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    【既刊サンプル】平成三十二年八月を生きる君へ いまは昔、ある所に、由緒正しい持ち主の元を離れてしまった、悲運の刀がありました。なんでも元は、忠節を重んじ、正義に悖る輩を許さぬ、とある高名な隊士の差料。
     本来であれば正しき持ち主の生家に戻り、形見として保管されたはずのその刀は、ひょんなことから時代の狭間の闇に落ち、刀から銃へと武器が代わったあとも、流転に流転を重ねて流れて参ります。
     幾度も持ち主を変え、その度に持ち主の正義の道を塞ぐ咎人の首を、切って切っては幾星霜。
     刀はいつしか、触れたら切れる必殺の刀……妖刀と呼ばれるようになりました。
     その異名を付けられたあとも、刀は人から人へと渡り、遂にとある村の長の元に辿り着きました。村長は不意に手元に転がり込んできた妖刀を恐れ、村の一段高い所に祠を作って祀ることといたします。
     ところがその後、村では凶事が頻発。魍魎跋扈し、病いが流行り、それを刀の祟りとさらに恐れた村長は、とうとう許しを求めるように刀を祀る祠に手を合わせました。
     ──もしも村に降りかかる凶事を収めてくだされば、なんでもくれて差し上げよう
     すると嘆願から一夜明け、村の凶事は全て過ぎ去っておりました。
     村長はこの刀を、妖刀ではなく神宿る刀と崇め、私財を投げ打ち祠を建て替え、自分の一人娘を嫁がせるまでいたしました。
     以来この家の娘御は代々、刀に嫁ぐと申します──……。 









    【二人の妻】


     二二××年 二月某日 とある審神者の本丸


     二月半ば。息まで凍る午前五時。端末の無粋な着信音に起こされて目が覚めた。

    「……はい」
    『すまないな、寝てたか』

     一瞬、寝起きの脳が相手の声を識別拒否した。しかしそれが上司の声だと分かると、脳が指示を出すよりも先に体が動いて飛び起きていた。

    「はい! はい、いや、あー、大丈夫です、はい」

     いくら本丸勤務の審神者職であろうと午前五時に寝ていようが起きていようが、それは私の自由なのだけど、飼い慣らされた体はペラペラと言い訳めいた言葉を並べ立てていた。この職に就いて早十年、もはや職業病の類である。
     上司はそれを気にするでもなく、

    『悪いが、すぐに支度をして会議に出席してくれないか。君のところの和泉守兼定も一緒に』

     と、ちっとも悪びれていない声色で下知してくる。思わず、「は?」と聞き返すが『リモートの出席で構わない。三十分後に回線を開いておいてくれ』とだけ言い残して電話は切れた。終話音の鳴り響く端末を片手に呆然としていると、共寝していた和泉守兼定が低い唸り声をあげて私の腰に手を回してくる。その腕をぺしぺし叩いて揺すった。

    「いず、和泉守、起きて、起きてったら」
    「~~んだよ、寒ぃ」
    「寒い? うわ、本当だ寒、……ってそうじゃなくて、起きて! 会議! 三十分後!」
    「はぁ!?」

     元の主が規律に厳しかったからか、それとも私みたいな小市民の元に降りて、尚且つ結婚までしてしまったからか、根が真面目なうちの和泉守はその言葉に飛び起きた。お互い裸のまま「なんでだよ!?」「知らないよ!」と言い合う。

    「とにかく服着て! 軽装でもいいから!」

     脱ぎ捨ててあった彼の浴衣を顔に向けて放り投げると「そういうわけにいかねぇだろ」と片手でキャッチしたあと、のっそりと立ち上がる。

    「顔洗ってくる」
    「はい、行ってらっしゃい! あ~、髪、髪どうしよう!」
    「結べばいいんじゃねーの」
    「形状記憶髪の人は黙ってて!」

     会議開始までの三十分、目一杯使ってジタバタしながらなんとか体裁を整えた。いつもの制服の緋袴に、白の着物。結局髪は……和泉守の提案を一蹴したわりに他の選択肢がなく、結局一つにまとめた。どうせ跳ねまくっている後ろ姿を見られることはない。
     と、戦装束を着た和泉守が「ほらよ」と何かを差し出してきた。所属国と階級が銀糸で刺繍されている、青色の腕章だった。普段は文机の引き出しに眠っているのを引っ張り出してきたようだ。

