砂嵐 村を出て六日目。もうすっかり砂漠にも慣れたキラは、余裕の面持ちでラクダに揺られていた。風景は再び砂だらけの景色へと変わっていた。風に煽られて出来た巨大な小山のような砂丘が、まるで大波のようにうねっている。文字通り、広い青空と大量の褐色の砂以外何もなかった。生命の気配はキラ達だけだった。こんなところに一日でも一人で居れば、気が狂うのではないかと思われた。
「まるでこの世の果てね」
余りの広大さと何も無さに、キラは思わず呟いた。
ずっと晴天が続いていたが、遠くの空が茶色く濁っているのが見えた。
「雨でも降っているのかしら?」
キラは呑気に考えた。
「皆ラクダを降りろ!」
マーニーが叫んだ。マーニーはラクダを円形に並んで座らせると、
「砂嵐だ。皆でラクダの円陣の中に入って、座るんだ」
と皆を集めた。キラも座り込むと、
「通りすぎるのを待つしかない。嵐が来たら、目と口をとじてじっとしているんだぞ」
とマーニーは肩を叩いた。砂嵐はもうそこまで迫っている。大気が薄茶色に染まり、風が唸りを上げていた。キラの胸はドキドキし始めた。心臓の音が外にまで響くのではないかと思われた。遂に恐ろしい勢いで強風が砂を巻き上げ、キラ達を襲った。豪々と風が吹き付ける。細かい砂粒が顔を叩き付けるので、ヒリヒリと傷んだ。言われた通り目を閉じ、口をつぐんだキラは、生きた心地がしなかった。ひたすらじっと耐えていると、コンッと何かがキラの体に当たった。痛くはなかったが、不思議に思って手探りでそれを掴み、嵐が通りすぎるのを待った。
「もう目を開けて良いぞ」
マーニーがキラの肩を揺すった。嵐は通りすぎていた。キラは先程の何かを改めて見てみた。それは巨大な香色の鱗の様だった。砂漠に鱗? キラは首を傾げた。
「マーニー。これは何かしら?」
キラはマーニーにそれを見せた。
「ふーむ。鱗の様だが、こんなに大きな物は私も見たことが無いな。まあ、珍しいものには違いないから、大事に取っておくと良い」
キラはポケットにそれをしまった。