ダイヤモンドリング【attention】
本作品は、2021年11月28日 02:18pixiv掲載作品となります。
今年の夏インテで出したヨナゾル本
『夏のオリオン 冬のスコーピオ』のスピンオフ作品です。
ヨナゾル前提のヨナが出てきますが、リディバナメインになります。
本編は原作沿い、本編その後転生してヨナがゾルタンを探す話になります。
本作はその本編に出てきた1シーンの、バナージサイドの話となります。
本編読了後に読んで頂くと本作品を一層楽しむ事が出来ます。
相変わらず設定メチャクチャです。
他CPも絡んでいる為、本当になんでも許せる方向けとなりです。
それでも大丈夫な方はどうぞ。
アメリカ合衆国ジョージア州オーガスタ市。その自然公園に少年は居た。亜麻色の髪に東洋系の顔立ち、琥珀色の目を持つその少年の名は『バナージ・リンクス』と言う。先日誕生日を迎え、齢十七歳になる。彼は今日この自然公園である人物と待ち合わせる予定にしている。
今朝は意気込みすぎて、いつもより家を早く出てしまった。そのせいで待ち合わせの時間より早く現地に到着してしまったのだ。まだ一時間半程時間を持て余す事となってしまったバナージは、公園内を散歩する事とした。
緑青々とした公園内は今朝、朝露のおかげでより一層輝いていた。木の上ではリスが踊り、空には鳥が気持ちよさそうに飛んでいる。設けられた歩道にはバードウォッチングをしている老人や犬の散歩をしている親子、ジョギングを楽しんでいる人などが思い思いに公園内を楽しんでいた。バナージは自然や人々を観察しながら何気なく歩いていた。暫くして、ふと目の端で何かがきらりと光り、目にチラついた。
「あれは…?」
その輝きに目を向け、そちらに歩いていく。すると、そこには羽を象ったペンダントが落ちていた。こんな道端に落ちているなんて、きっと誰か落としてしまったのだろう。ペンダントを拾い上げると、きょろきょろと周囲を見渡して持ち主を探した。すると、ペンダントが落ちていた先にアプリコットオレンジのマッシュヘアーをした一人の青年が歩いているのをその眼に捉えた。青年は何処か元気がなさそうな様子で歩いていた。彼が歩いている先には待ち合わせ場所である時計台とベンチのある広場がある。青年はそのまま一直線にベンチへ向かうと、ドカッと腰を落とし俯いた。バナージは彼の後を追った。
「これ、落としましたよ?」
青年の元に着くと、ペンダントを青年に差し出した。青年がそれに気づいて目線を上げた。するとその青い目を大きく見開いて驚いて見せた。
「あっ」
彼の口から驚いた様な声が漏れた。それは大切なものをうっかり落としてしまったことに驚いたのか、それともバナージの顔を見て驚いたのか、どちらなのか分からなかった。
「? 俺の顔に何か…?」
バナージが首を傾げて青年を見つめると、青年は何か慌てた素振りを見せながら答えた。
「あ、いや、ごめん」
目を泳がせながら、しどろもどろな返事をした。
「知り合いの子に似てたから…」
その様子が何かを隠しているようにも見えたが、バナージは敢えて追及しなかった。
「ああ、そういうの、ありますよね」
微笑みながら、青年にペンダントを渡すと、そのまま彼の横に座った。青年の顔に目を向けると、酷く暗い顔をしていた。バナージは気になって声をかけた。
「あの、何か思い悩んでる事でもあるんですか?」
「え?」
青年がバナージを見た。次に慌てた様子を見せ始める。どうしてと言いたげなその表情に苦笑して返した。
「酷く難しい顔をしていたから」
そう言うと、慌てて青年が顔に手を当てる。どうやら表情に出ていた事を自覚していなかった様だ。
