Trick OR Treat【attention】
本作品は2020年10月31日 00:21pixiv掲載作品となります。
不死鳥作戦後のゾルタン生存if√話になります。
幼少のゾルタンとヨナが出てきます。
設定めちゃくちゃなので本当になんでも許せる方向けです。
それでも大丈夫な方はどうぞ。
グリニッジ標準時10月31日。今日はハロウィン。子供達がお化けや悪魔に扮し、「ごちそうくれなきゃ、いたずらするぞ」と言いながら町中を練り歩く祭りの日だ。地球のこの街も例外ではなく、たくさんのお化けに扮した子供たちが家を訪れ、ハロウィンを楽しんでいた。そんな中、アプリコットオレンジのマッシュヘアーをした8歳の少年とダークグリーンのショートボブヘアーをした10歳の少年の姿があった。二人も例の如く、8歳の少年の方は狼男の仮装を、10歳の少年の方は吸血鬼の仮装をしており、手にはジャックオーランタンの形をしたバケツを持っていた。バケツの中にはまだ一つもお菓子が入っていない。子供たちはある家の扉の前に立っていた。
「ねぇ、やっぱりやめとこうよ」
吸血鬼の少年は狼男の少年のボロボロのシャツを掴む。
「でも、今日はハロウィンだよ? 行かないとミシェルとリタに怒られちゃう」
「でも、知らない人の家にいきなり…」
「大丈夫だよゾルタン、今日はハロウィンだもん、許してくれるさ」
そう言うと、狼男の少年は安心させようと内気な吸血鬼の少年の手を取り、繋いだ。吸血鬼の少年は驚き、狼男の少年の方を見た。
「それに、俺も一緒だから」
狼男の少年は吸血鬼の少年に向かってやんわり微笑んだ。吸血鬼の少年は彼の顔を見て安心したのか、頷いてその手を握り返した。狼男の少年がドアチャイムに手を伸ばす。ピンポン、となって数秒その扉が開く。二人は息を揃え、大きな声で合言葉を言った。
『とりっく おあ とりーと!』
グリニッジ標準時10月31日。今日はハロウィン。子供達がお化けや悪魔に扮し、「ごちそうくれなきゃ、いたずらするぞ」と言いながら町中を練り歩く祭りの日だ。しかし、現在宇宙を航行しているこのクラップ級巡洋艦ダマスカスには関係の無い話だった。かつてのホワイトベースやアーガマの様にもし戦災孤児が乗船していたら、状況は変わっていたかもしれないが、今このダマスカスには戦災孤児など一人も居なかった。
今日も過酷な任務を終え、ヨナは自室に戻った。自室に戻るとオッドアイの青年が居た。
「よう、おかえり、ヨナちゃん」
帰ってくるなりこちらをニヤリと見つめる青年―ゾルタン・アッカネン―。当初不死鳥狩り事件で死んだと思われていた彼だったが、どういう訳か、奇跡的に一命を取り留め、無重力空間を漂っているところをダマスカスに収容された。当初は捕虜として扱うつもりだったが、後にゾルタンがジオン共和国に見放されてしまった事から、そのままヨナの傍で保護観察下に置かれていた。
ゾルタンはどうやらシャワーを浴びようとしていた様で、タンクトップ姿だった。ヨナを見ながらゾルタンはニヤリと笑う。
「シャワー浴びるから、お前、覗くなよ?」
「はいはい」
ヨナが苦笑しながら返すと、バスルームの扉が閉まった。先にシャワールームを取られてしまったヨナは仕方なく上着を脱ぎ、クローゼットに仕舞った。そのままベッドに腰掛けて暫く休んでいると、突然ドアチャイムが鳴り響いた。
「こんな時間に…? 一体誰なんだ…?」
ヨナは不思議そうにタッチパネルを操作し、ドアを解錠した。扉を開けると、子供の声が耳に飛び込んでくる。
『とりっく おあ とりーと!』
「…へ?」
突然耳に入ってきた思わぬ声と台詞、にヨナの口から間抜けた声が漏れる。扉を開けた先、目に映った突然の訪問者の姿にヨナは目を瞬きさせた。同時に、今目の前で起きている信じられない現象にヨナの思考が停止する。そこに居たのは、このダマスカスに居るはずのない2人の子供。先述の通り、ダマスカスには子供は乗船していない。よって、本来ダマスカスに子供が居ること自体驚くべき事なのだが、ヨナが驚いていたのはそれだけではなかった。目の前に居る二人の子供、一人は、あの浜辺で見た、ゾルタンと同じ髪色をしたショートボブヘアの少年と、もう一人はなんと幼少時代の自分が立っていたのだ。二人とも仮装しており、ゾルタンに似た少年は吸血鬼の格好を、幼少時代のヨナは狼男の格好をしていた。
「と、とりっく おあ とりーと!」
「お菓子くれないといたずらするぞ!」
二人はジャックオーランタンのバケツを前に出し、再度ヨナに向かって叫ぶ。
「な、なんで…?」
