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    第一章:The Intern序章:十年前スカーレット・モンク(1)シルバー・ローニン(1)スカーレット・モンク(2)シルバー・ローニン(2)スカーレット・モンク(3)スカーレット・モンク(4)シルバー・ローニン(3)スカーレット・モンク(5)シルバー・ローニン(4)スカーレット・モンク(6)シルバー・ローニン(5)シルバー・ローニン(6)スカーレット・モンク(7)スカーレット・モンク(8)スカーレット・モンク(9)序章:十年前「ねえ、あたし達って、何やれば良かったんだっけ?」
    「ええっと……陽動……」
    「悪モンの親玉の家を派手にブッ壊す事って、陽動って呼ぶんだっけ?」
    「……」
    「帰りは安心だな……。一夜にして関西の軍事バランスが崩れちゃったんで、奴らには私らを追撃する余裕なんて無いだろうしな」
    「…………」
     ここは、あたし達が住んでいる九州は福岡県から遠く離れた大阪府の吹田市。
     かつて、万博記念公園と呼ばれていた場所の近くだ。
     夜が明ける頃には、わざわざ万博記念公園を潰して作られたモノも灰と瓦礫の山と化しているだろうけど。
    「ところでさ……お前、靖国神社に怨みでも有るのか?」
     私の双子の姉であるらんちゃんにそう言ったのは、ひなたちゃんだ。……本名は関口陽、ヒーローとしてのコードネームは「大元帥明王アータヴァカ」。強化装甲服パワードスーツ水城みずき」の「パワー型」を着装した「修験道系『魔法少女』」だ。
     いや、「魔法『少女』」と言うと怒られるので(あたし達姉妹きょうだいも、今年の3月に高校を卒業し、ひなたちゃんは、そのあたし達より更に1〜2歳上だ)「魔法使い」と呼ぶべきか。
    「怨みと呼べる程の『思い入れ』が有るんなら、あんな雑なブッ壊し方なんてやらない」
    「ああ、そう言や、前回も雑な壊し方だったな」
     姉とは言っても、あたし達が赤ん坊の頃に両親が離婚したせいで、別々に育ち……あたしが瀾ちゃんと云う姉が居るのを知ったのは、高校に入る直前だった。
     その「姉」が着装しているのは、超チート級の戦闘用強化装甲服パワードスーツ「護国軍鬼4号鬼」。
     「護国」と言っても、十数年前の富士山の噴火で関東が壊滅して以降、日本の「国」って何だ、と云う極めて哲学的かつ実際的な問題が生まれ……そして、未だに回答の糸口すら見出せていない。
     実際、あたし達の仲間の一人で、瀾ちゃんの恋人であるエイミー……ヒーローとしてのコードネームは「青き戦士ソルジャー・ブルー」……は、生まれも育ちも民間軍事企業の研究所なのに「自分の民族的エスニック・アイデンティティーは『スコッチ・アイリッシュ系アメリカ人』だ」と言い張っている。
     世界各地で「国」が機能しなくなってからは、それが「普通」になりつつあるのかも知れない。国籍も民族も……下手したら性別さえも「自分が何者かを自分で決める為の補助線や道具」と化しつつあるのかも……。いや、エイミーの場合は、単にアメコミのキャプテン・アメリカのファンだから、スティーブ・ロジャースと同じになりたいだけだろうけど。
     話を戻そう。
     あたし達の目に映っているのは……そして、かつて「万博記念公園」が有った場所に建てられたけど、もうすぐ単なる廃墟と化すであろうモノは……関東が壊滅して以降に作られた2つの「贋物の靖国神社」の内の残り1つ。通称「シン靖国神社」だ。
     もう1つは、壱岐と唐津の間の人工島「Neo Tokyo Site01」の通称「九段」地区に存在したが……3年前に瀾ちゃんが、ある理由で「死んだフリ」をする羽目になった際に「ついで」に爆破されてしまった。
     ちなみに、この「大阪」に有る方の「贋物の靖国神社」は、どうやら精神操作系の特異能力者らしい自称「シン天皇」が住む、これまた自称「シン皇居」も兼ねている。なお、本当に旧皇族の一員かは不明。
     いや、「シン皇居」を兼ねている、ってのは不正確だ。正確には「兼ねていた」。
     金も社会的地位も十分に有るのに、もうすぐ廃墟になる場所に住み続けるのは少しもオススメ出来ない。
     「シン天皇」が生きていても、そろそろ、引越し先を探して、引越し業者に見積を依頼した方がいい。
     多分、家具とかもほぼ全部無くなってるだろうから引越し費用がかからないのは、この状態での数少ない救いだろう。……生きていればだけど。
     ここ、自称「シン日本首都」こと旧大阪府が誇る珍兵器「陸上戦艦『移動式・護国神社』」が何台も制御を失なって、「シン靖国神社」に突入し、そして互いに衝突したり、積んでる大砲やミサイルを乱射したり……まあ、控え目に言ってもエラい事になっている。要は、自分達の兵器を、自分達が「日本の正統な国家元首だ」と主張してる人物の住居にKamikazeさせてしまったのだ。そのうち歴史の本に載る事間違いなしの派手で豪快で色々と残念な自殺点オウンゴールだ。
     その時、陽ちゃんの脈拍が変化。
    「どしたの……?」
    「あ……ああ、『観えない』んだな……。あのデカブツ、『魔法』系の兵器も積んでたみたいで……それも暴走して……ヤバい『異界』への『門』が次々と開いてる」
    「なんだ……いつもの事か」
    「困った事に『いつもの事』だ」
     続いてドデカい火柱。
    「何、あれ?」
    「そりゃ、ガソリンと火薬を山程詰んでるモノに火が回れば、ああなる」
     今度の解説は瀾ちゃん。
    「『最新兵器』なのにEV電動車じゃないの?」
    「あのデカさのモノを電動化するのは……まだ技術的に難しい上に……今じゃ『大阪』の内と外の技術格差は5年分ぐらいは有る筈だ」
    「あたしの能力ちからで、あの火を消した方がいいかな?」
    「あれの消火に必要なのは……水より、化学消防車だな……」
     残念ながら「ヒーロー稼業」を始めてから、何度も、この手の「歴史に残る一大スペクタクル」の現場に居合せる羽目になったので、あまり感慨は無い。ああ……自分でも色々と感覚が麻痺してる事だけは良く判る。
     確かに瀾ちゃんの言う通りだ……。「怨み」も、また、「思い入れ」の一種。愛の反対は憎しみではなく無関心。誰かに憎まれ怨まれてるなら、まだ、安心だ。力を持つ誰かが、自分の大切なモノに何の関心も持っていない時こそ、あっさりと、無惨かつ面白おかしく、どたどたどたどたどたぁっ♪って感じでティラノサウルスのむれか何かが走り去った後みたいな状態と化す事を心配した方がいい。
    「あのさあ……何で……いつも、こうなるんだよ……」
     この自称「シン日本首都」こと旧大阪府は、無法地帯でも全体主義国家でも無い。
     そのどちらよりも更に酷い。
     両方の悪いとこ取りだ。
     チート能力は持ってるけど、阿呆さに関してもチート級のヤツが支配する……普通はあっさり破滅の炎に焼かれるけど、その結果、不死鳥のようにもっとマシな状態になって甦る筈の社会が、支配者のチート能力によりゾンビのように死に切れずにいる、と云う最低最悪の状態だ。支配者は変る気配が無いのに、社会システムは破綻している。最近の社会学者が「ゾンビ社会ソサイエティ」「ゾンビ共同体コミュニティ」と呼んでるモノの典型例だ。
