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    ミラプトとヒューズ レジェンドとして新しく仲間に加わった男は俺よりずっと歳上で、気は良いがちょっとそ、粗相……いや、そぼう? あー、つまりガサツな男だ。俺と違ってスマートさはないが、まぁ悪い奴じゃない。この俺を捕まえてフィンガーフィレットに興じた挙げ句にヘッドロックをかましてくるようなおっさんだが、悪人ってわけじゃないんだ。いやほんとに。
     向こうもその気なら友達になっても良いと思ってる。その程度には俺はあのおっさんを気に入ってんだ。ただ、奴は奴でどうやらクリプトを気に入っちまったようで、やたらとちょっかいをかけるのだけが気になるところだ。

     俺とクリプトはなにを隠そう、こ、恋人ってやつで(そう、色々あってとうとうこの俺から告白したんだ。俺があんなに真剣に告白するなんて何年ぶり……いや、本当のことを言うと初めてかもしれない。振られたらってあんなにネガティブになるのだって初めてだった。でもそんな俺の心配をよそに、あのおっさんときたら意外にも二つ返事でOKを寄越した。ただそのときの顔が……ってこの話はまた今度にするか。括弧内で話せる長さじゃなかった)、なのにヒューズのおっさんときたらそのクリプトのケツを遠慮なく叩くわ揉むわで大変なわけだ。

     もちろん俺だって恋人としてそれを見過ごしてるわけじゃない。まぁ付き合ってることを口外したら別れるって釘を刺されてるから、あくまで一同僚として制止してるだけなんだが。
     クリプトもクリプトで、最初は過剰に嫌がってたくせに最近じゃもうあんまり抵抗することもなくなってた。理由を聞けば、「他の連中にも同じことをしているし、そういう挨拶なんだろう。反応すると面白がってもっと酷い目に遭うからもう好きにさせる」というお利口な答えが返ってきた。確かに被害者はクリプトだけじゃない。俺もたまにシップ中に響いてんじゃないかってくらいの音を上げて叩かれることがある。あのコースティックでさえも被害者の一人だ。まったく、サルボの挨拶ってのはとんでもねぇ。
     とは言え、たとえ挨拶だろうとやっぱり恋人のケツが触られるってのは気持ちの良いもんじゃあない。多分、俺のだから触らないでくれと一言言えばやめるタイプだとは思うんだが、それを言ったら別れ話に発展しちまうからこの方法は使えない。

     どうしたもんかと日々考えあぐねる中、幸か不幸か今日の試合はクリプトとヒューズの二人と組むことになった。シップ内でチーム発表と同時に早速ヒューズがクリプトのケツを叩くのが見えて頭を抱える。まぁ、俺の知らないところでやられるよりマシか……いや、マシなのか?
     そんな疑問を抱きながらも俺はしっかりとジャンプマスターの努めを果たすのだった。

    ***

    「次のリングまで少し遠い……おまけに洞窟を通って行くしかないようだ。待ち伏せされてたら面倒だな」

     今日の試合は減りが早い。まだラウンド2だというのに残り部隊はとっくに半分を切っている。広さの割に人が少ないせいか、あたりは眠くなりそうなくらいに静かだ。
     とりあえず様子見ということで籠もった建物の中で、クリプトはマップを見ながら次の行動を考えている。それを横から覗き込みながらヒューズが口を開いた。

    「お前さんのそのおもちゃで先に見てきてくれよ」

     おもちゃじゃない、ハックだ……なんてぼやきつつ、クリプトは言われたとおりハックを取り出して空に放つ。それが最善の方法だと判断したらしい。
     俺も異論はなかったので、ドローン操作中は無防備になるクリプちゃんをいつもどおり護衛しようと入り口付近にデコイも出しつつ周囲を警戒することにした。
     それをしばらくのあいだ不思議そうに見ていたヒューズが、不意にクリプトをひょいと肩に担ぐ。慌ててドローン操作を中止するクリプトのケツを軽く二度叩いて、ヒューズは豪快に笑って言った。

    「あのドローンってのは便利だが、こいつは流石に無防備すぎやしねぇか? それにもう収縮も始まっちまった。つーわけで、操作してるあいだ、俺様が担いで運んでやりゃ先を見つつ移動もできて良いと思うんだがどうだ?」

