イラストを魅せる。護る。究極のイラストSNS。

GALLERIA[ギャレリア]は創作活動を支援する豊富な機能を揃えた創作SNSです。

  • 1 / 1
    しおり
    1 / 1
    しおり
    Swan Lake【白鳥の湖】ーIntroductionー【attention】
    本作は2020年11月29日 00:11pixiv掲載作品となります。
    2020年12月12日リリース『Fairy Tales』収録作品サンプルです。
    本編Ep.7寄りの話。二重人格になってしまったリディの話。
    少しだけサイコホラーな話です。リディバナですが、バナージが積極的な傾向にあります。
    また、流血や首を絞める表現がありますので苦手な方はご注意下さい。



     コロニーレーザーを防ぎ、インダストリアル7『メガラニカ』を守り切ったバナージ・リンクスとリディ・マーセナスは一緒にネェル・アーガマに帰投した。
     モビルスーツデッキにユニコーンガンダムとバンシィ・ノルンが収容されると、リディはヘルメットを取り、真っ先にコックピットハッチを開け、ユニコーンガンダムのコックピット部に向かう。ユニコーンガンダムのコックピットハッチが開かれる瞬間、滑り込むように入り、そして、叫んだ。
    「バナージ!」
    「リディさん!」
    まだ操縦席に座ってヘルメットを取っていたバナージを構わず抱きしめた。その手は震えていた。
    「良かった…戻ってきてくれて…本当に…」
    二人しかいないユニコーンガンダムのコックピット内にリディの涙の粒が広がる。
    「リディさん…」
    むせび泣くリディの背中にバナージは腕を回した。
    「俺も…リディさんが居なかったら、帰ってこれませんでした…」
    お互い、生きて再会できた幸せを噛みしめながら、数分間ひしと抱き締め合った。やがてお互い離れると、リディはバナージの手を引き、導くようにコックピットの外へ連れ出した。
    「バナージ!」
     コックピットの外へ出ると、ここまで急いできたのだろう、タクヤやミコットらを始めとするネェル・アーガマのクルーたちがキャットウォークからこちらに向かってくる。
    「おかえり、バナージ!」
    「おかえり、リディ少尉!」
     二人に対して微笑みを見せる者。涙を見せる者。皆、バナージとリディの帰還を温かく迎え入れた。そんな中、聞き慣れた大声がリディの耳を劈く。
    「リディ少尉!」
    リディが目を向けると、そこにはミヒロが居た。
    「馬鹿‼」
    対面して早々、罵声と共にミヒロはリディの胸に向かって自分の拳をぶつけた。
    「痛っ⁉ いきなり何するんだ‼」
    「それはこっちの台詞‼」
    よく見ると、ミヒロの目からは涙が零れていた。普段女性の涙を見慣れていないリディは思わず固まった。
    「なんで何も言ってくれなかったの‼ あの時、私が貴方の撃墜報告を聞いてどれだけ悲しんだか!」
     ポロポロと涙を零しながら、何度も何度もリディの胸板に拳をぶつける。彼女に何も言わず黙ってミネバと地球に降下したあの日を思い出し、悪いことをしてしまった、とリディはただ何もせずに黙ってミヒロの拳を受けた。その拳が段々と力尽き、やがて止める。
    「本当に、生きててよかった…」
     肩を震わせながら縋るミヒロにリディは眉間に皺を寄せながら、ミヒロの頭を撫で静かに謝った。
    「ごめん」
     その後に付いて出てきた言葉を口にする。
    「心配してくれて、ありがとう」
     その言葉を聞いてミヒロは涙を拭き、リディをじっと見ながら微笑んだ。
    「おかえりなさい、リディ少尉」
     リディもそれに釣られて微笑み返した。
    「ああ、ただいま、ミヒロ少尉」
     二人のやり取りを他のクルーたちは穏やかに見守っていた。一方で、バナージも二人を見守っていたが、僅かに複雑な表情をしていた。二人の再会を喜ぶ半面、何とも言えない焦燥を感じていた。
    (なんだろう…なんか、モヤモヤする。)
     理由の分からない焦燥を感じるバナージの気など露も知らず、後ろからタクヤが肩を叩いた。
    「ほら、バナージ! 疲れただろ? 早く部屋戻ってゆっくり休めよ」
    「そうだ、あんな激戦だったんだ。後は俺たちに任せて、二人ともゆっくり休んでくれ」
     他のクルーにも促され、背中を押される。バナージはリディの方を見た。リディもミヒロに背中を押される。
    「リディさん、行きましょう」
    「ああ、そうだ…な…」
    その時だった。突然、リディの身体がバナージに凭れ掛かってきた。
    「リディさん?」
     突然の重みにバナージは驚いて、思わずリディの方を向いた。すると、リディは顔面を蒼白にして膝から崩れ落ちた。
    「リディさん⁉」
     咄嗟にバナージはリディを支えた。もしこの場が重力下であれば、勢いよく倒れこみ、最悪の場合、頭を強く打って死ぬ可能性があったかもしれない。しかし、この場は無重力が支配する宙、その心配は無かった。
    「リディ少尉‼」
    「少尉さん‼」
    いきなり倒れたリディにミヒロを始めネェル・アーガマのクルーは驚愕した。バナージは必死にリディに呼びかけた。
    「リディさん‼ しっかりしてください‼ リディさん‼」
     呼びかけながら、リディを揺するバナージ。しかし、リディの口から一言も返事はなかった。
    「彼を早く医務室に‼」」
     ミヒロが叫ぶと皆が医務室への道を開ける。それと同時にモビルスーツデッキに顔を出していたハサンも急いで医務室に向かう。
    「俺が医務室まで連れていきます」
    リディの腕を自分の首に回し、腰を掴み、バナージはハサンの後に続き急いで医務室に向かった。



