来年からは本気出す 終わらないよー! という留学生の嘆きが響くのは魔王城の一室。貸し出された長机の上には格式ばった書類と、その周辺を大量のレシートが取り巻いていた。留学生一人にかかる費用を把握するために、一年間何にいくら使ったかを記入して年度の終わりに提出する書類である。もちろん記入するのはカテゴリ分けした上での大体の金額でいいのだが、そのためには手元にある分のレシート全ての品目を見返して分類する必要があった。
留学生に泣きつかれて手伝いをしているバルバトスは書類の上に突っ伏した留学生を横目に、マダムスクリームのレシートを食費のラベルが付いた箱に入れながら質問する。
「わざわざこちらにいらっしゃるよりは、嘆きの館のどなたかにお手伝いをお願いすればよろしいのでは?」
一言二言はあっても、最終的に断る者はいないだろう。
「何をいつ買ったか細かく知られるの恥ずかしいし……」
わずかに赤らめられた留学生の表情からは、『好きな人に』という枕詞が隠されていることが伺えた。
バルバトスは、つまり私には何を見られてもかまわないと、と全く意識されていないことに内心溜息をつきながら何種類かの下着の名前が印字されたレシートを被服費の箱に放り込んだ。
「うー……来年はこうならないように本気出す……」
「それがよろしいかと。頑張りましょう」
お互いに、という呟きは留学生の呻きに紛れて消えた。