    「え、付けなきゃ駄目かな……?」
    「緊急会議に呼ばれるなんて、よっぽどのことだろ。一人だけ正装じゃなくて、恥かいても知らねぇぞ」

     自ら戦場に向かうことはない審神者だが、名目上は政府軍所属の軍人なので、階級がある。《専門職の階級》として、審神者は大体が准士官に所属させられる。私も、例に漏れずそうだった。そして、この腕章、正装時には必須とされている。
     腕章を大急ぎで左腕に巻きつけてから、回線を開き、《緊急会議》の名のつくところに飛び込んだ。
     会議には上司の他に、五、六人ほどの出席者がいた。皆、ピッシリとしたスーツか軍服を着ていて、胸元に階級章のバッジをつけている。いつもの審神者同士が集まってやる定例会議よりもはるかに硬い印象に、自然と姿勢が良くなる。和泉守の進言を聞いておいて良かったと胸を撫で下ろす気持ちと、なぜ自分がこんな場違いなところに呼ばれているのかという疑問で、頭の中はぐちゃぐちゃだ。

    『揃いましたね。では緊急会議を始めます』

     何がなんだか分からないまま会議が始まってしまった。『資料は先ほど送りました、添付のものを……』という一言に、慌ててメールボックスを開け、資料を別窓に開く。
     資料には《特命調査》というタイトルが付いていた。

    『では前回より引き続き、特命調査の議題から行います。よろしくお願いします』

     上司が言い、画面上で頭を下げる。私もならって頭を下げたが、他の人物は微動だにしなかった。上司は単なる進行役で、彼らにとってはわざわざ頭を下げる相手ではないのかもしれない。
     上司が言う。

    『では前回の確認から。今回は平成三十二年に、第三次世界大戦がすでに起こり、改変されてしまった世界線への経路を新たに開き、歴史修正の糸口を探るものとなります。これは一時的なもので、期限は三週間。それ以上は正史への影響が見られる可能性がありますので、審神者には刀剣の回収を忘れずに行うよう通達をしてください』

     思わず息を呑む。前回までの会議に参加していない私には、初耳の情報ばかりだった。特命調査のことも、第三次世界大戦が起こって放棄された世界のことも、私は知らない。それに……平成は、私が生きたことのある時代だった。
     ──西暦二二〇五年。歴史の改変を目論む《歴史修正主義者》から、時間遡行を繰り返した正史へのアタックが開始された。彼らを討伐するため、時の政府は彼らに対抗する、物の心を励起する技を持つ《審神者》を徴集した。そして彼らの励起した刀剣を過去に飛ばし、時代の守りを固めている……というのは、今や誰もが知る話だ。
     しかし、その《審神者》がどこから徴集されているか、を知る人間は少ない。
     二二〇五年という一つの時間のラインに、審神者の能力者が、時間遡行軍と戦えるに足るほどの数いるわけではない。当たり前だ、そんな数の霊能力者が一時代に集結していたら妖怪大戦争が起こっていてもおかしくない。
     審神者はあらゆる時代──彼らが言うところの『過去』──から見繕われ、徴集されている。私もその一人だ。具体的な年代をいうなら、西暦二〇二〇……令和二年。

    『その話はもういいわ。他との会議で粗方まとまっている話の最終確認ですし、あとは書面で結構。それより……彼女が呼ばれている理由を聞かせてもらえるかしら?』

     一人の女性が言った。胸の階級章は見慣れず、咄嗟にどれくらい上の人間か分からなかった。だけど、見慣れない、ということは、かなり上、という証明でもある。彼女はおそらく私のことを言っているのだ。思わず身体が強張る。

    『後ろに控えているのは和泉守兼定ね。もしかするとだけど、彼女が?』

     言われ、上司が『はい』と神妙に頷く。私を置いてけぼりに。思う様目を泳がせていると、上司が私に向けて言った。

    『説明の通り、今回の特命調査は平成東京だ。第三次世界大戦がすでに勃発、日本を除く大陸の三割がすでに海の底に沈んだ世界になる。しかし君の刀剣男士たちには、今回この特命調査には参加せず、別働隊として動いてもらいたい』

    「は……」

     もちろん、それは構わない。けれど。なら、今回の私の任務は一体なんなのだ。
     上司は続けて言った。にわかには信じられないようなことを。

    『君の刀には今回、土方歳三の元を離れた後、妖刀と成り果てた《和泉守兼定》のいる地域に飛んでもらう』
    「……え?」

     私が呆けた返事をしたのと同じ頃、本丸には雪が降り始めていた。

     

