ステバキワンライまとめ1(20180512-0623)20180512 テーマ:抱き締める
抱き締める
時間と記憶を遡れば、スティーブとバッキーが二人で出掛けることは珍しいことでもなかった。その行き先が、例えば開場したばかりの映画館でも、昼間の公園でも、夜のジャズバーでも。ただし最後のは少し特別だ。スティーブは酒が飲めなかった。
ある日、バッキーは一人で酔い、美女と踊り、スティーブが飽きた頃に美女を置いて二人で帰った。スティーブがバーについて来いたのは、バーで演奏している楽団のスケッチができるからだ。彼が描くチェロは上手いものだった。「楽器を描くのは面白いけれど、楽器屋のガラスに張り付いている訳にもいかないだろ」──スティーブがそう言うのを、バッキーは立ち並ぶ街灯を右手左手で順繰りにお相手しながら聞いた。鼻唄混じりの帰り道だったので、「ふーん」とすら答えなかったけれど。
「あんな、適当で良かったのか」
「んー?」
「さっきまで踊ってたあの子。バッキーの家を知りたがってた」
「そうだったか?」
「最後に、思いっきりハグまでしただろ」
「あー……、うん……?」
酔っぱらいとは面倒なものだ。要る記憶は飛ぶし、考えもおかしくなる。赤毛の女性の顔を思い出そうとする一方で、塗装し直して僅か二月の街灯のスリムさを誉めたくなる。この、左手に吸い付くようなカーブと、ぎゅっとしたら折れてしまいそうなくびれを。つまり、飲み過ぎた自覚はあった。
「お前も、踊るくらいすれば良いのに。俺が練習相手になろうか?」
「お断りだ」
溜め息をついたスティーブの手にはスケッチブックが抱えられている。そこに誰かの小さな手が収まる日は来るのだろうかと思いながら、バッキーは街灯に別れを告げた。
そんな夜があったことをふと思い出しても、酒は進まなかった。現在はバッキーはもちろんスティーブだって酒は飲めるが、二人とも飲んでもさほど楽しみがないのである。ただし、酒に頼った楽しみしかない訳ではない。現に、スティーブはバッキーの顔を覗き込んで穏やかな笑みを浮かべている。後ろで聞こえるのはチェロとピアノ。ゆったりとしたリズムは、暖かさの中で微睡むよりも、誰かの体温に触れていたくなるような気分にさせる。欲する相手がまさかスティーブになるとは思わなかった。美女じゃないけど、街灯より良い体してるぞ、と昔の酔っぱらいに伝えたい気分だ。
今夜は、久々のデートだった。やはり、仕事帰りに家で会うのとは空気が違う。本当は毎日でもどこかに出掛けたいが、お互い多忙でなかなか叶わない。
「俺は練習相手なら引き受けるつもりだったんだが」
「バック。僕が冗談を言ってるように見えるか?」
スティーブの溜め息には慣れっこだ。でも最近、重苦しい溜め息は減った。
「分かってるよ。けど、ほら、腕が一本だから、やりにくいかも」
はっきり断るつもりはない。自分がスティーブに弱いのは分かりきっている。グラスすら持っていない右手をぷらぷらと振ってみせると、スティーブがぱしりと手首を掴んできた。
「片手だけでもしがみつけるだろ。僕が支える」
「踊れるのか?」
「知らないよ。体を揺らせば良いって聞いたぞ」
「揺らすって、──」
誰がそんなことを、と聞こうとして止めた。たぶん、過去の自分だろうから。まだ思い出せてないことはいくつもある。
それから、スティーブはバッキーに有無を言わさず、そのまま手を引いてテーブルから離れた。薄暗く、淡いオレンジの灯りが恋人たちのムード作りを手助けをするスペースで、他の客にぶつからないように身を寄せ合う。スティーブの右腕が背中に回された。ちょっと顔が近づくと、スティーブが息を飲んだ。一瞬目を逸らしたが、ちゃんとバッキーを見つめ直してくれる。しかし、咳払いして、おずおずと口を開く。
「……それで。体を揺らすって、具体的には……?」
「馬鹿じゃないかお前」
バッキーは吹き出す。リードするというほどではないにしろ、右手でスティーブのシャツを掴んで一緒に揺れてやった。格好は付かないが、案外スティーブは楽しそうだ。時折足元をちらちら見て、足を踏まないように気を付けているのが分かる。
「……バック」
「ん?」
オレンジがかったスティーブの瞳は新鮮に見える。チェロの低音が、腹の底に響く。
「曲が終わったら、ハグがしたい」
終わったら、と言いながら、スティーブの両腕に力がこもるのが分かった。バッキーは右手を離して、スティーブの前髪をかき上げてやった。その間も二人の体は曲調に合わせて揺れ続けている。支える、と言ってくれたのは嘘ではない。
「終わったら、な。終わるまで我慢しろ」
「ああ」
