「一番後ろの席で隣がYだった。俺とYが何かしゃべって、それでYが反対の隣のお前に話を振ったなァ」
「そんなこともあったな」
「テメェは俺の方を見て、少したってから笑った」
「そうだったか」
「そうだぜェ」
「お前は知らなかったと思うがYはお前が好きだった」
「…へェ。何で知ってる」
「本人から聞いた。お前には黙っていろと」
「義理固ぇな」
「それはそうだろう。お前は別の女と付き合っていたからな」
「その件は初耳だが別の件は知ってるぜェ」
「何だ」
「テメェは時々英語のFの家に行ってたろォ?」
「…よく掴んだじゃないか」
「本人がニヤニヤしながら俺を呼んで言ったからなァ。皆に言ってもいいのよって」
「義理を欠いたぞ」
「女の方にはなァ」
「なんか盛り合わせ的なものが食いてぇな」
「1時間しかないぞ」
「食うのに10分。手数が欲しィ」
「冷蔵庫にラぺとパストラミとオイル牡蠣が残ってる」
「羊解凍ォ。赤とイチジクは煮るの中止だ」
「玉ねぎ?キッシュか」
「クリームねぇからオムレツだ。あとマリネ」
「今キノコとチーズは」
「シメジとヒラタケとロックフォールだな」
「生ハム50、アンチョビ、〆鯖、白マッシュ、ベビリ。10品だ。往復10分で」
「暑ィから泡もォ」
「5分プラスだぞ。出る」
「ッし、そこのローズマリー2本切ってくれ」
「チッ」
「立ってるものはァ?」
「お前の✕✕✕!」
「今違ェw」
踝まで海水に浸して砂浜に立つ
僅かに開いた指の間を寄せてはまた戻る波のうねりが通り過ぎ、そこに在る砂を攫ってゆく
引くちからと押すちからに土台を揺り動かされ、ややもすると前に緩く傾斜した沖の方へ倒れそうになる躰を後方に立てる
波の筋の合間に白い帯のように押され流れる大小の泡、引いた水のあと粒の荒い砂にぶつぶつとあく気泡
ゆるく絶え間なく重なり落ちる波音が打ち続くいつの遥かからいつかの遥かへ
晒す肌に流れた汗は漸く引き、だが触れる手にはまだしとりとした温度を残す
触れた手の感触は確かで乗せられた肌はそのまま吸い込むように躰にその温みを運んでくる
傾いた陽を反射して間に間に光る水の面は時に大きなうねりの中にその暗がりを映して崩れ毀れる
何も呼びはしない、何も呼ばれはしない、在るとして何が為でもない
ただ立って
この足がただ自分の重みを支え足に波が寄せては戻っていくそのことに触れそのことをただ感じている
指の下から抜けてゆく砂の粒のさやかさを
今の狭間に閃くその温さを
ひとりだとしても
ふたりだとしても
「夢を見たんだが」
「ンだよ」
「プロポーザルのプレゼンをマジックの手法で行うことになったというものだ」
「ふざけてんなァ」
「いたって通常の選定だ」
「それでェ」
「資格審査の段階でマジックショーの出演実績が問われる。地方のコミセン等は不可。少なくともホテルのディナーショー以上の経験が欲しい。テレビ出演は大きなアドバンテージになる」
「ネット配信はノーカンかァ?いかにもだな」
「SNSのフォロワー数等も加味されるぞ。それはそうとオープニングは当然オリーブの首飾りだ。皆ノリノリの挙動で顔には張り付けたような笑顔が浮かぶ」
「選定委員の先生方はその雰囲気をものともしねぇんだろ。ゲンドウポーズで」
「公平性の観点から幾つか条件の提示がある」
「例えばァ」
「一つ、使用する布の素材はポリエステル100%でなければいけない」
「はァ」
「二つ、使用する鳩の体重は事前に公開で計量するものとする」
「当然コスチュームにも規定があるんだろうな?」
「確かそうだがもう詳細は忘れたな」
「オチはァ?」
「ない。夢だし」
「ン、ほら」
「何だ?」
「飲んでみろォ」
「ああアラスカか」
「緑の島なァ」
「なんでショットなんだ?」
「ちょっと聞香杯的にィ」
「ストイックじゃないか」
「香りは最高だからなァ」
「昨今流行のボタニカルな奴がベースだともっといいかもしれん」
「選択肢多すぎだぜ」
「これは大ジョッキで飲みたい」
「後がやべェ」
「まあ真理だな。強すぎる酒をいっぱい飲むと死ぬ」
「いろはのいだよォ」
「語尾」
「きょらりんいいよなァ。生真面目な黒髪財閥令嬢」
「俺は匿名希望ちゃんだ。二面性のある正統派美少女。猛虎弁だし」
基本、フィクションです
〇〇年ぶりに週刊連載中のマンガを読んでいる
さあ!これで私も新しいWJのリーダーズ!
掲載後ろの方だが大丈夫なのか