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GALLERIA[ギャレリア]は創作活動を支援する豊富な機能を揃えた創作SNSです。

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    きらめけば乙女無闇矢鱈の七転八倒、そしてその後はお決まりの シヴァ主2No Doubt アルジャーノン×主2かんかん照り空大迷惑 テス主2無闇矢鱈の七転八倒、そしてその後はお決まりの シヴァ主2 こちらの都合であるが、最初にしっかりと宣言したいことがあるので、ぜひとも拝聴していただきたく。これは、便宜上語り部である私の物語ではない。彼女と、それから彼が成就に至るまでの、とてもとても短い一夜の記録である。そもそも自分に役名すらないことに気づきもせず、それゆえにただただ必死に舞台にかじりついたまま、ひっきりなしに誰かが上がっては降りる舞台の幕が下りても、主役二人も舞台を降りているという、もはや独り相撲しか出来ない舞台を離れられなかった端役、まさしく失笑を誘うにふさわしいピエロにしかなれずに終わった、哀れな、そういっそばかばかしいほど無闇に七転八倒を重ねた哀れな私の繰り言でもある。さて、彼女が夜の東京に軽やかに刻んだ足跡に喝采を。私なんぞと袖を触れ合わせる前から負けず劣らず無闇に四苦八苦を重ねに重ねていたらしい、それでも彼女を求めた彼にも大いなる詠嘆を。私には、なんだってそんなことになるの、とただただ呆れ甚していただけるとこれ以上ないほど幸いである。
     彼女という存在がもつ、そして人生というものが持つ、杏仁豆腐の一見すればひどく簡潔に感ぜられるが、一口頬張ればすぐに気づく妙味をよく味わいになるとよろしい。繰り返すが、これは私の物語ではない。彼女と、彼の話である。
     さて。開幕の前にもう一度、彼女と彼に、あなたたちの手で劇場のみならずその後までに響き渡る雷のような、祝福の喝采を。

    ○○○

     我が意中たる黒髪の乙女である彼女、神宿学園の転校生である新顔は。いろんな意味で何かと目立つ存在である。素行はさほど悪くないが、何かと問題に巻き込まれるがゆえに問題児と分類される類の、何とも言い難い因果を背負っているらしい少女である。つながりが神宿学園に留まらないというかなり顔の広い彼女はワンダーフォーゲル部の部員であり、野球部の臨時マネージャーであり、その他もろもろの部活の助っ人である。野球部所属の私は、彼女が臨時マネージャーになる日を今か今かと待ちつつ、彼女の視界になるべく入ろうとベンチに居座ろうとしては普通に先輩や他の選手に怒られた。
     しかしこの学園に文芸部がないから、それならば少しは体力でもつけようと、たまたま一番最初に勧誘された野球部に入っただけの、生来どこもかしこも細っこいスーパーのもやしよりなお貧弱極まる不摂生の塊のような私はほとんど幽霊部員で、彼女が来るかもしれない日だけ部活に顔を見せる周りからすれば彼女目当てで部活をろくにやらない至極迷惑な存在である。最近は今日彼女来るかもよと三回に一回程度嘘となる罠を張る先輩すらいる。三回のうち二回はちゃんといるときに呼んでやっているだろ、といわれれば文句も少ししか言えないが。
     いいや、大事なのは私の情報などではない。話を戻そう。今日は他校との交流試合に勝てて、ささやかな祝賀会が行われるのだ。祝賀会、とはいっても酒の飲めない年と身分であればただ他人の金で焼肉を食べる程度の話だ。しかし他人の金で食べる焼肉ほど美味なものはないと私は心底思っている。三回に一回嘘をつく先輩にそういえば「お前って心底から腐れ学生だよな、いろんないみで」といわれ、私は彼が寝て起きたとき強めに足を攣るように少し強めに念を送っておいた。理論理屈で説明できるものではないし、それゆえに証明できるものではないが、私の念はよく通じるのだ。地味な痛みに呻き慄くがいい。
     さて、祝賀会にはその時の試合でマネージャーとして参加していた彼女も呼ばれた。絶好のチャンス、だがここで一つ問題があるとすれば、彼女と私の席が酷く遠い。これでは最近どう?と聞くどころの話ではない。こうなればおのれ運命、私は試練など望んでいない。人生は平坦が一番だと麦茶を飲みつつ他人が育てていた肉に舌鼓を打つしかなく、別の先輩が育てたタン塩を頬張ってから彼女のほうを見ると、シュテン先輩と談笑する彼女が見えた。
     早々している間に、じゃあ、私ちょっと早めに寮に帰りますと彼女が腰を上げた。そしてそのまま靴を履きなおし、出て行ってしまう。私は慌ててちょっと雉を撃ちにいってきますと言葉を放り投げて靴を履くと、先ほどタン塩を掠め取った念を送った先輩に彼女に用事があるので私も早く帰りますとメッセージを送ると、返事を待たずに私は夜の東京に滑り出した。
     彼女が出て行ってからそうしないうちに、彼女の背中に追いついた。お嬢さん、私とちょっと夜の散歩をしませんか、と貴様は一体いつの時代の人間かと他人の原稿なら即座に訂正の赤線を入れている誘い文句しか浮かばないまま、私は彼女を追跡した。寮に帰る、と彼女は言っていたが神宿学園の方角ではない。時折ケータイで何かを確認しつつ足を進める彼女を見失わないように、私は夜の東京を歩む。ふと、彼女が喫茶店の前で足を止めて、喜びに満ちた足取りで角を曲がった。私も失うまいと角を曲がると、歌舞伎町一丁目のアーチ。そして彼女の姿は不夜城の光にまぎれてどこにもない。あれれ、あれ。これは非常にまずいのでは?と思う間もなく、私は体重を感じる重たい足取りで私を取り囲んだ鬼の転光生たちに睨み付けられながら、ドラム缶の一言を脳裏に浮かべていた。さて、ここから先は彼女語っていただこう。おい、肝心要の彼の出番がまだじゃないか?それはまだ、少々待っていただこう。

