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    cigar store/夏の罪一、cigar store/夜の海ニ、夏の罪/回想三、cigar store /コーヒー店四、夏の罪/悔恨五、cigar store/夜の海(再)一、cigar store/夜の海 スモーキーゴッドにとって、海はそう馴染みがない場所だ。別に嫌いというわけではないが、単純に行く機会がほとんどないし、自分の意思でいくこともさしてない。スモーキーゴッドは友を宿す少女が脱ぎ捨てたローファーを拾い上げると、海に足をつけ、小波が来れば跳ね、たくし上げたスカートが濡れることも厭わずに夜の海で遊ぶ彼女の近くへ寄った。
    「ずいぶん楽しそうだ、海が好きなのかい?」
    「うん。さざなみの音が好き、海水の冷たさもだけど」
     そうか、とスモーキーゴッドは少女の言葉に曖昧な返答を返して、自分も靴を脱ぐと彼女と一緒に、夜の海へ足を踏み入れる。なにが楽しいのか、その全てをスモーキーゴッドは把握することはできない。
    「ずいぶん服を濡らしたものだね、帰りに新しいのを買いに行こう」
    「いいよ、そんな」
    「その格好で帰っては後々面倒ではないかい、友よ。それに制服の替えなんてそうそうないだろう? なに、コインの心配はしなくていい」
     海へ視線を向けていたスモーキーゴッドが視線を向けると、少女の顔に翳りがさしている。
     どうしたのかと声を発すると彼女は「あなたと二人でこの海にいる、わたしはそれだけでいいんだよ」と、寂しそうな顔をした。過去の後悔を、スモーキーゴッドの心臓に深く深く刻み込まれたもはや戻ることなどできない黄金の光に満ちた青春を刺激した。
    ニ、夏の罪/回想「我が友、お前は——いつも思うのだがいささか財をひけらかしすぎではないか? 我は確かにお前と酒が飲みたいとは言った。しかしここまで盛大にしろとは、我は一言も言った覚えがない」
     アスラの精悍な顔は今は渋い感情を浮かべその中に、少しばかり、そう、らしくない拗ねたような色があった。
     勇壮な音楽に合わせて薄衣を纏い金の装飾で身を飾って軽やかに舞う女、二人に果実の盆を捧げ持つ男。室内には、いつも以上に発案者好みの贅を凝らし——つまりは、スモーキーゴッドの財をふんだんにばら撒いた宴が開かれていた。
     他者からの酌を断ったアスラは酒を手酌で盃に注いでは煽る。王として、戦に身を置く将として、自分を律する彼が不機嫌をあらわにするのはごくごく珍しい。スモーキーゴッドはそんな彼の感情の発露を好ましく思う、彼が心底愛しんでいる娘に向ける視線とは異なる、スモーキーゴッドだけに向けられたものだということが心をこそばゆくして、ついついアスラにからかいに酷似した常である煙の言葉を多分に吐かせるのだ。
    「盛大な宴の方がなにかと楽しいだろう? それに、君が戦に勝った祝いでもあるんだ。宴の趣向は毎回変えているが……君のお気に召さないかい?」
    「友よ。貴殿だけと膝を突き合わせ、廻らぬ太陽を見上げ酒を注ぎ合い、他でもないお前と語り合いたいのだ。それは、お前には厭わしく煩わしいことか?」
    「いいや、それはない。随分と、私と二人きりであることに拘るのだね、友よ」
     その言葉を聞いたアスラはスモーキーゴッドを、真っ直ぐに見つめた。
    「貴殿の中にある心地いい静謐が我は好きなのだ、我が友。それに、異なる民の上に立つ、王と王子という立場を置きただの友人として——市井の民がするように、二人で酒を飲むときばかりは、ただの我でありたい」
    三、cigar store /コーヒー店「おすすめはどれだい?」
    「今月の新商品はバナナチョコのフラペチーノだよ」
    「君のおすすめは?」
    「ホワイトチョコを追加した抹茶フラペチーノかな。一応先回りしておくけど、何かを注文してわたしに食べてはもうだめだからね」
     このところスモーキーゴッドの扱いを心得てきた節のある少女は、人気のコーヒー店でアルバイトをしていて、今日も人の少ない時間帯にふらりと訪れては彼女の好きな物ばかり買っては「君のために買った、オーナーにも話をつけたから休憩して食べるといい」を繰り出そうとしたスモーキーゴッドの甘やかしを跳ね除ける。
    「わたしの好きなやつ、とっても甘いんだよね。あなたには多分、こっちのクラッシュしたコーヒーゼリーと甘くした牛乳のがいいと思う。カスタムで上に乗せる生クリームとコーヒーゼリーの量調整できるよ? どうかな?」
