昼下がりのお願い 一緒にお昼寝して?
MCに上目遣いでお願いされたのはそんな些細なことだった。
ディアボロの急なスケジュールの変更により、バルバトスの時間がぽっかりと空いたのはとある休日の午後のことだった。
時間が空いたといっても夕食の準備はいつも通りこなす必要があって、そこまでに出来ることといえば、と考えを巡らせ、いつかやろうと後回しにしていた雑事を片付けてしまおうと地下への階段を降りかけたところで踵を返すとMCの部屋へと向かった。
「あれ? どうしたの?」
ドアを開けたバルバトスに顔を向けたMCはベッドに寝転がって雑誌を読んでいた。
薄桃色の、どこか羊を思わせるルームウェア姿が可愛らしい。
「急に時間が空いてしまいまして」
一体何を言われるのだろうときょとんとした表情でMCが体を起こし、ベッドに座る。
「私と何かしたいことはございますか?」
「いいの?」
バルバトスが次期魔王の執事でいる以上、急な予定変更によりこれまで何度も流れたデートや食事に対しての埋め合わせが追い付くことは永遠にないだろう。かといって許しを請うつもりもない。バルバトスにとって常に優先するべきは次期魔王。それだけはどうやっても変えられないのだから。
それでも、MCの戸惑いながらも嬉しそうな様子を見るとこの提案をしてよかったと思えた。
「ええ。空いたと言っても数時間ですので、出来ることは限られますが、それでもよろしければ」
「え?」
失礼いたします、とベッドに入るのでなく上着を椅子にかけ、シャツとスラックスを脱ごうとボタンを外し始めたバルバトスを見て、MCが怪訝な顔をする。
「そのままですと皴になってしまいますから」
寝衣に着替えるのも大げさすぎる。かといって昼寝に適した服などバルバトスのワードローブには存在しない。
「あ、そ、そうだよね。この後もまだ仕事あるもんね」
今まで何度も見ているはずの姿に未だ顔を赤くして慌てるMCに悪戯心が湧き、耳元で囁く。
「あなたも、脱がせて差し上げた方がよろしいですか?」
数時間後には枕元に置いたD.D.D.のアラームがこの穏やかな時間の終わりを告げる。
MCは目こそ閉じているもののきっとまだ起きているが、彼女が静かにバルバトスの腕の中にいることを望んでいるのだから、それに応えるようにバルバトスも目を閉じた。