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    執事、ウサギになる「バルバトスさんがウサギになったって本当ですか!?」
     ディアボロからのチャットを受け魔王城の広間に駆け込むとそこには一匹のウサギを抱いて困った顔をしている次期魔王がいた。色は灰色で種類は人間界で言うところのネザーランドドワーフだろうか。とても愛らしいウサギだが周りを警戒しているのか鼻をヒクヒクと動かしている。
    「もしかしてそのウサギが……」
    「そう、バルバトスだ。書庫に禁書が紛れていたようでね。資料を取ってきてもらったときに開いてしまったようだ。時間が経てばそのうち元に戻るはずなんだが、ここは広すぎるしリトルDたちもいるからね。嘆きの館で預かってもらえるかい」
     是非預かりたいけどルシファーの許可なしにそんなことはできない。
    「ちょっと聞いてみます」と素早くチャットを打ち事情を説明する。どうやら先に話が行っていたようで許可は意外なほどあっさりと下りた。
     
     バルバトスさんは身も心もウサギになっているのか、体だけウサギになっているのかいまいち判断がつかなかった。こちらの言葉がわかっているような動きをしたかと思うと、何か言っても無視したりする。ただ、誰に懐いたら安全かは判断できているようで、一番懐くのが私、次にルシファーと続き、ベールにだけは絶対近付かなかった。
     
    「あー! 餌はぼくがあげるんだってば!」
    「いーや、俺様がやる」
    「うまいか? バルバトス」
    「サタン、俺にもくれ」
    「バルバトスの分だからダメだよベール」
    「お前たち、餌だけでなくトイレの掃除もしろ」
    「餌の後のブラッシングはぼく担当な」
     騒ぐ兄弟たちを横目にもしゃもしゃと野菜を食べているバルバトスさん。
     ウサギだから当然だけど完全にペットに対する扱いになっている。本人も満更ではなさそうだが。
     
     そんなにぎやかな生活が続くこと一週間。バルバトスさんはこの生活にだいぶ慣れたようで、今では寝るときには私の枕元で一緒に寝るようになった。部屋の電気を消し「おやすみなさい」と言うと、バルバトスさんはプウプウと鼻を鳴らして答えた。
     微かなウサギの寝息が聞こえるようになった頃、
    「…………もう一週間になるけど、いつ頃戻れるんでしょうか」
     当然返事はない。暗い部屋で独り言のように続ける。
    「そのうち戻れるって言ってたけど、悪魔の『そのうち』ってどれくらいなんでしょうね。一〇年? 二〇年? ウサギの寿命って五年、長くて一〇年くらいだそうです。それまでに戻れなかったら? 」
     聞かれていないのをいいことに不謹慎なことを言っている自覚はある。けど、不安から流れ始めた言葉は止まらない。
    「私、絶対に看取られる側だと思ってました。バルバトスさんのこと残して逝くのが嫌でいっそ距離置こうか悩んだこともあります。万が一にも看取る可能性があるなんて思ってもみませんでした。何がどうなろうと最後まで一緒にいますね」
     このままだと何を言い出すかわからない。もう寝てしまった方がいい、とばかりに布団を頭からかぶった。
    「……ごめんなさい。早く戻れるといいですね。おやすみなさい」
     
    「おはようございます」
     一週間ぶりに聞く声で飛び起きた。ベッドの横にはバルバトスさんが立っている。
    「戻ったんですか!?」
    「この一週間、お世話になりました」
     聞かれていないとはいえ、昨日あんなに語っておきながら即戻られるとちょっと恥ずかしいものがある。
    「ディアボロとルシファーに連絡しなきゃ。あと、朝食も一人分追加、って!」
    「その前に少々よろしいでしょうか」
    「どうしたんですか?」
     返事と同時に私をぎゅっと抱きしめて
    「ずっと触れられませんでしたので。それと」
     ベッドに乗る体重が二人分になった。
    「私も何がどうなろうと最後まで一緒にいたいと思っております」
     あー……聞かれてた……。
     そんな私の決まりの悪さを知る由もなくバルバトスさんの顔が近付く。
     
     一人分足りないままの朝食には二人揃って遅刻した。
    ==========
    「ウサギになってる間、心もウサギだったんですか?」
    「いえ、ウサギになっていたのは体だけです」
     道理でレヴィたちとゲームをしていると割り込んできたり、みんなで同時に餌をあげると私の手からしか食べなかったりしたわけだ。
    「そういえば、たまに話聞こえてない素振りしてましたよね?」
    「ウサギですから仕方ありませんね」
    「ルシファーへのイタズラの直前みたいな絶妙なタイミングで足ダンしてましたよね?」
    「ウサギですから仕方ありませんね」
     ウサギなら仕方ない。思い当たることは他にもあったけど見なかったことにしたのだった。
    8gb_obm Link Message Mute
    2022/08/22 21:25:03

    執事、ウサギになる

    バル留
    執事がウサギになるはなし
    ※執事ほぼ喋らない(ウサギだから)

    バニーの日のつもりで書いてたのにどうしてこうなった

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