「俺で良ければ、話、聞きますよ」
思い悩んだ時は、誰かに話せば少し楽になる。そう思いバナージは青年を見つめながら声をかけた。青年は最初言うべきかどうか悩んでいる様だったが、やがて意を決した様子で口を開いた。
「見ず知らずの君にこんな事を話すのは気が引けるんだけど…」
青年が顔を正面に向けたまま俯き、顔の前で両手の指先と指先を合わせる。そして、まるで教会の懺悔室に居るかの様な口ぶりで話し始めた。
「昔、或る人と酷い喧嘩をして、酷い事をして、酷く傷付けてしまったんだ。それで、会えなくなってしまった」
どこか重々しい口ぶりで心の蟠りを吐露していく。バナージはそれを黙って静かに聞いていた。
「その人をずっと探して、今旅をしてる。なのに、何処を探しても見つからなくて…」
話すにつれて、辛そうな表情を浮かべて、声を震わせる。そして、言葉を詰まらせた。
「俺、どうしたら…」
合わせていた指先を絡め、お祈りをする様に手を組み、その手に己の額を付け、それ以降青年は押し黙ってしまった。青年の青い瞳からとうとう涙が零れ落ちていた。
己は教会の神父ではない。彼が欲している台詞を吐く事など当然出来はしない。が、その苦悩を和らげる言葉ならかけられる。
「大丈夫ですよ」
バナージが紡いだ言葉に青年が即座に顔を上げ、バナージを見た。大きく見開いた青年の目にバナージは温かく笑って返した。
「人は分かり合える。例え一度対立したとしても、それでも、いつかは…」
落ち着き払った声音でバナージは言い切った。これは決して、その場しのぎの言葉ではない。心から出てきた言葉だった。その言葉を聞いて、先程まで辛そうな表情を浮かべていた青年の顔が漸く綻んだ。
「ありがとう。君に話して少し楽になったよ」
青年は微笑むと、ベンチからすっくと立ち上がった。
「俺、そろそろ行くよ」
そう言ってバナージに振り返って再び微笑んだ。バナージもそれを見て青年に微笑み返した。
「お兄さんがその人に会えるよう、祈ってます」
「ありがとう」
青年は手を振りながらベンチを離れていった。それに応えようとバナージも手を振り返していた。青年の姿が見えなくなるまで暫く、バナージはずっと凝視していた。やがて、含みのある笑みを零しながら一人、静かに呟いた。
「必ず巡り会えます。だから、
ヨナさん、大丈夫ですよ」
――そう、俺達と、同じように。
視界から消えていった青年に想いを馳せながら、首からぶら下げていた複葉機のペンダントに手を当てた。
ヨナ・バシュタ。かつて、前世にて不死鳥狩り作戦の時にRX‐0三号機『フェネクス』に乗り、彼の友人達と共にⅡネオ・ジオングを倒した人物。『フェネクス』から放り出された際に、バナージが『シルヴァ・バレト・サプレッサー』で助けた人物でもあった。バナージはヨナの事を覚えていたのだ。
彼と交わした会話から察するに、彼も記憶持ちだとバナージは確信した。彼が顔を見た時に驚いたのは、彼が覚えていたからだろう。そして、彼が探している人物とはきっと、シナンジュ・スタインに乗っていたあの強化人間の男だろう。
だが、だからと言って、己も記憶持ちである事をとうとう打ち明ける事は無かった。するべきではないと本能的に思ったからだ。
朗らかに微笑んでヨナが行ってしまった先を尚もじっと見つめていると、不意に見つめていた方向の反対側から声が聞こえた。
「バナージ」
聞き覚えのある声に振り返ると、時計台の傍からバナージより年上の金髪碧眼の青年が立っていた。時計台の針を見ると、待ち合わせ時間の三十分前だった。
「リディさん! 待っててくれたんですか?」
ベンチから立ち上がると、青年の元に駆け寄る。
