水琴窟 外の雨音も、浴室の水音も。
急な雨が降ってきた。ギリギリセーフと銀時は玄関口に飛び込んだ。田植えの済んだばかりの田圃が広がる土地に、ぽつんと建つ一軒家は暗い景色に沈んでひっそりとしている。
玄関の引き戸を開ける。家の中は薄暗く、しんとしている。銀時はブーツを脱いでどかどかと上がっていった。
既に何度も来ているからもう我が家のように振舞っているが、ここに銀時自身は住んでいない。ここは高杉の家で、高杉が一人で住んでいる。そして近所の農家の子を高杉の身の周りの世話をしてもらうために雇っている。
今日はその子が午後から法事のため帰らなければならないと聞いて、銀時は高杉の様子を見に原チャリをとばしてきたのだ。
玄関から入ってすぐのところに台所があり、そこをちらりと見てから廊下に向かう。雨戸が閉め切ってあるために薄暗い。屋根と雨戸を打つ音が大きくなった。雨が強くなってきたようだ。
朝からずっと窓も戸も閉め切ったままだろう薄暗い家の中にまで、雨の匂いが忍び込んできた。
アイツは自分が部屋に向かっている事に気付くだろう。黒く冷たい廊下を素足でヒタヒタ歩きながら銀時はそう思った。長い廊下を歩く間、高杉がいる部屋の障子を開けて高杉がどんな表情をするか想像した。
高杉は生死の境を彷徨っていたとは思えない程、回復してきている。大分起きている時間も長くなってきた。
この時間だったら部屋で本でも読んでいるのではないかと予想した。
高杉は以前の高杉と全く同じというわけではなかった。記憶が途切れ途切れだったり曖昧だったりする。記憶がなくても混乱する様子がないのが救いだった。高杉はとても落ち着いていた。落ち着いていたが、暫くは誰にも心を開かない様子はあった。
記憶が曖昧な事もそうだが、左腕を失っている事にも戸惑いはないようだった。失った時の記憶がないと言っていたけれど、無い事をあっさり受け入れていたのだ。そういう男だと皆納得もしたが、あまりにも全ての事に反応が薄いのは医者も心配していた。
高杉の寝室の前まできて、障子を開ける。
「いねェ」
思わず声が出た。
布団が畳んである。ここは寝室でもあるし、居間でもある。殆どの時間を高杉はここで過ごしている筈だった。いないという事は、厠か風呂か。台所はちらりと覗いたが、誰もいなかった。
この家は元々金持ちの男が惚れた女を囲っておく為に用意した家だが、一人住まいにしては部屋数が多く、家族で住んでも問題ない広さがある。他の部屋のどれかにいる事も考えたが、高杉が他の部屋にいる事は考えられなかった。
外?
雨が降り出したのはさっきなので、考えられなくはない。慌てて玄関に取って返し、ブーツを履くのは面倒なので古ぼけた下駄を突っ掛けて外に飛び出した。
雨だけじゃなく、雹も混じっていた。雷の音。春雷。
遠くまで広がる田園はまだ田植えがされたばかりだった。鏡のように暗い空を映していたはずの水面を雹が叩いて波紋を作る。暫く畦道を走ってハッとした。どこに行ったのか皆目見当がつかないことに、足が止まる。いい年した大人が少し姿が見えないだけで、こんなに焦る必要はないのだともと来た道を歩いて戻る。家の近くまで戻ってきて、門の前に黒い影が立っているのに気付く。
「…なんだ、そのツラァ」
高杉はずぶ濡れだった。羽織も着物も元の色より大分暗い色になっているようだ。口角は少し上がっていたが、目は笑っていない。唇の色が酷く悪い。
「…どこに行ってた?」
責める事ではないとわかっているのに、銀時の声には不機嫌さが出ていた。
「散歩すんのに許可がいるのか?」
高杉は銀時にくるりと背を向け、玄関に向かう。
銀時は黙って高杉の背中を追う。許可なんかいらないし、好きなように散歩でもなんでも行けばいいと思うのだが、面白くはなかった。高杉の後姿を見つめながら後を追う。高杉の体には濡れた着物が密着して、体格がよく判る。一月以上寝たきりだったのでかなり痩せたのが分かる。あれから少しは体力が戻ってきているだろうが、昔よりずっと体が小さくなった印象がある。
