AIノベリスト19
そして、朝起きると見知らぬ部屋にいた少女、茅野きさらはベッドの上で首を傾げていたのである――
***
「えっとぉ……ここどこだろ?んー?」
その日、茅野きさらはいつも通りの道を歩いていたはずだったが、気が付いた時には見知らぬ場所に立っていたらしい……ということになっているが、実は違うのかもしれないというのが彼女の主張である(ただし証言者はなし)
というのも、その日の記憶はまるで夢の中に取り残されたかのようにぼやけていて、思い出そうとすると頭の中が真っ白になって何も考えられなくなるからだそうだが、
『────』
彼女の意識はいつもそこで途切れていたのだという―――
***
夢を見ていた気がするけど思い出せなかったというか、夢の内容がそもそも無かった気さえしたけれど、目覚めてから数分ではっきりと覚えていることに気付いたことがあったのでそれを口に出すことにした
「……わたしって結構重い女だなぁ」
昨日は美術部の先輩が卒業して初めての文化祭で、展示物への投票権を持つ招待客として招かれた先輩達を見送るために部室に行ったら、後輩代表として挨拶を頼まれてしまったのだけれども、何を言えば良いかわからなくて、ただ一言『今までありがとうございました』と言って頭を下げたら、なぜだか拍手をされてしまって、それが恥ずかしくて逃げてきたのだが、あれはなんという羞恥プレイだろう?しかも、逃げた先が生徒会室で、そこでなぜか生徒会長に捕まってしまい、そのまま生徒会室に居座っている現状であるわけだが、これはどういう状況なのだろうか?
「それでねー」
目の前の生徒会長の話を聞く限り、どうやら彼女は今日あった出来事を話しているらしいが……えっと、それってつまり私が聞き役になっているということでしょうか?
「それでね、その時に――」
「あの?」
「ん?ああ……まぁ、そうだね」
いつも通りの通学路の途中で、ふと空を見上げた少女が、小さくつぶやく声がした気がするけど、きっと気のせいだろうと思いながら家に帰ったら――
「えっ!?」
――目の前に広がる光景が信じられなくて、思わず大声で叫んでしまったのだった
☆★☆
(これは夢だ)
そう思いたかったのに、頬に伝う熱がそれを許さないと教えてくるのが悔しくてたまらないけれど、どうしても止められないこの気持ちをどうすれば良いかわからなくて
「……ねえ、お願いがあるんだけど」
気付けば、目の前に座っていた女子生徒に声をかけていた
「私を―――殺してくれないかな?」
それが、『彼』との出会いだった
☆
「それで、僕が呼ばれたわけだ」
そう言って、美術準備室の机の上で腕を組む男子生徒が苦笑いを浮かべているのを見て、きさらは慌てて首を横に振った