バッキーは帰り道を想像する。きっと、家に着くまでスティーブの腕の中から逃れられないだろう。もう、街灯とデートせずに済みそうだ。
20180519 テーマ:過去
変わらない話
「スクールに、パーシーって男がいなかったか?」
「んー……、……いたかな。それが、どうかしたか?」
スティーブは数秒して鉛筆を動かす手を止め、顔を上げた。視線を天井の方にやって、バッキーが口にした「パーシー」のことを思い出そうとしているらしい。バッキーは、スティーブにバレないようにそっと、窓枠にかけている右肘をずらした。しばらく動かないでいるというのは、実は、ずっと動きっぱなしでいるよりもつらい。今も、肩が少し痛くなってきたところだ。それでもバッキーは昔から、スティーブの絵のモデルを積極的にこなしている。
「分からないけど、何となく、今思い出したのさ。俺は、その、パーシーってヤツが苦手だった気がする」
「喧嘩でもした? ……あ、腕を動かしたな」
「バレたか」
「ああ、戻さなくていい。もう、顔を描いているから。こっちを見てくれないか」
「……うん」
こっち、と言われてもどうしていいか迷うのも、昔から変わらない。スティーブの顔や目を間近で見つめる機会は増えたけれど、視線を逸らさずにいるというのはハードルが高いのだ。スティーブは紙とバッキーを交互に見ていて、その目は真剣そのものだった。今日は簡単なスケッチよりも時間がかかっている。気晴らしに絵を描く時もあれば、絵への情熱がこちらまで伝わってくるほどに熱中している時もある。今日は後者らしい。窓から射し入る西陽を受けるスティーブの瞳は美しくて、真面目に絵を描いている彼には悪いが見惚れてしまいそうになる。──バッキーがこんなことを考えながらモデルを務めていると知ったら、スティーブは困るだろうか。
ところで、バッキーは、「喧嘩でもした?」という質問に答えられないままでいた。今、顔を描かれているのならば、口や目を動かすのは誉められないと思うし、そもそも答えるとしても「分からない、知らない」と言う他ないからだ。正しくは「思い出せない」と言うべきだろうが、その言葉を使うのは、バッキーも、スティーブも好きではなかった。
互いに無言のまま時が過ぎていく。バッキーは、外から聞こえる子どもたちの遊ぶ声や車の音を聞きながら、「パーシー」のことを考えた。どんな男だったかは覚えている。少し太り気味の、金持ちの家の人間で、教養はあるけれど何だかお高くとまっている性格だった。バッキーはそういうタイプはあらかじめ避けておく子どもだったので、関わったことはないはずだ。なのに何故、彼のことを苦手だとわざわざ思い出したのだろう?──そうやって次々に情報を掘り起こすことに集中し、スティーブと視線が絡む度に跳ねそうになる心臓を落ち着かせた。
「バック」
鉛筆を走らせながら、スティーブは満足そうに頷いた。
「今日のは上手く描けそうだ」
「……そっか」
「モデルがいいからかな。……いや、それなら毎回上手く描けてるはずか」
冗談を言おうとして失敗したスティーブに、バッキーはつい笑ってしまい、横を向いた。すかさず、スティーブに笑いながら「こっちを見ろ」と言われたのでその通りにしたが、頬がゆるむのは抑えられなかった。スティーブに注意されなかったので、たぶん、もう顔のパーツは描き終わっていたのだろう。
バッキーが「パーシー」のことを思い出したのは、描き上がった絵をぼんやり眺めていた時のことだ。「パーシー」の話をしてから三時間以上が経っていた。
もう夜も遅く、スティーブがあくびしながらシャワールームに行った後だった。だるい腰を引きずってベッドの上を這い、ナイトテーブルに放置されていたスケッチブックを捲る。昔は、バッキーはスティーブの絵をほとんど見ていなかった。スティーブがモデル本人にもあまり絵を見せたがらなかったのもあるし、バッキーは絵を描いているスティーブを眺めるのが好きで、それで満足していたからだった。
──スティーブって、絵が上手いんだな。まあ、僕の家の玄関にあるのには敵わないけれど。──
思い返してみると、パーシーのその一言は、貧しくとも才を与えられたスティーブへのただの嫉妬だったのだろう。バッキーはそれに対して複雑な思いを抱いた。素直に受け入れられなかった。スティーブの絵をいつ見たのか。誉めているのに婉曲した言い方だったのも気に入らない。けれど、一番不安に思ったのは、もしかしたらスティーブが自分を描いて過ごす時間が減ってしまうかもしれないということだった。スティーブが誰かに認められることは嬉しい。それでも、どうしてか、あの時間だけは邪魔されたくなかった。今のバッキーが、絵を描くスティーブを独占しているように。