    「…………友の好意を無碍にはしないさ。では、それを頼もう。コーヒーゼリー少なめ、生クリーム多めで」
     大きな目を驚きで満たしている少女に、スモーキーゴッドは「私は甘いものが不得手ではないのだよ」と笑いかける。話しているうちに、ちらほら客が入ろうとしている。会計を終わらせ、スモーキーゴッドは出来上がったドリンクを受け取って店を出た。彼女に言った通り、甘いものは不得手ではない。甘い甘いクリームと苦味と一緒に香りを封じたゼリーを飲む、バイトをせずとも私に言ってくれればコインはいくらでも都合とつけると彼女に言ったことがある。それじゃあだめなんだ、うれしいけど。そう言った彼女に何故働くのかを問うたが、秘密の二文字で、スモーキーゴッドがそれ以上問うのを彼女は封じた。
     あっという間になくなったドリンクに、知らず知らずのうちに喉が渇いていたのだとスモーキーゴッドは知った。煙に巻いた言葉で彼女の調子を一方的に狂わせることはできなくなっている、それは彼女と一緒にいる時間がそれなりに長くなっていることを示していた。弄んでいた空のプラスチック容器をスモーキーゴッドはボディガードに渡す。
     人は誰かを完全に把握することなどできない、一側面を理解することは可能だ。けれど、その人の全てを知る術など世界を探し回っても、どこにもありはしない。その事実が、やけに重くスモーキーゴッドの心にのしかかった。
    四、夏の罪/悔恨 一面に血の花が咲いていた。アスラ、と絞り出した声はひどく頼りない。アスラはスモーキーゴッドに射抜く強さを持った視線を投げ、その瞳に宿る血色の花よりも鮮明な怒りを微かに和らげた。
    「すまない、友よ。我はもうお前の理想と共に歩めない」
     吐き捨てるでもなく、諦めでもなく、ただそうと決まってしまったことを告げている。アスラの声にはそんな響きがあった。
    「貴様は貴様の理想をゆけ。海底に沈みゆく我のことなどは、忘れて二度と思い出しはするな」
     スモーキーゴッドは去りゆく背中に、一つだって声をかけられない。手を伸ばすことさえできないまま、彼は心の中で幾重も反響する傷の言葉を飲み込んだ。
    五、cigar store/夜の海(再)「うなされてたよ、悪い夢?」
    「……君は。ああ、そういえば寝てしまったのだった」
    「うん、ボディーガードさんが大変そうだったよ」
     昼に訪れたはずだが、星の縫い付けられた黒い帷はとっくに降りきっていた。スモーキーゴッドは腹に乗せられた紙袋を撫でると、彼女に「開けても?」と問いをかけた。
    「うん、あなたに贈りたかった物だから。バイトの理由は、これ……わたしはあなたの欲しいものはわからないけど、似合いそうだなって、思ったの」
     スモーキーゴッドが小さな紙袋を開けると、そこにはシンプルな作りをした、真鍮の指輪が入っていた。
    「これは……そういう意味と捉えていいのかい?」
    「…………どういう意味に、みえた?」
    「こういうことをする意味に」
     スモーキーゴッドはそっと、少女の肩に手を滑らせ、そのまますっかり林檎の赤より深く染まった耳を撫でた。緊張は羞恥からであって、拒絶ではない。
     スモーキーゴッドはそっと、彼女の頬の形を辿る。そしてやわい唇を親指で触れると、彼と彼女はどちらからともなく身を寄せる。星あかりと月の慈悲に照らされた二つは一つの影になった。
    「あなたのそばにいたい」
     彼は少女が自分が心中でつぶやいた言葉を代弁したのかと、一瞬錯覚した。互いの吐息が熱い、くちづけのもたらす熱はどこまでも心を焼いて、けれど不実な永遠を、彼は誓うことができなかった。
    夜船ヒトヨ Link Message Mute
    2022/06/23 20:35:46

    cigar store/夏の罪

    スモ主2が書きたいとスモーキーゴッドとアスラを書きたいが悪魔合体しました。捏造アスラが結構しゃべります。
    #東京放課後サモナーズ
    #スモーキーゴッド
    #主2
    #スモ主2
    #アスラ

    感想等おありでしたら褒めて箱(https://www.mottohomete.net/MsBakerandAbel)にいれてくれるととてもうれしい

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