     
     平成三十一年 七月某日 首都内某所の神社


     赤の鳥居を抜け、二十五ある石段を上がる。
     手水舎には水がコポコポ湧き上がって、受け止める部分には鳳凰が彫られてる。手を洗って、神前で麦わら帽子を取って、脇に挟むか迷った末に足の間に挟む。半ズボンから覗く素足を麦わらがチクリと刺し、少しべたついた。
     神社の周りは緑が多くて鬱蒼としているのもあって、中まで入ると存外涼しい。けど、その分虫もたくさんいる。一応虫除けスプレーをしてきたけど、どこまで効くか。
     二礼二拍手。大きな音と共に手を合わせ、目を瞑る。何をお願いするか、考えてこなかったな。
     本当はお願い事をするものではないらしいけど、でも、いつもとりあえず、何か願い事を心の中で唱えるようにしてる。
     叶えてくれる時と、叶えてくれない時がある。基準は分からない。けど、多分、正義に悖ることは叶えてくれない。ここは、そういう神様の居るところ。
     平成三十一年七月、某所の小さな神社。そこには触れたら切れると噂の妖刀、改め、神様の宿る刀が祀られている。
     刀の名前は、《和泉守兼定》。
     手を合わせたまま、うーん、としばらく考えて

    「こんにちは。えっと、あ、あのね、夏休みの宿題が早く終わりますように!」
    「そりゃ、あんた次第だろう」

     声に出して唱えたら、奥から声が聞こえた。パチリと目を開け、賽銭箱の裏に回り、お堂の障子を開ける。

    「兼さん! 起きてるっ!!」
    「うるせぇな!! 人んちを勝手に開けるんじゃねぇ!!」

     怒声を返されたが気にせず上がる。相手はムゥと眉間に深く皺を寄せたが、それ以上咎められはしなかった。
     この人間の男の形をした相手は、名を和泉守兼定、という。ここに祀られている刀の付喪神らしい。本人がそう言った。御神体とはまた違うらしいけど、私には良く分からない。とりあえずは神様ってことにしている。祀られてるんだから神様だよね? 本人は私がそう呼ぶと不満そうだけど。

    「つぅかあんた、ガッコーはどうした」
    「夏休みだよぉ。毎年この時期そうだったでしょ?」

     キシキシ鳴る板の間に座り込んで言うと、「そうだったっけか?」と彼は頭を搔く。

    「七月の下旬から、八月いっぱいくらいまでは、子供は休んでいいんだよ。去年もそう言った」
    「ふぅん」
    「全然覚えてないじゃん。兼さん、おじいちゃんなの?」
    「あんたに比べりゃあな」

     兼さんはそう言ってゴロリと横になる。せっかく起きたのに、また寝てしまうみたいだ。
     兼さんと私の出会いは七年前。私が五歳で、おばあちゃんがまだ生きていた頃のこと。
     うちの持っている土地の一角、兼さんがいるこの小さなお堂に私が初めて行ったのは、生後一ヶ月の頃……お宮参りであったと聞く。
    「お参りした時に風が吹いて、空がピカッと光ったのよ」というのはおばあちゃんの談。縁起が良い、神様に愛された子だねって、小さい頃から事あるごとに聞かされた。
     私はそれを幼心に、きっと良いことなんだろう、と理解して、その小さなお堂を大層気に入り、三歳くらいの頃になったらそこを「秘密基地」と称して、特に何をするでもなく毎日出かけて行った。お堂の縁側に腰掛けるとホッとしたし、お父さんの膝の上と同じくらい安心したのだ。
     身内の誰にも行くことを止められはしなかったけど、唯一してはいけないこと、として口を酸っぱくして言われていたのが『お堂の中に入ること』だった。そこは神様の住んでいるところだから、みだりに踏み入っちゃ駄目らしい。別に入ろうとも思ってなかったから、何度も言われるのはなんだか信用されていないみたいで不服だった。
     しかし五歳になったある日。
     その日は夏なのに、異常なほど寒かった。テレビのニュースでは異常気象だなんだと騒がれ、朝ごはんを食べていたおじいちゃんが「一雨来るかもしれんね」と言っていた。私は長袖の上着を箪笥の奥から引っ張り出して着込むと、お絵かきの道具を持って、その日もお堂に向かった。
     お堂の縁側に寝転んで絵を描いていると、空がピカッと光った。

    「かみなり……」

     口の中で呟いたのとほぼ同時に雨が降ってきた。私は結構うまく描けた今日の絵を濡らすのが悲しくて、どうしても濡れて帰る気にならなかった。そしたらどんどん雨脚は強くなってしまって、とうとうお堂の前に川が流れるようになり、そこから一歩も動けなくなってしまった。
     困ってしまって、泣きそうで、おまけに夏だというのに酷く寒くて、私はガタガタ震えて縁側で身を縮こめた。
     どうしよう。
     歯が震えてカチカチ鳴る。指先が氷みたいに冷たくなってきた。長袖の上着をぐいぐい伸ばして指先まで覆うけど、それでも芯から寒い。サンダルを履いていた足も、冷えて冷えてしょうがない。
     私は縁側に丸まって横になる。もう、ちょっとも動けない気分だった。なんだか眠たい気もして、ゆっくり瞬く。と、抱えていたスケッチブックが滑って地面に落ちた。慌てて身を起こし、拾い上げる。濡れたのは表紙だけだったからホッと息をつく。吐き出した息が白くて、ふと目で追った。
     水蒸気が消えた先には、お堂の入口があった。
     木で出来た、鍵のかかったお堂。けど、おばあちゃんが年に一度、掃除に来るのは知っていた。その時に木枠の隙間から内鍵を開けているのも、見たことがある。
     言いつけを守れないことを一瞬悩んだけど、私は無意識に木枠の隙間に腕を突っ込んで内鍵を開けていた。からりと開けて、サンダルを脱いで上がる。