遠くで、シャワーの音が止まる。バッキーはスケッチブックを閉じようとしたが、結局そのままで待つことにした。スティーブが戻ってきたら、「上手く描けてる」と誉めてやるつもりだ。
20180526 テーマ:遠距離
ライオンの身嗜み
ベッドに腰掛け、こちらに背を向けるスティーブの腹を指で突いた。少しだけかたい皮膚の抵抗を受けながら、薬指の先がほんの僅かに沈む。Tシャツを着るところだった恋人は、両腕だけ通したところで動きを止めて振り返り、未だ横たわるバッキーを見下ろした。逆光が透ける金色の髪が輝いている。
「どうした?」
「……何も」
別に、まだここで過ごしてほしくて触れたのではなかった。もう外では鳥が鳴いているし、動物たちに餌をやる時間なので、バッキーも起きなければいけなかった。では何故、スティーブの気を引くような真似をしたのかと言うと、彼がまだ触れられる位置にいたから、という他にない。説明をするのが恥ずかしくて「何も」と答えた。スティーブはこれをどう受け取ったのか、Tシャツをしっかり着ると、バッキーを抱き起こして頬にキスをくれた。髭がくすぐったく、次に会う時は剃ってから来るように頼んだ。
そんなことがあったのが、もう二ヶ月前になる。果物の収穫を手伝ってくれていた村の子どもが、「あの人は、次はいつ来るの」と聞いてきた。「あの人」がスティーブを指しているのだと気付いたのは、肩車していた子ども──名前はアサファという──を地面に下ろしてからだった。彼は「前に来た時遊んでくれなかった、ライオンみたいな頭の人。ホワイトウルフの友達」と言った。ライオンみたいとは初耳だが、ああ、言われてみれば、と納得する。光を浴びる金色の髪を見上げた朝が、懐かしく思えた。
「スティーブか。いつだろう。知らない」
アサファは、きょとんと眉を上げ、目を真ん丸にした。
「戻ってこないの? 今、どこにいるの?」
「その内また来るとは思うけど、どこにいるかは知らないな」
「友達なのに、不思議」
バッキーは返答に悩んだ。恋人だとわざわざ訂正する必要はない。恋人でありつつ、アサファが言うような友達でもある。アサファは「親密なのに知らないのか」と言いたいだけだろうから、恋人でも友達でも一緒のはずだ。
籠の中にあるスモモの中から色の良いものを取って、アサファに与える。それでこの話は仕舞いにしたかったが、子どもの好奇心は消え失せてはくれなかった。
「彼は遠くにいるんだよね」
「……さあ、どうかな」
「遠くだと思うよ。この前も、ロシアから来たって言ってたじゃない」
「……。そうだったっけ」
覚えているけれど、適当にぼかす。子どもに囲まれて遊ばれそうになる状況を「疲れているから、ごめんよ」とバッキーの小屋に逃げ込んだスティーブから、前日までロシアにいたのだと聞いた時、そんな遠くにいたのか、と頭が痛くなった。スティーブが離れた場所にいるという事実を突き付けられるのは、バッキーの精神衛生上、良いことではなかった。恋人としての惚気ではなく、バッキー・バーンズが、一番彼らしい状態であるためには、スティーブ・ロジャースという存在が必要不可欠であるからだ。もちろん、それに頼りっぱなしではいつまで経ってもこのPTSDは善くならないと分かっている。けれど、スティーブが物理的に傍にいること以上の薬が、今は見つからない。
「あいつが会いに来た時は……、今までいた場所も、いつこの国を発つかも、これから行ってくる場所のことも、なるべく聞かないようにしてるんだ」
バッキーは慎重に言葉を選びながらそう言った。アサファは幼いけれど賢い。きっと、バッキーの口調から、あまりこの話題が楽しいものではないのだと察しただろう。それでも彼は「どうして」と口にした。ただし、先ほどまでのように純粋に疑問をぶつけてくるのではなく、バッキーを心配しているような口振りだった。
「……知らなければ、どこにいたって一緒だから」
アサファの黒い眼差しが、じっとバッキーを見つめている。
「今この瞬間、ロシアにいる、って知ったら、次に会えるまで何時間も何日もかかってしまう、って分かるだろう。でも、知らなければ、もしかしたら、ちょうど今、ワカンダに戻ってきたかも──とか、何だって考えられる。実はどこにも行ってなくて、大声で呼んだらそこの草むらから出てくるかも──とか」
言いながら、馬鹿馬鹿しいと思った。子ども騙しにもならないし、現実逃避も甚だしい。二年間、スティーブから逃げ続けていた日々があるのに、今は近くにいると思い込もうとしている。思い付きで言ったにしては、薬の代用品くらいにはなりそうだ、という点が我ながら笑える。
「ライオンは、秋の草の色と似ているから、本当に隠れているかもしれないね」