思わず戸惑いの声が上がってしまう。宇宙世紀において今まで数々の『奇跡』と呼ばれる怪奇現象は起こってはいたが、幼少の自分が自分を訪ねてくるなどという現象はどこを探してもヨナは聞いたことが無かった。
「お兄さん?大丈夫?」
放心しているのが気になったのか、幼少のヨナがヨナに話しかける。
「あ、ああ、ごめんね、大丈夫」
ヨナは慌てて返事をし、屈んで子供たちと目線を合わせた。
「今日、ハロウィンなんだ…俺たち、いろんな人の家にお菓子貰いに行ってるんだ」
「お兄さん、何かお菓子持ってない?」
おずおずと聞いてくる吸血鬼の少年にヨナは焦ってズボンのポケットの中を探った。しかし、ヨナのズボンのポケットには眠気覚まし用のミント味のタブレットキャンディしか入っていなかった。ヨナはどこかにお菓子が無かったか思い出そうとするが、一向にみつからない。
「お兄さん、お菓子、ないの?」
「え、あ、ちょ、ちょっと待って」
急かしてくる幼少のヨナの声を聞いて、ヨナがどうしようかと悩んでいたその時、ヨナの後ろからバスルームの扉が開く音がした。後ろに目線を向けると、シャワーを浴び終わったゾルタンがそこに立っていた。ヨナは賺さずゾルタンに助け船を出した。
「ぞ、ゾルタン…」
「ん? どうした、ヨナちゃん?」
ゾルタンがヨナに近づくと、子供たちが視界に入り、オッドアイの目を大きく見開く。見間違いではないかと思わずゾルタンは目を擦った。目の前に吸血鬼の仮装をした幼少時代の自分が居るのだから、当然の反応であろう。同時にもう一人のヨナに似た狼男姿の少年が目に入る。
「ゾルタン…」
「おいおい、なんだ、夢か? 小さい頃の俺様とお前に似た子供が居るように見えるんだが」
「夢じゃないよ、ゾルタン、あれ、俺と君だよ」
ゾルタンの問いかけで、吸血鬼の少年がやはりゾルタンだったと分かり、ヨナは内心可愛いと思っていたが、今はそんなことを考えて呆けてる場合じゃないとすぐに頭を切り替える。
「ヨナちゃん、これ一体どういうことだ?」
一体何が起こったのか見当もつかないと言った面持ちでゾルタンはヨナに尋ねるが、ヨナも首を振るだけだった。
「分からないよ、俺が聞きたいぐらいだ」
「つうか、なんでこいつら仮装してるんだ?」
「今日、10月31日だから…」
『10月31日』という言葉に最初ゾルタンの頭に疑問符が浮かんでいたが、すぐに「嗚呼、ハロウィンか」と呟いた。
「ゾルタン、お菓子持ってない?俺、何も持ってなくて…」
「菓子だぁ? お前なんで持ってないんだよ」
「だって、普段あんまり食べないから…」
探す素振りを見せるヨナと、何かなかったかと眉間に皺を寄せながら考える素振りを見せるゾルタン。渡すお菓子が無くて困っている様子を見せる二人を見て察したのか、幼少のゾルタンが幼少のヨナに話しかける。
「よ、ヨナ…やっぱりやめとこう?…お兄さんたち、困ってるよ…」
「う…でも、ゾルタン…」
小さい二人が不安そうに話をしているを見て暫く、何か閃いた顔をしてゾルタンが声をかける。
「おいガキ共、ちょい待ち」
そう言って急いで部屋に戻り何やらゴソゴソとしだすゾルタン。ヨナはそれを不思議そうに見ていた。
「ゾルタン…?」
暫くしてゾルタンが部屋の奥から戻ってきて、子供たちの前に立つ。
「お前ら、そのバケツ、出せ」
ゾルタンに促され、子供たちは不安ながらも手に持っていたジャックオーランタンの形をしたバケツを前に差し出した。
「ほらよ」
すると、ゾルタンの両手からクッキーとロリポップがゴトゴトと音を立ててバケツに入っていった。その光景を見て、子供たちとヨナは驚いた。ゾルタンが持ってきたそのクッキーとロリポップは、ゾルタンが自分のおやつとして密かに隠し持っていたお菓子だった。
「これでいいだろ?」
ゾルタンは屈んで子供たちにニヤリと笑った。子供たちはその問いかけにハッとなり、目を輝かせた。一方でヨナは呆気に取られていた。
「うん!」
「ありがとう、お兄さん」
そう言うと幼少の二人は二人にお礼のハグをした。
「ありがとうお兄さんたち」
「気を付けて帰るんだよ」
「寝る前にちゃんと歯磨けよ、俺様との約束だぜ?」
「うん、ありがとう! ハッピーハロウィン!」
「ハッピーハロウィン」
子供たちは手を繋ぎながら帰ろうと二人に背中を見せる。ヨナとゾルタンはそれを微笑みながら手を振り、見送った。
子供達が去った後、二人はベッドに腰を下ろした。
「優しいんだね、ゾルタン、君がそんなことするなんて」
「俺様を何だと思ってんだ?俺様にだって人の情ぐらいあるんだぜ?」
