Rising Sun【attention】
本作品は2021年1月15日 00:00pixiv掲載作品となります。
『獅子の帰還』後、ひょんなことからバナージがマーセナス邸に居候してる設定を取っています。
心持としては『Summer Vacation』『Coffee&Hot chocolate』の延長線となります。
上記2作品を読んでいなくても楽しめますが、より一層楽しみたい方は先に前作を読む事をお薦めします。
相変わらず設定メチャクチャです。なんでも許せる方向けとなります。
それでも大丈夫な方はどうぞ。
本作品のリブート版を2021年7月2日リリース『Journey in the Earth』収録予定です。【2021年6月20日追記】
一月一日午前三時。新たな年の始まりに未だ町中の人々が花火を上げ歓喜している中、リディは眠気眼のバナージを連れて、エレカである場所を目指していた。
「こんな時間にどこ行くんですか?」
早々にベッドに潜り眠っていた所を無理やり起こされ、少々ご機嫌斜めなバナージは頬を膨らませた。
「悪い。どうしてもお前に見せたいものがあってさ」
それを半ば申し訳なそうに答えつつ運転するリディは、右手でいじけているバナージの頭をポンポンと撫でた。
「寝心地は保証できないけど、目的地に着くまで寝てていいから」
未だいじけるバナージに苦笑いしながら、ドリンクホルダーに刺していたステンレスボトルを取り、入っているコーヒーを口にした。
「リディさんは眠くないんですか?」
湯気立つコーヒーを飲むリディの姿を見てバナージは不思議に思って思わず問いかけた。
「ああ、まぁ。ネェル・アーガマに居た時なんてスクランブルで深夜に起こされることもざらだったし。もう慣れてるよ」
バナージは運転するリディの横顔をじっと見た。顔は正面を見ているが、笑って返す彼に、大人の余裕というやつなのだろうか、そういったものを感じ取ってなんだか悔しくなってきてしまって、先程までの眠気は吹き飛んでしまった。
「で、何処に行くんですか?」
ぶっきらぼうに聞くと、リディはステンレスボトルをドリンクホルダーに戻し、ドアポケットに入れていたミント味のチューイングガムを口に含み、ニヤニヤと笑った。その笑みはさながら何か悪巧みを考える少年の様で。
「行ってからのお楽しみさ」
そんな青年が可愛くも愛おしいと内心思いながら、バナージはもったいぶる彼をもどかしく感じ、彼が用意したステンレスボトルの甘いココアを唯々不貞腐れながら口に流し込むのだった。
二人を乗せたエレカは五十マイル程走り、やがて木々生い茂る山道に差し掛かる。カーブの多い坂道を上っていくとやがて頂上に到達する。リディは頂上に設けられていた駐車場に車を停め、エンジンを切った。
「着いたぞ」
リディがドアを開けると温かかった車内に冷気が入り込んだ。「寒っ」と震えながらそのまま車を降りる彼を見て、バナージもドアを開け、車を降りた。
先程バナージが見た車の温度計はマイナス五度を表示していた。年末に来た冬将軍のおかげで今朝は一層寒かった。しかし、彼にはちっとも寒くなかった。コロニー育ちの彼が風邪をひかぬようにとリディが頭の先から足の爪先まで防寒着を拵えてくれたおかげだった。
「バナージ、こっちだ」
リディは後部座席に置いてあった大きめのバックパックを背中に背負い、バナージの手を取って歩き出す。それを見てバナージはトリントンでシャンブロを止めようとした時デルタプラスのマニピュレータを掴んだ時の事を思い出す。あの時、内心彼の手を掴めたことが酷く嬉しかった。
「この辺で良いかな」
目に映るのは眼下に広がる海と街。リディに手を引かれ連れてこられた場所は、海の見える丘だった。駐車場が設けられている程だから、普段はきっと多くの人がこの丘を訪れるのだろう。しかし、今朝は彼らの他に人の姿はなかった。
リディは腕時計を見て時間を確認した。時計の針はもうすぐ七時を指し示そうとしていた。
「もうすぐだ」
何かを待っている彼をバナージが訝しげに見ていると、視線に気づいたのか、恥ずかしそうに口を開く。
「ほら、俺じゃなくて海の方見てろよ。もうすぐ見えてくるから」
リディに促されるように、海の向こうの地平線に目線を移した。数分後、空が夜の青から段々と紫色、橙と変化していく。
「わあ…」
それは、コロニーでは見ることが到底出来ない自然現象。地平線の向こうから橙の眩しい光と共に丸い輪郭を覗かせた。
「綺麗…」
思わず感嘆の声が漏れてしまう。宇宙ではあんなに燃え盛っている球体なのに、地球ではそれがこれほどまでに美しい。地平線から姿を覗かせた太陽が先程まで暗かった空、海、街を次々に明るく照らしていく。まるで闇に支配され色を失った世界がこの太陽の光で色を取り戻していくかの様に。