    数時間後、医務室のベッドで規則的な呼吸で眠るリディを見て、バナージはほっと胸を撫で下ろした。
    「やっと様態が安定したよ」
     ハサンが聴診器を耳から外しながら言う。
    「命には別条はないが…しかし、はっきりとした原因が分からない」
     あれだけの激戦を繰り広げていたものの、リディの身体にはどこにも外傷はなかった。脳にも目立った損傷は見当たらなかった。ハサンは一通りの診察を終え、診察机に座り、カルテを捲る。
    「もしかしたら、リディ少尉が乗っていた機体に何か問題があるのかもしれない」
     バンシィ・ノルン。ユニコーンガンダムの同型機。マリーダが降りた後、当時非ニュータイプであったリディの為に改修されたサイコマシン。マシンに飲まれたことで、憎悪や殺意を拾い上げ増幅させるNT―Dの影響を受けていても可笑しくはなかった。
    「奇跡のような事を成しえた後でもある。身体に負荷がかかっていても可笑しくはないが…君は大丈夫かね?」
    「はい、俺は大丈夫です」
    「万が一、何か不調があったら、すぐに言いなさい」
    そう言うとハサンは診察机から立ち上がり、医務室を出ようとする。
    「オットー艦長に知らせてくるから、その間看ていてもらえるかな?」
    「分かりました」
     バナージはハサンの申し出を快く受け入れた。その返事を聞いてハサンは医務室を出ていた。
    リディとバナージ、二人きりになった医務室には、電子音となったリディの心音が響く。ベッドサイドモニタにはリディの脈拍を規則的な波形が映し出している。バナージはベッドに近づき、シーツから出ているリディの白い手を取り、両手で包み込んだ。
    あの時、インダストリアル7をコロニーレーザーから二人で護った際、もしかしたら後ろで支えていてくれたリディを護り切れていなかったのかもしれない。そんな疑念と後悔の念がバナージの思考を支配した。
    「リディさん、ごめんなさい…」
     バナージの震える声が医務室内に木霊した。