    ○○○

     歌舞伎町に足を踏み入れて、着いたよとスズカとエリイに連絡を入れる。外泊届けもきちんと出してここにいる、エリイとスズカも一晩くらいなら宿は任せろといってくれている。両手で軽く頬を叩いて、際限なく浮き足立つ心を沈めた。今日の集まりの副題は女の子らしいことをしよう、というものだった。服を見て、気に入るものがあれば買って、すべては明日の私にぽいと投げて甘味を楽しんで、二人と同じ部屋で寝て、わたしにとっては今日の主題である恋の悩みを聞いてもらう。エリイが外を歩けるのが夜からだからどうしても、夜動ける時間が必要だった。そしてなんだかんだ周りにいるのは男性ばかりだから女の子同士の集まりはとても新鮮だ、でも手を離したらどこまでも飛んでいってしまうような心の揺らぎを感じながら、新鮮な集まりのせいだけでない、未知への期待とは別にある、ずっと感じてる、心を焦がすような感情にわたしはそっと息をついた。
    「お待たせ、準備できてる?」
    「入り口でちょっと面倒が起こったんだ。ああ、男連中に任せてきたからあたしたちは大丈夫さ、待たせたかい?」
    「ううん、待ってないよスズカ、エリイ。今着いたばかっり。それで、どこいくの?」
     微笑んで「そんなにわくわくしてるの?」と聞くエリイに「うん、女の子だけで歩くってそんなにないんだ。洋服見に行ったり、遅くに甘いもの食べたりも、ね」と返す。二人と歩きながら、エリイはモデルの仕事でどこそこのブランドの服を着たけどどれもなかなかよかった。スズカは着物もいいよ、普段着にも特別な服にもなるしそれに着付けならあたしが教えるからと、半ば意図的におしゃれという概念を遠ざけていた私にいろいろ情報をくれる。コインは今日という日のためいっぱいバイトを重ねたおかげで、たっぷりある。夜を迎えた歌舞伎町の空気は、昼の印象なんか置き去りにするように一気に変貌していて、ネオンは目に痛いほど輝いて、スズカとエリイが一緒じゃなかったら今頃キャッチに捕まっているんだろうな、と容易に想像がつくほど店の前の黒服と、その売り文句に耳を傾けて店へ入る大人たちが道に溢れている。
    「すごいねえ」
    「ふふ、そうだね。まずは私が贔屓にしてるこのお店から、スズカが贔屓にしているお店はその後に行こう」
    「一通りめぐって気に入ったのがあったら買えばいいさ。さて、いくよ」
     二人についてお店に入ろうとした時、頭に何かが当たる。何かが上から降ってきたらしい。落下物を拾い上げてみると、それは小さな達磨だった。手乗りサイズですべすべしたそれを見つめていると、どうしたんだいとお店の入り口で待っていてくれたスズカから声がかかって、達磨をそっと誰かに蹴られない場所に安置するとお店の中に入っていった。かわいい服、かっこいい服。目いっぱいに私を着ればおしゃれになるよと主張する洋服に、選ぶことすら慣れない私は目を白黒させた。
     エリイがこれならこれをあわせるとかわいいとか、このアクセサリーどうとか、うーんこれは好みじゃないかなとか会話を弾ませる。そんな中、ふと手に取ったイヤリングに目を奪われる。結局そのお店ではシヴァのつけている装飾品に似ている目を奪われたイヤリングとか、コットンパールのネックレスとか、他にも数種類のアクセサリーを買って会計を済ませて外へ出る。夜を歩きなれた二人の足取りに自然と合う歩調に笑いあいながら、歌舞伎町の女王を先頭に、三人の乙女は今悠々と、ネオンに照らされ煌めく夜を泳いでいる。

    ○○○

     さて、一旦私の話に戻るとしよう。私は怖い人に囲まれて、その後もっと怖い人がいる事務所らしき場所に通された。狸の獣人、サングラスをした男性、ごつい武器を持った体格のいい男。刀を持った犬獣人。怖いにも程がないか? 今私がいるのは人生の断崖か東尋坊か?
     じっとテーブルに置かれた小ぶりな達磨に視線を落としながら、私は重たい沈黙に耐え続けた。私は口を開けては閉める間抜け面をしばしさらしていたが、どうしようもないプレッシャーにおかしくなってしまったらしく、テーブル上の達磨を手に取って両手で転がすと、不思議と心が軽くなる。達磨セラピーと銘打てばなかなかいい商売になるのではないか。現実を逃避してとっくにフライアフェイな思考と体は切り離されて、私は現実から逃げてひたすらに達磨を撫で続ける。つやつやした小さい丸みは癒しでしかない。しかしところで彼女は、我が意中の黒髪の乙女は今いずこに。
    「おい、ボスの後をつけてたらしいな?」
    「ぼ、ボス?」
     サングラスの男の問いに、ひどく上ずった声が出た。彼は彼女の名前を正しく発した。現実についていけていない私の様子を見て何か得心したらしい男は「さっさと神宿学園に帰れ、ここはおまえみてぇがやつが来る街じゃあねえよ」という。いやいやそれは出来かねる、私は彼女に用事があって、というと鋭い眼光が体にいくつも刺さる。何か間が悪いときに来てしまったのはわかった、けれどそれ以上のことはわからない。鬼の転光生が再び部屋に入ってきて、男が彼らに入り口まで連れてけという。たまらず窓際に逃げると、ふと彼女の声が下から聞こえた。窓から下を見ると、彼女が女性二人と何か店に入っていく。気づいて、ついでに助けてと念もこめて窓から達磨を放り投げると、彼女の頭にぽこんとあたる。しかしそれだけであり、丁寧に誰にも蹴られない場所に達磨を安置した彼女は、店に入ってしまった。さよならだけが人生だの言葉が頭に浮かぶなか、私はまるで捕獲された宇宙人のような姿勢で、アーチまで運ばれ、その場で解放される。いやいやこれは一体全体どういうことなのか。彼女の名前を叫んで一目でいいかあわせてくれと言い募ったが、鬼の転光生はさっさと街へ引っ込んでしまう。なにもわからないままとぼとぼ周辺を歩いていると「おい」と声をかけられた。見上げると筋骨隆々な転光生が私を見下ろしていた。
    「……お前、ヴァル……いいや、違うな。やつの関係者か?」
     得心のいっていない私に、彼も彼女の名前を発した。顔がとても広いとは聞いていたが、君の顔はどこまで広いんだい。東京全土に広がっているのかとおもったが、縺れる舌を何とか動かして「ええ、彼女の先輩です」と何とか言葉を紡ぐ。
     しかしそれ以上の話題が見出せず、彼も何かいうことがなく、シヴァと名乗った彼としばしアーチを見つめていた。気まずすぎる空気に耐えかねて、私は「あなたも彼女に用事が?」と聞いていた。
    「……そういうわけでは、ない」
     おや、と私は思う。そういうわけではないと、何か別の感情を強く抑えて勤めて冷静な声を絞りだすような声を出したシヴァに、まさかという思考が急に回転し始めた脳を満たす。もしや彼は彼女が好き、もしや彼は恋敵では?と何の根拠のないただただ私の体内で渦巻いているラブを起点に勝手な、現状では妄想に近い予想が脳を疾風怒涛の勢いで走って奔ってとまらなくなる。
     恋敵は早めに仕留めておきたいが、下手な行動をすれば物理的に仕留められるのは軟弱日影に咲く系もやしの私だ。恋も大事だが、命を捨てることができるかといえばううん、無理である。先ほどの経験もあり、そこまで恋だけに夢中になれない。恋に恋していても私は基本的にいのちだいじにを貫きたい。いきものなので。まだ鮮烈かつ甘酸っぱいおそらくこれから記憶に刻まれるだろうアオハルを味わってすらないので。
    「で、では私はこれで…………」
    「……………………いや、まて。あれに用事がある、といったな?」
    「あ、はい。いえあのそうですがあの私は」
     全力で縺れる舌とももさもさ動き空中で何かをシェイクする手、挙動不審これ極まれりの状態で、なんだか妙な状況になりつつある現状から逃げようと私は足掻いていた。そんな中、シヴァが何かを箱のようなものを取り出した。
    「……あれにこの箱を渡してくれ。俺の名は出さなくても通じる、はずだ」
     全力で空気をシェイクしていた両腕の動きを止めて、私は箱を見つめた。先ほどあったばかりの見ず知らずに対して大変失礼なことだが、らしくない、と感じた。らしくない、と感じるのは張り詰めた彼の空気に宿る巌のようないっそ荘厳な空気のせいであり、彼の持った小箱のラッピングがとても、そう、かわいらしいものであることから生じるギャップであった。
    「……………………」
    「…………どうした」
    「その、中身をお聞きしても? いえその、私が彼女に認識されいるか怪しいので、私は貴女の先輩だと名乗る丸刈りの不審者と認識されて後輩が受け取ってくれない場合もあるかと……」
    「――――だ、」
    「はい?」
    「指輪! だ!!」
     突然とどろいた大音声に、アーチの向こうからまた怖い人々が現れる。いのちだいじに、いのちがだいじ!と私は出会ったばかりのシヴァを盾にして生まれたての小鹿より震えていた。
    「……テメェ、たしかウォーモンガーズの」
    「…………」
    「代行者がこの街に、いや、違うか……この街にいるボスに一体何の用だ?」
     サングラスの男性の声には敵意に満ち満ちていた。彼は切った張ったの世界になれている、と平和ボケしかしたことのない私にもわかって、脳にアラームが鳴り響く。誰でもいいから助けて欲しい。神様よなぜ私を見捨てたもうと嘆いたが、剣呑に張り詰めた空気のなかで震え続けるしか今の私には出来ることがなかった。