     確かに。逆になんで今まで思いつかなかった?
     なんて納得しちまってすぐに言葉が出てこなかった俺を置いて、ヒューズはクリプトを担いだまま俺のデコイを通り抜けて建物からそそくさと出ていってしまう。

    「こ、これはルール的に大丈夫なのか……?」

     それを慌てて追いかける。クリプトの方も言われた内容には異論なかったようで、降ろせとは言わずにルールの心配なんてしていた。
     結局問題ないと踏んだのか、クリプトはまぁ良いかと小さく呟いてヒューズの肩の上で揺られながらドローンの操作を再開する。意外と図太い男なんだ、こいつは。

    「よし、洞窟の先には誰もいないな。このまま突っ切ろう」
    「そりゃあ良い、そんじゃその先の小屋まで走るぞ」
    「あぁ、そちらの方も見ておこう」

     この奇妙な状況に誰もつっこまない。俺も俺で、ひょこひょこと揺れるクリプちゃんの足が可愛いなとかど~~~でも良いことを考えてる。これは一種の現実逃避ってやつか?
     ため息をつきそうになる俺をよそに、ヒューズはあたりに誰も居ないと聞いて緊張が緩んだようで、走る足はそのままにクリプトのケツに置いていた手をもぞもぞと動かし始める。なにしてんだ、と俺が声を上げるより前にヒューズがひとつ唸り声を上げた。

    「お前さんよぉ、上半身はそこそこ鍛えてるようだが下が細っこいなぁ。ケツも小せぇし足も棒みてぇじゃねーか。おまけに馬鹿みたいに軽いがちゃんと食ってんのかぁ?」

     それがいいんだろ! その小さいケツとほっそい足が! そんでその割に肉付きの良い胸とのバランスが……あと飯だって絶対俺と付き合う前より健康的なものを食ってる。前までのこいつときたらレトルトやらカップ麺やらばっかで酷い食生活だったんだぞ。俺の料理を食うようになってから確実にムチムチしてきた。まぁ足は細いままだけど……って主張したいとこだが、言ったらどんな目に遭うかわからないから言えない。つらい。
     あーくそ、ヒューズだけじゃなく近くを飛んでる中継ドローンに向かって、このスカした細身の天才ハッカーが意外とエロい体つきをしてんだってことを暴露してやりたい。……いや待てやっぱりダメだ、それは恋人だけが知るべき情報だ。余計なことを言って変な記事でも出たら困る。

    「どうにも下には筋肉がつかない体質らしい。飯もちゃんと食ってる、余計な心配だ」

     俺が隣で葛藤してるのを知ってか知らずか、クリプトは少しも怒らず穏やかに言葉を返す。まだ付き合う前に俺が同じことを言ったときは顔面に殴りかかってきたのに、なんでこうも対応が違うのか。まぁ、言い換えれば俺だけが特別ってことで悪い気はしないがな。

    「そうかぁ? しっかし、こんな小さいケツでこいつのブツを受け入れるのは大変そうだなぁ」

     ガハハと豪快な笑い声が響く。いつもは伏目がちなクリプトが目をまんまるにしたあと、数秒置いて少し先でこちらの様子を伺うように飛んでた中継ドローンが煙を上げて落ちていった。多分、クリプトがハッキングして落としたんだ。あの距離なら多分声は拾われてないだろうが、こいつは中のデータを全部ぶっ壊したことだろう。それくらいレアな表情がここにはある。
     が、それも数秒のことで、クリプトはすぐにいつものクールな表情に戻ると俺をキツく睨んできた。ウィットぉ、と低く地を這うような声が俺の名前を呼ぶ。それに慌てて首を横に振って否定の言葉を叫んだ。

    「違う違う違う! 断じて俺じゃねぇ! 俺はなぁ、お前の言いつけを健気に守って誰にも、ラムヤやパスにだってお前と付き合ってること喋らなかったんだぞ!? ……あっ、待て今のはナシだ」

     どこに中継ドローンがいるかわかんねぇのに余計なことを言っちまった。考えるより先に言葉が出るのは俺の悪いところだ。わかっちゃいるが持って生まれたもんだからどうしようもない。そして一度口から飛び出た言葉もまた、もうどうすることもできない。
     結構な先を飛んでいたハックが猛スピードでこっちにやってくるのが見える。やべ、と思うのと同時にハックが俺の顔面めがけて体当たりをしてきた。まぁハックが、って言うかクリプトが操作してんだけどよ。

