黒曜、瑠璃、黄金立派な屋敷の重厚な寝室で。
上半身を差し込む陽光に晒し広い寝台に身を横たえたカーターは、自身の上で機嫌良くいるケントをその黒曜の瞳でじろりと睨んだ。
「どうしたね」
「いいや別に」
「これはこれは。我らがリーダーはご機嫌斜めか」
全く取り合うつもりがない声音に、降参とも取れる両腕を広げるゼスチュアで再び枕に後頭部を預けた。
ケント・ネルソンが何をしているかと言えば、黄金色の絵の具でカーター・ホールの肌に落書きをしているのだ。
他愛ない会話からエジプトと黄金の話になったのは覚えているが。
『ヘルメットのゴールド、悪くないと思うが』
『いいや、黄金は君にこそ似合う』
『ああ、まあ、確かに身につけてはいたが……』
だろう?となぜか得意げなケントに請われるがまま服を脱ぎ、おとなしくカンバス代わりになっているカーターは相当甘いと言えた。
「冷たくはないかね?」
「おかげさまで」
それはよかったと微笑むと、筆に絵の具を含ませ直し、またカーターの濃い色の肌に黄金を滑らせる。くすぐったさもあるが、それで動いて彼の作品?を台無しにしたくはない。青い目が真剣に自分を見ているのも、なかなかにいい眺めであったし。
しばらくののち、うむ、と満足そうな吐息が聞こえ、ケントが体を起こす。カーターは絵の具がもう少し乾くまでだめだと制せられる。
「何を描いたんだ?」
「乾いたら君の目で確かめるといい」