    ○○○

    「へえ? で、そいつに告白するためにいい服が欲しかった、ってわけなのかい」
    「……うん」
    「別に馬鹿にしているわけじゃないよ。いいじゃあないかい、あんたもそんだけ本気だって事だ」
    「かわいい生地の着物も何個か買って、別のお店でも似合いそうなアクセサリーとか選んだんだから、後はかわいくなるだけ、だしね。……応援してる、でも砕けないでよ?」
    「……! うん!」
     買い求めた着物を元に、着付けを習って、スズカが細かなコツも丁寧に教えてくれたおかげで自分で着付けをしても見れるほどに、急ごしらえではあったがうまく着付けれるようになった。下駄の音を響かせて、まとめてあげてかんざしで飾った髪を揺らして、それだけの変化で、なんだか数分前の自分と今の自分は少し違った生き物のように感じた。
    「とってもおいしいパフェが食べられるお店調べておいたんだ、お礼代わりに付き合ってほしいな」
     深夜しか営業していないらしいそのお店の扉を開けて、ボックス席に座って定番のいちご、でも奇をてらってのマンゴー、いやいや抹茶も捨てがたいと三人の乙女はめいめいにあれこれそれがと言葉を交わして、結局それぞれの食べたいものをいったん精査して人数より多く、けれどおなかと明日からの自分のことを少し考えて、小さめのパフェを注文する。
    「歌舞伎町にも近くていい店だね、近場なのにはじめて知ったよ」
    「うん、お店の雰囲気もいいし。あ、来た来た。写真とろ、写真」
    「そうだね、ふふ、あとでケンゴとかがこの写真見たら怒るかなぁ。俺らも連れて行けよ!って」
     綺麗に食べ物の写真撮るのって案外難しいとか、うまく取れなくても後で加工しよう加工と手早く写真を撮ってから、それぞれこれだけは絶対に食べたいと主張したパフェをつつく。スズカはきなこと小豆がメインのちょっと珍しい感じのパフェ、エリイはいろんなベリーが乗っている見ただけでも豪華なパフェ、私は淡雪マロンと銘打たれた一口食べれば生クリームが儚く溶けるマロンパフェ。他にもチョコブラウニーに抹茶にティラミス。めいめい自由にパフェをつついて、これはおいしい。これはあんまり好みじゃないって言い合い、今度はもっと大勢で集まりたいなぁマリアとジブリールちゃんと、それからベンテンでしょ、アラクネさんにメリュジーヌにジズ先生も、と言葉を出してあんた知り合い全員呼ぶつもりかいとスズカが苦笑いをした。
    「だって、とっても楽しいんだもん」
    「あんた、告白するって言う本題は忘れちゃいないだろうね?」
     あんなにいっぱいあったパフェをあっという間にたいらげた後、スズカの鋭い指摘にうぅ、とわたしは言葉を詰まらせた。記憶がないから正確にはわからないけど、たぶん始めての恋のせいだろうか、自分らしくない臆病虫がずっと胸に住み着いている。甘くしなかったコーヒーをゆっくり飲みながら、臆病虫を追い出すように、私は深く大きく息をついた。
    「忘れてない……けど、やっぱりなんだか変にどきどきする!」
    「それ、それだけ恋が本気って事だからじゃない? ほらもっと深呼吸」
     エリイは手にした飴をまわしながら、深呼吸を繰り返す私を見て、いつになく楽しげに笑っている。
    「スズカぁ……骨は拾って…………」
    「当たる前から砕ける予想をしてんじゃないよ! しゃんとしな! あんたなら、大丈夫だよ。ほら、明日に備えて寝るんだろ、宿は歌舞伎町の中に用意したから……」
     ふと、エリイとスズカのケータイから音が鳴った。二人は画面を見ると、血相を変える。ゆっくりとコーヒーを飲んでいる場合ではないらしい、先にいってて、会計するからと告げて少し慌てた様子で店を出る二人に、もうアプリバトルの時間でもないんだけどな、とわたしは思考していて敵襲をするにも何のメリットのない時間帯だということで、完全油断していたんだと思う。
     お店を出ると、二人がいない。代わりに着信があって、『至急アーチに』とそっけない文章が送られてきた。慣れない着物と下駄で、精一杯早く歩いてアーチへ急ぐ。破壊音、怒号。だれかがアプリバトルをしているらしい。
    「ギョウブさん、テツギュウ、シノさん! 何が起こったんです?」
    「ご城主さん。ちょいと、まずいことになっとりましてね。うちをウォーモンガーズが攻める理由はないはずなんですがねえ」
    「ウォーモンガーズ? ……もしかして、シヴァ?」
     ギョウブが指し示すほう、両者とも本気ではない様子ではあるけれど、テツヤとシヴァが、拳を振るい刃を薙ぐ。どうしてこんなことに、なんて思っているひまはない。とめられるかどうかはわからないけれど、二人の名前を呼んで、状況によってはアプリを起動しようとした。
    「助けて! 黒髪の乙女!」
    「へ?! え、先輩なんで歌舞伎町にいるんですか!? 野球部の祝賀会どうしたんです!」
     よくベンチにいる、野球部なのにかなり不健康そうな先輩がアウトローズに所属している鬼の転光生に取り押さえられていた。何がなんだかわからない。何でシヴァが、先輩がここに?
     混乱する頭の中、取り押さえられた先輩が思い出したように「渡すもの! 彼女に渡すものがあるから離してくれ!」と叫ぶ。先輩が手に持っていたリボンをかけた小箱を受け取って、わたしはリボンを解いて中身を見る。
     中に入っていたのは、イヤリングと指輪だった。イヤリングはあの時エリイの店で買った、今耳につけているシヴァがつけている装飾によく似た、それ。指輪は、そういうことなのだろうか。そういうことと思って、自惚れて、いいのだろうか。わたしはシヴァのほうに向きなおって、彼の名前を、大声で呼んだ。

