1st night
彼のチームに改めて受け入れてもらえた。それだけでハーリドの気分は高揚し、世界は、そろそろ日も暮れるというのに輝いて見えた。
「Sir?」
とりあえず風呂入ってから来い。シンプルな命令に足取りも軽く夕闇の中進む。
チームのメンバーや、この拠点に滞在する面子らの居住スペースとは離れた場所に彼の個室はあった。鍵はかかっておらず、だがハーリドは律儀に内側から鍵をかける。防犯には施錠が基本だからだ。
「……」
下心で鍵をかけたのではないのは表情から明らかだ。隣室から映像で見ていたカビールはやれやれ生真面目なことだと、軽く息を吐いた。
ないです、そんな、だって、と目の前の若造が両手を伸ばして掌をひらめかせる。マジか。
「もう一度聞くが、本当に女を抱いたことないのか」
「ありません、Sir!」
こりゃあひと仕事だ、と目の前の小僧にバレないよう嘆息し、カビールは気持ちを切り替えた。
「美女の色仕掛けに引っかかってもらっちゃ、困るんでな」
えっ、美女?と顔を輝かせるのは、単純なだけではないだろう。裏切り者の息子と謗られ、後ろ指をさされ続けてきたこの若者が、色恋まして女遊びなどに向ける心の余裕はなかったはずだ。
薄い色の瞳が目の前にある。あと、なんだかほのかにいいにおいもする。銃弾と砂煙にまみれた生活だと笑って話してくれたのに、なんで、こんな。