私を燃やし尽くすもの 今日は楽しかった。じゃあね、ばいばい。
帰り道の途中、お互い笑顔で手を振って別れる。浮かれて去って行く男子生徒の姿は早々に闇に紛れて見えなくなった。
「おや、浮気ですか」
耳元で声がするなり背後から抱きしめられる。抱擁にしか見えないそれは実のところ拘束でしかなくて、抜け出そうとしてもびくともしなかった。
バルバトスが神出鬼没なのは今更驚きもしない。
「他の男はいかがでしたか」
作ったお菓子の感想を聞くのと何ら変わりない様子で問いかけ、返事を待たずに上着の胸元から左手が差し込まれてブラウスの上から胸を鷲掴みにされる。右手で腰を抱いているだけなのに、相変わらず動ける気配はない。
「んっ……っ」
これまで散々快楽を教え込んできた手つきで、燻っていた情欲に火を点けられて声が出そうになる。
「満足できなかったのでしょう?」
腰を拘束していたはずの手はいつの間にかスカートの中に侵入している。もう動けるはずなのに、動けない。
「あの程度の男が満足させられるわけがありません。あなたがまだ無垢な頃から私が手塩にかけてそう育てたのですから」
「さあ、帰りましょうか」
帰る先はきっと私の部屋ではなくて、朝まで、ゆっくり、じっくりと、燃え滓になるまで、私を満足させられるのは誰なのか教え込まれるのだろう。