アサファはそう言って、スモモをかじった。バッキーは頷く。王宮に繋がる道の先に目をやり、金色を探す。髭を剃ってほしいと頼んだのを後悔した。もしかしたら、スティーブは今、王宮に居て、バッキーに言われた通り慎重に髭を剃っているかもしれない。そんな時間すら惜しい。ここに来てほしい。腹に、背に、髪に、その頬に、すぐに触れられる場所へ。
20180602 テーマ:深夜
次の始まりのための、一日の終わり
ようやく辿り着いたドアの前に立つと、頭上で勝手に灯りが点いた。靴箱の上にあるスイッチを入れておけば、夜だけ、人が近付くとセンサーが感知して明るくなる仕組みだ。普段は使っていない電灯なので、薄黄色の光が新品の電球のように爛々とこちらを照らした。スティーブは、ポケットにしまったばかりだったキーホルダーを取り出し、バイクの鍵と共にぶら下がる家の鍵を握る。鍵穴に差し込み、なるべく音を立てぬようゆっくり回して、ドアを開けた。
バッキーへ、「遅くなるから、先に眠っていて構わない」とメッセージを送ったのは六時間以上前のこと。ものの五分で、「分かった。気を付けて帰ってこい」と返事があった。それから軍法会議に付き合って、昨日までの任務の報告書を上げて、食事もサンドイッチを二枚だけ食べた。最後に、ヒドラの残党が東欧に潜んでいるという内容を含んだ報告書をよく読んだ。疲れたが、眠くはならなかったので仮眠室を借りずに帰った。そうして、バイクを家の前に停めた時、外から見える窓はほとんどが暗かった。唯一、寝室のそれだけが、橙色の小さな常夜灯が点いているのでぼんやりと光っていた。
廊下をそっと歩く。バッキーと買い物から帰った時は、買い物袋のビニールの音や、自分たちの話し声で賑やかになる。また、普段仕事から戻った時も、大抵はバッキーがリビングのテレビやラジオをつけている。だから、こうも静かなことは滅多にない。二人で暮らし始めて一年以上経つこの家が、知らない家のように思えた。意識せずとも、息を潜めてしまう。シャワールームに直行するつもりだったのだけれど、何となく、荷物を持ったまま寝室のドアの前まで来てしまった。ノブをそっと下げてドアを押し開ける。
バッキーはこちらに背を向けて眠っていた。暑いのか、厚手のタオルケットは彼の背を半分も覆わない位置にずれている。スティーブは引き返してやはりシャワーを浴びるべきだと思ったが、結局中に入った。バッキーの顔を一目見たくてここに引き寄せられたのだと気付いたからだ。ベッドの脇に立ち、横顔を見下ろす。輪郭が常夜灯の色に縁取られているように見えた。薄く口を開けて、穏やかな寝息を繰り返している。枕の上でぐしゃぐしゃになっている彼の髪が、数時間後にはひどい寝癖に変貌することをスティーブは知っていた。
わざわざ、ベッドの端に彼の体が寄っていたので、心臓がぎゅっと掴まれたように縮こまった。ぽっかりと空いた、自分のためだけのスペースに両膝を下ろし、ベッドに乗り上げる。スプリングがきしみ、しまった、と思ったけれど、もう遅かった。
「──ん……」
鼻にかかった声がして、バッキーの眉がぴくりと動いた。小さく呻きながら彼はもぞりと体を動かし、右手に握っていたタオルケットの端を肩まで持ち上げながらこちらにぱたりと倒れ、仰向けになった。スティーブはその一連の動きをじっと見つめていた。起こさずに済んだか、と安堵の溜め息を吐きそうになったところで、彼の睫毛がふるりと持ち上がる。肩が震えたのは驚いたからだろうが、目がしっかり開き、ふにゃりと口元をゆるませた。
「……、……スティーブ」
「ごめん、起こしたな」
小さな声で謝りながら、どこかで彼が起きてくれたことを喜んでいる自分がいた。
バッキーが、ベッドの空いているスペースをぽんぽんと叩いた。どうも断りきれなくて、荷物を下ろし、靴を脱ぎ、そこに横になる。バッキーが半分かけてくれたタオルケットには彼の体温が移っていて、スティーブはもう今夜はここから逃げ出せないことを察するのだった。
「今、何時?」
眠気が飛んだ訳ではないのだろう。バッキーはゆっくりと瞬きを繰り返す。
「一時を過ぎたところだ」
囁いて、彼の頬に触れる。
「本当に遅かったんだな。お疲れ」
「うん……」
バッキーに片腕で抱き寄せられる。額同士が触れるくらい顔が近付く。まず擦れ合ったのは鼻先で、どちらからともなく唇を合わせる。眠っていたバッキーの体温は燃えるように高く、バイクに乗っている間に冷えていた体が熱を上げていく。自分が脱いだり、彼を脱がせたいというよりは、このまま泥のように眠りたいという気分になってくる。体温だけではなく、眠気までもが移っているかのようだ。
「バッキー。僕、まだシャワーを浴びていない」
「いいさ。明日の朝で」