    「ごめんください……」

     消え入りそうな声で呟いた。誰もいないので、当然返事はない。だけど神様はいるかもしれないし、無言で上がりこむのはなんだか怖かった。
     扉をピッタリ閉じてしまうと、先ほどよりも少しだけ暖かい。気がする。もっと暖かいところを探して奥に進んで行くと、刀掛けに置かれた刀が見えた。
     赤い鞘の、とっても綺麗なつくりの日本刀。

    「かっこいい」

     無意識に呟いて、しばらく戦隊モノみたいでかっこいい刀を座って眺めた。けど、やがて抑えられない好奇心が頭をもたげ、私はその刀に触れた。
     一度だけ手に取って、抜いて、それで、また元の通りに戻しておけばいい。だから、そーっと、そーっと。どうやって置いてあったか、よく覚えておいて……
     持ってみると、かなり重い。それでも床につけたりしたくなくて、頑張って抱えて、力を込めて四分の一ほど刀を抜いた。
     鞘の中から現れた銀色。お堂の薄暗闇の中でもスゥと光って、心臓が高鳴った。
     それは美しさに見惚れたからなのか、刀から滲む殺気に慄いたからなのか。分からないけど、まるで恋のような高鳴りだった。
    「あなたが、ここの、神様?」
     刀は物言わない。ただただ私の腕の中で、キラキラ光って鼓動している。
     ──けど、中に、いる。
     ──何か、私の知らない、大きなものが。
     直感した瞬間、空がピカッと光った。直後、ガラガラガッシャーンと音を立てて雷が近くに落ちた。地面が揺れるほど大きな音に、抱えた刀が眩いほどの光を放つ。
     閃光。
     次に、風。
     お堂の中の空気がぐにゃりと曲がって、それから弾けた。刀が空気を吸い込んで、一気に放出したような感じ。
     私は衝撃に尻餅をついた。

    「わっ!」

     ついたお尻の痛みを気にする暇はなかった。お堂の中に溢れんばかりの花びらが舞っていたから。
     尻餅をついた拍子に立てていた膝の上にも、一枚、降り落ちてくる。桜だ、と認識したその時、花弁の中からぬっと手が現れた。
     指先が出る黒い手袋の、大きな大きな手。お父さんよりもずっと大きい。
     やがて花びらが落ちて、消えていく。私の膝に乗っていたのも全部消えてしまうと、そこには男の人が立っていた。
     女の人みたいに長い髪の、だけど男の人だってすぐに分かる大きな体。腰に差した刀に手をかけて、ゆぅるり開いた瞳は綺麗な空の青。
     彼は尻餅をついた私に不意に目を向ける。そしてびっくりして声も出せない私を見て、顎に手を添えて品定めするように言ったのだ。

    「なんだ。今度の嫁御陵は随分と若ぇなぁ」と。

     だれ。
     声も出せずに呆然と見上げる。目がばっちりと合った。そらすこともできずにいると、彼は不思議そうな顔で言った。

    「……待てよ。あんた、オレが見えてるのか」

     腰を屈め、ぐいと顔を覗き込まれる。どう答えていいか分からなくて、目を散々泳がせたうえで頷くに留めた。すると彼は私を面白そうに見て、それから大声で笑い始めた。あまりの哄笑に、後ろにすっ転びそうになる。

