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    AIノベリスト11
    夏目漱石・著 ──序説 一八九四年(明治二十七)年の十二月二十三日、東京本郷の真砂町にあった吾々の下宿『下宿屋』の二階に、一人の奇妙な男が住みついたことは前にも述べた通りであるが、その男は、それから半年後の夏目金之助の主宰する雑誌「新小説」の同人となって、さらに翌年の春から秋にかけて、この雑文家の筆になる文章が、「朝日新聞」の文芸欄に載るようになったのだから、これは大変な事であったろうと思うのである…… 私はまた当時この男に、こんな渾名をつけた事も忘れてはいない……すなわち「夏目漱石」という、それは、彼が私の書いたものを読む時、いつも必ず最初に読み返して、いろいろ批評を加えたり質問したりしたからであるが、しかしそんな事は別に珍しい事でもなかったのだけれども、ただその時、彼に対してつけた私のそれが、何だか妙に気に入っていたのである…… ところが今、ここに改めて彼の名を呼ぶに当たって、ふとその当時の事を想い出して見ると、どうもその渾名があまり当っていないように思われるのである……
    なぜかと言うに、彼は確かにあの時の評家であって、しかも彼の書くものはことごとく正しかったのだが、しかし彼は同時にやはり私の評家でもあって、従って彼の言う事が、そのまま私の意見となっていた訳ではないのであるから、もし彼の言った通りに私が行動していたならば、おそらく彼の言葉などは、とうに忘れられていたに違いないと思うのである…… それで、ここでもう一度彼の言葉をくり返してみると、まず第一には、彼自身の態度について、次に文学上の方法とか形式とかいう問題について、第三には、私に対する意見として、第四には世間一般に関する忠告というような順序で述べられていて、第五番目が、私のいわゆる漱石節というものであるが、これについては私は一言もないくらい感服しているので、ここでは略す事にしよう……
    ところで、これらの諸点のうちで特に注意しなければならない点は、すでに前に触れた通り、彼の言動がいかに正しくても、彼の言う事がすべて正しいとは限らないという点にあるだろうと思われるので、したがって私は、これから先の私の論旨が彼の評価に従って進められているとは思わないでいただきたいのである……というのは、もちろんこの点についても、彼の考えは多少の変遷を経たかも知れないからである…… では話を元へ戻そうと思うが、私は前に述べたような次第で、彼と同宿になってからというもの、彼に教えられたり啓発されたりする機会が非常に多かったにもかかわらず、一方においては、ほとんど彼の意見に賛成する事ができないでいたのである……もっとも賛成できないといっても、決して反対ではなかったのであるが、ただ賛成しないだけであったのである……なぜといって、私の見るところにおいて、彼の意見はすべて間違ってはいなかったにしても、何かしら矛盾を含んでいたのである……たとえば、彼は文学は芸術ではないといったが、これなども、彼一流の定義からすれば必ずしも間違いとは言えないけれども、その定義にはいくらか無理があったようである……要するに、彼は自分の意見を主張すると同時に他の人の意見も尊重して、しかも自分が他人の説に反駁する場合にも、相手の言っている事を否定するだけの根拠を持っていたのだが、私の方は、自分の意見さえしっかり持っていない上に、人の言った事にいちいち反対するので、どうしても議論の余地のないくらい完全に彼の主張を退ける事ができかねたのである……のみならず、彼はまた自分なりの考えや思想を持っていて、私の知らない事はいくら
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    2022/01/02 16:27:18

    AIノベリスト11

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