     あたし達の今回の任務は……そこから「難民」を隣県に逃す事……。
     そこに関しては、専門のチームがそつなくやって、あたし達は、言わば「超強いだけの囮」。
     「事実上の大阪政府」である「獅子の党」は、今や旧時代の遺物にして異物と化した連中の集団だ。
     「大阪」の真の支配者である「精神操作系の特異能力者」は「手駒」として「精神操作能力への耐性を欠いたメンタリティ」の持ち主……昔風の言い方をすれば「体育会系」や「ヤンキー」……を揃えてしまった上に、「精神操作能力」への耐性が有る人達への迫害を行なっていた。
     どうやら、二〇〇一年に存在が明るみに出る前から裏で何かやっていた「精神操作能力者」達は……秘かに「自分達の能力に耐性が無いメンタリティの持ち主ほど出世しやすい社会」を作っていたらしいのだが、今の「大阪」の「真の支配者」は、それを歴史上、最も堂々かつあからさまにやり始めた。
     その事態を何とかする為に、あたし達が囮になってる間に、万単位の『精神操作能力への耐性持ちの人達』を『亡命』させる、と云う手筈を整えていた筈だった。なにせ、「大阪」の上層部は、異常に面子に拘る直情的で短絡的で、それでいて自分達を冷静で合理的で理性的だと信じ込んでるマヌケが揃ってるんで、精神操作能力なんて無くても操り易い事、この上無い。
     けど……いつも……こうなる……。あたし達と云う「囮」が……少々、チート過ぎたらしい。ゾンビから生きた一般人を逃す作戦の囮役が、あっさりゾンビの半数以上を虐殺してしまったような感じだ。
     そして、瀾ちゃんは……理性・合理性・知性を兼ね備えてるのに……何故かいつも結果として、単に、悪モンを大量虐殺し、建物や町をブッ壊す……だけで済んだら、まだマシなオチを作り出す。……あたし達が行く先々の「地域社会」は、何故か、瀾ちゃんが関わったが最後、それ以前とは同じで有り続ける事は出来ない。
    「なあ、私らがやった事のせいで……『大阪』の支配者が代ったら……難民を逃す意味って、有ったのか?」
    「あ……言われてみれば……」
    「『言われてみれば』じゃないよ……」
     そうだ……瀾ちゃんのヒーローとしてのコードネームは「羅刹女ニルリティ」。そして、「瀾」と云う名前の意味は「荒波・高波・大波」。
     いつしか、同業者の間でも、悪モン達の間でも、こんな事が囁かれるようになっているらしい……。
    「悪鬼の名を騙る苛烈なる『正義の女神』が現われる場所には混沌と新たなる秩序がもたらされる」
     と……。
     いや、こんなクサくてダサいセリフ、本人の前で言ったら、瀾ちゃんの機嫌が悪くなるのは確実だけど。
    スカーレット・モンク(1)愛は戦いである
    武器のかわりが
    誠実まことであるだけで
    それは地上における
    もっともはげしい きびしい
    みずからをすててかからねばならない
    戦いである――

    梶原一騎&ながやす巧「愛と誠」より

     まず、棒術の型を5分。
     続いて、居合と剣術の型を5分。
     最後に素手の型を5分。
    「毎日じゃなくていい。2〜3日に1回は、それをやれ。動きのパターンが変ったら、その『型』をスムーズに出来なくなる筈だ。そうなったら、腕が落ちてるか……逆に上がってる証拠だ」
     あたしの師匠の片方である高木瀾は、そう言った。
     数年前に大怪我を負い「ヒーロー」を引退。長いリハビリの結果、ようやく、「近所のコンビニまでなら歩いて行き来できる」ぐらいまでには回復したが……1㎞を超える移動には車椅子と介護ロボットが必須、「現場」に戻るのは一生無理で、本人にも、その気は無い。
     かつては「悪鬼の名を騙る苛烈なる『正義の女神』」とまで呼ばれた「伝説のヒーロー」だった事を示すものは……このクサい渾名を本人の前で言った時の、おっかない表情かおぐらいだ。
     知らない人間から見れば三〇前で人生が終ったように思えるだろうが……本人は妙にサバサバと長い「余生」を楽しんでいるらしかった。
     長いと言っても、「ヒーロー」を引退した時の怪我のせいで、多分、六〇まで生きる事すら絶望的らしく、もう人生の折り返し地点を過ぎている。
    「よし、次だ」
     続いて、もう1人の師匠である関口陽の「気」が高まる。
    「吽っ‼」
     「師匠」の気合より一瞬前に、脳裏に「守護尊」である摩利支天を表わす梵字を思い浮かべる。
     実在が確認されている強大な霊的存在から本当に力を借りている「流派」も有るらしいが、私達の「流派」で云う「守護尊」は「どの系統の術が得意か?」を示す「記号」に過ぎない。
     「摩利支天が守護尊」とは、得意な術が、「太陽の光に含まれる霊力」を源とする光・浄化・熱・隠形に関係するものである事を表わす。
     そして、私が「隠形」で気配を消すと、師匠が放った「気弾」は目標を見失い、明後日の方向に消える。
     遥か大昔の二〇世紀のマンガや格闘ゲームと違って、実際の「気弾」は「呪詛」の一種。
     相手の「気配」を認識とらえる事が出来なければ命中させる事は出来ない。
    「あの……そろそろ、現場に出してもらえ……えっと……」
     あたしが、そう言った途端に、2人の師匠は顔を見合せる。
    「お前の希望は叶えてやる。ただし、その代り、学校の勉強もちゃんとやれ。大学ぐらいは出るようにしろ」
     瀾「師匠」は、そう言った。
    「や……やっぱ、『正義の味方』って、一生モノの仕事じゃないんすか?」
    「判らん……『正義の味方』が生まれてから、まだ、三十何年かだ……。今後、どうなるか知れたモノじゃない。世の中が『正義の味方』を必要としなくなっても、生活出来る手段は確保しておけ」
    「は……はぁ……」
    「それに、私の死んだ師匠から……『お前に弟子が出来たら、必ず教えろ』と言われてた事が有る。お前にも、もし、将来、弟子が出来たら、必ず言っておけ」
    「なんすか?」
    「自分達が不要になった世界を夢見ない者に、戦士の資格は無い」
    シルバー・ローニン(1)いかなる性質といえども、この勇気という性質ほど、単に理性だけを頼りにする賢者の頭を混乱させ、定義を紛糾させてきたものはほかにない。
    そもそも勇気なるものは、ほとんど一種の言語矛盾なのである。
    生きようとする強い意志を意味するものでありながら、現実にはいつでも死のうとする決意の形を取るからだ。

    G・K・チェスタトン「正統とはなにか」より

    浪人は自分自身の正義に従うしかない。

    マーティン・スコセッシ

    「単純な身体能力なら、もう既に、キミはボクたちより上だ」
     師匠の1人であるエイミー・エヴァンスはそう言った。
     立ち上がる事さえ出来ないほど疲れ切った私に対して、同じ時間、ほぼ同じ条件で稽古に付き合っていた師匠は、汗こそかいているが、まだ、ピンピンして、表情には余裕がある。