    ○○○

     この世の終わりかと思った。むしろそうなってくれと思った。なんかいい感じの甘い空気を纏った、新たに生まれた恋人達に気のない喝采あるいは半死半生の拍手を送りながら、私は怒涛の勢いで送られていたらしいお前今どこにいるんだメッセージの山に生きてはいると返して、充電が切れかけたケータイの電源を切る前に歌舞伎町の入り口にいるから迎えに来てくれたまえ、できれば先生以外のお迎えがいいなと一言添えておく。告白もしていないが盛大に失恋して、たましいが抜けたようなここちのせいで、もう歩ける気はしなかった。
     もう、えりえりれまさばくたに、えりえりれまさばくたにとつぶやくことしか出来ない。しつれんってとってもいたいのですね。でぃぷそぉーでぃぷそぉー。まて、私は一体何を口走っているんだ?という理性は残っている。けれど今はあんまりな痛手から立ち直れないで私は体育座りのままえりえりれま、と何度も呪文のような言葉を連ねていた。彼女とシヴァはもうここにはいない。これ以上歌舞伎町にいると、なんだっけ、アウトローズだかという集団に属する人員を刺激しないために彼の手を取って、今頃彼女はこの夜を彼と歩いているのだ。もう私が知ることのできない彼女を彼は知るのだ、彼女しか知らない彼が彼女と歩む光景は、うん、勝手に溢れる滝のせいで何にも見えないし想像もできない。そんなわけで、私の短い夜の散歩と実る予定はあった恋は終わりを迎えて、ついでに先生以外でと書いたというのに怒り心頭の先生が連れ戻しにきて引き取られる時、帰る最中、こってりとしぼられ怒られた。家まで送ってくれるのはいいが、そんなに怒って血管は切れてしまわないのだろうかと日陰のもやしは心配をしてしまう。
     ふと空を見ても、東京は明かりに満ち満ちていて、星々の光はここには届かない。失恋ってめちゃくちゃしょっぱいなとお説教を聞き流しながら、恋人達は今頃どこにいるのだろうか、幸せだろうかなんて、心にも思っちゃないことを考えて、無闇矢鱈に重ねた七転八倒の結果は、他の誰かと恋が成就した彼女の花のような笑顔であったと自分の中で結ぶ。そんなお決まりの結果になるのは、私とがよかったよ、なんて端役にしかなれないで終わったピエロは心の中で空向かって吼えたけた。
    No Doubt アルジャーノン×主2 これは俺が膨らんでいく一方であった恋心に無様無様にへばりつき、決して離すまいとしたその恋があっけなく破れ、俺だけを巻き込んで達磨に蹴り壊されるまでの話であるが、俺の物語など本筋ではなく、これはあの潔癖症の美化委員と我が意中たる黒髪の乙女が成就するその瞬間にいたるための物語が今から俺が語るおはなしの本筋である。人生のままならなさ、そして恋どころか生きることすらやや不器用な男と、彼を想う少女の愛らしさにご注目願いたい。口に入れればあ、と思う間もなく蕩け消える少しビターな、けれど確かに甘い生チョコレートを口に含んだような――そう、七転八倒の苦さと甘くゆれるこころの様をご賞味することに全神経を研ぎ澄ませていただきたく。俺が彼と一緒に彼女を追いかけ、ついには存在がそもそも蚊帳の外とも知らないまま、桃色の達磨を転がし達磨たちに追いかけられている間に結ばれた、新たな恋人達の顛末をご覧あれ、そして開幕の前に皆々さまの御手を拝借したいところ。まずは、彼と彼女へ大いなる喝采を。そして、可能であれば祝福を。ついでに俺の重ねた七転八倒の有様が持つ無様さに耐え切れぬなら、俺にはどうぞご遠慮なく呵呵大笑し、そもそも耐える必要などいささなかもないゆえ、大いに笑うがよろしかろう。それでは拍手はそのまま。開幕、開幕。

    ○○○

     俺は神宿学園に通う一獣人であり、彼女にしてみれば先輩で、彼――アルジャーノンにすれば同級生だ。一応俺は美化委員に所属しているが、ろくすっぽ委員の仕事などしていない。それは俺が勤勉や真面目などとは程遠い性格をしていることと、所属する委員の仕事を毎日完璧にこなせば通う学園はピッカピカ、綺麗な校舎にみんな幸せという未来図と、それに必要な労働力を天秤にかけて、やってらんねえ!そんな体力は使いたくない、そして朝っぱらから労働なんてごめんだ、その時間があるなら俺は時間の許す限り寮で心行くまでごろごろするぜ!と勤勉と労働にむやみやたらな反抗心を抱く俺は固く心に誓ったからだ。
     しかしこのところは誓いを破って、非常に今更ながら委員の仕事に顔を見せるようになっていた。もともと存在しないに等しいやる気を失い手を抜こうとしては、アルジャーノンに睨み付けられている非常に割に合わない生活を送っていたが、それは単純に意中の存在である黒髪の乙女がアルジャーノンの仕事、すなわち美化委員を手伝っているからでしかない。アルジャーノンと彼女にどんな縁があって手伝っているかも知らないが、言葉を弾ませる彼女と対照的にいつもどおり言葉少なに、ヘルメットから流れる音声のアシストなんだかからかいなんだかわからない言葉に黙れネズミと怒りつつ、けれど普段彼が同級生にするよりは着実に会話を交わすアルジャーノンを、デッキブラシに寄りかかりながら見つめるのが日常になりつつある中、俺自身もそろそろ彼女の関係に進展が欲しい。けれども同じ学園の先輩とはいえ、彼女にしてみればしゃべったことが数度しかない男にいきなりデートに誘えばさすがに警戒されるだろうか。頭の中では姦計を巡らせながら、早起きをしたためこみ上げたあくびをかみ殺さずにいたら「やる気がないなら帰れ」と厳しい声が背後からかかった。しかし意中の乙女と他の男が二人きり、という光景を想像して朝早いからちょっと眠いんだよと言葉を返して、俺はデッキブラシで廊下の汚れを取り去る作業にいやいやながら戻る。
    「あの、アルジャーノン先輩」
    「なんだ、作業でわからないところがあったか?」
    「いえ、その。委員とは関係ないんですけど……野外ライブのチケット、もらっちゃって。えっと、今週の日曜日にあるんです。よければ、一緒に行きませんか?」
     二人の会話が思わぬ方向に向いたため、手をつけていた仕事を秒速で放棄して、俺は事の成り行きに耳を澄ます。断れ、正直お前のことぜんぜん詳しくないけどたぶんお前はそういう性格じゃないだろ。断ったら俺が声かけるから、どうか断って!となむなむとつぶやきながら手を合わせる。なむなむは知人の知人から教わった万能のおまじないだ、わざわざ万能と銘打たれるだけあって、結構効き目がある。少なくとも俺はこれをつかったとき、必ず幸運が舞い込む。
    「先輩と行きたいんです、だめですか?」
    「………………他の奴と行け」
    『バーディー……君って奴は後どれだけ向こうからやってくるチャンスとせっかく立ちそうなフラグを自分から叩き折り続けるつもりだい?』
    「うるさいネズミ、誘いを受けるかどうかは俺の勝手だ」
     必要以上にぶっきらぼうな口調でアルジャーノンは言葉を放り投げると、少しばかり肩を落している少女に何か言葉をかけようとして、けれど彼の中で言葉にならなかったらしいそれは、放たれることはなかった。委員の仕事が終わり授業を受けるためそれぞれの教室にいく道中、さすがに肩を落した少女にじゃあ俺と行こうと流れる空気を読まずに彼女に突進できなかった俺も、尾を揺らしながらとぼとぼ教室への道を歩む。さて、ここで俺はいったん退場するとしよう。俺という華のない男ばかりではつまらない、放った言葉を拒まれた彼女は、さて。