    「こりゃ面白ぇや。随分と長いこと、くれるっつーから貰ってきたが、見える嫁御陵は初めてだ。最後にこんな珍しいもん引き当てるとは、オレもなかなか運が良い」

     そのあと、しばらくすると大雨の中をカッパを着たおじいちゃんがお堂まで迎えに来てくれた。おじいちゃんは私がお堂の中で刀を腕に抱いているのを見て、深く息を吸い込んだ。そして小さく「そうか」と言った。お堂の中にいた男の人は、おじいちゃんが現れると消えてしまった。
     その夜、お母さんとお父さんは大喧嘩した。
     二階に上がってもう寝なさい。そう言われて上がった二階にも、二人が叫んでいるのはずっと聞こえていた。そして私は、その喧嘩の原因が自分にあることを、なんとなく分かっていた。
     私は階下の喧嘩の声を聞きながら、ずっと天井の木目を見つめていた。薄ぼんやりと自分の外側に一枚、膜が張ったような感覚で、なるべく心を揺らさないように努めた。
     翌朝から、お父さんは私に対してよそよそしくなった。なのに時々、可哀想な動物が出てくるテレビ番組を見るみたいな瞳で私を見つめた。そして度々、お母さんと夜中に喧嘩をした。多分きっと、私のことで。
     お堂に入った週の週末に、おばあちゃんが箪笥の奥から出してくれた、私には長すぎる綺麗な着物を着て、お堂まで行った。水色の袴を着た神職らしき人が先導してくれて、紋付袴を着たおじいちゃんと手を握り、階段を上がった。その間、お母さんは私が着物の裾を下に擦らないように、後ろから着物を持ってくれた。お母さんは真っ白い着物を着ていて、なんだか幽霊みたいだった。お父さんは仕事に行っていて、おばあちゃんは家にいて来なかった。
     手水舎で手と口を洗うと、私はお堂の前に立つ神職の人の前に一人で立たされた。神職の人が、いつの間にかお堂から持って来ていた刀を渡される。不安になって、振り返ってお母さんを見たけど、お母さんは本当に幽霊になってしまったみたいに黙ったきりだった。代わりにおじいちゃんが

    「いいから。そこ立ってな」

     と応えて、私は何がなんだか分からないまま、刀を持ってそこに突っ立っていた。神職の人は私の斜め前に立ち、何事か言いながら白い紙のたくさんついた大麻を振る。それからお堂のほうを向いて、また何事か言う。何を言っているのかは分からなかったけど、お堂の周りを囲む木々が震えるのではないかと思うほど、よく響く朗々とした良い声だった。
     それをぼんやり聞いていると、ざぁ、と強い風がお堂の前に吹き抜けた。私は目を瞑り、風が弱まった頃にふと開ける。隣に気配を感じて見ると、昨日お堂で会った大きな男の人が腕を組んで立っていた。また、声も出せずに見上げていると、神職の人が私に杯を渡してくる。すでになみなみ注がれているものからは、強い酒気が漂っていた。

    「唇を濡らすだけで構いませんよ」

     と言われたのでそうすると、杯の中はちっとも減らない。じっと見ていると、横に掲げるように指示される。横、というと、昨日の男の人が立っているところだ。
     私は刀を自らの体に立てかけるようにして抱えながら、両手でおっかなびっくり、杯を高く掲げる。すると、彼が私の持つ杯に口を付けた。手を使わず、腰を屈め、腕を組んだままで。その伏せられた目が美しくて、少し見惚れた。
     そんなことを三度繰り返して、玉串を供えると、神職の人が「婚礼、これにて整いました」と言った。
     こんれい。頭の中で上手く変換できなくて、もう一度横を見上げた。美しい射干玉の長髪の男の人が、私を見下ろす。

    「あんたも大変だな、こんな若ぇ身空でよ。……ま、これからよろしく頼むぜ、嫁御陵」
    「は、」
    「なんかあったらここに来い。斬れるもんなら、オレが斬ってやるからよ」

     そう言って、彼は目を瞑った。しゃん、と、どこかから鈴の音のようなものが響くと、男の人は姿を消していた。私はなぜだかそれを、ああ、また眠ったのだな、と理解した。手の中の刀の鞘をそっと撫でる。
     これは、私の神様だ。
     その婚礼の儀式から半年して、お父さんは家を出て行った。お母さんと私を置いて。まるでお化け屋敷から命からがら逃げていく人みたいだった。
     それが、私と兼さん……このお堂の神様、和泉守兼定との出会いだった。

    「クラスの子たちがね、夏休みの間に近くのお祭り行こうねって言ってたんだ」

     横になる兼さんを気にせずに喋り続ける。兼さんは返事をしてくれないけど、私が話したいからいいのだ。
     兼さんの着物の裾をいじりながら私は続ける。

    「みんな、かき氷とか食べて、射的やろうって言うんだけどさ。私、今年はお祭り、ないと思うんだよね。だってほら……あのー、最近、人、どんどん消えてっちゃうじゃない?」

     兼さんは何も答えない。けど、実際そうなのだ。みんな気づいてなくて、私が人が消えていることを指摘すると、逆に私が変な子認定されてしまうから最近はあまり言っていないのだけど。
     この世界は私が産まれた時からずっと、人が突然消えてしまう世界なのだ。
     そしてそのペースは最近、どんどんと加速しているような気がするのだ。

