブロッコリーとかじゃがいもが欲しいですよね。今回コーンは缶詰めを使うので……じゃがいもを焼くの、お願いしますね」
    「じゃがいもは皮付きで大丈夫なのか?」
    ハデスは手の中にあるじゃがいもを転がしながら聞く。土がついてないか確認しているようだ。
    「そのまま洗って、じゃがいもの芽が出てたら取って、六つか八つくらいに切って焼いてもらえれば大丈夫ですよ」
    分かった、と頷き自分の作業をテキパキとこなしていくハデス。
    器用な神様だなぁ……。
    手際の良さに感心しながらおれも自分仕事に取り掛かった。

    肉を包丁の背で叩き、柔らかくして塩胡椒を全体にふりかけ、しっかりと馴染ませる。
    油を敷いたフライパンが少し温まったところに肉を置くと焼ける音が響く。
    焼き目が付いたらひっくり返して弱火で焼き、ローズマリーを添えて少しの間蓋をする。
    蒸し焼きをしている間に皿を4人分準備しておこう。
    取り出した皿に缶詰のコーンを盛り、切ったブロッコリーは耐熱容器に入れ電子レンジで温める。
    「その箱は加熱することが出来るのか?」
    「そうですね。中には温めると爆発したりするものもありますけど、用途によって加熱に使ったり解凍に使ったり、色々です。使ったことないですか?」
    「無い。神の身であれば自分の意思で熱を通すことも燃やすことも凍らすこともできるからそんなものは不要だ。ヘパイストスあたりは使ってみたことがありそうだが」
    興味深げにハデスが電子レンジをまじまじと見ているのは地味に面白い。
    「神の身であれば、ってことは今は違うんですか? アポロンみたいに人間になってるようにも見えないですけど」
    アポロンはレスター・パパドブロスという偽名まで与えられて人間として地上に落とされたけれど、ハデスは見た目も名前も記憶もそのままだ。
    アポロンの時とは違い、予言も何も関係ない理由で人間の手伝いをさせるから記憶をいじる必要はなかったのだろうか。
    「一応神のままではある。ただ、ゼウスのせいで使える能力が一部分制限されているような感じだな」
    ハデスは不快だと言いたげに眉間のしわを一層濃く刻み、片面が焼けたじゃがいもをひっくり返した。

    「ペルセウス、もうすぐ肉の方はいいんじゃないか?」
    蓋を開けると言われた通り、ちょうどいい焼き加減になっていた。
    皿に出来たての肉とにんじんと電子レンジで温めておいたブロッコリーを盛り合わせる。
    ハデスの焼いたじゃがいもを最後に添えれば完成だ。
    「とりあえず出来上がりましたけど、何かスープとかあったほうがいいですか」
    「コンソメスープでもいいんじゃないか? 適当に野菜でも切って入れればできるだろう」
    「そうですね。じゃあ頼んでも大丈夫ですか?」
    「よし」
    頷くなりすぐさま作業に取り掛かるハデス。案外料理するのは嫌いじゃないのかもしれない。

    なんだかんだいつもより豪華になった夕飯が食卓に並んでいる光景は圧巻だ。
    自分ではここまで手の込んだものを作ろうとは思えない。
    そろそろ母さんたちが帰ってくるだろうし、ちょうどいい時間だ。
    「ハデスおじさん、ご飯食べるのは一緒でも大丈夫ですか? もし1人で食べたいなら準備してきますけど」
    「問題ない」
    人間と食卓を囲むのは嫌だろうと思っていただけに意外だ。
    この家で一ヶ月も過ごさなければならないから多少譲歩してくれているらしい。
    ソファでくつろぎながらテレビを見ているとハデスがキッチンで何かゴソゴソしている。
    「何してるんです?」
    「ピーチティーを作る」
    ああ、だから桃の缶詰買ってたんだ……。他にも色々果物を買っていたということは恐らく、後でフルーツティーも作るつもりなんだろう。紅茶はあまり進んで飲まないからちゃんとしたものの味の想像がつかない。
    空いていたティーポットの中をサッと洗って渡した。
    ハデスは白桃を細かく刻みポットの中へ、缶詰のシロップとティーバッグを二つ、お湯も注ぎ入れる。食器棚からティーカップを取り出してこちらにもお湯を入れてカップを温めている。
    「ん? ふたつもカップいるんですか?」
    「……片方はお前の分だ」
    予想外の言葉に口を噤む。