     体格と、銀色の髪と灰色の目は、故郷で私が想いを寄せていた女性に似ている。
     性格については何から何まで逆だが。
    「なら、何で、いつも貴方達に勝てないのだ?」
    「何度も言ってるだろ。力の使い方がなっちゃいない」
     私も師匠達もの呼び方では「強化兵士」と呼ばれる存在だ。
     常人を遥かに超えた知能・身体能力を持っていた古代種族「古代天孫族ヴィディヤーダラ日の支族スーリヤ・ヴァンシャ」を再現した存在。
     だが……事情を知らない者には変に聞こえるだろうが、の呼び方では、齢下である私が第一世代で、齢上の師匠達は第二世代だ。
     古代天孫族ヴィディヤーダラ日の支族スーリヤ・ヴァンシャに限りなく近付けた存在が第一世代。
     第一世代の「強化兵士」が持っていた「通常の負傷に対する高速治癒能力と引き換えに、放射線や発癌性の有害化学物質に対する耐性が常人未満」と云う欠点を改良した……言うなれば「能力にリミッターをかける代りに、より運用の幅を大きくした」のが第二世代の「強化兵士」だ。
     師匠達は、確かに常人からすれば驚異的な身体能力を持っているが……それでも、喩えるなら、「短距離走と長距離走の両方で世界トップレベルのアスリート並」……全体として見れば「人間として有り得ない」が、個々の能力は「常人でも才能有る者ならギリギリは訓練で到達可能」な範囲内だ。
     だが……私は……大人になる頃には、常人が訓練で到達出来る域を超えた能力を持つようになるだろう。
     女としても小柄な私が、やがては、力においては、男としても大柄な者と互角以上になれる。
    「困りましたね……。私達が教えられるのは基礎だけ。そこから先は……貴方自身が誰もが通った事の無い道を切開いていくしか無い」
     薄緑色のヒジャブを着た女性が、そう言った。もう1人の師匠……エイミーと同じく第二世代の「強化兵士」であるマルヤム・アッ・ラーマンだ。
     「常人用」の戦闘術では、大人になった私の能力を十分に引き出せないのでは無いか?……どうやら、それが、師匠達の最近の懸念事項らしい。
     2人の「師匠」は、この場に居る最後の1人を見た。
    「いや、ちょっと待て……僕は、元から、君らより遥かに腕前は下だし、そもそも、『ヒーロー』を引退して何年も経つ」
     そう答えたのは、師匠達より少し齢上の男……医療チームの金子裕天のりたか……おそらくは、私以外では、この最後の「第一世代・強化兵士」だ。
    「まぁ、いい……。今日出来なくてもいいから、あれを試してみろ。最初の1回が成功すれば、2回目以降は一〇〇%じゃないにしても、そこそこは上手くいくようになる筈だ」
     身体が疲弊した状態で、心を鼓舞する言葉……人によって違い、「覚悟完了」でも「こん畜生、ブッ殺すぞ」でも宗教的な祈りの言葉でも何でもいい……を唱え、限界を超えた力を引き出す……。
     もし、それに成功したなら、次からは、その時に唱えた言葉が、過剰反応……この地域くにの俗語で言うなら「火事場の馬鹿力」……を自分の意志で引き出す為のキーワードになる。
     私は、自分の恐れを払拭する言葉を唱えた……。に来てから居候している仏教寺院で何度も聞いた経文の一節を……。
     私が最も恐れているのは……私自身の恐れだ。……いつか来るまで何としても生きねばならないと云う想いが……近い将来に来るになって、「死を恐れた結果、逆に、死を招く」ような事態を引き起すのでは無いのか? そんな懸念を抱き続けてきた。
     その迷いを断ち切る言葉は……私の内から力を引き出し……。
     次の瞬間、私は、あっさり師匠に投げ飛ばされた……。
     力もスピードも師匠を上回っていた筈だった。
     だが、その力を、簡単に逆用されたらしい。
    「はぁ……お疲れ。今日は、美味しいものでも食って、ゆっくり休んで……」
     師匠は、私の口から訓練用の低酸素マスクを外した。続いて、自分の口からも同じモノを外す。
     私達、古代天孫族ヴィディヤーダラの血を引く者が「火事場の馬鹿力」を引き出した際には、一時的に髪と瞳の色が変るらしい。
     そして、どんな色に変るかは人によって違う……髪に関しては、多くの場合、元の色に似た、しかし、通常の人間の髪には有り得ない金属のような光沢を持つ色になるらしい。
     私の髪は、既に、元の黒い色に戻りつつあった。……しかし、その先端だけは……まだ、色が変ったままだった……。
     その色は……故郷に居る愛する人の髪と同じ……銀色だった。
    スカーレット・モンク(2)「あのさ……釜山プサンの研究所に転勤しない? 何か有るたびに、どっちがか、もう片方かたっぽの研究所に出張って面倒じゃない?」
    「あたしのカミさんが、韓国は冬が寒いから嫌だって」
    「いや、あんたのカミさんの故郷さと、台湾は台湾でも標高二千m以上の山ん中じゃなかったけ? 冬になると普通に雪降る場所だろ」
    「カミさんが台南で仕事やってんの。あたしが転勤になったら、離婚か単身赴任か、カミさんがもうすぐ管理職になれるのに仕事を辞めるかしか無いの」
    「じゃあ、私が転勤するか……」
     そう話しているのは、2人の女性。1人は四十前後、もう1人は、あたしの師匠達と同じ位の齢。
     2人とも、あるモノをここに届ける為に、そして、動作の最終確認の為に、ここ来ていた。
     齢上の方は、韓国の釜山の「工房」に所属しているコードネーム「港のカフェの店長」。
     もう1人は、台湾の台南の「工房」に所属しているコードネーム「ミカエル」。
    「何か有った時の為に重要人物は別々の場所に居た方がいいだろ」
     2人を手伝っているらん師匠がそう言った。
    「あのさ……九州有数を通り越して、日本有数のチートチームのヤツが、そんな事言う?」
    「やっぱり、チーム分けた方がいいかなぁ……?」
    「まぁね……万が一の事が有ったら、超エース級の『ヒーロー』が一気に何人も居なくなりかねない。拠点だけでも分けた方がいいよ」
     3人は、私ともう1人の新人に「鎧」を着装させていた。
     もう1人の新人は……何年か前に瀾師匠の養子になった事以外は良く知らない、あたしより更に年下の女の子。
     2つの意味で「人形のような」と呼びたくなる女の子だ。
     1つは……齢の割に「かわいい」と云うより「美人」と呼びたくなる感じの顔立ちである事。
     もう1つは……おそろしくクソ真面目そうな感じの表情なせい。……いや……「かわいい」と云うより「美人」と呼びたくなる感じなのも、ず〜と、クソ真面目そうで感情が読めない表情のせいで、大人びて見えるからかも知れない。
     あたしの「鎧」は、民生用パワードスーツ「水城みずき災害救助レスキュー仕様モデル」の改造機。装甲は真紅に塗装されている。
     もう1人の女の子が着ているのは……伝説の「鎧」だ……。
     銀色に輝くそれは……瀾師匠が現役だった頃に使っていた「護国軍鬼・4号鬼」の改良機だ……。