喉をほとんど使わない、吐息ばかりの声で囁き合う。
「……うん」
スティーブからも、バッキーを抱き寄せた。胸元に彼の頭がくる位置だ。目の前にある、寝癖のなり損ないにキスを落とす。腕の中で彼の体に力が入るのが分かる。
「……、──もしかして、したい?」
可愛らしい誤解に、ふふ、と笑ってしまう。
「……それも、明日の朝に……」
「……」
腕の中で、バッキーが頷く。彼は子どもをなだめるように、こちらの肩を一定のリズムで優しくタップしてきた。スティーブの呼吸は、深く、ゆっくりとしたものに変化していく。視界がだんだん細くなり、やがて、真っ暗になった世界で、彼の声だけが注ぎ込まれる。
「おやすみ、スティーブ」
こちらからも「おやすみ、バッキー」と応えられたかどうかは分からなかった。それも、明日の朝、バッキーに聞けばいい。
20180609 テーマ:花
Off Season
今度、出掛けないか。──そんな分かりやすいデートの誘いを貰ったのは、乾燥機と、洗濯機の二周目のスタートボタンを押した後だった。濃い色のセーターやモスグリーンなど淡い色のニットが、丸い窓の向こうでぐるぐる回っている。もう四月に入って少し経つが、冷たい風が吹く日もある。衣替えはまだ遠い。
「いいよ。いつ?」
聞くと、スティーブはきゅっと唇を横に引っ張った。あ、まただ──とバッキーは思う。
「いつでもいい。いや……僕が予定を立てるべきか」
「それでもいいし、一緒に考えるのも楽しそうだ」
スティーブはほっと息をついて頷いた。何だか神妙な顔だ。ぼーっとして、このまま、その手の中の蓋が空いた洗剤ボトルを落とされても困るので、バッキーはその耳元に軽いキスをしながら洗剤ボトルを奪ってやった。
一ヶ月前。バッキーはスティーブに抱かれる寸前になって初めて、彼がまだ誰とも寝たことがないのだと知った。
恋愛下手なのか、それ以前に恋愛にさほど興味がなかったのか。そのどちらもなのか。ペギー・カーターとのその後もしっかり聞いたことはなかったし、聞く必要もないと思っていた。今、バッキーがスティーブを愛していて、スティーブもバッキーをそういう目で見ていて、結果的に結ばれたのだから。過去のことなど気にしないでおこうと決めている。スティーブだって、バッキーの大昔の恋愛観の話など持ち出したりはしない。
でも、それでも、だ。ロマノフたちがスティーブに女性を紹介してやっていたこともあるというので、てっきり、一回くらいは経験済みだろうと思っていた。バッキーはうっかりしていたのだ。スティーブが、そんな、経験のために女性に手を出すはずもないし、彼は現代で目覚めてからのほとんどの時間を他でもない「親友」バッキーを探すという行動に割いていたという事実を忘れていた。
バッキーは、スティーブが初めてだと聞いた時こそ驚いたものの、その後に二人がベッドで寝るのに何か失敗した訳でもなかった──むしろ上手くいった方だと思う──ので、以降は気にしないでいる。問題はスティーブだ。ベッドの中でも外でも関係ない。どこかよそよそしい瞬間があったり、自分に間違いがないか不安がっていたりする。ボーイフレンドとしての行動がスマートかを気にするなんてスティーブらしくない。完璧主義の気はあった気がしないでもないが、そこまでびびらなくていいのに、とバッキーは思う。
「それで、遅咲きの彼氏の対応を楽しんでるって訳?」
「楽しんでるってほどじゃ……」
「ま、貴方たちがうまくいってるならいいけど」
ロマノフに、「最近どうなの」と聞かれて適当に答えていたらそんな話になった。買い物の荷物持ちを頼まれただけだったはずだが、世間話や近況報告に花が咲けばこうなるのも致し方ない。「スティーブって奥手にも見えるし大胆そうにも見えるから想像がつかない」と評され、その感覚が何となく分かってしまうのが、当事者としては複雑だ。応えられなくて、コーヒーを飲んで誤魔化す。ロマノフおすすめのカフェだけあって、冷めても旨い。
「実際、困ってたりするの? 初めての彼氏にテンション上がっちゃって変なプレイに走ったり、一日中ベッタリだったり、ファッションセンスが変わって……普通レベルからダサいレベルになったり」
「いや、別に。変わったことといえば……そうだな、一昨日は花を買って帰ってきた」
「ワーオ」
ロマノフが手を叩いた。
一昨日の晩は、スティーブの帰宅がいつもより遅かった。モバイルで外食先を探しながらを待っていたバッキーに、スティーブは帰ってくるなり「店の前を通ったら、買いたくなって」と小さな花束を渡してきた。いろいろな花が束ねられていて、バッキーには薔薇くらいしか名前が分からなかった。スティーブはバッキーの反応を恐る恐る待っていて、どこか気恥ずかしく、けれど嬉しかった。夕食はデリバリーにした。