    「こないだ、おじいちゃんの友達も消えちゃったし。毎年、お神輿担がないかって聞かれたから、あの人多分、お祭りの結構偉い人だと思うんだよねぇ」

     確かおじいちゃんの囲碁友達で、毎週日曜になるとおじいちゃんは商店街の自治会館に行って、その人と囲碁を打っていたはずだ。だけど、それも彼が消えてから、ぱったりとなくなった。おじいちゃんは日曜日、囲碁の指導書を片手に一人で碁盤とにらめっこするようになった。
     友達が消えたことに、おじいちゃんは気づかない。ううん、この世界中の誰一人。
     私だけが、同級生のお母さんが、隣の家に産まれた赤ちゃんが、商店街の肉屋のおじさんが、消えてしまったことを知っている。

    「お祭り、今年やると思う?」
    「……さぁな」

     やっと返事をしてくれた兼さんは、それだけ言うと、横たわらせていた身体を起こす。

    「もう帰れ。送ってく」
    「え、来たばっかりだよ」
    「あんたがいると、ピーチクパーチクうるせぇから、寝られやしねぇ」

     送るなんて体良く言って追い出す気だ。ムッと口を尖らせると、大きな手で髪の毛をぐしゃぐしゃにされた。

    「おら、行くぞ」
    「もう、待ってよ。せっかち」

     開けっ放しだったお堂の扉を抜けて、兼さんは手招く。立ち上がって追いかけ、その指の中に、自分の手を突っ込むようにして繋いだ。そして登ってきた階段をてろてろと逆戻る。
     兼さんは私にしか見えないし、触れない。だから小さい頃、私が、兼さんがね、と事あるごとに話していたのを、おじいちゃんもお母さんも子どもの妄想だと思っている。信じてないな、って気づいてからは、私も話さなくなった。
     私の話を信じてくれたおばあちゃんは、この前亡くなった。私が知る中では、唯一消えずに、天寿を全うした人だった。

    「やっぱり兼定さん、いるのねぇ。お母さんに繋いでから、おばあちゃんもすっかり感じなくなっちゃったけど」

     と、私の話を聞きながら仏壇に手を合わせて、ポツリと呟いたおばあちゃんの横顔を覚えている。

    「きっと相性が良いのね」

     と朗らかに笑ったおばあちゃんは昔、兼さんと結婚していたらしい。お母さんにバトンタッチするまでは、兼さんが近くにいる時は感じたのだって。なんでも、次の人にバトンタッチする時には、昔のお嫁さんは死んだことにしてしまうから、繋がりがぷっつり切れるみたい。結婚式の時、お母さんが真っ白な着物を着て、黙っていたのはそのためだとか。
     私の家は代々、長女が兼さんと結婚しなくちゃならない家系なのだそうだ。
     家の敷地にお堂があるかららしいけど、詳しいことはよく知らない。でも、とにかくそういう家。お父さんはそれが嫌で逃げ出した。誰もそうとは言わないけど、私はそう理解している。

    「別に、兼定さんと結婚することは怖いことじゃないのよ。我が家をずぅっと守ってください、って、お願いするだけなんだから」

     おばあちゃんはそう言っていた。その時はよく分からなかったけど、おばあちゃんが天寿を全うした時、そっか、って腑に落ちた。兼さんが守ってくれたから、おばあちゃんは消えずに済んだんだなぁって。

    「ねぇ、兼さん」
    「んん?」

     家に向かいながら呼びかけた。

    「兼さんは、消えないよね?」

     兼さんは少し黙って、それから「おう」と請け合った。

    「あんたより先には消えねぇよ」
    「それって、私が消えたら兼さんも消えちゃうってこと?」
    「そうは言ってねぇだろ。……まだしばらくは、この土地は平気だ」

     なんだか誤魔化された気がしたけど、兼さんは嘘をつかないから、きっとそれが本当なのだろうと思う。

    「お祭りやるかな」
    「……まぁ、やると良いな」

     兼さんは渋々といった感じで、やっと私の欲しかった言葉をくれた。満足して、えへへ、と笑いかけると、「わがまま娘が」といつもより少し乱暴に腕を引かれた。

     
     

     二二××年 二月某日 政府軍本部・方舟 調査指導部


     上司に呼ばれて部署に出向くと、部長室に通された。そこで机にゆったりと向かう担当上司を見つけた私は、ずんずんと彼に近づいていく。上司は私を確認すると「お、来たか」と呑気に手を挙げて応えた。

    「なんで私なんですか」

     開口一番斬りこめば、上司は「まぁ座れ」と顎をしゃくって応接スペースを示した。気勢を削がれ、胸の内で憤りが空転するような心地のまま、勧められるままに二人がけのソファに座る。
     上司は執務机から立ち上がり、斜め向かいの一人がけのソファに腰を下ろした。
     朝五時に叩き起こされ、強制参加させられた会議が終わったのが六時半。その際、上司に十三時に指導部へと言われてから、混乱と動揺で二度寝もできないし、食べ物も喉を通らなかった。

