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    無意識(腐*ノクプロ) プロンプトのことを文字通り爪の先までよく見るようになったのは、自分の気持ちに気がつく少し前のことだった。
     というよりも、その事実に気付いて、俺はようやくプロンプトのことが友達として以上に好きなのだと自覚した。

    「爪、欠けてるぞ」

     そんな頃合いだった、そう声を掛けたのは。
     前から少し気になっていた。整えられてることもあるけど、結構な頻度でギザギザに欠けていることがある。それはまるで噛み跡のようだった。
     言葉にしながら、そういやたまに口元に指をやってることがあるなと思い出す。
     俺の指摘に、プロンプトは一瞬キョトンとした顔をして、それから自分の爪を見てみるみる間に顔を赤くした。
     恥じている。感情をありありと告げるその表情に、「あ、余計なこと言っちまった」と後悔したのをよく覚えてる。

     それからプロンプトはバツの悪そうな顔をしながらも、爪を噛む癖があることを俺に告げてきた。
     子供の頃からの癖で、無意識にやってしまってやめられないのだと言う。
     こいつの家庭環境についてはイグニスから軽く報告を受けてる。だから止めてくれる奴がいなかったから仕方ないことだなと思いながら、今度はそれを口にはしなかった。

    「じゃあ噛んでるの見たら、声掛けるわ。わかんねぇけど多分、治した方が良いだろ」

     代わりの言葉を告げると、プロンプトは少し驚いた顔をして、それから次に迷うような表情に変え、最後に恥ずかしそうに俯きながら「お願いします」と答えたのだった。

     友達としての俺は、それからしばらくプロンプトが口元に指をやってるのを見かけるたびに「爪」と短く声を掛けた。
     だけどなんとなくある日、代わりに手を伸ばしてプロンプトの指を口から遠ざけた。その時、「これならプロンプトに触っても不自然じゃない」なんて名案みたいに思ったもんで、それ以来言葉より先に手を伸ばすようになった。

     ついでに懺悔しときたいんだが、時々唾液で濡れた指に触れることがあって、そん時は自分でも引くくらいドキドキした。
     なかなか気持ち悪いって自覚はあるけど、片思いしてる奴って誰もこんなもんだと思う。わかんねぇけど、多分。
     ちなみに、それ以上ヤバいことはしてない。濡れた自分の指はちゃんとハンカチで拭ったし。ほんと。イグニスに誓っても良い。

     だけどそんな俺の変態的な行為(いや、行為はしてないんだけど)もすぐに終わりを迎えた。
     プロンプトの癖を二人して治そうって頑張ってるうち、色々あって晴れてプロンプトと恋人になったからだ。
     両思いになった俺たちはすぐにキスだってするようになったから、唾液で濡れた指程度じゃもう狼狽えないわけだ。

     だけど、その癖をプロンプトに触れる口実に利用したように、今度はキスをする口実に利用するようになった。
     なんもないのにキスしようってのは俺にはまだ難易度が高くて、もっとしたいのになかなか言い出せないし、かと言っていきなりするのも流れがよくわからない。

     そこでまた名案を思いついた。いつだったか、プロンプトが爪を噛まないでいると口寂しいなんて言っていたのを思い出して、これだと思ったのだ。
    「口寂しさをキスで誤魔化す」とかいうのを聞いたことがある。
     スマホを見ながら爪を噛んでるプロンプトに手を伸ばしながら、次から見つけたらキスするからなと端的に告げたら、プロンプトは不思議そうな顔をしてみせた。
     口寂しいって言ってただろと続ける俺に、今度は納得した顔で「そういうことね〜」と呑気な声を上げる。

     プロンプトの癖は、前に比べてだいぶマシになってると思う。喜ばしいことなのに、ちょっと残念だと思う自分を利己的だなと思った。

     ***

     口元にある白い手を握って、代わりに自分の唇を押し当てる。ほんの少しだけ舌を触れあわせて、小さく音を立てながら顔を離す。
     プロンプトはほんのりと赤い顔で、いつもみたいに「ゴメンね」と短く謝った。

     プロンプトとこのやり取りをするのは今日三度目だ。
     段々と落ち着いてきていた噛み癖は、なんだか最近また回数が戻ってる気がする。
     イライラすることがあったり不安なことがあると噛んでしまう、なんてことをネットで調べた時に見た。
     なんか心配事でもあんのかなと思って気を付けて見てはいるけど、原因はわからない。
     イグニスに相談してみるかなぁとぼんやり考えながらゲームをしていると、隣で雑誌を広げていたプロンプトがまた手を口元に持って行くのが見えた。

     噛む前に、と思って慌てて手を伸ばす。画面の向こうで主人公は敵に撃たれて死んでしまったけど、仕方がない。
     ギリギリのところで阻止して、そのまま掴んだ手を引っ張る。
     しまった、という顔をするのを尻目に口を塞ぐ。
     今回は少し長めに唇を合わせた。寒くなってきたからか、少しだけ荒れてしまっている部分を舐める。同時に、そういう場所はあんまり舐めない方が良いって言葉を思い出して、慌てて自分の唇で拭った。
     だけどすぐにプロンプトの舌も伸びてきて、舌を絡めるうちに結局お互いの唾液で濡れてしまった。

     あとでリップでも塗るよう言おう。そう心に決めながらいつもより長いキスを終えると、とろんとした顔でこちらを見るプロンプトと目が合う。
     俺がそうであるように、多分、プロンプトもキスが好きだと思う。よくこういう顔をしてるから、って根拠しかないけど。

    「なぁ、俺とキスしたくて爪噛んでんの?」

     そんなことを思ったからか、また深く考えずに言葉が口をついて出た。
     いつかのように、プロンプトはキョトンと目を瞬かせて、それからぶわっと顔を赤くさせた。それこそ、耳の端まで。

     深く考えずに発した言葉だし、なんなら冗談のつもりだった。
     実際、プロンプトがキスしたさに爪を噛んでるってことはなかったはずだ。俺が手を握って邪魔すると、いつだって今気が付いたというような顔をしてたんだから。

     だから、顔を赤らめたのは俺にからかわれてると思ったから。
     そう結論を出した俺に、プロンプトの声が届く。

    「そ、そうかもしんない……」

     恥ずかしそうに口元に添えられた指に目がいった。
     ギザギザに欠けてる爪の向こう、濡れたピンク色の唇が目に毒だ。
     名案と思われた俺の案は愚案だったらしい。
     代替案は明日イグニスに相談するとして、今はとりあえず目の前の形の良い唇を塞ぐのが先だ。
    白崎 Link Message Mute
    2018/10/23 4:42:38

    無意識(腐*ノクプロ)

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    プロンの爪を噛む癖を治せるよう頑張るノクプロ(最終的にイグニスに相談する)
    #腐向け #ノクプロ

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    2018/10/23 20:43:56
    白崎さんのノクプロ大好きです…!!新作書いて下さってありがとうございます!
    > chaaasio
    2018/11/07 12:02:53
    お返事遅くなってすみません💦有り難いお言葉嬉しいです~!こちらこそ読んでくださってありがとうございます!
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