「素晴らしい。よほど、貴方に失望されたくないのね。あれって当たり前にできるようで、今時、案外みんなやらないものなのよ。花屋に勤めてる友達が言ってた」
「そうなのか」
「あ。古いってことが言いたい訳じゃないから、そこのところよろしく」
「分かってるよ……」
いっそ、古い、と言ってくれても構わない。古くてもいい。スティーブが、彼なりのペースで進んでくれれば、それで。さすがに、いつまでもこちらの顔色を伺うような態度を取り続けるのならばバッキーも痺れを切らすかもしれないが、その時はその時だ。
ロマノフがうんうんと頷く。
「おもしろいわよね。男って、相手の花を奪っておきながら、花を贈り続けるんだから」
「? 花って、──」
気付いた瞬間、コーヒーを噎せそうになった。大昔、ガールフレンドから借りて読んだ本の一節にそんな言い回しがあった。
「……、……その言い方は古い表現だろ」
「だって貴方たち、百歳でしょう」
そんなことより、どうしてスティーブがトップでバッキーがボトムだとバレているのか。墓穴は掘りたくないので聞かなかった。
その後、ロマノフの提案で、バッキーは花を買いに行くことになった。ところがバッキーは、いざ店に入ると、どれをスティーブに贈れば良いか分からなくなってしまった。ガールフレンドには、なけなしの小遣いを削ってまで贈っていた記憶があるのに。経験値は現代まで持ち越されていないようだ。
「もしかしたら、貴方たち、相性がいい上に似てるのかも」
ロマノフの言葉を否定できなかった。
結局、デートはワシントンに行った。二人で、観光サイトの桜祭りの紹介ページを見て決めた。人混みを避けたくて祭りが終わってからになったけれど。もし自分達が「親友」のままだったなら、こんなところまで散歩に来なかっただろう。
予想はしていたが、もう桜はほとんど散っていた。スティーブはそれを残念がっていて、バッキーはいつ、「お前とここにデートに来れただけで十分だ」と伝えるべきか悩んでいた。そこで、並木の中の一本の木の前で人々が足を止めているのに気付いた。見ると、もう散り始めてはいるものの、八割ほど花が残っている木があった。二人はあまり近付かず、遠くから木と人々の背中を眺めた。
「……品種が違うのか?」
「どうだろう。幹は周りのと同じに見える」
スティーブは冷静にそう言い、つまり、と続けた。
「遅咲きってやつだと思う」
「……」
バッキーは、スティーブのモスグリーンの袖をつまむ。
「俺達みたいだ」
「え?」
「何でもない」
遅くても、不格好でも、咲いただけで上出来。あとはのんびり、散り終えるまで過ごせたらいい。
スティーブとバッキーがそれぞれ買った花は、まだ、家のダイニングテーブルの上に飾られている。家に帰ったら、水を替えよう。
20180616 テーマ:眠り
夢の底にて
スティーブと「おやすみ」を言った後も目を閉じられなかったり、一度は眠ったのに悪い夢を見て目を覚ましてしまったり。そういう時、バッキーは一人でするりとベッドを抜け出してリビングに向かう。スティーブを起こさぬよう気配を消すのもお手のものだ。スティーブは、バッキーが飛び起きでもしない限りは夢の世界から戻らない。冬であればバッキーの体温が隣からいなくなったことに気付くこともあるが、大抵はリビングからの物音を脳が拾うまでは起きられない。今夜もそうだった。
リビングで、バッキーは灯りも点けずに本を読んでいた。シリーズの長い推理小説。ローテーブルには安いビールの缶。もう空になっているようだ。ソファに横になって、傍らに放ったモバイルからは美しい女性の歌声が流れている。テンポに乗りやすい曲で、けれどよくよく聞いてみると、「もう恋愛なんてこりごりだ」と歌っている。先月、テレビで流れているのに反応するや否や、バッキー自らモバイルを使って曲名を調べてダウンロードしたものだった。一九七〇年代の終わりの方の曲らしい。スティーブは恐る恐る、どこかで聞いたことがあるのかをバッキーに問うた。バッキーは首を降り、唇をむにりと動かしてから言った。「知らないけど、二十歳の時に付き合ってた子の声に似てるんだ」と。スティーブは彼女の名前を覚えていたし、そういえば歌が上手い子だったと思い出したが、「そうか」とだけ答えた。彼女が恋しくて曲をダウンロードしたのではないと知っているからだ。この曲を延々と流すことが読書のお供にふさわしいかと言われると微妙なところだった。
スティーブが傍らにやってくると、バッキーは身を起こしてソファの端に寄った。スティーブは彼の右隣に腰掛ける。ちらと本を見ると、探偵が凶器を見付けたところだった。これは、いいところを邪魔してしまったかもしれない。しかし、バッキーは気にした風もなく本を閉じ、こちらを見た。