     いや、正確には、「護国軍鬼・4号鬼」は瀾師匠が引退する切っ掛けになった戦いで中破し……これは、外見が似てて、量産困難な部品が一部流用されてる以外は、別物だ。装甲は新調。センサや人工筋肉や制御用コンピューターも最新のモノ。制御用コンピューターに乗ってるAIも最新版らしい。
    「よし……『スカーレット・モンク』、動作テスト開始だ」
    了解confirm
    シルバー・ローニン(2)「インターフェースの言語リソースは間に合わなかったのか?」
     私は台湾の「工房」から来た技術者にそう聞いた。
     その近くでは、私より少し齢上らしい女性が「水城みずき」と呼ばれる強化服を着装し、動作テストを行なっていた。
    「ごめん。日本語か英語にしか対応してない」
    「了解した……えっと……」
    「ああ、指示に従うの意味の『了解』は『Affirm』。そちらの言ってる事を理解したの意味の『了解』は『Confirm』。他にも決りは有るけど……それは、おいおい覚えていけばいい」
    了解Confirm。では、制御AIのインターフェースの初期設定は英語で頼む」
    了解Affirm。あと、そこの2人も、ちゃんとやり方覚えてよね。後で渡すマニュアルも英語版と日本語版しか無いけど」
    「あ……えっと……この場合は……」
    「『Affirm』ですか?」
     英語でそう答えたのは……私と共に「故郷」から「ここ」へ来たカール・エメリッヒ博士とエルザ・ロンベルグ氏。
    「まぁ『向こう』に戻った後は、細かい用語は変えてもいいが……例えば『Yes』『No』ではなく、『Affirm』『Confirm』『Negative』を使うかの理由だけは押さえておいてくれ」
     続いて瀾師匠が、そう補足した。
     エメリッヒ博士の博士号は諸般の事情で「ここ」では有効ではない。そして……「故郷」では優秀な工学博士にして技術者だったが、これまた諸般の事情で「ここ」と「故郷」では科学技術関係の概念や単語が違うので、中年と呼べる年齢なのに一から勉強し直しだ。
     もっとも同性愛者だとバレたら、ただでは済まない「故郷」とは違って、「ここ」の方が博士にとっては居心地が良いかも知れない。
     ロンベルグ氏は、ある理由で力の源である「守護天使」を失なった……元「魔導師」だ。
     とは言え、まだ二〇代なので人生をやり直す時間は有るだろう。技術者になるにしろ、「魔法」の修行をもう一度やるにせよ。
     しかし……日本語などの「氏」と云う単語は「Herr」や「Frau」に比べて、中々、合理的だ。
     やがて、二体の恐竜型ロボットが、私の体に「鎧」を着装していく。
    「よし、ヘルメットを被って、起動テストだ」
    了解Affirm。Iron patriot, serial# 4Ex. Operating AI : boot up. Owner's code name : Silver Ronin」
     だが、その時……真紅の「水城みずき」を着装していた奴……あえて「奴」と言おう……が素頓狂な声をあげた。
    「え……と……それがコードネーム?」
    スカーレット・モンク(3)「え……と……それがコードネーム?」
    「そうだが……何か?」
     伝説の「鎧」である「護国軍鬼4号鬼」を着装したヤツは「何を言ってるんだ」って感じの口調で答えた。
    「あのさ……『浪人』なんてコードネームがイケてると思ってんのか?」
    「だとしたら?」
    「いや、だから『浪人』って、どう云う意味が知ってのかよ?」
    「『あるじなきサムライ』の意味だろ?」
    「んな言い方すりゃ格好良く聞こえるけど、『あるじなきサムライ』って、要は失業者の事だぞ」
    「なるほど……悪い意味が有るなら、私が『浪人』と云う単語に別の意味が付与されるほどの事を成し遂げればいいのか?」
    「あ……あのさ……まだ『ヒーロー見習い』なのに、何か将来、デカい事が出来ると思ってんのか?」
    「出来ないかも知れないが……やらねばならない事が有る」
    「何?」
    「故郷を救う」
    「故郷ってどこだ?」
    「話せば長くなるが……遠い場所だ。その故郷を救う為に、私は、ここで『ヒーロー』としての修行をしている」
    「は……はぁ……そうか……」
    「何か言いたそうだな」
    「……あの……さ……。こころざしが高いのはいいけど……」
    「だから何だ? はっきり言え」
    「だからさ……誰でもウチの師匠達に成れる訳じゃない」
    「私が思い上がってる、とでも言いたいのか?」
    「ああ、はっきり言やあな」
    「否定はせん。しかし私にはやるべき事が有る」
    「お前以外に、その故郷とやらを救える人間は居ねぇのか?」
    「面倒な事は他人に押し付けるような奴が『ヒーロー』になる気か? お前は『ヒーロー』になった後、命が危なくなったら、他人に丸投げして逃げ出すつもりか?」
    「な……なんだと、この……」
     だが、次の瞬間、ヘルメットの内側に装着していた両眼立体視式のヘッド・マウント・ディスプレイがブラックアウト。
     体が……より正確に言えば「水城みずき」が動かなくなる。
    「お〜い、2人とも聞こえるか? よし、急だけど重要なレッスンだ。お前らがいい齢になって後輩の指導とかやるようになった時に、喧嘩したい盛りの若い後輩が、本当に喧嘩しそうになったら、この手を使え」
     ひなた師匠の声だった。気配からすると……あたしのすぐそば
     どうやら、あたしの「水城みずき」と……おそらくは向こうの「護国軍鬼」の制御AIは……リモート操作で強制シャットダウンされたらしい。
    スカーレット・モンク(4)「あの……師匠……」
    「何だ?」
     すっかり暗くなった頃、あたしはひなた師匠と住んでるマンションに戻っていた。
     ひなた師匠は、久しぶりに自分で台所に立っている。
    「師匠が、あたしぐらいの頃……その……」
    「その頃は、ウチのチームには4種類のヤツらしか居なかった。喧嘩になったら、私に力で勝てるヤツ。喧嘩になったら、私に口で勝てるヤツ。そもそも、喧嘩なんてしないヤツ。絶対に喧嘩したく無いヤツ。あ……そうだ……瀾には、腕っぷしでも口でも敵わなかった」
    「あいつに謝った方がいいっすかね?」
    「普段は仲が悪くても、現場では割り切って一緒に仕事をやる自信は有るか?」
    「いや……そこまで大人じゃないっす」
    「じゃあ、腹割って話して来い」
    「は……はい……」
    「そりゃいいけど、夜食出来たぞ……」
    「あ……どうも……いただき……あの……」
    「どうした?」
    「何で、ラーメンの薬味が白ネギなんすか?」
    「あのな、こっちは、東京生まれで、Neo Tokyo育ちの江戸っ子なんだよ。『麺の薬味は白ネギ』派だ」
    「い……いや……あたしは大阪生まれの九州育ちなんで……それに『うまかっちゃん』だったら、青ネギの方が合いませんか?」
    シルバー・ローニン(3) 居候先の寺の住職から客が来ていると言われて……客間まで行ってみれば、あいつだった。