    ○○○

    「あ、来た来た! どうだった?」
    「……ごめんね、リョウタ。せっかくのチケットだけど、断られちゃった。あ、でもお礼はちゃんとするよ! 明日シンヤに頼んでたケーキ受け取ってくるから。自信作だって、私も少し食べたいなぁ」
     元気な調子で、と思って言った冗談はから回って、うまく伝わらずに終わった。一緒になって落ち込んでくれるリョウタに、私は本当にいい人にであったんだと何度目かもわからない自覚をする。駄目でもともと、コンサート自体は嫌いではないらしいけど正直提案が受け止められる期待は受け取られないだろう、という予想の重さより小さくて軽かった。ダメージがないとはいえない、でもそっか、と自分を納得させることが出来る程度の痛手だ。他に行ってくれる人探すよ、マリアこういうのいったことあるかなぁ、ないなら彼女と一緒に行きたい用事あいているかな、と言葉を紡ぐ。
     野外ライブ、東京でも屈指の動員数であるらしいそのロックフェスはなかなか大規模で、ステージもいくつか別々に存在して、それぞれのステージで演奏のスケジュールが組まれている。一緒に行く人にマリアの名を出したのは、個人的にロックとマリアに関連性は見出せないから、つまり未体験同士で行って未知の領域に目をくるくる回すのもいいかもしれない、って思ったから。
     メッセージを送ると、運がいいことにその日は炊き出しの予定も何もない、一日だけ存在する完全な自由時間だったらしい。フェスは服装は涼しくて動きやすい格好がいいらしいとか、複数存在するステージのスケジュールを共有して、あとはいったん青山に顔を出してマリアと一緒にフェス会場まで行くという流れになった。先輩といけないのは正直悲しい、マリアに振られちゃったって話そうか、でもそんな子といったら気にしてライブどころじゃなくなっちゃうかな、といろいろ考える。
     その後はいつもどおり授業を受けて、寮に帰る。少ししょぼくれてしまうけど、軽い失恋の痛手は時間が解決してくれるまで待つしかない。ベッドの上に転がりながら、マリアと私はこのアーティストが気になるとか、ジブリールがこの方々と一緒に歌うことがあったので名前は知っていますとか、互いに名前だけしか知らないアーティストの代表曲を聴いてみたり、気になった名前を言い合って、予習のために曲を聞く。消灯時間のぎりぎりまで気になったバンドの演奏時間とどこのブースで演奏するかを確認しあって、後は現地で楽しみましょうというマリアに思いっきり楽しいもうねとかえしてケータイの電気を消す。針を細かく刺されているような違和感は無理やりどこかに放り出すとブランケットを頭までかぶって、目蓋を閉じた。
     そして迎えた当日、真夏のロックフェスは大盛況だ。すごいねえと少し緊張しながら言葉を漏らすとマリアも少しなれない場所にいる人特有の緊張した面持ちをしている。はぐれたら困るから、互いの手を握り合って移動しながら、フェスの名前が入ったタオルを買ったり冷たい飲み物を補給したり。まだ時間前であるけど、最初のお目当てのバンドは初めてここでライブをするからだろうか、すでに人が集まっている。
    「マリア、楽しもうね!」
    「はい! で、でもなんだか、初めてであるせいでしょうか。とってもどきどきしますね……!」
    「マリアもそうなんだ……あ! 始まるみたい!」
     メンバーが舞台に上がると、どのようなライブであってもMCをしないことで有名らしいバンドは演奏を始める。体を揺らすようなギター、ベース、ドラムにキーボード。緩やかなイントロから、一気にテンションを上げる重厚な音に私たちは周囲のまねをして、拳を突き上げた。

    ○○○

     さて、俺の語りに戻るとしよう。ロックフェスに誘われた俺は不承不承寝床から出て、暑苦しい太陽の照りつける野外の会場に足を向けていた。野外のライブ、といっていたからここには彼女いる可能性が高いと踏んだのだ。けれど、と俺は思考する。なぜ頭数の中にアルジャーノンがいるのだ。俺をここに連れ出した神宿ではなく青山の学園に在籍する腐れ縁曰く、チケットあまっちゃったからと実にあっけらかんとした返答が返ってくる。いやいやなぜアルジャーノンをしていると言い募ろうとすれば、あ、チケットのコインだしたの俺だし、アルジャーノンからはもらったけどお前からチケットの代金受け取ってないから今から帰るもなしなと俺は大きめの釘を刺され、不服なのを隠さずに二人の背中を追いつつ意中の乙女はどこかにいないかと目を走らせる。そしてふと、足元に何かが転がってきた。見るとそれは小さな達磨である、周囲を見渡すと達磨をステージから放り投げるパフォーマンスをしている桃色ブリーフが実に破廉恥な法被集団がステージ上にいる。なかなか人気らしいそのバンドは、見た目のトンチキさに反して演奏はしっかりしていて、音に芯があるように感じる。さすがは人気のロックフェス、見た目はあれでも彼らは確かに猛者であるのか。そう考えながら、手持ち無沙汰であったので俺は拾ったピンクの達磨を手の中で転がす。
    「お、お前良いもん拾ったじゃん。あのバンド毎回色が違う達磨ステージからブン投げるんだよ。くれ」
    「やらんぞ、これは俺が拾ったのだ。何か言い募ろうものなら俺は全力でこの達磨の養育権を主張する」
    「じゃあいいや。あ、あー、もう始まってら……あれ、あすこいんのお前の後輩ちゃん……て、あれれ、一緒にいるのマリアさんだ」
    「マリアさん?」
    「うちの学園の生徒。年上のオレよりよっぽど人間出来ているからマリアさんって呼んでる、すごい存在に対してのリスペクトって大事だよねえ」
     空気を読まない才能を持っている腐れ縁は、性格の軽さが全開出ているへらへら笑いを浮かべた。お前の後輩ちゃんといわれても、腐れ縁の横にいるアルジャーノンが邪魔で彼女が見えない。全力でその場で跳躍を繰り返して彼女を探すと、長い緑の髪が美しい少女と興奮した面持ちで何かをしゃべったり、曲に合わせて周囲と同じ拳を点に突き上げる動作をしていた。
    「オレの目的地はもうすこし向こうのブースだからここで解散ってことで、帰りは自分で何とかしてくれたまへよーキミ達。んじゃあ諸君、楽しみたまえ。さらばじゃ」
     さっさと人ごみにまぎれてしまった腐れ縁に置き去りにされ、彼女の背を見つめるアルジャーノンに恋敵の気配を敏感に感じながら、俺は手に持った達磨を不安に駆られて全力で撫でさすり転がした。誰かを当て馬にするのはいいが自分が当て馬になるのはごめんだと、今になっては失笑物でしかない考えに支配されていたのだ。アルジャーノンの一挙手一投足を警戒しすぎて、自分からアクションを起こせない。その時だった、遠くから桃色の閃光、そして爆発音。正気に返ると、空から大小さまざまな達磨が雨のように降ってきた。