「……たぶん、前にも読んだから、いいんだ」
おそらく、スティーブがすまなさそうな顔をしていたのだろう。そう微笑まれた。スティーブも微笑み返しておく。「たぶん」という言葉が胸に突き刺さったものの、それは吐露すべきではなかった。
「もう、この曲も聞き飽きたな」
バッキーはモバイルを手に取り、ぷつりと音楽を切る。そうすると辺りは静寂に包まれた。時折、外から車の往来が聞こえてくるだけだ。バッキーは、眩しい光を放つ画面をぼーっと見つめている。再生ボタンの上にはブロンドヘアに赤い口紅の女性。バッキーの元ガールフレンドは赤毛だった。
「来週、ショップに行ってみよう。何か、懐かしいのが見つかるかも」
スティーブはビールの缶に手を伸ばし、数インチ持ち上げてから振った。空ではない。ちゃぷちゃぷと小さな音が鳴った。
「それは、あんまり美味しくなかった」
バッキーは深い溜め息をついて、ソファに深く背を沈めた。アルコールは分解されており、酒臭さはない。
スティーブは缶に口をつけ、残りを飲んでやった。ぬるく、アルコールも飛んでいる。まずいものを飲んだおかげで、バッキーが一体いつからここにいるのか、大体の時間を割り出すことができた。
「また別のを買えばいいさ」
「そうする」
「……眠れそうにないか?」
「……どうだろう」
バッキーは頭を傾け、スティーブの左肩を枕にする。けれど目は閉じない。覗き込もうとすると、バッキーの視線が上向いてこちらを見てくれた。白目の端がわずかに充血している。
スティーブは彼の右手を取り、指を絡める。顔の高さまで持ち上げて、祈りを込めて手の甲に唇を寄せた。バッキーがゆるく力を入れる。
「スティーブ」
「ん?」
「お前が気にすることじゃないんだ」
バッキーはいつもそう言ってくれる。スティーブは強く、手を握り返す。もしもあの時、この右手に触れられていたら。今のように、握り締めることができていたなら、バッキーは谷底に落ちなかった。ヒドラを壊滅へ追い込むべく、それまでと同じようにスティーブと駆け回る。一方、スティーブは自分の中で育っていたバッキーへの想いを自覚するだろう。終着点である北極には、二人で飛び込んだかもしれない。ひょっとすると、北極に行かずに済んだかもしれない。どちらにしろ、バッキーが今ほどの苦痛を与えられることもなかった。──今更だと痛いほど分かっていても、あの時代を思い描いてしまうことが何度もある。
「スティーブ。おい。また余計なことを考えてるだろ」
「余計だなんて……」
そんな風に言わないでくれ、という言葉は声にならなかった。バッキーがスティーブにキスをして、唇を塞いだからだ。軽く済むキスだと思いきや、黒鉄色の左手でスティーブの頬を包んできた。バッキーの左手はひんやりとしていて氷の表面を思い起こさせた。スティーブはバッキーを抱き締める。
「……なあ。眠くなってきた」
バッキーが目を擦る。ついでに、唾液に濡れた唇も拭う。二人してソファに倒れ込む。固い枕で寝るのには慣れている。狭いテントの中で身を寄せ合うのも経験した。
「今夜はここで寝てもいいか」
「いいよ。おやすみ、バッキー」
バッキーは頷き、目を閉じた。数十秒経って、寝息が聞こえ始める。スティーブも瞼を伏せる。
スティーブが在りもしない一九五〇年代以降を思い描くのと同じく、バッキーは一九四〇年代以前の曖昧な思い出にすがっている。限りなく現実に近いはずの記憶だった。元ガールフレンドに似た声。内容がうろ覚えの推理小説。一人で飲むまずい安酒。
何を考えても無意味だと分かっているし、結局、今が二人にとって幸せな状態だと思う。それでも、スティーブもバッキーも想わずにはいられない。それぞれが置いてきてしまった時代への後悔を。せめて、次に永い眠りにつく時は共に在れたらいい。もう二度と、どちらかが寒い思いをすることのないように。
20180623 テーマ:甘い
sweet
久々に運動をさせた後のことだった。腹が減っていないかと聞くと、バッキーはゆるゆると首を振った。前髪を邪魔そうにかき上げてきょろきょろと辺りを見回し、枕元に転がっていたボトルを器用に片手で開けて水を飲む。喉が渇いていたのか勢い良く飲むのは良いが、横になったまま飲むので、口の端から水が溢れている。スティーブはボトルを取り上げ、濡れた唇に吸い付く。ぺろりと舐めると、「うあ」とバッキーが声をあげた。目が合ったものの、ブルーグレイの瞳はそっぽを向いてしまう。
「……もう今日は寝る」
「分かってる。いい夢を」
