ごめんなさい、今日は門限破ります バルバトスに告白し、キスをする仲になってからしばらくたつ。大抵はRADが終わってから夕飯までの合間にバルバトスのベッドに並んで座ってお喋りしているときで、そこから先に進もうとする雰囲気を感じると私はいつも「ごめん、門限が」と胸を押し返していた。こんなことをしておきながら今更、と思われそうだけど、もしかしたら私にあわせて〝恋人らしく〟してくれているだけなのかもしれないという不安がずっとあった。
それが覆されたのはつい先日、RADの廊下でのこと。
「これ、ありがとう」
丁寧に洗って丹念にアイロンをかけたハンカチを返す。
「どういたしまして。お役に立てて何よりです」
「それじゃ、またあとでね」
そう言って少し歩いた後に振り向いた私が見たのは、いつも二人きりのとき私に向けるどこか柔らかさの漂う表情でハンカチを眺め、大切そうに懐に仕舞い込むバルバトスだった。
それを見て、もう少し、この関係を進めてみたいと思った。
並んでベッドに座り、他愛ない話をする。会話が途切れ、目が合い、唇が重なる。
いつもなら私がここで謝罪の言葉を口にして終わる。でも、今日は違う。舌先でのお伺いに、意を決して唇を少しだけ開いた。僅かな隙間だけど決して見逃されることはなく、たちまち侵入され、絡め取られ、吐息が熱を帯び始める。
背中に回した手を強く握り締めて、いつも汚れ一つなく滑らかに整えられているシャツにシワを刻む。意外だったのか、一瞬動きが止まった後、胸元に触れていた熱が増えた。触れている唇の端から声が零れ落ちる。
三半規管がくるりと転がされたことを伝え、下はシーツの海、上は重くなく、苦しくなく、それでいて確実に逃がすつもりのない圧。
逃げるつもりなんてない。
ごめんなさい、今日は門限破ります。