    「あんな味の薄いインスタントのティーバッグでフルーツティーを飲んだ気になるな。一度はちゃんと入れた方法で飲め」
    そう言いながら今、ティーバッグを使って入れていることを指摘したら怒られるだろうな。
    せっかく淹れてくれているのに機嫌を損ねてやっぱり無し、と言われるのも嫌なので大人しく頷くだけに留めた。
    ハデスは紅茶がしっかり出ているのを確認してカップの中のお湯を捨て、手際よく紅茶を注いでいく。
    白桃とダージリンの匂いがふわりと香る。
    ティーカップをソーサーの上に乗せ、ふたつ持ってきたハデスはおれの座っているソファの前のテーブルに置いた。
    「飲め」
    いや、そんな気難しそうな顔で言わんでも。
    勧められるまま、カップを手に取り少し飲み込む。
    「……あの、そんなにまじまじと見られてると味も分からなくなりそうなんですけど」
    「む……」
    自分で作ったものの味がどうか、感想気になるよな。分かる。
    「果肉を入れるだけでこんなに美味しくなるなんて思いませんでした。紅茶と桃の柔らかな甘みが合わさって美味しいですね」
    美味しさに思わずため息がこぼれる。
    これなら何杯でも飲めそうだ。
    桃の柔らかくも瑞々しい食感も楽しめて良い。
    「そうだろう。まだあるから気にせず飲むといい」
    ハデスは褒められて満更でもないようだ。

    上機嫌で紅茶を飲みながらくつろぐ姿勢になっている。
    独り占めするのも最高だけど、こんなに美味しいものをおれだけが味わうのは贅沢すぎるな。
    「あの、ハデスおじさんさえ良ければこのピーチティー、母さんとポールにも飲んで欲しいと思ってるんですけど、いいですか?」
    「好きにしろ」
    言葉はぶっきらぼうだが、声色になんとなく温かみがあるのが少しむず痒い。
    もしかしたらこちらがハデスおじさんの元々の性格なんだろう。
    もしくは今機嫌がいいからなだけか?
    その後は二人でテレビを見ながら母さんたちの帰宅を待っていた。

    「そういえば、さっき買い物に行く時はゼウスに止められなかったですよね。今度買い物に行くふりをして警戒されてない時に冥府へ帰れるんじゃないですか?」
    「あいつは常にこちらの様子を見て暇を潰してるような悪趣味なやつだからな。今話している時点でその企みは把握されている」
    ああ……。全知全能の神々の王、もしかして暇だからこんなことしてんじゃないよな?

    聞きなれたプリウスのエンジン音が近づいてくる。エンジン音が途切れ、車のドアが二回閉まる音がした。
    ポールが仕事終わりに母さんを迎えに行ってくれたようだ。
    「ただいま、パーシー。何もなかった?」
    「ただいま。もうご飯の用意ができてるのかい? 美味しそうな匂いがするね」
    「おかえり、二人とも。もう出来てるよ。何かあったと言えばあったかな」
    二人を出迎え、ハデスについての説明に少し口ごもる。
    見てもらった方が早いな。
    リビングへ向かいハデスの横に立つ。
    母さんは見るなり立ち止まってしまった。
    「パーシー、こちらの方は?」
    先程までと打って変わり、警戒を滲ませる声色だ。
    「こちらはハデス、おれの伯父にあたる神様。ご存知の通り」
    「えっ、ああ、どうも」
    ポールは冥府の王がまさか自宅に居るとは思わず、動揺したまま会釈している。
    「こんばんは、ハデス様。お会いできて光栄です。この度はどういった理由でこちらへ?」
    「歓迎の言葉、痛み入る。……末弟の愚行で一ヶ月ほどこの家の世話になることになった」
    「一ヶ月……」
    ポールと母さんは呆然としている。
    さすがに長期間神に滞在されるなんて思いもしなかっただろうな。
    真剣な話が始まる雰囲気の中でおれの腹から空気を読まず元気な音を響かせた。さっきピーチティー飲んだばかりなのに消化がよすぎる。
    「まあ、詳しいことは食べながら話そうよ。おれもう、お腹ぺこぺこ」