「開けっ放しかよ」
玄関の様子を見て、高杉が言った。そういえば銀時には戸を閉めた記憶はない。
「心配でもしたか?」
こちらに顔だけ向けて、高杉が微笑んだ。
「心配? ナニソレ」
銀時は努めて無表情に返した。
「…そんな事より、入らねぇのか。寒くてかなわねェ」
高杉はとっとと話を切り上げ、上がり框に座って草履を脱ぎ、端に立て掛けた。草履からジワリと水が出てきて石の三和土の色を変える。銀時も引き戸を閉めると下駄を脱ぎ、高杉の草履と並べて立て掛けた。高杉は濡れてズシリと重そうな羽織を脱ぐ。水滴が床に飛び散った。
「ここで着替えんの? 普通風呂場で脱がない?」
「なんで風呂?」
面倒そうに高杉が顔を顰めた。銀時は顎で台所の奥を指す。浴室は台所を抜けた先にある。
「いや、体冷えたんだろーが? 風呂、沸かすぜ」
高杉は返事はしなかったが、ここが玄関であるにも関わらず、どんどん着ている物を脱いでいく。
「ちょっ、待て。 確かまだ源外の爺さんに頼んだシャワー出来てないんだよな…⁉ ここの風呂沸くのにちょっと時間かかるヤツだったよな?」
いつもよりずっと早くここに来たのは正解だったと銀時は思った。高杉だけだったらそのままにして風邪を引いていたかもしれない。おまけに脱いだ物もそのままにしそうな気がした。普段どういう生活をしているのかよく知らない。殆ど世話をしてくれる子にまかせっきりだからだ。
この家の風呂は薪じゃないだけまだマシだが、まず水を溜めてから簡易ボイラーで沸かさなければならない。台所を抜けて浴室へ行く。蛇口をひねると勢いよく水が出てくる。その間にタオルや着替えを出さなければ…と銀時が玄関に佇む高杉を見ると、下着のみになっていた。
銀時はまだズブ濡れの服を着ていて、この姿のまま家の中を歩き回るのは嫌だが仕方ないと、急いで高杉の部屋へ行き適当な着物を取る。脱衣場の籠に着替えを放り、古ぼけた洗濯機に着物を突っ込んだ。手伝いの子は電力が安定していないからと、盥と洗濯板でやると聞いた。今時の子とは思えない。
風呂場の水音が変わったので大分水が溜まってきたかと、浴室の直ぐ隣の小部屋へ行くと簡易ボイラーとスイッチがある。銀時は操作方法なんかよく判らないが、適当にいじって火を入れた。
小部屋から出ると、高杉が浴室前に全裸で佇んでいて銀時は一瞬ギクリと止まった。
「まだ水だから」
そう言って極力ジロジロ見ないようにしながら浴室に入る。やはりあけすけに脱がれると、女じゃなくても目のやり場に困る。昔はどうだったか思い出そうとして気を他に向ける。昔の方がもっとこういう所は慎ましかったのではと、高杉の青少年の頃を思い出しながら早く温まれと、浴槽に突っ込んだ洗面器で湯を乱暴に掻き回した。
「傷にフィルム貼らなくていいのかよ」
「点滴とれてから使ってねぇよ、傷はついでに貼ってただけだろ」
ガンダムみたいなよく判らない名前のフィルムを風呂に入る時貼っていたようだが、もう必要ないらしい。入浴の介助は始め看護師がやっていた。もしかして今は一人で入ってるのだろうか。
「まだか?」
高杉は浴槽のへりに座って右手を湯船につけた。
「ヌルイな」
そりゃそうだろ、さっき点けたばかりなんだからと銀時は心の中でツッコミを入れた。
「先に体洗えよ、手伝ったほうがいいの?」
親切のつもりはなく、どうせ断られると思っての問いだった。
「ずっと洗えてない所があるんだよ、洗ってくれ」
そう言って立ち上がって風呂用の椅子を引っ張てきて座る。洗えというのか…と銀時は苦笑いする。
「これでいいのか」
浴室の一角にまとめてあったシャンプーやら石鹸と、フックにかけてある手拭を取って見せた。高杉が見返りながら頷く。姿勢のせいで背中の背骨のラインがはっきり浮き出ているのが分かった。
「湯、かけるぞ」