     着ている革のジャケットはバイク用らしい。
    「何しに来た?」
    「い……いや……ちょっと謝りに……」
    「判った。謝罪は受け入れた。さっさとお帰りいただけると有り難い」
    「おい、待て」
    「色々と忙しんだ」
    「いや……どっかに遊びに行かない?」
    「はぁ?」
    「この前は、あたしが悪かったんで、何かおごるよ」
    「おごる? 何を?」
    「いや、昼食とか……」
    「言っとくが、私は外食の注文は多いぞ」
    「そう言えば……名前聞いてなかったな……。あたしは木村あさひだ」
    「すまん、本名は無い」
    「へっ? 今、何て?」
    「本名は無い」
    「あの……『本名は無い』って言ったように聞こえたけど……」
    「ああ、間違い無い」
    「何がどうなってんだ?」
    「色々と事情が有るんだ。一応は高場てると名乗っている」
    「ええっと……」
    「また、名前で他人を小馬鹿にする気か? それなら夕食もおごってもらうぞ」
    「そうだけど……偽名なら、もっと平凡な名前を……」
    「私の故郷の基準では……日本人の名前としては、そう変なモノには思えなかったが……」
    「い……いや……ちょ……ちょっと古臭い名前の気が……」
    「古臭いって、何時いつごろだ? 二〇世紀か?」
    「い……いや……二〇世紀は二〇世紀だけど……その……」
    「お前は、私の名前を二〇世紀のどの辺りの名前だと思ったんだ?」
    「……戦前……」
     ああ、私の「故郷」のに相当する戦争の前の意味か……。「ここ」の呼び方では第2次世界大戦やアジア太平洋戦争だったか。
    「ああ、なるほど……納得した訳ではないが、お前が変に思った理由は理解出来た」
    「お前……一体、どこの出身なんだよ?」
    「長くなるんで、ゆっくり話せる時に説明する」
    スカーレット・モンク(5) てるをバイクの後部座席に乗せて新鳥栖駅近くの寺から西鉄久留米駅までバイクで移動。
     てるは、やたらとポケットが多い迷彩模様の作務衣さむえに、最近流行ってる日本の羽織をイメージしたデニム地の上着を羽織っていた。
     駅近くの駐輪場にバイクを止める。
     あたしがひなた師匠に引き取られ、大阪からこの久留米に引っ越す1〜2年前に、久留米は福岡県3番目の政令指定都市になった。
     当時の市長と市議会が、更にその十年ほどに起きた前の富士の噴火による「関東難民」の大量受け入れを決定して、急激に人口が増加したそうだ。
     そのせいで、この辺りも、その十年で大きく変ったらしい。
    「で……何がいい?」
     この辺りなら、大概の種類の食い物が食える。和食も地元風の味付けのヤツだけじゃなくて、「関東難民」向けのモノ……もっとも「地元民」には人気が無いが……ラーメンも久留米ラーメンだけじゃなくて、東京風のモノも……これまた「地元民」には人気が無いが……、その他、洋食・中華・韓国料理にエスニック、大概有る。
    「じゃあ、ベジタリアン向け」
    「へっ?」
    「聞こえなかったか? ベジタリアン向け」
    「あの……折角、何でも有るのに……」
    「面倒だな……こんな事が有る度に説明しないといけないとは……。私は高速治癒能力持ちだ」
     え……。ああ、そう言う事か。
     内臓や骨に達していない傷なら瞬時に塞がる「高速治癒能力」持ちは、あたし達「御当地ヒーロー」の中に何人か居るが……どうやら、「高速治癒能力」持ちが癌になると、「高速治癒」のメカニズムが癌の進行を早めるように働いてしまうケースが多いらしい。
     早い話が、「高速治癒能力」持ちは普通の傷ならすぐに治るが……放射線・放射性物質や発癌性の有害化学物質への耐性は常人以下だ。
     そのせいで、「高速治癒能力」持ちには健康に気を使っている人が多い。……肉食獣のような姿に変身出来るのに、肉は一切食わない、って冗談みたいな人も居る。
    「肉は一切駄目なの?」
    「鶏だとササミは食えるが、もも肉は駄目だ。魚は白身だけ。牛だと赤身なら何とか……最近、その位なら、何とか食えるようになった」
    シルバー・ローニン(4)「この辺りは、私の同類が多いのか?」
    「んな訳有るか」
     和風の精進料理の店も台湾素食の店も長い行列が有った。
     ざっと三〇分以上は待たねばならないようだ。
    「ええっと……ラーメンでいい?」
    「とんこつも東京風の醤油ラーメンも苦手だ……。ちゃんぽんか皿うどんなら何とか……」
    「せっかくおごるのに、リンガーハットってのも何だな……」
     そう言ってあさひは「ブンコPhone」と言われる携帯端末を操作する。
    「ラーメンでも、和風スープと鶏チャーシューならいい?」
    「醤油の匂いが強めじゃないなら」
    「ちょうどいいや……」
     そう言って案内されたのは、駅前の繁華街でも端の方に有る小さめだが小綺麗なラーメン屋だった。
     しばらくして運ばれたラーメンのスープの匂いには覚えが有った。
    「あれ? これ……」
    「ああ、最近流行ってるアゴ出汁のラーメンだ」
    「アゴ?」
    「知らない? 飛魚の煮干しや焼き干しの出汁。博多あたりでは色んな料理に使われてる」
    「ああ……そう言えば……以前、JRの駅の近くのうどん屋の出汁に似て……」
    「ちょっと待って、何で、とんこつラーメンが無いのよッ⁉」
     突然、店内に響いたその声の主は……私と同じか少し年下の女の子と、更に2〜3歳年下らしい男の子の2人連れ。
     その時、何か、違和感が有った……。
     更に言うなら、自分が感じた違和感にも違和感を感じた。
     スカートに、いわゆる「女言葉」……。
     何故、その姿と言葉使いに違和感を感じたのだろう?
     いや……待て……違和感を感じるべきは、あの少女か? それとも……?
     日本語は「ここ」に来る前に覚えていた。と言っても「最新」の「日本語」では無かったが……日常会話には不自由していなかった。
     だが……何故、今まで気付かなかったのだろうか?
     「ここ」に来て以降、私の身の回りの日本語ネイティブの女性で……使。わずかな例外は中高年だけで、三十代前半か、それより年下の女性からは……かつて学んだ筈の「日本語の女言葉」が失なわれていたのだ。
     そして……スカート……。
     「日本」では……若い女性は、ほとんどスカートをしておらず、スカートをしているのは、中高年の女性に限られていた。
     どうなっている?
     「日本」で、かつて……何が起きたのだ?
     待てよ……中高年の女性は……かつて私がイメージしていた「日本の女性」と大きな齟齬が無いのなら……考えれられるのは、では起きなかった……二十数年前の「富士山の歴史的大噴火と、それによる日本の中央政府の壊滅」の結果……だが、大災害と政府崩壊が、何故、女性の服装や言葉遣いにまで影響を及ぼしたのだ?