「ここから見える日の出が綺麗でさ。お前にどうしても見せたかったんだ」
白い息を吐きながらリディは笑ってそう漏らした。バナージは太陽の方に向けていた顔を少しばかり横に向けた。日の出をじっと見ているリディの横顔。太陽に照らされた彼のブロンドがキラキラと輝いていた。その姿がなんだかこのまま日の光にかき消されて自分の前から姿を消してしまうんじゃないかと途端に不安に駆られ、バナージは思わず右手で彼の左手を掴んでしまった。
「行かないで」
突然手を掴まれ震える声で囁くバナージに、リディは首を横に向けた。
「バナージ?」
先程と何か違和感を覚えバナージの顔を見ると、日の光で輝く琥珀の目からは涙が滴り落ちていた。
「な⁉ お、おい、何で泣いて…⁉ どうしたんだ⁉」
バナージの突然の涙にリディはぎょっとして、狼狽した。一体彼の中で何が起こったのか。真のニュータイプだから何か感じ取ったのか。あれこれ頭の中で原因を探るも、これだと思われる要因が見つからない。
「…もしかして初日の出見に行くの、嫌だったか?」
やっぱり深夜に無理やり起こしてこんな所に連れてきたのがいけなかったのか。段々と後悔の念に駆られ、まるで元気を失くした猫の様に眉をハの字に寄せ見つめてくるリディ。そんな彼にバナージは慌てて直ぐに頭を振った。
「そうじゃないんです」
そう言うと、バナージは空いていた左手でリディの右手を掴み、リディの顔を真っ直ぐ凝視した。
「リディさん…これからもずっと、俺の傍に居て下さい。俺の前から、居なくならないで」
今にも消え入りそうな声でポロポロと次から次に琥珀色の目から涙を零すバナージ。そんな彼に「馬鹿」とリディの緩んだ口から零れ落ちた。リディは掴まれていたバナージの右手を自分の方に勢いよく引き寄せ、彼を自分の胸の中に収めた。
「当たり前だろ? お前の方がどっか行っちまいそうなのに。こっちはお前繋ぎ留めるのに必死で追いかけてるのに、今更お前の前から消える訳無いだろ? こんなにもお前に惚れてるって言うのにさ」
もう何処にも行かせないとでも言わんが如く、腕に力を込めきつく抱き締める。それに対して、決して離さないでと言わんが如く、バナージも腕に力を込める。先程まで冷気で匂いなど全く分からなかったのに、今ではリディの匂いで肺が一杯だった。それがバナージには酷く幸せだった。
「お前を愛してる、これまでも、これからも」
バナージは頬を染めた。そうさせたのは朝の寒さからではなくまた別の要因。
「俺も…リディさんが好きです。これまでも、これからも。だから、どうか俺を離さないで下さい」
リディは抱き締める腕の力を緩め、バナージの額に自分の額を付けた。バナージの目にリディの碧眼が映る。
「お前こそ。俺の前から勝手に消えてくれるな」
朝日を浴びながら温かく微笑むリディに、バナージも釣られて笑った。琥珀の瞳から一粒のダイヤモンドが零しながら。
この世界から名目上消えてしまった自分。此処に在るのは名前を失った抜け殻も同然。それでも、彼の前では本来の自分『バナージ・リンクス』として居られる。彼はいつだってありのままの自分を受け入れて、温かく包み込んでくれる。まるでこの太陽の様に。この人の前ではこれからもありのままの自分で在り続けたいと、バナージはリディの腕の中で密かに願った。
地平線から昇った朝日は二人を延々と温かく照らし続けた。
(wish you have a happy new year)
【謝罪会見】
明けましておめでとうございます。(遅)
2021年一発目のリディバナ投稿になります。
正直、今書いてるリディバナ原稿に魔が差した(吐血)
ってギャアアアアア!!!!!新年早々なんなのこれはこの駄作はァ!!!
いや、なんだか意味の分からない話になってしまったアッハハハハハ…
今回も誠に申し訳ございませんでしたアアアアアア゚・:*†┏┛墓 ┗┓†*:・゚
今回の話はぶっちゃけると半分実体験です。実際に元旦浜名湖までRTAしてきました。(笑)
実際に浜名湖RTAして初めて初日の出を見た時に出てきた構想が今回の作品でした。
この話の後、リディさんは背負ってたバックパックからキャンプ道具取り出してホットサンドとコーヒーでバナージくんと優勝します。(謎情報)
今回もかなり拙く読みにくい意味不明な文章で本当にスミマセン…
相変わらず語彙力はまたフェネクスしました゚・:*†┏┛ 墓 ┗┓†*:・゚
ここまで読んで下さり本当にありがとうございました!!!