冬の楽園 ドアの音、足音、それに続く物音で目を覚ました。しまった。起きて待ってるって言ったのに。
ベッドでぬくぬくと布団に包まりながら寝る直前まで触っていたD.D.D.は手の中になくて、しっかりと充電ケーブルを挿されたうえでサイドテーブルに置かれていた。まだはっきりしない頭でぼんやりしていると、寝支度を調えてこちらに振り返ったバルバトスさんと目が合った。
「あ……また寝てました……」
「いつも申し上げている通り、先にお休みになっていてかまいませんよ」
「んー……でもやっぱり顔見たいので」
そう。待っている間に寝落ちたことは一度じゃない。
「おかえりなさい。お仕事、お疲れさまでした」
「ただいま帰りました。ありがとうございます」
言いながらベッドに入ってくるバルバトスさんの体はお風呂に入った後の香りがするのに既に冷え初めていて、部屋の外は冬らしい温度になっていることが窺えた。
「外、寒かったですか?」
「そうですね……」
バルバトスさんはなぜか腕を少し持ち上げて布団とベッドの間に隙間を作った。ベッドの外のひんやりとした空気が流れ込む。
「大変寒かったので、温めていただけますか?」
その腕に導かれるように滑り込んで隙間を埋め、抱き着き、唇を重ね、足を触れ合わせる。既に十分すぎるほど温まっていた体には冷たいくらいが気持ちいい。
「そういえば帰ってくる途中、雪が降り始めていまして」
「本当ですか? 珍しいですね」
窓の外を見に行こうとしたのを察したのか、私を抱く腕に少しだけ力が込められた。
「あの様子でしたら積もるかと。今夜はもう遅いので、明日いつもより少し早起きして見に行くのはいかがですか? 少しの時間であれば私もお供いたします」
「そうします。一緒に見るの楽しみです……」
暖かさと共に眠気が満たされて行く。眠気に抗えず閉じた瞼の向こうで明かりが消された。
「おやすみなさい」
「おやすみ……なさい……」
暖かい布団で二人、眠りに落ちて行く。やっぱり楽園はここにある。