まだ熱くはない湯を洗面器に汲んでゆっくりとかける。象牙の肌を湯がゆっくりと伝って落ちていく。体の凹凸に沿って蛇行する湯の流れ。
ブシュン‼
銀時のクシャミの音が浴室に響いた。急に鼻がムズムズっとして、してはいけないと我慢したけれど出てしまった。しかも手を添える事も出来ず、顔を逸らす事も出来ず、高杉の後頭部と背中に飛沫が飛んだ…ようだった。
「…オイ…」
高杉は振り返りもせず、背中で怒りを表していた。
「…。」
湯をまた汲んで、今度は頭からかける。片手で高杉の髪を梳きながら、銀時は身震いした。服がびしょ濡れですっかり冷えていた。
「…テメェも脱いだらどうだ」
気配でも察知したのか、高杉が小さい声で言った。
「いや、俺は後で…」
ブシュン‼
またクシャミが出た。今度はちゃんと顔をそらして。
「気になって仕方ねぇ、脱げ」
言いなりになるみたいで癪だが、確かにこのままでは風邪を引いてしまうかもしれないと無言で脱ぐ。その間高杉は手桶で湯を汲んで、肩にかけていた。湯が大分温まってきたのか、湯気が出てきて浴室の気温が上がってきた。銀時はどうせ洗濯するんだからと、脱いだ服を浴室の端に置いた。
「着物貸してくれる?」
「さぁなぁ、素っ裸でいるか?」
高杉が冗談を言って天井を仰いで笑った。
「いや、風邪引くから」
「一番派手な着物、あれ着ろよ。寸法は小さいだろうが、似合うだろうぜ」
高杉の背中をよく見るとあの日に銀時が刺したり斬った傷や、朧に刺された傷、その他にも白く薄い線となった傷が背中に残っていた。新しい傷痕の鮮やかな肉の色と白い線は高杉の体を彩っている。
銀時は派手な着物はこいつの方が似合うと黒い髪を見つめながら思った。黒髪が映えるような色彩の古風な意匠の着物が、買い手もつかずこの家に沢山残っていた。この家にはかつての住人である元芸者の匂いがそこかしこに残っている。これらの着物もその中のひとつだった。しかし、女は突然姿を消したという。惚れた男と一緒になりたいと、何もかも捨てて出ていったと聞いていた。女物の着物が残っているのはそういう理由があってのことだった。上等の桐箪笥の中には畳紙に入った一度も袖を通されなかった着物が眠っている。
これらの古道具も一緒に、売るなり捨てるなり好きにしていいという話で家の持ち主からここを借りている。間に人が入ってるので、銀時はその男と一度も顔を合わせたことはない。女が何もかも捨てて出ていくほどに悪い人間なのか、それはどうでも良かった。戦後の混乱の中すぐに使える家が必要だったのだ。
「…洗えてない所ってどこ」
高杉の項に手をあてる。高杉の体が、ピクリと反応した。
「…冷てぇ」
低い警戒するような声。さっきまでの、緩い空気はない。たった一つの行動でこうも空気が変わるものかと銀時は思った。これまでこんな風に触れた事はない。友人として、仲間としての無邪気なじゃれ合いだったらいくらでも触れあった。こんなわけのわからない気持ちで触れる事など一度としてなかった。
なかったのだろうか。
大切だと思っていた。なくさないようにしようと思っていた。松陽に言われなくても、大切なものは自覚していたつもりだった。 松陽と約束した事で、許された気がした。護ってもいい、大切にしていい。そうして人と繋がっていって人間というものになれと。
この気持ちは果たして「人間」のものなのだろうか。大切なものに、こんな凶暴な気持ちが湧いてくるものなのか。
銀時は高杉の首筋に手を這わせながら、正体不明の湧き上がる感情に耽っていた。高杉が生き延びたら好きなようにする、そう冗談のように何かに誓ったが、高杉がこうして本当に生き延びて銀時の手の届く所にいるという事実に戸惑いもあった。あの誓いには高杉の了承がない。
「…銀時」
高杉の声が静かに浴室に響いた。あの誓いに、高杉は了承していない。
「…てめェは、本当に…」
高杉が、首筋から肩に触れる銀時の手にそっと自分の手を添えた。