    ○○○

     異変に気づいたのはマリアと、周囲と一緒になって盛り上がったバンドの演奏が終わるまさにその時だった。ピンクの閃光が走って、爆発音がして。なぜか空から桃色の達磨が降ってきた。天気予報では達磨に注意しましょう、なんていってなかった。見た目より軽いらしい達磨がマリアと私の頭にこつんと当たってそのままそこに鎮座してしまう。おかしくって、互いに笑いあって頭に乗ったころんとした達磨を手に持った。遠くからありがとうございましたぁと絶叫が聞こえるから、何かのバンドの演出なのだろうと互いに手に持った達磨を見つめながら、何で達磨なんだろうねえと笑いあっていると「それは俺たちのバンド名が達磨屋=サンだからだ」と達磨がいやに渋い声を発した。
     他の人が手に持った達磨もしゃべり始めて、同じ声が四方八方からするという、まったくの異常事態。混乱する状況をさらに混乱させるように、生足の生えた巨大な達磨が周囲を縦横無尽に駆け回る。達磨を動かしているのがどんな権能によるものかはわからない。けれどこの状況を放ってもおけない。達磨が乱舞する緊急事態に、とりあえず閃光が走ったほうに行こうとマリアと目を合わせると、私たちは別のステージへ走った。
     閃光がしたステージ近辺はさらにとんでもないことになっていた。カップル達にキッス、キッスとはやし立てる小さな達磨。生えた生足を駆使して疾駆する複数の中くらいの達磨。ステージ上には、なぜか桃色ブリーフに青い法被を着たメンバーが涙目で呆然としている。ステージに近づいて、私に何か出来ることはありませんかと声を張り上げる。バンドのボーカルらしい転光生が、片思いソング歌っている最中にテンション上がってこうなっちゃんだよう、と鼻水交じりの情けない声で返答する。自分で書いた片思いソングの情念を具現化しちゃったから片思いしてる子がキスすればいいとおもう、とも。片思い、その単語に顔が真っ赤に染まる。けれど、私が片思いをしている相手はここにはいない。断られたのから、いるはずなんてない。けれど秘めた恋を見透かされたような、それによって発生した羞恥心の生で、達磨が周囲に集まっていることにも気づかず、後ろから近づいてくる人影にも気づけないでいた。

    ○○○

     いきなりしゃべりだした達磨を手に持って、彼女を追って駆け出したアルジャーノンを追いかけながら意味不明な惨状が深まり始めたロックフェスの会場を俺は疾走する。ふと横を見ると、足の生えた達磨が俺と併走している。悲鳴を上げて達磨から逃れようとすると、声に気づいた別の達磨が合流して一気に倍に増えた達磨が俺を追う。俺が何をしたって言うのだ。追うならアルジャーノンを追ってくれと責任をなすりつけよとしても、達磨の群れは俺だけを追う。悲鳴を上げながらぐるぐるステージ周辺を駆け回り、いつの間にか彼女の腕を取って自分のほうを向かせたアルジャーノンに怒鳴りたくともいかつい生足で疾走する達磨に追いかけられる恐怖で声も出ない。
     誰でもいいから助けてと悲哀に満ちた声が出る。そしてそのうち足元に合った達磨に躓いて、後続の達磨の集団に容赦なく踏みつけられ、踏んだり蹴ったりこれ極まれりぞと思いながら顔を起こすと、アルジャーノンと彼女がなんか良い雰囲気になっている。そっと彼女が彼の首に、恐る恐る手を伸ばす。キッス、キッスとはやし立てる達磨の声に背を押されたように、彼女はヘルメットごしであっても、彼と確かにキスをした。キッス確認と叫んで達磨がロケット花火のように空に飛ぶ。また閃光が輝いたと思ったら、達磨は最初からいなかったかのように、忽然と姿を消していたのだった。

    ○○○

     マリアに今日はありがとうといって、また遊ぼうねと約束もついでに取り付けて、私は先輩と一緒に行動していた。秩序を取り戻したフェス会場はまた喧騒に包まれている。何で先輩がここに、と思う。
    「……ツテをあたって、チケットを買ったんだ。正規の販売はもう売り切れだったからな」
    「え、」
    「別に、ライブくらい悪くないと……」
    『バディ! そこは彼女の誘いを断ったけれど、やっぱり側にいたかったからというべきさ!』
    「黙れネズミ!!!!」
     大声を出した先輩から伝わる心音は、きっと普段より早い。普段よりずっと近くにいる、心音すら感じれるほど。
    「先輩、」
    「なんだ!!」
    「その、自惚れてもいいですか。そういう、いみだって、」
     言葉を失った先輩の肩にもたれかかって、夕日を見つめながら、私は言葉を発する。ずっとさまよっていた腕が意を決したように、私を抱き寄せる。心音が早いですね、お互いにと、言葉にするというな、と照れた声が心を打った。

    ○○○

     とぼとぼ帰路に着きながら、私は養育権を主張した達磨すら失って破れた恋に半泣きになりながら帰路についていた。委員会にはもう顔を出さないだろう。リア充になった同級生をいまは見たくない。黄昏時、オレンジに染まる空を見た。そんなこんなで俺の恋はあっけなく散ったが、もしかすると、俺を踏みつけた後続の達磨集団に蹴り壊されたのかもしれない。
     地下鉄を何個か乗り継いで、寮の近くにつく頃には空が少し暗くなっていた。新しい恋人達は、今何を考えていることだろう。どんな幸福に満ちて、どんな至福に包まれているのだろう。達磨を転がし達磨に追いかけられている間に潰えた恋をまだ抱えながら、半死半生の俺は寮のベッドにダイブした。
    かんかん照り空大迷惑 テス主2 かんかん照りの晴天の下、彼女はついぞ、何も知らぬまま始まって収束した古書市の一件をどう表現したものか、私はいまだに図りかねている。これは彼女のために舞台を華麗に乱しきった黒き太陽の話であり、私が舞台上に昇れるはずもなかった話である。そして、彼女があの不思議な名前の絵本を手にするまでに巻き起こった物語である。さあさ御拝聴、今より私の下手な語りをお聞き願いたい。ああ、喝采ならば彼女と彼に。私には、そう。皆々様が生暖かい視線を当ててくだされば、これ以上望むべくもない。