バナージが待ち合わせしていた人物とは世界的に有名な企業『マーセナス社』の御曹司、『リディ・マーセナス』だった。
「今来たところだ。そんなことより」
すると、リディがその年齢には似つかわしく何処か不貞腐れた顔をしてぶっきらぼうに尋ねてくる。
「さっきのあれ、誰なんだよ」
「え?」
一瞬きょとんとした顔でバナージはリディを見た。その顔を見てリディが盛大に溜息を零した。
「だから、さっきの男だよ。知り合いなんだろ?」
リディの言葉にバナージが漸く納得する。先程のヨナとのやりとりを見ていたのだろう。それを見てどうやら妬いてしまった様だ。
「そんなんじゃないですよ。ペンダントを落とされてたんで、拾ってあげただけです」
「嘘つけ。そんな嬉しそうな顔して、俺を騙せると思ってんのか?」
「あれ、顔に出ちゃってました?」
自然と緩んだバナージの顔にリディが再び盛大な溜息を吐く。そういう所は聡いとバナージは苦笑した。同時に、先程のヨナの事を思い出し、人の事は言えないなと心の中でも自嘲した。
「どうせ、前世で関わりのある奴なんだろ?」
「バレてましたか」
「俺を誰だと思ってるんだ。伊達に前世からお前の傍に居る訳じゃない」
「今生俺と初めて会った時、俺の事忘れてたじゃないですか」
「うっ…それは言わない約束だろ?」
容赦ないバナージの言葉にリディがばつの悪い表情を浮かべた。
リディとバナージ。彼らもヨナと同じ、前世の記憶持ちなのだ。そして、これはきっと「運命」と呼ぶべきものなのだろう。彼らは今生再び巡り会ったのだ。
彼らが今生初めて出会った時、バナージは十六歳、リディは二十三歳だった。丁度、前世でラプラス事変が起きた時と同じ齢だ。当時、リディはバナージの事を何一つ覚えていなかった。だが、頭には記憶が残っていなくても、その記憶が刻み込まれた身体が本能的にバナージを求めた。その結果、彼は自ら前世の記憶を取り戻したのだ。
「あんまり他の奴に色目使うなよ」
「使ってませんよ。俺は何時だって、貴方しか見てません」
「っ⁉ …たく、参った。白旗だよ」
リディが恋人から吐かれた殺し文句に顔を真っ赤にして項垂れながら、降参と言う様に両手を上げた。一方のバナージはその様子を見て幼気な笑みを浮かべた。前世から変わらない、大好きな笑顔。リディはぼそりと呟いた。
「ほんと、惚れた弱みだな」
「え? 何です?」
「なんでもない。ほら、お前の為にレストラン予約してるんだ。早く行くぞ」
そう言ってリディがバナージの手を掴んで走り始める。リディに手を引かれるバナージは、その背中を見つめながら、さも幸せそうに恍惚と微笑んだ。
——俺たちは、どんな世界に居たって、必ず、巡り合うんだ。
Fin.
【謝罪会見】
事実上、初めて推しCP同士が絡む作品です。
と言っても、ヨナゾルに関してはヨナしかでてきてませんが(-_-;)
苦手としている方は本当に申し訳ございませんでした゚・:*†┏┛ 墓 ┗┓†*:・゚
それでも、どうしても出したかった話なんです。
元々本作品はべったーにてpass付で掲載してました。が、わざわざpassまでつけて他CPスピンオフ作品を掲載したことに何の意味があるのかと疑問に思い、悩んだ結果この度こちらにあげ直す事にしました。
ヨナゾルが生きる世界でリディバナも生きててほしいという願いの元に生まれた作品です。
そんな世界戦線であって欲しい。需要とかしらん。完全にただの俺得作品です。
今回も相変わらず駄文になってしまい本当にスミマセン!!!
語彙力が相変わらず虹の彼方に行ったっきり未だ帰ってきません!!!
ここまで読んで頂き誠にありがとうございました!!!