物足りなさを感じているからキスしたのではない。なのに、気だるい声でそう言いながらシーツを首元まで引き上げられてしまうと、何となく、それを剥ぎ取ってしまいたくなる衝動に駆られる。ちらりと見える鎖骨には、スティーブがさっき噛み付いた痕が覗いている。朝になれば消えてしまうそれを見て、バッキーの鼻にかかった声を思い出した。鎖骨は、バッキーの弱点らしい。噛んだり、舌を這わせれば身を捩るけれど、「嫌だ」とか「止めろ」とは言われたことがない。
狭いベッドの中心で、ほとんど重なり合うような状態で横たわっていたのだが、バッキーはもう本当に眠る予定らしく、ずるずると隅に寄ってスペースを空けてくれた。それでも狭いことに変わりない。結局いつも、スティーブがバッキーをハグした状態で眠ることになる。ゆっくり瞬きを繰り返しているバッキーの髪を梳く。だんだんと目を閉じている時間の割合が大きくなって、いよいよバッキーが眠ったらこちらも寝ようと──思っていたのだが、「あ」と思い出したようにバッキーがもぞりと動き、部屋の入り口に目をやった。
「腹が減ってるなら、戸棚に、シュリ様がくれたおやつがいっぱい入ってるから食っていいぞ」
「いや、僕も寝る。……ちなみに、おやつって具体的には?」
王女からおやつを支給される理由もよく分からないが、何となく、ここでのバッキーの食生活が不安になった。バッキーは、ううむ、と唸り、いくつかの菓子の名前をあげた。キャンディ、チョコレートバー、スコーン、クッキー、カップケーキ、グミ。アメリカから取り寄せたものと、ワカンダで売られているものの両方があるそうだ。どれも保存が利くらしいが、スティーブからしてみるとその点はどうでも良かった。
「お前、そんなに甘党だったか?」
「……そうでもないけど、糖分が必要だろ。あと、ワカンダ産の蜂蜜が、毎日食べたくなるくらいめちゃくちゃうまいってことは認めざるを得ない」
「へえ。毎日おやつを食べてるんだな。道理で──、……」
「──おい、何だよ」
しまった、口が滑った。──と思っても遅かった。バッキーは完全に目を覚まし、ぎゅっと眉を寄せた。「何でもない」とは言ったものの、それで誤魔化されるような関係ではない。
「はっきり言えよ。俺が太ったって言いたいんだろう」
どうやら自覚はあったらしい。そうであれば、スティーブも白状するしかなかった。慎重に言葉を選ぶよりも、思ったことを素直に言った方が良さそうだ。
「少し……ほんの少し、前に会った時より重くなったかもと思っただけだ。言っておくが、太ったくらいで嫌いにならないし、ひどく痩せ細られるよりかは──」
そこで、バッキーが盛大に溜め息を吐いた。
「前に会った時……って。いつのこと言ってんだか。……次会うまでには、体重、元に戻しとくよ」
「おい、バック……」
バッキーはぐるんとスティーブに背を向け、乱暴に「おやすみ」を言った。失敗した。バッキーは何も、太ったことを指摘されて怒ったのではないだろう。「前に会った時」という言葉が余計だった。バッキーだってスティーブの都合は分かってくれているものの、それにしたってスティーブがワカンダに顔を出す頻度は少ない。ナターシャやサムに心配されてしまうほどだ。ちなみに、前に会ったのは一ヶ月半前だった。
緩やかに上下する肩の向こうから、寝息は聞こえてこない。機嫌を直してほしいと頼むのは簡単だが、それは恋人に対して誠実な態度とは言えなかった。そっと、いつものようにハグしても抵抗されないのが唯一の救いである。正直なところ、恋人となったバッキーをこうして怒らせてしまった時にどうすれば良いかは、よく分からないままだ。自慢にはならないが、つい最近まで、恋人いない歴イコール年齢だったのだから。「スマートで完璧な恋人でいろなんて言わないけど、ちょっとずつかっこよくなってくれれば嬉しいよ」とは、付き合い始めた頃のバッキーの言葉だ。スティーブはなるべく、その期待に応えようとしている真っ最中である。「次はすぐに会いに来る。君のダイエットが間に合わないくらい、すぐに」と、簡単に約束できたらどんなにいいか。けれど、バッキーがスティーブを愛してくれていることは深く理解しているつもりだし、スティーブもこの上なくバッキーを愛しているということだけは伝わってほしくて、肩口に触れるだけのキスをした。バッキーの体がふるりと震えた。今は、お互いの愛に全てを委ねておくしかない。
朝になったら、バッキーと二人で、スコーンに蜂蜜をかけて食べようと思う。勝手なイメージだが、蜂蜜なら、砂糖を摂取するよりかはダイエットに効果がありそうな気がした。
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