    ○○○

     私の通う、神宿学園で一つ下の後輩はこの東京では逆に珍しい転校生だ。転光生ならいくらでも編入するが、転校生となると珍しい。いささか物珍しい存在を見に、というなんとも相手に失礼極まる動機で私は彼女の教室に向かった。そして、一瞬の視線の交差、そう、私は一瞬で彼女に恋に落ちた。そしてついでにドアに仕掛けられた古典的黒板消しトラップに見事に引っかかって、驚愕している彼女の表情になんと可憐で愛らしいことだと恍惚とした。
     部活動の助っ人になることは多々在る彼女が正式に入部してるのは、もはや禁句となっているあのワンダーフォーゲル部である。主に運動部の助っ人をしている彼女に、マイコン部である私は彼女に接触する機会がほとんどない。しかし彼女の視界に少しでも映りたい、そんな下心が芽生えるのもしょうがあるまい。そこで打ち立てたるはなるべく彼女の目に留まろう作戦。通称ナカメ作戦、別の視点から送られた称号はストーカー、持つべき倫理はどこか遠く遠くに放り投げた、私が出来うるすべてである。頻発させる運命の出会い、奇遇だね奇遇ですね以上には続かない会話。もうとっくに無理やり紡いだ運命の糸でがらんじめなのに、彼女と一緒に行動していることが多い後輩に険しい視線を向けられる中、彼女は今日も「奇遇ですね!」というばかりだ。今日もとぼとぼその場を離れつつ、後輩達の会話に耳を傾ける。
    「本当にすまない、せっかくの古書市だけど、その日は先約があるんだ……」
    「ううん、大丈夫。それじゃあ、他の人と一緒に行くね」
    「ああ、気をつけて。ラ・タ・タ・タムの捜索を手伝えないのは残念だけれど、もし見つかったらエビルたちに読み聞かせてくれるとうれしいよ」
     古書市、その言葉を私は脳に焼き付けた。家の近くで開かれるイベント、これは千載一遇の好機に他ならない。私がラ・タ・タ・タムなる本を発見する、彼女は私に感謝する、そしてその後は恋人なってくれませんか! やや飛躍しすぎている気もするが、これをチャンスとせずに何をチャンスとするのか。私は早足で家に戻る途中、私に薔薇色の未来をもたらす本がどのようなものかを検索した。

    ○○○

     あらゆる書店を暇があれば当たっても、その本はなかなか見つからない。ラ・タ・タ・タム、ちいさな機関車のふしぎな物語という副題のついたその本を私はずっと探していた。図書館で読んで、どうしても手元に欲しい、と願った本とめぐり合ったはじめての経験。けれど図書館が本を入れ替えをして、その本を誰かに譲渡してしまったため、図書館ですらその本を見ることはもうできないのだ。あのきれいな絵本がどうしても欲しい、めぐりめぐって古書市の海でたゆたっていないか、一縷の希望をこめて私は始めて古書市というイベントに、テスカトリポカと足を踏み入れた。
    「すごいものだねえきょうだい! ここでなら、君の目当ての本があるかもしれない!」
    「うん! でも、テスカトリポカの興味のありそうなものはないと思うよ?」
    「私は君とデートするためにここにきたのさ、きょうだい。さて、君と一緒にしたいのは山々だが、それでは捜索の効率が落ちるというものだ! 周辺を捜索してから、なければ別行動をして効率的に捜索をしようではないかね!」
    「……ふふ。ありがとう、テスカトリポカ。でもデートじゃないよ、私まだ怒ってるからね!」
     昨日の晩、いつもどおり窓から突入してきたテスカトリポカに「怒っているんだからね、悪かった、と思っているなら明日一緒に本を探して。一人じゃ見つけられなさそうなんだ」と、幾度目かもわからない奇襲を仕掛けられて怒り心頭だった私はそう言い放っていた。それはそれでつまりデートだねきょうだい!と抱きつかれたりしたからぜんぜん懲りていないのは目に見えていたけれど、ラ・タ・タ・タムを発見する可能性は少しでも引き上げたい。それに私は、テスカトリポカのことが。
     隣あってこれでもないあれでもないという時間がいとしくってならないのは、彼のことが好きだからだ。親愛ではなく、恋情として。そしてテスカトリポカの宣言どおり、ある程度古書市の捜索を進め、そして私たちは別行動をすることになった。少しちくりと痛んだ心を無視して、じゃあまた後で、と私はもう一個あるらしい、大きな絵本のコーナーへと足を進める。そんななか、ふと急ぎ足で会場内に設置された大きなテントに入っていく顔見知りを複数発見した。どうしたのかな、と思わないわけはなかったけれど、本を探しているし、私は急いでいる彼らに声をかけるのもどうかな、とおもってそのまま古書市に広がる本の海を泳ぐことにした。

    ○○○

    「わかってるね、目的の本を手に入れてくれたら1万コイン支払うからね。裏切ったり途中で脱落したら話はなし、いいね?」
    「わかってるわかってる。如何わしい絵を手に入れたらいいんだろう」
    「北斎の春画だよ! 芸術作品だ、如何わしくない!」
    「春画である時点で今は芸術作品であるにしても十分如何わしいだろうが!」
     友人に引き摺られながら、私は古書市の中央にあるテントに足を運んでいた。彼女にあうためにきたのに何でこんなことに、と泣きたい気分になったが一万コインという誘惑に惹かれたのは否定できない。さてテントの中には白い制服を着た転光生が二人、バイカー姿の虎獣人の転光生。そしているだけで威圧感を放っているように見えるジャガーの転光生がいた。外より暑いテントの中央にはコタツと卓上コンロ、そしてご丁寧に湯気を噴出している薬缶がセットされた持ち運べる暖房器具が複数置いてある。
    「いやー、あっちいなガチで! さて、一応ルールの再説明しとくぜ。お前達は目当ての物品をかけてこっちの用意する火鍋を食べる、物品を手に入れられるのは最後に残ってた奴だけだ。んじゃはじめるぜ、一応脱水症状にならないために熱かろうが麦茶は飲めよ! 死人だけは出すなよ、ガチでな!」
     そういって、ドワーフの転光生は一人だけ涼しい格好をして水の張られた樽に足を突っ込んで西瓜をかじり始める。おのおのがコタツに足をいれたのを公正に勝負か行われるか監視する役割らしい黒服が確認すると、白と赤の見た目は非常にめでたい鍋がコンロに置かれた。
    「いいですかアスタロト! このバエルの目的の品、ここで逃せば二度と手に入らないかもしれない品物ですので、貴方にはぜひともがんばっていただきたい!!」
    「………………やけに序列を確認するなっておもったけど、こういうことだったんだ……」
    「飯も食える、報酬は最後まで残れば確約される……! 俺は絶対に負けらんねえんだ……!」
    「ふむ、香りだけでも相当なものだ! これはすでに一種の兵器といっていい代物だねえ!!」
     私はコタツに浅く足を入れながら、ずいぶん珍妙なことに巻き込まれたものだと思い始めた。ああ、なぜこんなことに。黒髪の乙女、君は一体今いずこに?