その返答に、ヨナは心なしかゾルタンが不死鳥狩り作戦の時より穏やかになったような気がした。国に見捨てられ自由の身となったことにより、『ジオン共和国』や『赤い彗星計画』などといったゾルタンを縛っていた枷が解けたせいなのかもしれない。無意識なゾルタンの心境の変化の表れに、ヨナは思わず口を歪ませた。
「んだよ? ニヤニヤしやがって…」
「いや、なんでも」
むっと不満げに首を傾げるゾルタンにヨナは出かかっていた言葉を出すのを止め、ただ微笑みだけで返した。
「なんだったんだろうね、あれ…」
「さあな、ニュータイプにも分かんねえなら、カミサマって奴のハロウィンに因んだ悪戯じゃねえの?」
天を仰ぎ見るゾルタンをヨナは微笑みながら凝視した。
「ゾルタンって子供の時と性格全然違うんだね」
「そういうお前は大して変わんねぇのな…」
二人はお互いを見合い、そして笑った。しかし、暫くして、ヨナの顔が段々と暗くなる。
「もし、あんな悲惨な事が起こらなくて、俺たちが普通に出会えてたとしたら、ああなる可能性もあったかもしれない」
「……さあな…」
一体、彼らの人生はどの時点で狂ってしまったのか。ゾルタンとヨナ、それぞれ経緯は違うにしろ、お互いオールドタイプに振り回された人生を生きてきた。そんな二人が戦場で相まみえてしまったのは運命の悪戯だったのかもしれない。これほどまでに最悪な出会い方があっただろうか。
不死鳥狩り事件の後、ダマスカスに収容されたゾルタンの傍にずっと居たのは、やはりヨナだった。ニュータイプとして覚醒し、死闘の中、生存者として唯一ゾルタン・アッカネンという人物に触れ、ゾルタン・アッカネンという人物を深く知った事で、どうしようもなくヨナは彼を手放したくなくなった。ゾルタンが医務室で目を覚ました時、ヨナは「もう解放されたんだ、ゾルタン…俺も君も…もう良いんだ」と言って、ゾルタンを優しく抱きしめた。初めてかけられた許容の言葉に、ゾルタンの右目からは大粒の温かい涙が零れた。表面上、ヨナの保護管理下に置かれている立場ではあるが、ゾルタンもまた、自分の事を理解し受け入れてくれたヨナ・バシュタという人物から離れる事などもう出来なくなっていた。
はぐらかす言葉をヨナに返すも、不死鳥狩りの時のお互いの死闘やかつてのブリティッシュ作戦など様々な事を思い出し、ゾルタンは少しばかり顔を歪ませた。ゾルタンのそんな悲痛に歪んだ顔が気になったのか、ヨナの手がシーツの上でゾルタンの手を辿り、掴んだ。強く繋がれた手からはヨナの熱が広がり、ゾルタンの歪んでいた顔が和らぐ。
「俺、これからも、ずっとゾルタンと一緒に居たい」
「お前よくそんなこっぱずかしい事平気で言えるな!」
「ゾルタンにしか言えないよ」
微笑みかけてくるヨナに、ゾルタンは照れながら頭を抱えた。ヨナと話すとゾルタンはいつもそうだ。いつも調子が狂ってしまう。ゾルタンは溜息を一つ付いた。
「まぁ、付き合ってやらん事もないがな」
ゾルタンは照れながらそっぽを向きながらも、握られていたヨナの手を握り返した。そんな彼があまりにも愛おしく、ヨナは思わず繋いでいた手を引き、ゾルタンを抱き締めた。
「っ!お前!調子に乗りやがって!」
「ねぇ、ゾルタン」
「あん?」
そのまま唇をゾルタンの耳元に近づけ、囁いた。
「Trick or treat」
「……っ」
耳元で囁かれたヨナの声にゾルタンは思わず震えた。同時にほんのり赤かったゾルタンの頬が更に赤くなる。
「さっきのでお菓子、最後だったんでしょ?」
同じく頬を赤らめ満足げに微笑むヨナに、しまったと言わんばかりにゾルタンは頭を抱えた。どうやら密かに隠していたお菓子の存在を知っていたらしく、子供たちに渡したのが全部だったということも分かったらしい。
「…猪口才な」
「その気にさせるゾルタンが悪い」
そう言ってヨナはゾルタンの唇を奪い、そのままゾルタンの身体をベッドに縫い付けた。
(Happy Halloween!)
【謝罪会見】
久しぶりのヨナゾルです…アアアアアア相変わらず駄文ですスミマセン゚・:*†┏┛ 墓 ┗┓†*:・゚
しかもなんだこの解釈違い!!!!酷い、ひどすぎる!!!(吐血)
今回も誠に申し訳ございませんでした゚・:*†┏┛ 墓 ┗┓†*:・
今回はただただ幼少の時の二人と大人になった二人をわちゃわちゃさせたかっただけです。
幸せそうなヨナゾルが見たいんじゃぼかぁ!!!!!
そして今回も今回もイイ所で終わってスミマセン(吐血)
今回も語彙力という名のフェネクスが飛んでいった為に拙い文になってしまい本当にスミマセン…
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!