    スカーレット・モンク(6) その2人連れが何者か、一瞬で判った。
     店員も、あの2人が何者か気付いただろう。
    「おい……どうした?」
     あたしが立ち上がると、てるは、そう聞いてきた。
    「ちょっとな……」
    「あの席の2人か?」
    「ああ……お前にも判ったか? ちょっとややこしい連中だ……。少しばかりお節介を焼いてくる」
     そう言って、あたしは席を立つと、変な2人組の席まで行った。
    「あのさ……余計な御世話だけど……」
    「はい、余計な御世話よ」
    「一緒に居る大人はどうした?」
    「貴方に何の関係が有るのかしら?」
    「いい加減にしろ。言葉遣いでバレバレだ。お前ら、TCAから来たんだろ? 一五歳以下の子供が、TCAから『こっち』に来るには大人の同伴が必要な筈だ」
    「貴方、警官か何かなの?」
    「違う。でも、お前ら、亡命希望者か? なら、手続が出来る所まで案内してもいいぞ」
    「はぁ? 何で、私達が『こっち』に亡命しなきゃいけないの?」
    「待て、TCAって何だ?」
     いつの間にか、あたしの横に来てたてるが、そう言った瞬間……。
     多分、あたしは、ポカ〜ンとした顔になったと思う。
     2人連れの女の子の方は……阿呆を見る目に……。
     2人連れの男の子の方は……いや……何か……おかしい。ポカ〜ンとした顔だが……妙だ?……この子、いつ、
    「決ってるでしょ。Traditional culture area(伝統文化地域)よ」
    「Terrorist confined area(テロリスト閉じ込め地域)かTen−no cult Al−Qaedaの略だって説も有るがな」
    「ま……待ちな……」
     だが、その時、てるは……。
    「Al−Qaedaは……確か、アラビア語で『基地』『拠点』の意味だったと思うが……何故、そこだけアラビア語なんだ?」
     へっ?
     何で……こいつは……
    シルバー・ローニン(5)「ええっと……アル・カイーダってのは昔のテロ組織。二〇〇一年の九・一一の犯行声明を出したとこ」
     あさひは、そう説明した。
    「ああなるほど……。では、TCAとは何だ? 良く知らないので、詳しい説明が欲しい」
    「何で、知らねえんだ? お前の『故郷』って、一体、どこだよ?」
     そう言って、あさひは、「文庫本」と呼ばれる小型の本を思わせる外見の2画面式の携帯端末を私に渡した。
     そこには「Wikipedia」とやらの「TCA」についての説明が表示されていて……何だ? この「編集合戦の為に全保護」だの「中立的な観点から問題あり」だのと云う注意書きは?
    「なるほど、判った」
     そう言って、私は端末をあさひに返す。
    「もう読んだのか?」
    「ああ、読むのはすぐ読めた……そして、良く理解出来た……。私が、ここに書かれている事を理解するには、圧倒的に前提知識が足りないと云う事がな」
    「おい」
    「平均して、2つの文章につき1つ乃至ないしは3つの文章につき2つほどの頻度で意味が判らない単語が有る。二十年前の富士の噴火による関東壊滅と、十年前の大阪壊滅に関係するモノらしい事だけは、何となく判った」
    「わかった、じゃあ、食いながら説明するか……って、おい、何で、お前らまで来る?」
    「貴方の説明じゃ、絶対に偏向したモノになるからよ」
     そう言って私達について来たのはスカート姿の少女と、その連れの少年。
     いや……待て……この少年様子が……「ここ」の言葉で言う「発達障害」……私の「故郷」の言葉での呼び方を日本語に直訳すると確実に「差別用語」と化すだろう……なのか? いや……でも……何か……違和感が……。妙に大人し過ぎる。そして……さっきから何1つ言葉を発していないのに、私達の会話を「聞いている」様子が有ったので耳が聞こえていない訳でもなさそうだ。
    「もう1つ質問だ。私の身の回りで、日本語の『女言葉』を使っているのは圧倒的に中年以上の女性だけだが、この私より年下らしい女性は、何故『女言葉』を使っているのだ?」
     ついでに、私は、もう1つの疑問を口にする。
    「な、あたしらより年下なのに、おばさんくせえだろ」
    「あのね……。『外』の人間が日本語の伝統を蔑ろにしてるだけ……」
    「はいはい、これ、なんて読む? 口に出してってみ」
    「いう」
     スカートの少女は、そう答える。
    「私の周囲では……『ゆう』と発音する人が圧倒的に多いな。ああ、そう言えば……性別や年齢関係なしに」
     続いて私が答える。
     あさひは、先程の端末の画面を私達に向けていた。
     そこには……漢字1文字と平仮名1文字が表示されていた。
     「言う」と。
    シルバー・ローニン(6)「どう云う事だ?」
    「いや……ネットの動画サイトで、たまたま観た言語学者の受け売りだけどさ……日本には、今、『首都』が無いだろ」
    「ああ……言われてみれば……」
    「二十何年か前に『本当の関東』は富士山の噴火で滅んだ。新しい首都になろうとした大阪も十年前に自滅した」
    「あのねえ、あれば『正義の味方』を称するテロリストが……」
     スカートの少女が横から口を出す。
    「そこは認識の相違だ。難民を逃がす作戦の陽動に引っ掛かったまではいいが……自分達の兵器を自分達で暴走させて、エラい事になったんだから、どう考えても『自滅』だ」
    「お互いの見解はいい。要は東京も大阪も潰れて、今の日本は言わば『首都のない連邦国家』みたいなモノだと言いたいんだろう?」
    「その結果、何が起きると思う?」
    「起きそうな事は山程有るので、もっと具体的に言ってくれ」
    「全国の学校教育を統括してる役所は?」
    「無いな」
    「全国を網羅してる新聞・TV・ラジオは?」
    「なるほど……東京本社は火山灰の下か」
    「大手出版社は?」
    「どうなった?」
    「元々は、本社は東京近辺の場合が多かったが……富士山の噴火以降に再建出来た出版社は……どこか特定の場所に集中してる訳じゃない」
    「なら……何が起きてるんだ?」
    。何せ、昔だったら日本語の『標準語』を維持してきたモノが、まとめて無くなったんでな。そして、明治以降の日本語の『女言葉』は『標準語』の一部だったそうだ」
    「では、『言う』と云う言葉を、私が『ゆう』と読み、彼女が『いう』と読んだのと……私の周囲では、一定年齢以下の女性に『女言葉』を使う人がほとんど居ないのは……喩えるなら、同じ木の別の枝なのか?」
    「そう云う事。多分、今後、日本語に『女言葉』が復活しても、元の『女言葉』じゃなくて、各地の方言をベースにしたモノになるだろう……って、ネットで、どっかの言語学者がってた」
    「だが、お前のしゃべり方は『標準語』に近い気がするが……?」
    「ああ、あたしは根無し草みたいなモノだしな……。あたし自身は……大阪生まれの九州育ちで、育ての親は『本当の関東』生まれの『Neo Tokyo』育ちだ」
     良い悪いは別にして、奇怪な状況かも知れない……。ひょっとして……「
     それなのに、日本と云う国だけは……形骸化しているかも知れないが、存続している。
     では、他の国もそうなっているのか?