    ○○○

     広い古書市を、やっぱり見つからないやと思いながら私はそれでもあきらめずにいろんな場所を見て回った。いろんなお店が本を提供している古書市で絵本コーナーは小規模だったり、そもそもなかったり。かんかん照りの下、雲ひとつない晴天を見つめながら流れる汗をふく。氷水で冷やしたラムネとその場でまいてくれるらしいソフトクリームを売っているお店を見つけて、一本買おうかなって思ったけれど、せっかくだからテスカトリポカと一緒に食べたいな、と思って場所だけ覚えて、ラ・タ・タ・タムの捜索を続けることにした。テスカトリポカは一体どこを探しているのか、すれ違っているにしても彼の姿を見ることがない。彼のことだから帰っている可能性は低いしそこの心配はしていないけれど、せっかく作った義体で無茶をしてないかな、なんて思ってしまう。
     恋心は厄介で、ひょっとしてこの感情のこと、気づかれているかなと思ってしまうけれど、わかってて欲しいのか、それとも逆なのか。今の自分にはわからない。そんな中、ふと本を見つけた。ラ・タ・タ・タムではなく、世界の綺麗なステンドグラスと名づけられた、この東京に壁が出来る前に出版されたらしいステンドグラスの写真だけが載っている、少し小さめの写真集。見慣れない建物の名前を見つめて、これくださいと店員さんに声をかける。壁の外の建造物の本、きっとシロウに見せたら喜んでくれるかも、って思ってコインを支払うと、店員さんがこれはおまけと別の本をつけてくれた。
     でも、タイトルを見て顔が真っ赤になってしまう。I Love Youの訳し方、見ず知らずの人に気持ちを見透かされたようで、早くなる鼓動をなだめながらすこし足早にそのお店を離れる。
     ――もしも、私なら彼に対して贈るその言葉をなんて訳すだろう。月が綺麗ですね、より綺麗に訳すことなんてできない。私なら、私が、いうとしたら。今どこにいるわからない姿を頭に浮かべながら、早い鼓動を沈めるために、私はそっと息をついた。

    ○○○

    「アスタロト!! もう少しがんばれるでしょうに!」
    「ぼくはもう無理……かな……がんばって…………」
    「アスタロト!! 戻ってきなさい! アスタロト!!!!」
     早々に脱落した角らしきものが頭にある紫色の髪の少年と、私をこのようなことに巻き込んだ友人はドワーフの後ろ、涼しく設定された場所で西瓜を食べている。
    「私がいえたものではないが、君たちもよくがんばるものだね! ふむ、やはりこれは食べ物ではなくただ刺激物と呼んだ方がいい。見たまえよ君たち!! あまりの辛さに虹色の吹流しが鍋の周囲を踊っているではないか!」
    「これくらい空腹に比べりゃなんともねえ……! ああ、くそっ、吹流しが邪魔だ!」
     虹色の吹流し、おそらく幻覚であろう物体は私にも見えている。一瞬だけ辛味を流してくれる熱いお茶を何度も何度も飲みながら、私は一口食べれば後頭部を荒削りの棍棒で殴りつけられるような衝撃をもたらす辛味と戦い、それはもう必死に鍋に食らいついていたが、そろそろ潮時なのではとも感じていた。私は脱落する、後はまあ、獣人たちの真剣勝負になればいい。箸を下ろそうとしたその時、ジャガーの獣人が「そういえば、ラ・タ・タ・タムは準備できているのかね」と言葉を発した。
    「あったりまえだろうが! それぞれの目的の品は用意してある、ガチでな!」
    「ふむ、食べながらですまないが品物の表紙を見せてはもらえないかね?」
     ほらよとドワーフがアタッシュケースから、厳重なケースから出るにはずいぶん似つかわしくない絵本を取り出した。ラ・タ・タ・タム! 我が意中の乙女が所望する品! なぜ彼がそれを望むかは知らないが、これはチャンスだと私は友人を裏切る決意を固め、猛然と茶を口にして、辛すぎて何の肉かさっぱりわからない肉片を呑み込んだ。そして先に白い制服の獣人が脱落するのを茶を飲んで飲んで腹が膨れた私は冷静に見つめ、残った二人が何とか先に自滅してくれと念を送る。
    「辛い! まったく辛さという概念の暴力といって過言ではないなあこの火鍋とやらは!! おや、亀まで中にいるではないか!」
     大きな亀がずるりと鍋から取り出されたのを私は驚愕して見つめた。そんな中、酷く悔しげな声をあげ虎獣人がコタツから脱出する。いやはやずいぶんとおかしなことになった。そして彼は知らないことだが、私たちは同じ絵本をめぐって戦っている。とっくにみずっぱらになっている胃にお茶を流し込みながら、私は奇声じみた咆哮をあげ、火鍋に箸を突っ込む。真っ赤にに煮詰められた蛇が出現して、蛇という生命体が心底苦手な私は咆哮を悲鳴に転じさせ、そのままコタツから這い出した。
    「さて、これは私の勝利といっていいかな?」
    「だな、コタツにいるのはあんただけ。ほら持ってけ、なんだってこんな元は図書館のもんだった絵本なんて欲しかったんだ?」
    「ふふ、それは機密事項というものだ。それでは諸君! 私は先に失礼させてもらうよ!」
     多種多様な敗北者が死屍累々といった様相を呈しているテントの中、ジャガーは本を片手に颯爽とその場を去る。あの火鍋を食べたのに、ダメージが累積していないような背中を見つめながら、私は友人の差し出した冷たい麦茶を飲みながら西瓜をかじることしか、できなかった。

    ○○○

     いつの間にか空の色が青から橙に傾きつつある中、件の本が見つかったとテスカトリポカからメッセージが入って、彼の指定した場所に私はラムネを買ってから向かう。浮き立つ足は正直だ、どっちに喜んでいるんだろ、なんて考えなくてもわかる。どっちも、私はうれしいから。
    「テスカトリポカ!」
    「やあきょうだい! 君の望んだ品だ、これであっているね?」
    「うん、ほんとうにありがとう! はい、これ。お礼のラムネ。暑い中探してくれたんでしょ、さっき買ったばっかりだから、まだ冷たいよ」
    「感謝するよきょうだい、あれはさすがに堪えたからね!」
     ベンチに座ってラムネを飲むテスカトリポカを横目で見つめてから、ラ・タ・タ・タムに目を通す。あのきれいな世界に浸って、それから背表紙にある図書館のバーコードを見つけて、私は思わずあ!ってこえを出す。これ、私がはじめて読んだあのラ・タ・タ・タムなんだ、と。
    「テスカトリポカ! ありがとう!」
     本を膝に、片手にラムネを持ったまま、私は彼の腕に抱きついていた。奇襲攻撃かね!きょうだい!と私を抱きしめ返したテスカトリポカに大好き、と言葉をはなつ。私のI Love Youの訳し方は、酷く単純で、誰でも思いつくもので。でも、あふれでる思いをいっぱいこめるには、だいすき、のたった四文字の言葉が私の中で一番しっくりきた。もう一度大好き、と言葉にすると彼の翼が私を覆う。近づく顔を、その瞳を見つめながら、ぎゅっと強く、でも優しく抱きしめてくれるテスカトリポカの腕の力に、私は目を細めた。
    夜船ヒトヨ Link Message Mute
    2022/06/19 21:21:43

    きらめけば乙女

    夜は短し歩けよ乙女のパロ、と名乗りたいけど概ね別物になったなにか。それぞれ別時空の話ですがすべてモブの語りで進行します。
    #東京放課後サモナーズ
    #放サモ
    #テス主2
    #アルジャーノン×主2
    #シヴァ主2
    #パロディ

    感想等おありでしたら褒めて箱(https://www.mottohomete.net/MsBakerandAbel)にいれてくれるととてもうれしい

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