    「いっっってぇ! お、お前なぁ、ハックが可哀想だろ! もっと大事に扱ってやれよ!」
    「うるさい! EMPもお望みか!?」

     顔を赤くしたクリプトがヒューズの肩の上で暴れる。なんともシュールな絵面だ。俺はジンジンと痛む鼻っ柱をさすりながら、その様子に笑わないように必死だった。さすがにここで笑えば事態が悪化することくらいはわかる。EMPは嫌いだ。
     元凶とも言えるヒューズはと言えば、クリプトが暴れるのも気にならない様子で可笑しそうに笑いながらなんなく走り続け、予定通り小屋に入ってようやくクリプトを解放した。

    「なんだ、お前ら本当に付き合ってんのか」
    「……は?」

     降ろされてすぐ、拗ねたような顔で俺にぶつけたハックを撫でていたクリプトが恐ろしい声を上げる。俺以外には素っ気ないところもありつつわりかし人当たりが良い方なのに、これは完全に俺にキレてるときと同じ声音だ。

    「どういう意味だ」
    「そんな怖い顔すんなよ。なに、前に読んだゴシップ雑誌でお前らがデキてるって記事を読んでよぉ。冗談のつもりだったんだが……いや、心配すんな、言いふらす気はねぇよ。ま、俺が言いふらすまでもないとは思うがなぁ」
    「なに?」
    「試合中は流石にそれどころじゃあねぇようだが、シップの中でのお前らときたら……新入りの俺でもわかっちまうくらい仲が良すぎだぜ。俺がお前さんのケツを触ったらこっちがすーぐすっ飛んでくるとことか……なぁ?」

     こっち、と俺を指差したヒューズが悪い笑みを浮かべる。おいやめろ、そういう言い方されると俺が――。

    「ウィットぉ……」
    「なんでだよ! 俺はお前を守ろうと思ってだなぁ!」

     うるさい、と叫んだクリプトが腕の端末に指を乗せる。こいつEMPを撃つ気だ!

    「おいおい、俺様まで巻き込むんじゃねぇ!」
    「なに言ってんだ主にあんたのせいだろーが!」

     頭上のハックから起動音が聞こえる中、それに紛れて地面を蹴る三つの足音が聞こえた気がして慌てて声を上げる。

    「待ておいクリプちゃん、なんか足音が――」

     聞こえる、という声はEMPが発動する音にかき消された。
     クリプトの小さな呻き声の他に、俺とヒューズ、それから外の三つ、計五名の悲鳴が上がった。まさか突っ込んだ先でこんなにタイミング良くEMPが撃たれるとは思ってなかったんだろう。完全に慌てた様子の敵部隊を、まだ怒りが収まらないらしいクリプトがいつもより大胆な立ち回りで三タテして銃声がやんだ。と、同時に試合終了のアナウンスが響く。どうやら言い合いをしてる間に残り二部隊にまで減ってしまっていたようだ。

     小屋から出ると、フラッグには早速チャンピオンを紹介する映像が。いつもは涼しい顔でそこに映るクリプトの、少し赤くなった不機嫌そうな顔がアップで映し出されていた。
     はぁ、これは機嫌を取るのに三日はかかりそうだ。

    ***

    「ところで、あのときランパートとパスファインダーの名前は出てきたが、レイスの名がなかったのは気のせいか?」

     必死の思いでクリプトの機嫌を直した二日後の夜、ベッドで甘い時間を過ごそうとする俺の出鼻を挫く言葉が響く。

    「……」
    「なんとか言え」
    「……いや、違うんだって。レネイには色々と相談に乗ってもらってたからよぉ、報告するのは人として当然というかなんというか……」
    「ふーん」

     素っ気ない言葉と共にサイドボードに置かれた端末に伸びる手を慌てて取る。
     あの手この手でご機嫌斜めの秘密主義者を宥めすかして、なんとか事に及んだのはそれから二時間後のことだった。
     まったく、酷い目に遭った。けど、あれ以来ヒューズがクリプトのケツをあんま叩かなくなったのはまぁ、災い転じて……なんだっけな、ま、結果オーライってやつだ。
    白崎 Link Message Mute
    2021/02/19 22:22:32

    ミラプトとヒューズ

    ※付き合ってる
    #腐向け #ミラプト

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