年越し(腐*ノクプロ)「ねー、ほんとに年越し俺と過ごしてていいの~?」
あと数時間で年が明けるって頃合いに、プロンプトはもう何回目かもわからない言葉を口にした。
友達に、恋人になってはじめての年末年始。俺のマンションで一緒に過ごそうと言えたのは、プロンプトが「今年もまた一人かぁ」と事もなげにつぶやいたのを聞いたのがきっかけだった。
親との関係はそれとなく知っていたので、特に詳しいことは聞かずに誘った。
そうするとプロンプトはゆっくりと二回瞬いて、城には帰らないのかと訊ねてきたのだった。
「公務は二日からだから大丈夫」
あのときに訊ねられたときに返した答えと同じことを口にする。これもまた何回目かわからない。
うちに来たプロンプトは基本的には楽しそうにしてるけど、ふと思い出したようにさっきみたいなことを聞く。心配そうに眉を八の字にして。
「レギス様と過ごさなくていいの?」
「いいよ、二日に会うし。それに親父は色んな奴と挨拶あって忙しいから、城戻ってもどうせ会えないしな」
「そうなんだ……それってノクトは一緒じゃなくていいの?」
「居なくていいって言われてる。つーか、なんでそんなに心配すんだよ」
隣のプロンプトの髪を撫でる。
ソファで二人並んでゲームをはじめて数時間。コントローラーを置いたのは俺が先だった。少し疲れたのと、プロンプトに触れたかったのが理由だ。
肩を抱くと、ゲームをやめた俺に文句を言うでもなくプロンプトはすぐ俺にもたれかかってきた。これはいい雰囲気だと思ったのも束の間、例のごとく思い出したように冒頭のセリフというわけだ。
俺の胸元に頭を預けながら、プロンプトは相変わらずの心配そうな顔でつぶやく。
「だって……俺と付き合い始めてからノクトが公務とかサボるようになった~とか言われたらまずいじゃん? 俺のせいだからってノクトと一緒に居られなくなるの嫌だよ、俺」
「んだよ、そんなことか。誰かになんか言われたか? だったらすぐ俺に言えよ」
「言われてないけど~……言われないようにしなきゃなって思ってるだけ」
「……大丈夫だって。そういうこと言われないようにちゃんとやってるから。むしろ、前よりちゃんとしてるって評判だわ」
「え~本当?」
「そこで疑うか? 失礼な奴め」
冗談めかして言うプロンプトの鼻をつまむ。
眉は相変わらず八の字だけど、そばかすが散らばった顔はすぐにニコッと満面の笑みになって、それから俺に短くキスをしてきた。
不意打ちに驚く俺に、可愛い恋人が上目遣いで言葉を紡ぐ。
「ごめんごめん。ノクトがいっぱい頑張ってるの、俺ちゃんと知ってるよ」
「……お、おう」
「俺のためでもあるって……ちょっとは自惚れてもいい?」
「……つーか、全部お前のためだわ」
またしてもぱちりとひとつ瞬いて、プロンプトは俺を押し倒すようにして胸に飛び込んできた。
本当にそのまま後ろに倒れて、嬉しそうに頬を擦り寄せてくるプロンプトを撫でながら、ふいに過った考えに、あ、いや、と短く声を上げる。
それに何を思ったのか、バッと顔を上げてまーた不安そうな顔をする金髪をさっきより強く撫でる。
「お前と一緒に居たいからって理由だから、それって俺のためか?」
手の中の金色がふるふると揺れる。
感極まったように抱きついてくるプロンプトを抱きしめると、どっちでもいい、と大きな声が上がった。