    食事中にハデスがうちで一ヶ月間家事手伝いをしなければいけなくなったこと、ゼウスのやらかし(何をしたのか詳しくは話されなかった)のせいで濡れ衣を着せられ神としての力を奪われたことの説明をした。
    二人は少なくとも怪物が絡んでくるような状況では無いことに安心したようだ。
    それからは口数が増え、食事も滞りなく終わった。
    質のいいステーキってなんでこんなに美味いんだろう。いつもステーキでもいいくらいだ。
    食後は何か問題が起きるでもなく、穏やかに一日が終わった。

    ここまで読んでくださった方がいらっしゃったらありがとうございます!
    とりあえず書きたいところ書き終わったけど一日目の内容濃すぎてこれ本当だったらもうちょい分割しても良かったなって思ったりした。(白目)
    これを…一か月分…!?っていう気持ちがあるっちゃある。
    そんな毎日事細かに描写せんでもええじゃろみたいな気持ちはあるけど書きたかったら書くか。
    二日目の冒頭だけ書きたい気もするのでそこら辺まで書くかな。
    でもまたあとでいいの浮かぶかもしれんし冒頭だけ書いてもちょっとあとで書くときここからどう繋ぐんじゃい、みたいなことが多々あるので削られるかも知れんし微妙だな…。まあ数行だけメモ程度に書いておこうね。

    あれ?ゼウパシ、同人誌を単カプで書いたことないのにポセパシもハデパシもあるね????ゼウパシの話書くの難しすぎない???
    シーズン1の世界線じゃないとゼウスがだいぶ私にはモラハラやろうにしか見えなくて描けなくなっちゃった。当時のゼウパシに萌えてた俺の記憶よ蘇れ(大の字)。
    ハデパシ、シーズン3のアポロン視点からの情報で色々書きたい内容が増えたので地味にそれもぶちこみたいなという気持ちがあったりなかったり。
    色々書き進めるぞ~。ゆるーくね。
    めっこり Link Message Mute
    2024/05/12 23:28:31

    家政夫、頼んでませんけど!?一日目

    タイトルに一日目って書いてるけどマジで続き書きたい気持ちはあっても描きたい物山ほどあるから書けるかどうかはわからんやつ~!
    ということで2021年ごろ?もうチョイ前?から書き始めて放置してたハデパシの話が一区切り?書けたのでとりあえずデータが消えないうちに投げ込んでおきます。
    また気が向いたり熱が上がったりして作業がめちゃくちゃ進んだら続きが出るかもしれないし出ないかもしれない。
    ヘルパシのワンダフルチャイルドライフも似たような設定で書いてた気がする~!続きかけ~~~!!気が向けば~~~~!!!
    ということでね。多分神々にジャクソン家で過ごさせたい欲がすごいんだと思う。ポセパシの時も描いてなかった?って気がしないでもない。ジャクソン家可愛いし愛しいしあったかいので仕方ないね。親公認の元イチャコラして欲しいし←
    ベスちゃんがその枠だってのは知ってんだ!知ってるけど神パ推しなので自給自足してるだけなんだ!どうせ公式がパシアナちゃんたくさん供給くれてるしハッピーだから!!!そのほかを補うんだよぉ!!!まじで完成させられたらいいな。
    ##小説 #PJO #POlympians  #ハデパシ

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