    「和泉守兼定は? 連れて来なかったのか?」

     なんでもないように言われ、空転していた憤りが口から飛び出した。

    「当たり前でしょう。あんな任務聞かされて、連れて来る馬鹿がいますか」
    「お前の任務参加は決定事項だぞ。あの刀のことだ、どうせ行きたがる」
    「それでもです。……和泉守を出陣させるかどうかは、私が決めます」

    「過保護だね」嘲るような口調に、カッと頭が芯から熱を持つ。それを口から細く息を吐き出すことでなんとか抑えると、上司をまっすぐ睨んだ。

    「とにかく、任務の概要を教えてください。和泉守兼定が妖刀になったって……一体どういうことですか?」
    「会議を聞いてなかったのか?」
    「聞いていたから聞いているんです。場所は平成東京、私たちは今回の特命調査には参加せず、妖刀となった和泉守兼定の……」

     言葉に詰まった。内容が、受け入れられるものではなかったから。しかし上司は

    「破壊、回収を行ってもらう」

     と平静な声で続きを引き取った。知らず唇を噛む。

    「……なぜです」
    「放棄された世界線から刀を回収するのは難しいだろう。そもそもが、いずれ消失する世界だ。我々のいる正史の歴史を本流とするなら、あちらは遡行軍の作った支流……一定量の水が故意に流された世界。そして我々は、そちらに流れ込んだ水を、経路を封鎖して堰き止めた。それが勝手に育っただけだ。私たちがそれを調査しに行っているのは、どの地点からであれば支流を生み出さずに済んだのか、その修復の糸口を探るための調査に過ぎない」
    「でも、……和泉守兼定は、元を辿れば土方歳三に行き着く刀です。正史と地続きの刀を、破壊する理由はないのでは? 江戸時代の妖刀なんて、ただの噂程度のものでしょう。何かの間違いなのでは?」

     上司は私の問いかけにしばし黙ると、足を組んで考え込むような素振りを見せる。どこから説明したものか、悩むような仕草だった。
     上司は言う。

    「お前は政府軍に力を貸している和泉守兼定と地続きと言うが、そう簡単なことでもない。辿った歴史が違えば、それは全くの別物だ。それに政府軍側にいるのは刀自体ではなく、持ち主の逸話によった刀だしな。土方歳三が所持していた和泉守兼定の集合体とも言える。だが、この世界にある刀は正真正銘、土方歳三の最後の一振り。いわば祖となる本体であって、お前の和泉守兼定とは全くの別物だ」

     ぴしゃりとはねつけられ、ぐ、と押し黙る。上司は続けた。

    「そもそも土方歳三の最後の和泉守兼定は、箱館戦争の折、土方歳三自身が彼の小姓であった市村鉄之助に頼んで自分の兄に届けた代物だ。それは知っているか?」
    「知っています。私も現世に帰った時には御生家に見に行きました。本当に力強くて圧倒されて……」
    「ではその市村が函館から日野へと向かう途中、遡行軍がけしかけた人間に討たれていたとしたら?」

     関係ない話を喋り出す私の口を、塞ぐように問われた。思考を遮られ、質問の意図を考える。

    「……したらって、そりゃ、日野の生家には辿り着けないんじゃ……まさか……」
    「そのまさかだ。この令和にならなかった世界線では、和泉守兼定は生家にない。流転の刀として、今はとある神社に保管されている」

     るてんのかたな、と口の中で呟いた。確かに、私の刀の本霊とは、全く違う歴史を辿っているけれど……。

    「でも、そんなことで、和泉守兼定の本質が鈍るわけなくないですか? 神社に祀られてるからって、安直に妖刀なんて、」
    「それだけなら、な」

     上司は足の上に手を組んで置き、一つ深く息をつく。

    「元の主を失ったのが一八六九年、その四年後には仇討ちの禁止、そして一八七六年には廃刀令が発布された。この刀は、まさに刀の終わりの時代を生きた。しかしこの世界線の和泉守兼定は、主たる武器が刀から銃へと移り変わったあとも、私刑に使用された形跡がある」
    「それも廃刀令が発布されて以降も、秘密裏にね」続いた言葉に、息をするのを忘れた。私刑って……法が裁いたわけでない人を、制裁するのに使われていたって言うの……?
    「なんで、そんな……」