    仄暗い意識の中、リディは瞼をゆっくり開けた。そこには常闇が広がっていた。四方八方全てが闇に支配された空間。そんな中でぽつりとリディは裸体で立っていた。
    「何だ、ここは…?」
    リディは辺りを見渡すが、一面闇しか見えない。
    「なんで俺、こんな所に…?」
    考えていると、突如背後からプレッシャーを感じた。突然現れたプレッシャーにリディは思わず振り向く。黒い地表からズルリズルリと泥の様な物が這い上がり、人の形をした黒い物体が形成される。人の形を留めると、それはゆっくりとリディに近づいてくる。
    リディはその物体に底知れぬ恐怖を感じた。得体の知れない生物に太刀打ちする手段が今の裸の自分にはないと判断し、即座に駆けだした。逃げ出したリディに気づいたのか、黒い物体は先程より加速して追いかけてくる。リディも懸命に走るが、黒い物体の方が早く、距離をどんどん詰められる。するといきなりリディが踏んでいた地面が泥濘る。
    「な、何だ⁉」
    リディは泥濘んだ地面に足を取られてしまった。まるで底なし沼の様に黒い地面はリディの身体を徐々に吸い込んでいく。
    「糞‼」
    リディは必死に藻掻いたが、藻掻けば藻掻くほど地面に引き釣り込まれる。その間にも後ろの黒い物体はどんどん距離を縮めてくる。そしてとうとう、リディの目前に黒い物体が追いついた。その頃には、リディの身体はもう腰部分まで飲み込まれていた。黒い物体はリディの顔に自分の顔を近づける。
    「誰だ、何なんだ、お前は⁉」
     リディは不気味なそれに叫んだ。
    「『誰だ』だと?」
    黒い物体がリディの首を掴む。同時に、黒い物体の頭部からボトボトと泥が零れ落ち、人の顔が現れる。その顔を見て、リディは驚愕した。
    「俺はお前だ」
     そう言い捨てた瞬間、急速に黒い地面がリディの身体を飲み込んでいく。
    「ぐっ…や、やめ……」
     そしてとうとう、伸ばした右手を最後にトプンと音を立ててリディは闇に飲み込まれてしまった。
     残された黒い物体、今や『リディ・マーセナス』となったそれは、リディが飲み込まれていった地面を見下ろし不敵に笑い、やがて同じ闇に溶けていった。



     意識が突然急浮上する。リディは医務室のベッドの上で飛び起きた。まるで水の中から浮上したかのように大きく呼吸する。ゆっくりと上体を起こし、手で額を押さえる。額からは汗が流れていた。
    「夢…?」
     リディは先程見たものを思い出す。ただの『夢』だったというのに、『夢』という実感がまるで湧かない。身体中に自分を飲み込んだあの泥のような闇の感触を覚えていた。謎の人型の黒い物体。自分と同じ顔を持ち、自分だと言うあの生物。あれは一体何だったのだろうか。息を整えつつ思案していると、間仕切りのカーテンが開かれた。
    「リディさん⁉」
     開かれた間仕切りカーテンの先には、亜麻色の髪の少年が立っていた。
    「バナージ…」
    此方を見るや否や、バナージは泣き出しそうな顔でリディに抱き着いた。思わぬバナージの行動にリディは驚いた。
    「よかった」
     抱きしめられた力は強かった。
    「このままリディさんが目を覚まさなかったら俺…俺…」
     抱き締められているバナージの身体から震えが伝う。バナージに心配をかけてしまったことに対してリディは後ろめたさを感じた。
    「悪い…ごめん…」
     抱きつくバナージを何とかして落ち着かせようと、優しく後頭部を撫でながら、壊れ物に触るかの如くやんわりと抱きしめ返した。




    To be continued...




    収録本ご購入はこちらからお願い致します。


    K8ie_shipper Link Message Mute
    2022/11/20 16:11:40

    Swan Lake【白鳥の湖】ーIntroductionー

    【2020年11月29日 00:11pixiv掲載作品】
    リディバナです。
    2020年12月12日リリースのリディバナパラレル短編集『Fairy Tales』収録作品サンプルです。
    #ガンダムUC #腐向け #リディ・マーセナス #バナージ・リンクス #リディバナ

    more...
    Love ステキと思ったらハートを送ろう!ログイン不要です。ログインするとハートをカスタマイズできます。
    200 reply
    転載
    NG
    クレジット非表示
    NG
    商用利用
    NG
    改変
    NG
    ライセンス改変
    NG
    保存閲覧
    NG
    URLの共有
    OK
    模写・トレース
    NG
  • CONNECT この作品とコネクトしている作品