高杉は、まだ了承していないのだ。
あれ程屋根と窓を叩いていた雹の音はしなくなって、雨樋を伝い落ちる水音と浴室の天井から落ちた水滴が時々湯船に落ちる音、そして二人の息遣いだけが鼓膜を打つ。
もうすっかり風呂は熱くなっていて、浴室の気温は寒気を感じない程に温まっていた。銀時は浴槽のへりに腰掛け、高杉を後ろから抱くようにして膝の上に乗せていた。肩や背中の傷痕に舌を這わせながら肉茎を扱いてやる。銀時が思っている以上に、高杉の反応は良くすぐ勃ち上がった。
「もしかして、目ェ覚ましてからしてない?」
自慰の事である。
「……」
高杉は何も答えず、荒い息を吐き出すだけだ。
銀時の記憶の中では、年頃になって女に興味が出てきて遊郭にもよく仲間達と一緒に通ったが、真剣に惚れた女の話を高杉とした事は無かった。指名した妓がかぶって暫く口をきかないという事はあったが、どちらもその娘に真剣に惚れてのケンカではない。漠然と、高杉は誰かを好きにはならないのではないかと思っていた。…そうであって欲しいと思っていただけなのかもしれない。もしかしたら自分が知らない所で高杉はヅラや辰馬とはそういう話をしたかもしれないと思うと、キリキリと胸が痛んだ。
銀時が少し強めに陰茎を握ると、高杉が呻いた。銀時のモノも硬さを増して、それで下から高杉の玉を突いた。高杉の陰茎は先から止めどなく出る雫でぬるぬると滑りが良くなっていて、ぬめりにまかせて扱きのスピードを速めていく。高杉はのけぞるようになって腰を揺らした。顔を見たいと銀時は思った。後ろからじゃなく、前から抱き締める姿勢になれば良かったと後悔しながら掌で高杉のモノの先を包んでやると、やがて銀時の掌に生暖かいものが叩き付けられる。
高杉が荒い息を整えようとしていた。興奮なのか、息はふるえている。それが色っぽい。
「あ…っ」
息遣いと水音だけの空間に、上擦った高杉の声が響いた。銀時が精液で塗れた手で高杉の尻に触れたからだった。本来の使い方とは真逆の、出すだけの場所に精液で潤った指の先を入れられて驚いたようで、銀時の額に後頭部を預けてイヤイヤと言うように首を振った。
「痛いか?」
銀時が、優し気な声で問う。痛いから止めてくれと言えば、止めてくれそうな相手を気遣うような声音。
「汚い…」
高杉はそれだけ絞り出すように言った。
「まぁ、汚ねェよな。普通は…」
そう言いながら銀時は高杉の中に、先程よりも深く指を入れる。
「んんっ!」
強張る高杉の中を無遠慮に掻きまわす。指一本とはいえ、異物感はひどいようで、息を詰めてじっとしていた。
「嫌っつったら止めようと思ったけど…。嫌って言わないとヤっちゃうけどいいんですか~…?」
いつもの調子で、ふざけるように言った。普段と変わらない調子で言えば、我にかえって高杉らしい返しをしてくれるに違いない。この水音だけの窖(あなぐら)では、世界中に二人だけしかいない錯覚がするに違いない。外の世界に出れば人は沢山いる。流されて男同士でわざわざセックスしなくてもいいのだ。
「いいから…、早く…っ」
…高杉は自分が何を言ってるのか、わかっているのだろうか?流されてるだけなのではないか?そんな銀時の疑問は、霧散していった。
高杉を浴室の壁に押し付け、銀時は高杉の精液を潤滑油代わりに指で穴を慣らす。高杉は壁に自分の額を押し付け、右腕で口元を覆っているようだった。声を漏らさないためか、苦痛を堪えるためか、両方か。
こんな姿勢をとった事もないだろうし、尻に異物を入れた事もないだろうから、身体が強張っていた。銀時は高杉の前も縮んでいるのではないかと、後ろから手を回して高杉の陰茎に触れた。身体から感じる緊張とは裏腹に、また頭をもたげて硬さを増してきていた。
慣らすのがじれったく、体の中に良く感じる所があるんだと聞いてはいるが、そこをじっくり探し当てる余裕がない。早く入れたいと頭はそればかりになる。銀時自身もさっきからずっと痛い程脹れていて、鈴口が絶えず涎を出している状態だった。
