クッキングダーリン大きな手に包丁を握りしめ、ええと次はどれだったかなとキッチンを見渡す。その身長なら全部見えるだろ。ほら、左にあるってば。ああ見つけたね。あったあったと目を細めて目当ての食材を切り始める。とん、とん、と決して早くはないけれど丁寧で、彼の人柄そのもののようだ。君が作った方が手際がいいし美味しいと言われるし、実際そうなのだが、僕だってあなたの手料理を食べたいんだよ、ね?とこんな時だけ年下ぶってお願いすれば、ひとの良い彼が断れるはずもない。いじわるかな、僕。
「なに、笑ってるんだ…」
判るぞ、不器用だって思ってるんだ、その顔は、だなんて心外だ!料理してるあなたが素敵だからと素直に伝えればからかうんじゃない、だって。よーしもういい判った。
「わ」
後ろから近づき包丁を取り上げ、切りかけの野菜もそのままだ。同じ高さの首すじに軽く歯を立てて。
「先にあなたを食べたい」
「…ごはんは」
「あとで僕が作ってあげる」
うー、と小さく唸るのは照れてるのか悩んでるのか。
「お腹。空いてるんだけど」
ぐう、と鳴るのと同時だった。
その後どうした、だって?
僕が爆笑しすぎてヘソを曲げてしまったから、お詫びに料理でもベッドでも腕をふるわせてもらったとも!