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    手料理(腐*ノクプロ)「今日はね、イグニス特性の王様のシチューだよ~。グラディオがベヒーモスの肉とって来てくれたんだって」

     じゃーん、と効果音を口で奏でて、プロンプトが俺の眼の前に皿を置く。

     まただ。
     ここ最近、ほとんど毎日イグニスの飯が出てくる。最後にプロンプトの手料理を食べたのはもう一週間も前な気がする。
     なんか怒らせるようなことしたっけ、と一応自分の胸に聞いてはみるが、生憎と心当たりはなかった。

     プロンプトと結婚して一緒に暮らし始めてもう半年くらいになる。
     最初は逆にほとんど毎日プロンプトの手料理が出てきていた。お互い忙しい毎日だったからかイグニスが気を利かせてたまにプロンプトに料理を持たせることはあったが。

     プロンプトの料理は美味い、と思う。イグニスやグラディオも褒めてたし、多分一般的に見ても美味い部類だと思う。
     城で出てくるような豪勢な盛り付けがされてるとかではないし、料理自体も手の込んだものじゃないが、プロが作ってる城の飯やイグニスの飯を毎日食ってた俺でも充分な味だと思ってた。
     だからプロンプトの飯を食う度に美味いと伝えた。イグニスにも伝えるべきときは伝えてたけど、それ以上に伝えてたと思う。

     まだ高校生だった頃、カフェで談笑するご婦人方の話を聞いたことがある。
     「毎日色々考えてご飯作ってるのに、旦那ときたら美味しいの一言もないからいい加減イヤになっちゃう」って話を。
     そのときはあんまりピンとこなかったけど、結婚してからふとそれを思い出した。
     それで、イヤになられないようにって多少は意識して伝えるようにしていたのだ。まぁ、意識しないでも出てくることが多かったけど。

     だから多分、それは原因じゃないと思う。
     ……そう言えば、別の日に別のご婦人方の話を耳にしたこともあった。曰く、「料理って時間も体力も使うのに品数が少ないとか文句言われてやってらんないわ。もう自分で作ればいいのに」だったか。

     こっちには多少の心当たりがある。
     俺は料理のセンスが本当にないらしく、高校生の時はフライパンをダメにしたし、この歳になってもカレーを焦がしてプロンプトを困らせた。なんとなく、液体状だし放っておいても焦げないかなと思ったのだ。最早料理の腕云々の話でもない気がするが、とにかく俺に料理はさせないほうが良いってことだけはわかる。
     そういうわけで日々の料理はプロンプト任せだ。もちろん品数が少ないなんて文句を言ったことは誓って一度もないけど、俺と同じかそれ以上に忙しいプロンプトには負担なのかもしれない。
     料理ができない分は他で働こうと、掃除機と洗濯機の使い方は覚えた。けど、こっちもあんまり上手いとは言えずプロンプトに手伝われることが多々ある。

     あー、やっぱこっちが原因か……。
     仕事もして、俺の面倒も見てじゃあ身も心も休まらないのかもしれない。でも俺もプロンプトの手料理食いてぇしなぁ……。イグニスには料理じゃなくて掃除か洗濯をしに来てもらうか?
     いや、さすがに新婚の家に毎日来させるのもな……俺も困るし。
     となるとやっぱり俺がやるしかねぇな。俺が干すと何故かしわくちゃになる洗濯ものの謎から解明するか……。

    「ノクト?」

     ふいに向かいから声が聞こえて、慌てて顔を上げる。考え事しながら食ってたから、あんまり会話できてなかった。ぼーっとしてるように見えてたかもしれない。

    「わり、ちょっと考え事してて」
    「……仕事のこと?」
    「あー、まぁ……」

     適当にごまかしたのが気まずくて頬を掻く。

    「……ご飯、口に合わない?」
    「は!? いや、美味いよ! す、すげぇよなあいつ、昔と全然味変わんねぇの」

     困ったように眉を八の字にするのに、思った以上に進んでなかった食事を再開する。口の中に入れた肉の塊は柔らかくて、旅のときに食べた味と寸分変わらない気がする。
     ……いや、ちょっと違うか? まぁ、昔とはわけが違うから、多少違ってしまうのは無理もないか。

     サラダやパンにも手を付ける俺を、プロンプトは安心したような顔で見て自分も食事を再開した。昔よりも落ち着いた仕草で食事をとるプロンプトはやけに大人っぽく見えて(実際充分すぎるほど大人だが)、思わず食事中に考えるべきじゃないようなことが頭をよぎる。
     やっぱり、この美人にイヤになられないようにちゃんとしねぇと。さっきは洗濯物からって言ったけど、今日の皿洗いから頑張ろう。
     そう心に決めて、最後の一口を喉の奥に流し込んだ。