     やっと出た言葉に、上司は何度か小さく首を振って、「遡行軍の計略だよ」と、忌々しげに呟いた。

    「そのまま遡行軍の手に落ちても十分戦力として使えたんだろうが、刀の持つ物語をもう少し汚してやりたかったんだろうさ。そのほうが……正史を憎みやすい」

    「なにせ誠の刀だからな」と、上司は言う。
     そのままでは扱いづらいから、わざわざ私刑に使われるように仕組んだ……? 正史を憎んで、遡行軍の力になるように? それが、妖刀と称される由縁? なんて姑息な真似をするのだろう。

    「本来あるべき生家と引き離され、人を斬った流転の末に妖刀と恐れられた。そのうえ、触らぬ神に祟りなしと、今じゃ片田舎の神社にほったらかしにされている。どうだ。遡行軍堕ちも秒読みな感じだろ?」
    「そんな重大事件が、本当に、放棄された世界で……?」

     怖々聞けば、上司は言う。

    「だからこそだよ。元々放棄された世界線というのは、破滅に向かって動いているだけだ。たとえ水路ができても水を堰き止めてしまえば、流れた水はいずれ渇いて消える。今は言わば惰性で回っているようなもので、水というリソースが無くなれば、そのまま消えていく。近い未来、あちらの世界は消滅するんだ。特にこの世界は先行調査の結果、かなり破滅が近いらしい」

     彼は不意に胸ポケットから端末を取り出すと「これを見ろ」と言って端末を机に置き、ホログラムを起動する。ぶん、と音を立てて表示されたのは、私の生きていた令和の時代とよく似た街を定点観測する立体映像だった。

    「かなり人が少ないだろう」
    「そう、ですね。言われてみれば……」
    「世界というのは終末が近づくと、人が勝手に消滅していくらしい。所持リソースが減ると生体維持機能がどーとか言っていたが、よく分からん。詳しく知りたかったら調査部に行って聞いてくれ。とにかく、今時点でこの人数だと、あと一年保たないんだそうだ」

     聞きながら映像を見つめていると、ふいに「ここだ」と言って上司が一時停止し、ある一点を指差した。

    「ここ、分かるか?」
    「これって……遡行軍の短刀?」

     人通りの少ない場所を、小型のがしゃどくろめいたものが、すいと画面を横切ったところだった。上司は頷く。

    「今から正統な歴史に軌道修正させるにも、遡行軍が拠点にするにも破滅が近過ぎる。誰にも救えない、使えない、大いなる力が手放した世界。つまり、宙に浮いたエネルギーの残骸に他ならない。そしてそれはエネルギーを使い果たすまでは回り続ける……遡行軍は、ここを試験的に期間限定の牧場として使っていたんだ。いずれ遡行軍に合流する刀の育成場としてね」
    「そんな……」
    「救いようがないからこそ、放棄された世界線だ。政府側もそうは介入しないから、いい隠れ蓑だったんだろう。……ここで起きている人間の消滅は、この放棄世界の最後の断末魔だ。だから向こうも堕ちた刀をこうして回収に来てる。放っておくと、お前の旦那によく似たこの刀は、ここで遡行軍に堕ちる」

     ハッとして顔を上げると、上司が私を射抜くような視線で見つめていた。

    「この世界自体は、放っておいても滅びるから問題ない。が、その堕ちた刀だけは遡行軍より先に破壊しなきゃならん。そこで貴殿の本丸には、平成三十二年の世界に飛んでもらい、妖刀・和泉守兼定の破壊、回収を命じる」
    「……破壊しか、手はないんですか?」

     どうしても諦めきれずに尋ねた。だってそんなの酷すぎる。勝手に憎むように仕向けられただけなのに、妖刀とまで呼ばれるようになって、それで……結局破壊?

    「自分なら、正史を憎む妖刀を手懐けられるとでも?」

     言葉にされると、それはなんだかすごく空虚で、夢物語を聞いている気分だった。

    「──お前のところの刀を、この任務に推したのは俺だ」

     上司が静かに言った。

    「お前の和泉守兼定なら、あの刀にも引導を渡せるだろうと思った。お前のためなら、どんな相手でもブレることなく斬る。そういう刀だ。あの時も──」
    「その話はもう終わったはずです」

     強い拒絶を込めて言い放つ。上司は言葉を探すように途切れさせたあと、「そうだったな」と取り繕うように言った。

    「なんにせよ、見ての通りだ。敵に寝返る可能性のあるものを、引き入れるわけにはいかないし、すでにこの土地には敵性反応がある。お前の感傷の話をしている場合ではない。急がないと、手遅れになるぞ」

     上司の言葉は無情に響き、私は膝に置いた手を見つめて、ひたすら歯を食いしばった。
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    2022/06/04 22:02:44

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    放棄世界線で妖刀になった兼さんを、本丸の兼さんが斬りに行く話です。
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