一時停死ぽつんと一人で絵を描いている少女がいることに気づいたのは偶然だっけ必然だっけ？
「……誰？」
思わず漏れた声は、自分でもびっくりするほど冷たかった気がするけれど、構うもんですかとばかりに無遠慮な視線をぶつけ続けると、観念したようにその人は顔を上げたんだよねーこれがまたなんとも可愛い子でさ、あたしは一目見た瞬間、この子は天使だって思ったね、うん、今でも思ってるんだけど！
「……わたしの絵、変だと思うでしょ」
開口一番、その子は言ったものだから、あたしは笑顔でこう返したんだよ、「どこが？」ってね、そしたらさ、その女ったら泣き出しちゃってさ、ああ違う違う泣かせたかったわけじゃないのに、ただ、どうしようもなくて、でもちょっとくらいは後悔してもいいかな、なんて思ったんだよね、えへへ、だってさ、その女、ほんとに可愛くて綺麗で格好良くて頭が良くて優しくて素敵で、ああそうだなぁ、もし神様がいるんなら、きっとこんな感じなんだろうなって、本気で思っちゃうような人だったから、だから、そんな人が、そんなこと言い出すなんて思ってもみなくて、びっくりしたっていうかさ、ああごめん、そういう話でもないんだよねぇ、あたしさ、この前会ったばかりの人から、いきなり謝られたくないんだけどぉ……まあいっか、うん、それでさ、とりあえず、どうしたい？って聞いたの、そうしたらその子、黙り込んじゃって、なんかすごく困ってるような顔だったから、助けになりたいと思ったの、そりゃあさ、相手は大人だよ？何言ってるかよくわからなかったけど、結局あの人も、あたしと同じなんだってわかったから、うん、大丈夫だよって、それだけ伝えたの、うん？うん、そう、だってそれはつまりさ、その子にとって大切なのは絵を描くことで、それができない人生は必要ないってことだもん、あたしが絵を描くのをやめたら、その子も絵を描くのやめちゃうかもってことだし、うん、そう思うと怖くならない？怖いよねぇ、わかるわかる、いや、別に共感してほしいとかじゃなくって、ほら、それこそ絵の話だし、あー……、うん、まあとにかく、その子は絵を描くのが大切だから、それ以外のことは全部、気に入らないってことだったの、だからね、大丈夫、あなたは間違ってないし、何も悪くないよって伝えてあげたの、ふふんっ、あたし、すごいでしょ～？褒めて褒めて！」
「……」
「あれぇ？どしたの？難しい顔してるじゃん！せっかくお姉さんが相談に乗ってあげてるのにぃ……」
「……お前、絶対性格悪いだろ」
「え～？ひどいなぁ、これでも心配してるのにさぁ……で、ホントにどうしたの？」
「……別になんでもないけどさ、なんで私、美術大学なんかに来たんだろうなって思ってただけだよ」
その日は、雨が降っていたと思う────
「はー、やっと終わったぜ……「あれぇ？どしたの？難しい顔してるじゃん！せっかくお姉さんが相談に乗ってあげてるのにぃ……」
「……お前、絶対性格悪いだろ」
「え～？ひどいなぁ、これでも心配してるのにさぁ……で、ホントにどうしたの？」
「……別になんでもないけどさ、なんで私、美術大学なんかに来たんだろうなって思ってただけだよ」
その日は、雨が降っていたと思う────
「はー、やっと終わったぜ……今日はここまでにして帰ろっと……」
「あのさ、ちょっと待ってくれないか？」
放課後、教室を出て昇降口へ向かおうとすると、後ろから声をかけられた
「ん？なんだお前……え！？︎なんだよその顔！怪我してない方の目、どうしたんだ！？︎」
振り向いてみると、そこにいたのはクラスメイトの男子生徒だ……というか、こいつのこと忘れかけてたんだけど……
「あぁ、これのこと……これはまぁ、いろいろあって……」
俺の言葉に、彼は怪しげな視線を送ってくるが、それ以上追及してくることはなかった
「それより、どうしてここに？」
「それはこっちのセリフだよ！君、僕が話しかけてるのに気づかないんだもん！」
どうやら考え事をしている間に、会話が進んでいたらしい