     少しの談笑ののち、皿を下げようとするプロンプトを制してそそくさと食器を片付ける。
     どうしたの、と不思議そうに聞いてくるのに「今日は俺が」と短く告げると、今度は嬉しそうに笑ってすぐに手を引いた。

    「じゃあお願いしまーす」
    「おう、任せとけ」

     さっきとは打って変わって子供っぽく見える笑顔に、今度は思わず顔が緩みそうになる。それをごまかしながらシンクに皿を運ぶと、そこにはいくつかの先客がいた。
     ビーフシチューが入ってたらしき鍋とお玉、水につけられたまな板と、あと包丁。どう見ても料理をした痕跡で、あれ、と知らず声が出ていた。

    「どしたの?」
    「いや……今日ってイグニス来てたっけ?」
    「え? 来てないけど?」
    「だよな……じゃあこれ使ったの誰だ?」

     プロンプトに問うたというよりは独り言のようなものだったけど、俺のその言葉にリビングのソファに移動していたプロンプトが飛んできた。顔を真っ赤にして。

    「や、やっぱ俺が片付けるからノクトあっち行ってて!」
    「うおっ、なんだよ急に。なんでそんな慌てて……」

     明らかになにか隠そうとしているプロンプトの制止しながら、はっと気がつく。

    「……今日、料理したか?」
    「…………」
    「シチュー作ったの、お前だよな」
    「ご、ごめんなさい……」
    「い、いや別に怒ってねぇって! ってかすげー嬉しいけど、でもなんでイグニスが作ったなんて嘘ついたんだよ」

     もうごまかせないと観念したのか、プロンプトは相変わらず赤い顔のまま、俺の様子を窺うような上目遣いでぽつぽつと告げてくる。

    「ノクト、俺と暮らす前はずっとお城とかイグニスのご飯食べてたでしょ? それなのに急に素人の俺の料理食べることになったから嫌じゃないかなーって……」
    「はぁ!? 全っ然イヤとかねーけど! 俺、なんか変なこと言っちまったか? それで不安にさせてたなら謝る。けどマジでイヤなんて思ったことねーから!」
    「いや、ノクトになにか言われたとかじゃないんだけど……」
    「じゃあなんで。知らねーあいだにお前のこと不安にさせてたとか、すげーショックだわ……」

     俺の言葉にうぅ、と小さく呻いたプロンプトは、次に短くごめんねと口にした。

    「俺が勝手に不安になってただけ……ノクト、俺の料理食べるとき、いっつも美味いって言ってくれてたでしょ?」
    「え? あぁ、まぁ、美味かったから美味いって言ったけど……」
    「イグニスの料理食べるとき、そんなにいっぱいは言ってなかったから……なんか、気ぃ遣わせちゃってるのかなーって……ほんとは美味くないのに無理してんのかなって、思っちゃって……」

     正直ちょっと意味はわからなかったけどともかく、しゅん、なんて音が聞こえそうなくらいに肩を落とすプロンプトをまずは抱きしめる。
     マジで焦った。本人の言う通り、勝手に不安になってるだけだ。でも、こういうところがまた守ってやりたいって思わせる一因でもあるのは確かだ。それでもやっぱり、もうちっと自分に自信を持ってもらいたい気もするけど……まぁ、人の性格はそうそうすぐには変えられないか。

    「俺が気ぃ遣ってそういうこと言うタイプじゃないって、わかんだろ」
    「……そう言われたらそうかも」
    「だろ。マジで全部美味いと思ってたから、忙しくて無理とかじゃなかったらまた作って」
    「……うん、今度は嘘つかないで出すね」
    「おう、頼むわ。つーか、もしかして最近イグニスの料理って出してたやつ、全部お前の?」
    「ううん、嘘ついたのは今日だけ。あとのは本当にイグニスのだよ。ここしばらくずっとイグニスに料理教えてもらってたんだ~。今日のやつ、俺が作ったってバレなかったら合格ってことにしようと思って」

     腕の中でへへっと笑うプロンプトになんとも言えない気持ちが湧き上がってくる。いや、「なんとも言えない」じゃないな、愛おしいって気持ちだ、これは。
     自然と抱きしめる腕に力が入ると、今度はわぁっと驚いたような声が上がった。
     慌てて力を緩めて、それでも腕の中からは逃さずに柔らかな白い頬に軽くキスしてから提案する。

    「皿、絶対に明日洗うから、今日はこのままベッド行こうぜ」

     ちょっとだけ恥ずかしそうに身じろいで、腕の中の金色はこくんと一つ頷いた。
    白崎 Link Message Mute
    2019/04/01 6:16:34

    手料理(腐*ノクプロ)

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    ※陛下が普通に生きてて
    ※ノクプロが結婚してる
    #腐向け #ノクプロ

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