     今更だが、どうやら、私は……自分の常識の通じない世界に来てしまったらしい。
    「では……何故、彼女は『女言葉』を使っているんだ?」
    スカーレット・モンク(7)「だから……今、日本は1つじゃないんだよ……。一番広いのが、あたし達が住んでる狭い意味での『日本』。一番狭いのが主に富士山の噴火で発生した『関東難民』が暮す人工の島の『Neo Tokyo』。そして……残りがTCAだ。あたし達が居る狭い意味の『日本』が『今の日本』なら……TCAは『昔の日本』の方がしょうに合ってる連中が暮してる地域だ。ここに一番近い場所だと……筑豊かな?」
     あたしは……そう説明した。
    「では……そのTCAに住んでる子供が大人と一緒でないとここに来れない理由は……まさか、そのTCAの人間が、そのTCAの外の『日本』は危険思想が当り前の危険地帯と見做しているせいか?」
    「そう云う事」
    「そう云う事」
     てるの問いに対して、あたしとスカート姿のガキの答が一致した。その答の背後に有る見解は正反対だろうが……。
    「じゃあ……」
    「すいません、あご出汁ラーメン2人前です」
     その時、店員がラーメンを持って来た。
    「お前らも何か頼めよ」
     あたしはスカート姿のガキと、その連れの男の子に言った。
    「だから、何で、久留米のラーメン屋なのに、豚骨ラーメンが無いの? 楽しみにしてのに」
    「いいから何か注文しろ」
    「じゃ、同じモノを2つ」
    「富士の噴火で出た難民が暮してる地域は判るが……何で、TCAとか云う地域が出来た?」
     てるはラーメンを食いながら質問。
    「富士の噴火で旧政府が壊滅した後、旧政府の後継機関を名乗るテロ組織が2つ出来た」
    「テロ組織じゃない」
    「ああ、じゃあ正確に言うなら、狭い意味での『日本』の人間の内の無視出来ない数が『テロ組織』と見做しているモノだ。1つは……『本当の関東』を支配していた『正統日本政府』で、もう1つは大阪を支配していた『シン日本首都』だ。だが……2つとも十年ぐらい前に潰れた……。ただし、そのどっちかを支持してた連中だけは残った」
    「つまり……日本人の中にイデオロギー的な断絶が有って……日本そのものをイデオロギーが違う2つの地域に分けるしか無かった訳か」
    「そう云う事」
    「じゃあ、この2人は……何をしに、ここに来た? 観光か?」
    「よくぞ聞いてくれましたッ‼」
     突然、スカート姿のガキのテンションが上がる。
    「どうせ、ロクな目的じゃなかそうだな」
     嫌な予感しかしねぇな……。
    「ところで、知ってたら教えて欲しんだけど……この辺りの自称ヒーローチームの『Storm Breakers』の本部ってどこ?」
     おい、あたしらに何の用だ?
    「メンバーの身元も極秘だぞ。本部も極秘に決ってるだろ」
     あやうく「本部が有っても」と言いそうになった。安全の為、拠点は定期的に変えている。
    「そうなの?」
    「警察か何かみたいに、地図に載ってるとでも思ってたのか?」
    「じゃあ、どうやって倒せばいいの?」
    「倒す?」
    「そう、『正義の味方』を自称するテロリスト達の中でも、九州最強、日本有数と言われた奴らを……私とこのま〜くんが倒すのよッ‼」
     ああ、そうか。やれやれ……。残念ながら、お前らの能力が……あたしの予想通りなら……早く家に帰った方がいいぞ。
     と思って……やっぱり、このガキも何か感付いたか……。
    「あのさ……お前らの能力が『精神操作』なら……『こっち』では十年前から義務教育で『精神操作』への抵抗訓練やってるぞ」
     一瞬……スカート姿のガキは……あたしが何を言ったか理解出来なかったようだ。
     そして……。
    「何で……そんな馬鹿な……嘘でしょ」
    「嘘じゃない」
    「でも、それは普通の『精神操作能力』に対抗するモノでしょ。『シン日本首都』のシン天皇なら……」
    「それでも難しいと思うぞ」
    「嘘よ……嘘に決ってる。『シン日本首都』が生み出した最高傑作であるま〜くんなら……ほら、ま〜くん、この辺りの人達をひざまづかせてみて」
    「あの……あご出汁ラーメン2つ……」
     店員のその声に続いて、ガチャンと云う音。
     店員は2人のガキに向ってひざまづき……ああ……ラーメンが床にブチ撒けられてる……もったいねえ……。
    「見なさい、ここにおわす御方こそ……日本の真の支配者であるシン天皇……ちょっとま〜くん……何やって……あれ?」
     店員や客は……ひざまづいてるのと、あっけに取られてるのが半々ぐらいで……いや、待て、何で、精神操作能力を使った男の子まで……。
    「何が起きた?」
     やっぱり精神操作が効いてないらしいてるが……あたしに聞く。
    「呪詛返しだな……。どう見ても……でも……」
     ない。居ない。
     この子の「精神操作能力」は……どうやら「先天的に使える魔法」の一種らしい。なので「精神操作」が専門じゃないが「魔法使い」であるあたしからすれば、能力の正体はバレバレだった。
     問題は……この男の子に起きてる事は、どう見ても剣呑ヤバいヤツに「精神操作」をやろうとして「呪詛返し」を食らった状態なのに……付近に、それが出来るほどの「魔法使い」の気配が……。
    「すまん……『日本の真の支配者』なんて私のしょうに合わんので……他を当たってくれ」
    「あたしも……」
     その時、聞き覚えのある女の声が2つ。
     そうだ……「ひざまづけ」と云う「精神操作」をやりながら、自分がひざまづく羽目になった男の子の頭が向いてる方向に有るのは……、店の入口。
    「あの……何やってんすか?」
    「いや……カミさんへのお土産を買いに……」
    「私は……それに付き合って……」
     台南工房の「ミカエル」と瀾師匠はそう答えた……。
     そして……瀾師匠の車椅子の荷物入れと、「ミカエル」が持っている買い物袋には……あたしが生まれる前の子供向けアニメに出て来た恐竜のヌイグルミがいくつも入っていた。
    スカーレット・モンク(8)「あなたが保護者ですか?」
    「は……はい」
     スカート姿の女の子の連絡で駆け付けたのは……背広に眼鏡の中肉中背で……「特徴が無いのが特徴」と言った感じの二十代後半から三十代前半の男。
     特に何かの戦闘術を身に付けるようには見えないし、「魔法使い」特有の「気」も感じない。
     とんでもない達人か……さもなくば戦闘能力ほぼ皆無の両極端のどっちかで、まあ、多分、後者の可能性が高いだろう。
    「不特定多数に『精神操作能力』を使ったと言っても被害は少ないですし……貴方達は筑豊TCAからの『観光客』なので事を荒立てる気は有りません。ですが、早急に筑豊TCAにお戻り下さい。可能な限り、これ以上、善意による行為も悪意による行為も何もせずに。何だったら、お送りしますが」
     スカート姿の女の子の「保護者」らしき男にそう告げているのは「レスキュー隊」のメンバーだ。
     元々は、あたし達「正義の味方」の中でも一般人の避難誘導や保護・救助などを専門にしたチームだったが、今は「正義の味方」とは協力関係に有る独立した組織ネットワークになり、しかも、「力関係」に関しては、わざと「正義の味方」より「レスキュー隊」の方が優位になるような仕組みシステムになっている。