「ちょっと…、我慢して」
指を抜き、ぐずぐずになった場所に膨れ上がって余裕も理性も無くしたモノを当てて先走りを擦りつける。
「待…っ、あっ、あっ…」
先が思いの外、ズルリと潜り込めて銀時は少し驚いた。高杉は驚きというよりは痛みなのか、身体の強張りはきつくなり、息を詰めているようだった。身体を進めようとする銀時の気配を感じたのか、
「いっ…、待て…まだ無理…だ…」
痛いと言おうとして躊躇したようだったし、声を抑える高杉なりの矜持を感じる。
「本当に俺って、酷いことするよね…」
そう言って、銀時は腰を入れる。極力乱暴にはしないようにとゆっくりではあった。しかし、受ける側からしたら傍若無人な振る舞いそのものであろう。
「うぅっ…」
腕を噛んでいるのか高杉の声はくぐもって聞こえる。
「うっ…あっ、あっ」
銀時の律動に合わせて、高杉の声が切れ切れになって浴室に響いた。段々と滑りは良くなり、腰の動きは速く乱暴になってくる。始めは高杉の身体の負担を気にしていた素振りがあった銀時も、次第に夢中になっていた。
やがて銀時は低く呻くと、高杉の腰を引き寄せながら自分の腰を押し付けた。
「……っ」
長い射精。高杉に自慰の話を振った銀時だったが、自分もそういえば一週間くらいしてないかもしれないとふと思い出した。思春期の上、好奇心旺盛な時期の子供と住んでいるとそうそう自慰など出来る場所も機会もなく、かといって今の江戸の現状と懐の事を思えば吉原に気軽に行く事も出来ない。もしかして溜まっていたから、高杉に対して性的欲求を覚えたのだろうか。幼馴染で、男相手に。本当だったら絶対抱いてはいけない相手に。
高杉は一言も発さず、じっとしていた。背中の傷を舐められると、我にかえったようにピクリと体が動いた。
「…もう…そろそろ…」
息が整っていないのか、切れ切れに終わりを告げる高杉から、銀時は陰茎を抜く。白く濁った液体がどろりと緩んだところから溢れ出てきた。
「!」
抜いてすぐまた挿入すると、さすがに高杉もこちらに顔を向けて怒りの声を上げた。目元は紅潮して、唇はずっと腕に押し付けていたからか唾液でぬらぬらと光っていた。唇の赤さはいつもより増していた。
「てめ…っ、好い加減に…っ」
「いや、カリって精液掻き出すために張ってるんだって聞いたことあるから」
「どこでそんな情報…っ」
「出さないとほら、腹下すらしいよ。我慢しろって」
先程よりもずっと余裕をもって、今度は高杉も気持ちよくなればいいと動いた。
「あっ」
「ここ、イイ?」
「掻き出す…だけじゃねェのか…っ」
「出てる出てる。結構多いよ、俺溜まってたみたい」
自分の陰茎に自分が出した液体が絡みついて、それを高杉の穴が目いっぱい咥えこんでいる。詳しく実況してやりたいけれど、初めてなのに飛ばし過ぎるのはよくないだろうと抑えた。高杉にも良くなってもらおうと、反応が良かった場所を抉る。
「!」
やはり身体が跳ねる程良い場所らしい。銀時がそこを重点的に攻めると、高杉は抑えきれない嬌声を上げ続けた。全く知らない部分が見れたのがこうも愛しく感じるものなのだろうか。
「…とき…っ、出る…っ」
苦し気にそう言い放つので、促すように高杉の肉茎に触れてやりながら、銀時は自分が動くことに専念した。ギリギリまで引き抜いて、高杉が好きな所を狙って突く。
すると突然、高杉の中が銀時の中をこれまでよりも強く締め付けた。
「んんっ…」
浴室の壁に、高杉は吐精した。肩で息をしながらぐったりと壁にもたれかかる。銀時は高杉の肩に額を押し付けた。
「!」
高杉はハッとして顔を上げた。自分の肩に頭を乗せる銀時に憎々しげに言い放つ。
「テメ…っ また…」
掻き出すと言っていたのにまた中に出した銀時を睨みつける。顔を上げた銀時と至近距離で目が合う。
「こればっかりは俺が悪かったわ、ゴメン」
[了]