面食い(腐*ノクプロ) ねぇノクト、と柔らかくて可愛らしい声が俺を呼ぶ。
それにつられてレポートから目を離し、顔を上げる。
向かいには、両の手で顎を支えてにこにこと俺を見るプロンプトの姿があった。
声と同じくらい、柔らかくて可愛らしい表情をしている。
ふわりと香る制汗剤の匂いに少し胸ときめかせながら、なんだよとぶっきらぼう答える。
どうかこんなくだらない照れ隠しを許してほしい。
その願いを聞き届けてか、俺の答えにプロンプトはさらに笑みを深くして「えへへ」と声を出して笑う。
それが眩しくて目を細めると、ようやくプロンプトが口を開いた。
「ノクト、ほんとカッコいい」
心臓が跳ねる。
もう何度も聞いた言葉なのに、いまだに慣れることはない。
この言葉の後に続く言葉もわかってる。
薄い唇が弧を描く。
そうして言葉が紡がれる。
「俺、ノクトの顔だーい好き」
そんな若干、喜ぶに喜べない言葉が。
プロンプトと付き合い始めて1ヶ月が経った。
こいつはいいやつだ。心底いいやつだ。
気の遣い方も人の立て方もよく心得ている。
そしてそれらは多分、なにかから学んだものではなく天性の性格なのだと思う。もちろん、本人の努力もあるのだろうが。
そんなプロンプトだったけど、ひとつだけ腑に落ちない点がある。
俺のどこが好きかという問いに、間髪入れずに「顔」と答えるところだ。
いや、悪い気はしない。
顔の造形は確かに悪い方ではないと思うし、それを褒められるのは嫌ではない。
それでもなんというか、もう少しこう……なんかあるだろ、それ以外にも。
そう思って「他には」と問えば、しばらく唸り声とともに悩まれて、挙句「声?」と返す始末だ。
中身はなんかねーのかよ! と声を荒げなかった俺を褒めてほしい。
それでわかった。プロンプトはいわゆる面食いってやつだ。
確かに、よく芸能人を見ては「綺麗」「カッコいい」「可愛い」と誉め立てる。
それは男相手にも適用されるもので、俺はそのことに気づいた日にまだプロンプトを招いたことのない部屋から、イグニスとグラディオの写真をすべて撤去した。
あまり人の顔の美醜に興味はないが、あの二人が整った顔をしていることはわかる。
俺以上とは思わないけど、万一のことがあっても困るからな。