     周囲では、「魔法使い」系の技能・能力を持っているらしいレスキュー隊員が「精神操作」の影響を受けた人達の治療を行なっていた
     だが、その時……。
    「はい、ちょっと待って下さい。チーム長、『Storm Breakers』のコードネーム『羅刹女ニルリティ』から我々から許可を得たい件が有るとの連絡が……」
    「あの人……まだ『正義の味方』やってたのか?……大怪我で引退したって噂だったけど。……まぁいい、代ってくれ」
    「いえ、理由は言えないが、周囲の全員に聞こえるようにしろと……」
    「は?」
    『聞こえるか?「Storm Breakers」の「羅刹女ニルリティ」だ。騒ぎを起こした児童の保護者に代って欲しい』
     正体を隠す為に変性してはいるが……いつの間にか姿を消していた瀾師匠の声だった。
    「は……はい。どうぞ」
    「えっ? 僕ですか?」
    『TCAでは「呪詛返し」を受けた『精神操作能力者』の治療は可能か?』
    「え……えっと……その……」
    『やっぱり無理か』
    「た……多分……」
    『では、レスキュー隊の担当者の方々に……騷ぎを起こした児童の強制送還の猶予をお願いしたい』
    「えっ?」
    『騒ぎを起こした児童は、普通じゃない状態に有る筈だ。その状態の治療の専門家を知っている。レスキュー隊太宰府チームの平田優奈ゆうな氏と紅林くればやし祥子氏だ』
    「仕方有りません。許可しますが、治療が終ればTCAに戻っていただきます」
     騷ぎの原因になった男の子は座り込んで……虚ろな目、荒い呼吸、顔には恐怖が浮かび……そして、治療を試みているレスキュー隊員は厳しい表情で首を横に振っていた。
    スカーレット・モンク(9)『薄々は気付いてるだろ? あの2人の児童はTCAの大阪派のVIPだ。おそらくは、女の子の方が言ってた通り「シン天皇」候補だ』
     あの2人とその「保護者」がレスキュー隊の車で搬送されると、ほぼ同時に、瀾師匠からテキストメッセージが来た。
    『いや、でも、今時、どんな強力な精神操作能力者を生み出したって、大した役には立たないでしょ』
    「ところで、この『大阪派』とは何だ?」
     あたしの携帯電話ブンコPhoneを覗き込んでたてるがそう聞いた。
    「ああ、TCAの2大政治派閥の1つだ。TCAの理想は、昔のような明確な中心が有り、上意下達的な『日本』だ。その手段として、超強力な精神操作能力者『シン天皇』を生み出し、全国民……TCAじゃ『国民』じゃなくて『臣民』って呼んでるけど……を精神操作の元に起こうとしてるのが大阪派」
    「無茶苦茶だ。2大政治派閥とか言ってたが……もう1つは多少はマシなんだろうな?」
    「もう1つの『東京派』は……一部の『上級臣民』を除いた全国民に脳改造を行ない『忠良なる臣民』を……」
    「私から聞いたのに、こんな事を言うのは何だが、流石にやめてくれ。それ以上聞いたら気分が悪くなりそうだ。大体、そんな馬鹿どもを支持してる更なる馬鹿が居るのか?」
    「だから、TCAは『伝統Traditional 文化culture 地域area』であると同時に『テロリストTerrorist 閉じ込めconfined 地域area』なんだよ。馬鹿な政治家と、それを支持してるもっと馬鹿な連中を隔離する為の」
    「だが……TCAの外では、精神操作能力が効かない人間が一般的になりつつあるのなら……2種類の馬鹿の内、よりタチが悪い馬鹿の方が有利になっているのか?」
    「ああ……」
     いや、待て……。
     今まで、TCA内での人権侵害が……十分酷いが「大半の住民に脳改造を行なう」ほどじゃなかったのは、馬鹿な極悪人どもが2派に分れて、その勢力が拮抗していたからだ。
     けど、そのバランスは、よりタチが悪い「東京派」に有利になりつつあり……そして、こっちでは「特異能力持ちだけど、犯罪者になったとしても愉快犯系の小物がせいぜい」のヤツでも、TCAの中では何かの象徴に……おい……そんな……。
    『あの……もし、あいつらの身に何か起きたら、TCA内にデカい影響が有るんですか?』
    『多分な。そして、その影響はこっちにも波及する』
    『もし、本当に、あいつらがTCAの大阪派のVIPだとして……TCAの東京派は、あいつらが、こっちに居る事を知ってんですかね?』
    『判らん。しかし、もし知ってたら何か行動を起こすだろう』
    『どうすりゃいいんですか?』
    『状況が不透明な場合こそ基本に立ち返れ』
     そのメッセージには、何故が音声ファイルが添付されていて……。
    「何て曲だ? 悪くない歌だな」
     鳴り出したのは……あたしどころか、下手したら師匠達さえ生まる前の……アメリカのHip Hopの名曲だった。
    「『Do the right thing』って映画で使われた『Fight the power』って曲だ」
    「なら、話は簡単だ。先行きが不透明な時こそ私達がやるべきは『力に抗いファイト・ザ・パワー』『正しい事をやれドウ・ザ・ライト・シング』」
    「簡単に言うな。誰もが師匠達になれる訳じゃ……」
    「なら、あの人達の弟子をやめるか?」
    「仕方ねえな……あたしのバイクを止めてる駐輪場に戻るぞ」
     そう言いながら、あたしは、瀾師匠にテキスト・メッセージを送信。
    『レスキュー隊の車に、あたしのバイクのナンバーと車種を連絡して下さい。このバイクは護衛だと思えって』
    『判った。私も手の空いてるヤツを応援に向かわせる』
    「ああ、そうだ……この歌を歌ってるグループの名前はな……」
    「何だ?」
    「Public Enemyだ」
    「なるほど。国中を敵に回したとしても、自分が正しいと信じる事をやれ、と」
    便所のドア Link Message Mute
    2021/11/22 16:47:52

    第一章:The Intern

    「いつか、私が『ヒーロー』として1人前になった時、私は滅びに向かう故郷を救い愛する女性を護る為、『ここ』から居なくなるだろう。だが……その日まで、お前の背中は、私が護る」
    二〇〇一年に「特異能力者」の存在が明らかになってから、約四十年が過ぎた平行世界。
    世界の治安と平和は「正義の味方」達により護られるようになり、そして、その「正義の味方」達も第二世代が主力になり、更に第三世代も生まれつつ有った。
    そして、福岡県を中心に活動する「正義の味方」チーム「Storm Breakers」のメンバーに育てられた2人の少女はコンビを組む事になるが……その1人「シルバー・ローニン」には、ある秘密が有った。
    その新米ヒーロー達の前に……彼女の「師匠」達の更に親世代が倒した筈の古き時代の亡霊が立ちはだかる。
    同じ作者の別の作品と世界設定を共有しています。
    「なろう」「カクヨム」「アルファポリス」「pixiv」「Novel Days」「GALLERIA」「ノベルアップ+」に同じモノを投稿しています。

    #伝奇 #異能力バトル #ヒーロー #パワードスーツ

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